カテゴリー: 経営環境

あなたは持ち家派?それとも賃貸派?~定年を迎える相談者の事例から~

先日、もうすぐ定年を迎えるご主人と専業主婦である奥様が事務所に相談に来られました。退職金に対する課税など事前によく調べておられ、いくつかの疑問にだけお答えして相談は終わろうとしていました。相談の最後に「住宅を購入したら節税になりますよね。」とふと質問されました。

相談者は大手企業の転勤族で地方都市を転々とされ、現在までずっと社宅に住まれていました。現在お子さんは、独立され近くにバス停がある便利な場所の賃貸アパートにお二人で住んでおられます。確かに、住宅を購入すると所得税が軽減されるインセンティブがありますが、このご夫婦にとって持ち家の購入がベストチョイスなのでしょうか?

私は、このご夫婦にとって「持ち家の選択は好ましくない。」と回答しました。その理由にご夫婦で納得されました。

そこで、住宅は持ち家が良いのか、賃貸が良いのか私の経験則を踏まえて考えました。私は結婚して以後、都会での新婚時代を過ごした賃貸アパート、子供ができその成長につれ広さの違う分譲マンションに住み替え、Uターンをしてすぐに賃貸の戸建て住宅、妻にせがまれ購入した現在の3LDKの中古の自己所有の戸建て住宅と転々としてきた経験があります。

とてもきれい好きでたびたびリフォームがしたいという妻の要望に応えて、これまで幾度となく数十万円から数百万円単位の支出をしてきました。「引っ越し貧乏」とは的を射た諺です。その都度、必要なものは紛失し、中途半端な家具などの購入をしてきました。もし時計を逆回しにできれば、購入をやめ、賃貸一本で過ごすチョイスをしていたと思います。

日本では、伝統的に持ち家政策があります。住宅ローン控除や固定資産税などの減免などです。それは、裾野が広い住宅関連業界やローンを組む金融機関などが潤う景気浮揚策のためです。

ところが一方で、政府の悩みのタネは空き家住宅です。現在、空き家率は約15%で、その割合が少ない都会でも10%を超え、地方になれば20%を超えています。団塊の世代の相続が進めば、さらに空き家は急速に進むと言われています。

住宅の需要と供給のアンバランス、次世代になると使えなくなる住宅の品質の問題、そして従前から続く相変わらず持ち家政策に偏ったことなどが原因と考えられます。

住宅を購入するメリットとして、①自分の住みたい空間ができる、②住宅の支出を相対的に抑止することができる、③資産として残ることが言われています。しかし、それは本当でしょうか。

①は、購入時には住みたい空間でもライフ・ステージの変化に伴い変わります。②は、壁の塗り替え、屋根瓦の交換など経年劣化を防ぐための費用だけでなく、リフォームなど意外に支出が大きくなります。③は、住宅ローンが長期ローンだと定年までに返済できないことや、資産として残ったとしても、特に地方では古い住宅は売却することは困難を極めます。また、相続になってもわが家のように相続人にとって不要な物件は空き家になる可能性が高いと言えます。

反対に賃貸では、①いつでも自由に引っ越しができる、②固定資産税などの維持費用や設備の交換や修理費用の負担がない、③収入やライフ・ステージに合わせて住居費をコントロールすることができるなどのメリットがあります。特にお勧めなのが、「分譲マンションの賃貸貸し」です。それは、マンションそのものが合理的な間取りであることと分譲用に作られたものはクオリティが高いという理由です。

件の相談者の場合には、税制の優遇措置が受けられるからといってなけなしの退職金を住宅の購入で支出するのではなく老後資金として有効に活用する方が望ましく、現在の便利なアパートに住み続けるのがベストチョイス方であるとの私の提案に頷かれていました。

ただし、価値観は人それぞれ違います。結婚するのかしないのか、子どもを作るのか作らないのか、夫婦で働くのかどうかもそれぞれの自由です。

また、結婚をするときに考えないといけないのは、「住宅資金」「子育て資金」「老後資金」の3つです。それを、収入と支出のバランスを考えながら未来をシミュレーションすることが大事です。

しかし、3組に1組が離婚をするといった昨今の夫婦事情があります。その場合に足かせになるのが、やはり持ち家になります。そうしたリスクを最小限にするためにも私個人としては、賃貸派です。

最後に言いたいのが、空き家対策を考えるならば持ち家政策はやめるべきだと言うことです。持ち家であろうが賃貸であろうが、空き家活用をする人にインセンティブを与える施策を講じて欲しいものです。

政治家とお金~知られていない官房機密費の実体~

年の瀬も押し迫って、吉川貴盛元農林水産大臣が21日に議員辞職を表明しました。氏をめぐっては、河井前法相夫の捜査中に浮上した広島県内の鶏卵生産大手のアキタフーズグループ元会長から、大臣室で数回にわたり現金500万円を受け取った疑惑が生じています。疑惑が発覚した当初は、不整脈を訴えて入院し「ご心配をかけていることをおわび」して自民党選挙対策委員長代行や北海道連会長、所属する二階派の事務所総長を退いていました。不整脈は慢性心不全となり、さらに手術を受けることになるとの報道です。役職の辞任も議員辞職もあくまで病気を理由にしていますが、いささか首をかしげてしまいます。

また、安倍前首相の「桜を見る会」をめぐっては、安倍氏側が前夜祭の参加費とホテルでの実費の差額が910万円余りあったにもかかわらず政治資金収支報告書にその記載がなったことで秘書が略式起訴されそうですが、本人の起訴はどうやら免れるようです。しかし、氏が国会で「明細書はない」「事務所は関与していない」「差額は補填していない」と合計118回の答弁をしました。自民党はこの間の内閣支持率の低下を危惧し、菅総理の政権運営に支障が起きないように、検察の捜査や本人の意向を踏まえ年内の国会での答弁をせざるを得ない状況になっています。

これ以外にも今年も政治とお金をめぐる事件がありました。IR汚職事件で起訴された担当副大臣の秋元司被告や公職選挙法違反事件で公判中の河井夫妻などは氷山の一角です。

いずれの事件についても政治家としての責任を明確にして、その説明責任を果たしてもらいたいものです。そして、具体的にどのような責任をとるか明言をすべきでしょう。それが議会制民主主義の根幹だからです。

政治とお金の問題と言えば、国民に余り知らされずに悪しき習慣と入れるものが官房機密費の存在です。Wikipediaでは、「内閣官房報償費は、国政の運営上必要な場合、内閣官房長官の判断で支出される経費。 内閣官房機密費とも呼ばれる。 会計処理は内閣総務官が所掌する。支出には領収書が不要で、会計検査院による監査も免除されており、原則使途が公開されることはない。」とされています。言い換えれば、『ヤミ金』です。

菅首相が官房長官時代(2012年12月から今年9月半ば)に受け取った機密費の総額はなんと86億円を超えます。1年で11億円を超えます。一体何に使ったのでしょうか。

機密費をめぐっては、市民団体が情報公開を求めた訴訟で最高裁は一部の開示を認めました。その際、原告と弁護団は管氏に、政治家・公務員・マスコミ・評論家に支出しないことと、使途を非公開にする期間を決めその期間が過ぎれば公開することなどを提言していますが、管氏はまるでそれに答えていません。

政治とお金をめぐる不正の根底には、領収書の要らない経費である機密費の存在があるのではないでしょうか。菅首相が「日本学術会議は、年間約10億円を使っている。国民に理解される存在でなければならない」と発言していますが、機密費についてはどう弁明するのでしょうか。批判されるのは、日本学術会議ではなく首相自身ではないでしょうか。

マイナンバーカードの強要の危うさ~普及が進まないのは政府に対する信頼感のなさか?~

管政権はデジタル社会の推進を旗印として、デジタル庁の創設を軸に公的な申請のデジタル化を推し進めようと躍起になっています。

その中で、マイナンバー制度(以下制度とします)を「デジタル社会のパスポート」と位置づけて、マイナンバーカード(以下カードとします)に銀行口座をはじめ、健康保険証や運転免許証などを無理やり紐付けしてカードをすべての国民に持たせることで、国民のプライバシーを脅かし、監視型社会の拡大をしようとしています。その狙いを紐解いてみます。

導入当初は、コロナ禍で延期になった東京オリンピックの競技会場での本人確認をカードでするといったことも検討されていましたが、その普及は一向に進んでいません。現在の普及率は全国で22%しかありません。この普及率を2022年度末までに100%に引き上げる目標を立て、ありとあらゆる手を考えています。

まずは、銀行口座との紐付けです。1人当たり10万円の特定定額給付金を支給する際に、カードを使ったオンライン申請でシステムダウンがおき、その事務にあたった市町村が大混乱になりました。自民党などはこの不備を逆手にとって、給付金の口座と制度とを紐付けしようとしています。また平井デジタル相は、義務化と罰則をセットにするという見解を示しています。もとより、制度は住民基本台帳を基礎としていますから、一番に手をさしのべなくてはならないホームレスのような住民票のない弱者には手が届かない仕組みになっていることも問題です。

カードは2021年3月から本人が希望すれば健康保険証の機能を上乗せするような制度設計をしています。病院や診療所、調剤薬局で顔認証付きのカードリーダーにかざすと本人確認ができ、薬の利用歴を本人や医療機関が閲覧したり、医療費情報を確定申告でも活用できるようです。その機器は医療機関に無償で配布しますが、現時点での申し込みは2割に満たない状況です。笛吹けども踊らぬ状況なので、将来は保険証の交付をやめることで、カード利用を促進する戦略です。

運転免許証もカード普及の対象です。運転免許証は国民の3人に2人が持っているいわば顔写真付きの身分証明書です。法律ではカードの取得は任意ですが、警察庁が検討しているようにカードのなかに免許証情報が入るとなれば、事実上、運転免許をとりたければカードを取得せざるを得ません。デジタル化と運転免許証の連結という意味で言えば、既に今の免許証はICカード化されています。仮に免許証がカードと一体化されれば、免許の有効期限、眼鏡等の条件が表から消えてしまいます。交通取締りに当たる現場のためにカードリーダーが必要になりますし、セキュリティー対策も必要になります。

かなりの予算をかけてCMもしているマイナポイントの普及も9月から開始していますが、利用見込みの4,000万人に対して、申込者は約500万にも満たないという不人気です。理由は「複雑で面倒」が4割、「セキュリティー面で不安」が3割となっています。面倒な手続きまでしてやるほど劇的なメリットがないと言えます。

確かに行政のデジタル化は国の存亡をかけた大事業です。しかし悲しいかな、国民の政府に対する信頼感は著しく低下しています。例えば「モリ・カケ・さくら」問題での行政文書の改ざん、廃棄、虚偽答弁などが顕著にそれを物語っています。国民からの信頼無くしてデジタル化は遅々と進まないでしょう。

さらに、監視社会のさらなる強化も危惧されます。カードが義務化されれば、例えば警察官に職務質問をされたら、カードをかざしただけで、犯罪歴だけでなく健康状態などの個人情報が丸裸になります。韓国のような住民登録番号が流出して悪用されることも想定しなくてはなりません。もちろん、カード所有者の「カード閲覧履歴をいつでも見られる権利」の確保も重要な課題です。カードに個人番号を書かない工夫やハッキングに対する対応策も講ずるべきです。

先進国のなかでかなり遅れている行政のデジタル化を進める手段として不可欠なのは、「急がば回れ」の諺のごとく国民の理解と協力を得ながら国民目線の制度を進めることが必要です。

聞きやすく、伝わりやすい話し方~口癖にしたい3つの話術~

コロナ禍で私の講演がビデオ収録になりました。それを聞き直してみると、言葉に詰まると「えっー」を乱発していました。恥ずかしい限りですが、自分の講演を自分で聞くことが今までなかったので早速この悪い癖は直す努力をしたいと思います。

先日行われた日本シリーズ第3戦で7回をノーヒットで抑えてヒーローインタビューを受けたソフトバンクのムーア投手も、会話の内容はよく分かりませんが「You Know」という言葉を連発していました。

会話などの途中でなかなか言葉が出ないときについつい出てしまい、それを多用すると聞きづらい表現になる言葉があります。日本語では、「えっー」「あー」「まあ」「なんか」などです。英語だと「You Know」「Well」「Let Me See」「But」などがそれに当たります。

なくて七癖という諺もあるように、誰もそれぞれ話し方に癖があります。それが個性という程度であれば良いのですが、どうも聞きにくいと思えば、万人が聞きやすいように改善する必要があります。その癖を他人から指摘されることは少ないので、自らが自らの癖に気づき矯正していく努力が大事だと考えます。染みついた癖はなかなか直りませんがその努力が大事です。

さて、聞きやすく伝わりやすいしゃべり方としては、短い表現で分かり易い表現を使いたいものです。仕事でもプライベートでも、やたらと話は長いけれど、何を言いたいのか、結論は何なのかが分からない人が少なくありません。このような「だらだら表現」を治すために、癖にしたい魔法のような表現方法があります。それは、次の3つです。

1つに目は、「結論から言えば……」と結論から言うことです。例えば、顧客からの苦情処理のことを上司に報告するケースで考えてみると、話の下手な人は、「朝10時位に電話で連絡があって、それは……だから……つまり……」などと報告します。上司が聞きたいのは時系列の事柄ではなく、苦情処理が上手くいったのかどうかです。話のうまい人はズバリ、結論から言います。そのことにより、上司は安心します。その後に、その経過や対処法を報告します。すると話は短くなり、上司との関係も良好に行きます。

2つ目は、「伝えたいことは3つあります」と言う表現です。これはナンバリングという手法ですが、複数のことを要領よく伝えたいときに有効です。すべての事柄を3つに要約して行く手法です。「伝えたいことは3つです。言いたい事柄の1つ目は○○○です。2つ目は△△△です。3つ目は□□□」と言ってから、それぞれの事項を話すか、それぞれの事項の頭に「1つ目は」「2つ目は」「3つ目は」と言い項目を話すことも有効です。この手法を用いることで、自分の言いたいことの論点整理になるし、聞く側にもスムーズにその内容が入ってきます。

3つ目は、「話は3分間」でまとめることです。3分あれば、かなりの情報量を聞き手に伝えやすくなります。朝礼の一言スピーチなどで、砂時計などを用いて上記の2つのことを織り交ぜて訓練すれば相当の訓練になります。そのことの応用として、与えられた時間以内で話を終えることにつながります。プレゼンや営業トーク、講演会などでも役に立ちます。

菅新内閣の予算編成について考える

新型コロナウイルスの影響で日本経済はかつていない脆弱さを露呈しました。その要因となったのが新自由主義的思考です。新自由主義的思考とは、政府などによる規制の最小化と自由競争を重んじる考え方で大企業と富裕層の利潤を最大化し、社会保障など公的サービスを切り捨て、自己責任を押しつけるものです。

この考え方の弊害の具体例がコロナ禍で必要とされた保健所の数です。1990年には850ヶ所だったものが、2020年までの30年間で469ヶ所と約半数近くに激減しました。この減少が、PCR検査が十分に行われなかった要因のひとつです。

この思考は中曽根元首相から始まり、歴代1位の在位を成し遂げた安倍前首相に脈々と受け継がれ、菅新首相もその後継者として「自助・共助・公助」を掲げ、露骨に新自由主義剥き出しの路線を継承しています。

そんな菅内閣が発足して初めての予算編成です。その内容と特徴は菅政権の今後を占うような内容になっています。

各省庁が提出した21年度の概算要求・要望の合計額は約105.4兆円で、100兆円を超えるのは7年連続です。新型コロナウイルスへの政府対応が優先され、提出締め切りは例年より1ヶ月遅い9月末となりました。

要求額を算出する基準も簡単にして、前年度の当初予算がベースになっています。コロナ対応など「緊急な経費」は別枠で、上限なく要望が出せます。その結果、コロナ対策費は、現時点で金額を示さない「事項要求」が多いことが特徴です。

事項要求とは、各省庁が概算要求を行う際に個別政策の予算要求額を明示せず、項目だけ記載することを言い、政策が細部まで決定されておらず予算額が不明な場合などに用いられます。その結果、年末に閣議決定される予算案は歳出総額が過去最大を更新する見通しです。

内容をみると無駄な公共投資は相変わらず続いており、人口減少と都市と地方の格差はますます開き、大手ゼネコンばかりが超え太るような内容になっています。

国民に対する監視の強化や個人情報の漏洩が危惧されているマイナンバーカードの普及促進のために1,451億円を要求しています。それにより、健康保険証、運転免許証、国税、年金などの情報を無理やり紐付けしようと画策しています。

コロナ対策では、行政検査としておこなうPCR検査の半額を自治体が負担していることへの解決策を提示していません。

中小企業対策費は、事業者の経営の下支えや支援ではなく、事業承継等の新陳代謝に力点が置かれています。日本の企業の99.7%、雇用の7割を占める中小企業が光となるような予算規模になっていません。逆に中小企業の生産性を高めるためにその再編を積極的に打ち出している菅政権の姿を投影した予算です。

防衛費は総額5兆4,898億円で前年度予算の3.3%増です。辺野古新基地建設経費やイージス・アショアの代替経費は事項要求になり、具体的な予算を計上しないでも9年連続で前年を上回り7年連続で過去最大を更新しています。新たにステルス機F35を6機購入し666億円を計上しています。これにより、後年度負担額は5兆4,585億円にものぼり予算が固定化しています。

無駄遣い?新センチュリーが議長車に!

山口県が今年4月に貴賓車として2,090万円で購入した最高級車「センチュリー」をめぐって、県民から多くの批判を呼んでいます。また新聞報道もされ、TVのワイドショーにもとり挙げられ、村岡嗣政知事も対応に苦慮しています。新聞報道からこの購入の経緯などをまとめました。

この黒塗りのセンチュリーは5リットルエンジンに車内にはスピーカー20個、後部座席にはもみほぐしのマッサージ機能や11.6インチのモニターを備えています。

昨年度までに県が所有していたセンチュリーは3台、2002年に貴賓車として1,061万円で、07年に議長車と1,061万円、13年に副知事車として1,260万円でそれぞれ購入されています。

県は今年度からこの3台を一括して「皇室対応用車両」に見直して、一体的に管理する体制に変更するとしていますが、旧貴賓車は運転日誌が残る直近3年間で走ったのは13日間だけです。うち皇族の利用は18年10月に山口市で開催された全国都市緑化祭で秋篠宮ご夫妻を運んだのが最後となっています。

また、現時点で皇室からの来県予定はなく、「皇室から貴賓車の所有を求められたことはない」ということです。現在、県が所有する2台のセンチュリーは、議長と副議長の送迎等のために使われ続けています。

一方、知事の公用車は防府市に工場を構えるマツダ大型CSV(スポーツ用多目的車)のCX-8、購入価格は371万円です。他県の知事車は、セダンではなくミニバンのトヨタ・アルファードなどが主流となっており高級車よりは、より機動性が良いものになりつつあります。

県によると、新型コロナ禍で大幅な税収減が見込まれることなどから、現時点で来年度の財政不足は70億円を見込んでいます。

こうしたなかでのセンチュリー購入は、議案の議決権を握る議会への忖度ではないかとの声も出ています。知事車の5.6倍もする高級乗用車の購入は、無駄遣いのそしりを免れません。

知事は記者会見で「これまでの運用実績から従来通りとしたが、様々な観点で十分な比較検討を行う必要があった。今後は十分な精査をしていきたい。県民の皆様からの批判があるのも承知している。」との認識はありながら、売却して安い車に買い替えるかについては「考えていない。いろいろなご意見があると思うが、購入したものをしっかり運用し、有効活用をしていきたい」と苦しい胸の内をさらしています。

結局のところ、今回のセンチュリーの購入は、「皇室をだしにして、議長車を新調した」とみられても仕方がありません。

しかも、この20年間、県予算の説明資料に4台のセンチュリーの購入にかかわる記述はまったくありません。議会、県民にまったく説明しないまま、高価な買い物を続けていた県の姿勢が問われています。

識者も「財政難のなか、時代錯誤も甚だしい。」「黒塗りの公用車を権威やステータスの象徴とみる時代はもはや終わった。」「合理性を欠く支出と言わざるを得ない」とコメントしています。

その費用は国民の税金から~中曽根康弘元首相の葬儀費用について思うこと~

東京新聞9月30日の報道では中曽根康弘元首相の葬儀費用のことを以下のように報じています。一部を抜粋して紹介をします。

『故中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬の経費として政府は約9,600万円を支出する。故人を悼むのは当然としても、新型コロナ対応で財政が逼迫する中、1億円近い税金の支出は妥当なのか。

昨年11月に亡くなった中曽根氏の内閣・自民党合同葬は10月17日、都内のホテルで行われ、菅義偉首相が葬儀委員長を務める。当初は今年3月に予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、延期されていた。

「国葬令」が廃止された戦後、首相経験者の葬儀形式には明確な基準がなく吉田茂氏(1967年)は内閣主催の「国葬儀」、佐藤栄作氏(75年)は内閣・自民党と国民有志の共催で「国民葬」が行われた。

内閣・自民党合同葬が行われるようになったのは大平正芳氏(80年)からで、以後、岸信介、福田赳夫、小渕恵三、鈴木善幸、橋本龍太郎、宮沢喜一の各氏が合同葬の形式で行われてきた。

費用は内閣と自民党の折半で、近年では、橋本氏(2006年)の合同葬に7,700万円、宮沢氏(07年)には7,696万円が政府から支出されている。

中曽根氏の場合、約2,000万円が上積みされた形で、加藤勝信官房長官は記者会見で「延期前に比べて少し増加しているが、葬儀は簡素にしつつ、コロナ対策に万全を期す必要がある。そういう観点から積み上げられた必要最小限の経費」と説明している。

ただ、中曽根氏の合同葬には一般参列は想定されておらず、内外からの弔問も極めて限られる。

新型コロナ対策に万全を期すというが、コロナ禍で国民が苦しい生活を強いられ、国の財政も厳しさを増す中、1億円近い支出が妥当か、合同葬の規模や在り方を含めて検討の余地はなかったのか。

「前例主義を打ち破る」と菅首相は言っていたが、合同葬は先例などを総合的に勘案したという。期待外れの印象は否めない。』

葬儀にかかる予算総額は約1.9億円です。それを主催する内閣と自民党が折半する形で捻出します。内閣府の負担は一般予算の予備費から支出するものなので、純然たる税金です。さらに自民党の負担も、その原資の大部分は政党交付金なので、これも広い意味では国民の血税となります。

東京新聞も報じているように、コロナ禍で財政が逼迫するなかの支出は、国民的な合意が得られているのか極めて疑問です。

内閣府によれば、首相経験者でも必ず合同葬の対象になるわけではなく、生前の功績などを総合的に考慮して決まるそうですが、納税者の血税を投ずるのであれば、その税はともかく、明確な基準や説明があって然るべきでしょう。

さらに、国民一人当たり250円、総額300億円を超える政党交付金は、支持もしていない政党へ渡されています。

他国と比較しても、ドイツは日本の約2分の1の174億2,300万円(上限として政党収入の半分をこえてはならない)、フランスは日本の約3分の1の98億円、イギリスは、日本の110分の1の2億9,200円、アメリカ、イタリアではこの制度はありません。しかも使途が制限されていません。額も内容も世界でも異常な「バラマキ」と言われています。

この制度についても、「政治とお金」の問題として本当にこの制度が良いのかどうか改めて考えて見るべきではないのでしょうか。

持続化給付金~税理士が不正給付に関与か~

2020年9月25日の税理士新聞(会計事務所のための実践的経営情報誌)に信じられない記事が載っていました。あきれるというか空恐ろしい内容だったので全文紹介します。

記事の内容は次の通りです。

1800申請で5億円取得 沖縄県那覇市に事務所を構える50代の男性税理士が、持続化給付金の不正取得に関して約5億円を手数料として得た疑いがあることが分かった。複数のメディアが報じた。既に沖縄県警は事務所を含め関係先4ヶ所を家宅捜索。任意の事情聴取も行い、県内で多発している不正受給の操作を進めている。

税理士の男性は6月から7月にかけて、事業をしていない人たちに虚偽の確定申告書類などを用意させて、最大200万円の持続化給付金の虚偽申請を行っていた。関与先の従業員一人ひとりを独立した事業主に見せかけて多額の給付金を受け取った疑いもあるという。作成に関与したのは給付金の申請代行約700件、確定申告書1,000件で、着手金や手数料の名目で給付金の3割程度を受け取り、不正に取得した額は約5億円に上るとみられる。

男性は11日、琉球タイムズの取材に応じ、大量の申請代行を行ったことを認めた上で「なかには不正な申請も含まれたかもしれない」述べたという。

神津会長「言語道断」この報道を受け、日本税理士会連合会の神津信一会長は11日、ホームページ上で「持続化給付金等の適正な支援について」とするコメントを発表した。「給付金の不正受給は犯罪行為であり、税理士にはその未然防止の役割も期待されているところ、税理士自らが不正に加担することは言語道断」と強く批判し、「各税理士に対して改めて法令遵守を強く要請する」と呼び掛けた。』

どの業界でも多かれ少なかれ、嘘をついたり、ごまかしたりして法令遵守をしていない輩が少数だと思いますがいることは否めません。しかし、多くの税理士は不正に加担することなく、むしろ不正受給の未然防止に寄与しています。

当事務所にも、まったく所得税の確定申告をしていなく、申告に必要な証憑書類も残していないが、「友人たちが簡単に持続化給付金の受給ができているのでして欲しい。」と相談に来られましたが、「適正な申告をしないと手続きできません。」と説明したところ、他を当たってみるということがありました。

また、個人の白色申告者で「売上が1000万円を超えたので消費税の申告をしないといけないと知りながら、収支内訳書を付けずに単に所得金額を適当に申告された人」が来所され相談しました。事務所の方針として、「過年度分の適正申告を消費税、所得税ともしないとお手伝いはできませんよ。」とお伝えするとこの方も他の税理士を探すと言われました。「他の税理士も同じように答えますよ。」と念のためお伝えしておきました。

それにしても那覇の税理士は、税理士全体の社会的信頼を失墜した犯罪をこれほど多くやったことにあきれてものが言えません。発見されないとでも思ったのでしょうか。仮に発見されなかったら「得べかりし利益」はどうしたのでしょうか。困った人がいたものです。

カタカナ用語と日本語の国際化~異文化をどのように表現するのか~

新聞紙上のアンケート調査によると、近頃のカタカナ用語は理解できるかという質問に対して「いいえ」が72%を占めていました。その理由としてダントツの1位は、「意味がわからずモヤモヤする」2位は「漢字やひらがなで翻訳すべき」でした。

そういえば、税務署の問答集などがいつの間にか「Q&A」から「FAQ」に変わっていることに違和感を覚えたのは私だけではないでしょう。多くの税務署員に聞いても、変わった経緯や意味を理解していた人は1人もいませんでした。おそらく、財務省のキャリアが変えたものだと思いますが、上記アンケートの3位にある「気取った感じでイライラする」ことは否めません。

「Q&A (question and answer)」は日本語に訳すと『質問と回答』という意味で、ひとつの質問に関してひとつの回答が載っています。一方、「FAQ」は日本語に訳すと『よくある質問。(frequently asked question)』という意味で、質問だけでなくそれに対する回答も載っています。変えるのであれば、その意味や経過を問答集などに載せたら違和感の減少につながると思うのですが。

さて、漢字やひらがなで表記してほしいカタカナ用語の上位5位を上から並べると、インキュベレーション「親鳥が卵を抱く、転じて企業支援」、アジェンダ「議事日程、行動計画」、サブスクリプション「雑誌の予約購読」、オーバーシュート「度を超す、新型コロナが蔓延してきて感染者(患者)の爆発的増加」、インスタレーション「芸術的空間」の順です。

私見では、その意味を括弧書きなどしてそのままカタカナで表記した方がシックリいくのではないかと思います。

一方、日本語が国際用語になっているものもたくさんあります。私が週1回レッスンを受けている英語の先生が「信じられない」のダントツ第1位にあげたのが「Karoshi」過労死でした。その他、ネガティブなものとして「Hikikomori」引きこもり、「Otaku」おたくなどです。文化の違いからは「Susi」寿司、「Sake」酒、「Judo」柔道、「Tempura」天ぷらなどがあります。興味のあるものでは「Mottainai」もったいない、Anine「アニメ」なども使われています。

英会話レッスンで使っているテキストの中に英訳できないものの代表として「行ってきます」と「行ってらっしゃい」があります。もし英語で無理やり表現すると「行ってきます」は「See you later」、「行ってらっしゃい」は「Bye」になると記載されていました。

英語は世界各国で使われていますが、日本語は、島国である「日本国」でしか使われません。私は、英会話の勉強をする中で、多くの文化の違いを感じているところです。

今後、インバウンドを数多く迎えて「観光大国」にするという国家戦略がありますが、文法などもまるで違う英語を今の若者には身につけてもらい「バイリンガル」つまり「2つの言語で話せる能力を持つ人」になってもらうことが大事だと思います。そうでないと、否が応でも「グローバル化」している国際社会に通用しなくなるでしょう。

成長しない国ニッポンとアジアの世紀~内部留保のため込みすぎが成長を妨げているのか?~

20世紀は「戦争の世紀」と言われましたが、21世紀は「アジアの世紀」と呼ばれています。 それは、新しい世紀に入ってアジア諸国が大きな発展を遂げているからです。

20世紀のアジアの経済秩序は日本が握って成長を遂げてきましたが、一極から多極へと変容しています。この要因は、①日本の経済成長が停滞していること、②日本を除くアジア諸国が豊かになったことで、その国内市場が拡大し地場産業が台頭するようになったこと、③グローバル化が進展し、アジア諸国がものづくりになくてはならない「世界の工場」となったことなどが考えられます。

因みに、2000年のアジア主要国の一人当たりのGDPのランキング(単位千ドル)の上位5カ国を上げると、1位日本38.5、2位香港25.6、3位シンガポール23.8、4位台湾14.9、5位韓国11.9でした。

それが2016年になると1位シンガポール53.0(222.6%増)、2位香港43.5(170.2%増)、3位日本38.9(101.0%)、4位韓国27.5(230.0%)5位台湾27.5(230.0%増)と日本は3位に転落し、伸び率はほぼゼロです。

伸び率上位5カ国は、1位中国の846.0%、2位ベトナム540.5%、3位インドネシア414.2%、4位タイ290.9%、フィリピン277.2%となっています。もっと新しいデータがあれば、中国の伸び率はさらに上昇していると思われます。

この数字を見ると、日本がアジアの成長に乗り遅れた「成長停滞国」となっていることがわかると思います。その原因のひとつが、日本がアジア諸国を部品の供給基地としていることと、もう一つが企業の内部留保を増やし新規の投資を控え、さらに労働力を正社員から派遣等に切り替え人件費を相対的に抑えていることにあると考えられます。

このコロナ禍でも、大企業の内部留保は増え続けています。財務省が発表している法人企業統計から計算すると、2020年1月から3月までの内部留保の金額は487.6兆円と過去最高になり、この1年間で40兆円近く積み増しています。その理由は、2001年をピークにした人件費の削減と1997年から始まった法人税の減税によってもたらされたものです。

この内部留保は、新たな設備投資に使われ雇用を生む「健全な内部留保」と租税回避地などに金融投資をしたり、自社株買いをして雇用や市場の拡大につながらない「不健全な内部留保」がありますが、日本の大企業の内部留保は「不健全な内部留保」となっています。

現金・預金と売却可能な有価証券を併せたものを手元流動性と言います。財界は、「手元流動資金はすぐに使える性格ものではない」言っていますが、日経新聞によると日本の手元流動性が総資産に占める比率は12%で、世界平均企業の6%の倍にあたります。

この資金を臨時的にコロナ対策資金として課税をすることが必要ではないかと思います。この内部留保課税は台湾や韓国でも実施されています。「富の偏在」をコロナ禍で破綻寸前の企業の救済や職を失ったり、大幅に賃金が下がっている人たちに給付金としてお金の循環を作り出して行くことこそ、「成長をする国」への回帰につながり「税の正義」にもかなうのではないでしょうか。