月別: 2017年11月

酒税のあり方について考える

前回「たばこ税」について言及いたしましたが、今回は「酒税」について少し考えてみたいと思います。

「麦芽比率などで異なるビール類の酒税は平成32年10月、35年10月、38年10月の3段階で350ミリリットル缶あたり54.25円に一本化するといった方向です。ビールは現在の77円から減税に、発泡酒は46.99円、第3のビールは28円から大幅な増税になります。」

※産経ニュース 2016.12.8 より引用

ビールの酒税は、高級酒並です。それは、明治初頭に冷蔵技術がないときにそれを冷やすために多くのコストがかかったので、その当時は確かに「高級酒」であったかもしれません。しかし、現在は冷蔵庫のない家を探す方が難しい時代ですが、財務省は一向に税率を下げませんでした。しかし、今度は、ビール各社が競い合って酒税を逃れるために技術開発してきた発泡酒や第3のビールといったものを一本化するという大転換をします。税の原則の累進性とは、反対の方向性です。個人的(あることを機に3年半の長きにわたって現在も禁酒中ですが。)には、その節操のなさと酒税の高さに問題があると思います。海外と比べてもドイツの20倍、アメリカの12倍の高さになっています。庶民のささやかな楽しみであるビールは、ドイツ並みとはいいませんが、せめて半分程度に下げたらどうでしょうか。

「日本酒とワインの税額もそろえる方向です。日本酒は現在、350ミリリットルあたり42円、ワインは28円ですが、32年10月と35年10月の2段階で35円に一本化する方針です。製造方法が同じ醸造酒に区分されるのに税額差があると、日本酒の生産者から反発が出てきたことがその背景にあります。また、手軽な価格で人気のチューハイは350ミリリットルあたりの税額が28円ですが、38年10月に35円に増税することになっています。」

※産経ニュース 2016.12.8 より引用

私の酒税に関する考え方は、ビールなども含め、すべて累進課税にしたら良いのではないかと思います。国税庁の利き酒の専門官、ソムリエなどのプロの利き酒の専門家、醸造所の杜氏など、自薦・他薦を問わず任意で選んだ「われこそは利き酒名人」でチームを組んで、どの種類のお酒にもその味の良さで等級をつけ、高い等級のものには高い酒税を、低い等級のものには低い酒税を酒蔵から出るときに課税をし、どの販売所でも売価も仕入れ価格も同額で、愛飲家がそれをインターネットも含めどの小売店、大型スーパーコンビニで購入しても同じ値段にすれば、①酒税の確保ができる、②醸造技術の向上に資する、③零細小売店の救済にもなるのではないかと思います。

「自由競争を阻害する。」「規制は緩和・撤廃と矛盾する。」という批判が聞こえてきそうですが、「等級選定の公平性」「透明性」を担保すれば可能ではないかと考えます。このことにより、新しい酒文化に繋がっていくのではないでしょうか。

商売の極意は「始末」「才覚」「算用」~「わろてんか」を観てなるほどと思った教え~

私の気分転換の1つがNHKの朝ドラを見ることです。もちろん朝8時から始まるのでDVDに毎日録画しています。忙しいときは、1週間まとめて見るときもあります。

今年前半の有村架純主演の『ひよっこ』はドラマの流れも、主題歌の桑田佳祐作の「若い広場」も、ものすごくテンポが良く視聴率の尻上がりでした。

その後を受け、10月から始まったのが『わろてんか』です。この物語は、吉本興業の創業者・吉本せいがモデルとなった実話です。明治後期の大阪を舞台に、「笑って生きる」ことこそが自分の人生の希望だと信じるヒロイン・藤岡てん(葵わかな)が、夫の藤吉(松坂桃李)とともに、笑いを商売にするために奮闘する姿を描くストーリーとなっています。

藤吉は、米問屋の跡継ぎになる設定でしたが、物語が進むと米問屋もなくなる羽目になりますが……

その米や問屋の家訓について藤吉の母親役・啄子(鈴木京香)が語るシーンに共感しました。

かの米問屋の額に書かれてある「船場の商人」の教えについて、鈴木京香が松坂桃李に語るシーンです。

その教えとは「始末」「才覚」「算用」です。

「始末」とは、節約のことではない。ムダな出費をするのではなく、必要なときに生き金を思いっきり使うということだす。

「才覚」は、どこに商いの商機があるか見極め、誰もやらないことをやること、あんたの「団子」や「カレー」だす。この「団子」や「カレー」はドラマを観てない人にはわからないかもしれませんが……

「算用」とは金勘定をすることではのうて、帳尻を合わせることや。損して得取れいうこと。

「始末」と「ケチ」は違う。これがホンマの「始末」の極意だす。

こんな件があります。今でも、通用するカタカナ用語の「マーケティング」に通じるものではないでしょうか。

たばこ税のあり方について考える

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、たばこ税は国税と地方税の両方に課税されかなり多くの税収になっています。さらに、たばこ特別税は、旧日本国有鉄道が、JRとして民間化されたときに処理されなかった国鉄清算事業団の債務の返済にも充てられています。

ここ最近、紙巻きたばこの規制が急速に進んでいます。「徹子の部屋」という長寿番組がありますが、時々追悼番組をしています。以前はそのトーク番組で堂々とゲストがたばこを吸っていましたし、新幹線などの列車でも自由にたばこが吸えていました。

規制の理由としては、紙巻きたばこを吸う人だけでなく、そのそばでその煙(副流煙)を吸う人が、肺がんだけでなくその他の健康被害を及ぼし、結果的に医療費を押し上げるからだといわれています。

そこで「健康被害が少ない」と言うことで、加熱式たばこが爆発的に売れています。加熱式たばこは、タバコの葉を加工したスティックやカプセルを専用機器に差し込んで加熱し、蒸気を吸う方式のものです。現在、国内たばこ市場の1割超を占めるとされています。 紙巻きの税金は1本あたり約12.24円で、一般的な1箱20本入り(440円)の場合、価格の56%にあたる約245円がたばこ税ですが、これに対し、加熱式1箱の価格は420~460円と紙巻きと同水準ですが、税金はフィリップ・モリスの「アイコス(英語でIQOS、『私は普通のたばこをやめます』の頭文字です)」が200円前後、日本たばこ産業(JT)の「プルーム・テック」が約34円と安い税金になっています。

※朝日新聞デジタルHPより引用

また、日本肺がん学会で産業医科大学教授の大和先生は「加熱式たばこは空気を汚さないといいますが、虚偽です。安全性についても有害物質を吸引し、呼出します。本人だけでなく他人にも害をもたらします。加熱式たばこを禁煙の対象外にする自治体や飲食店もありますが、禁煙の場で使用は禁止すべきです。ニコチン依存症も解消されない」とコメントされています。

この加熱式たばこについて、政府は増税する方向で検討に入りました。従来の紙巻きたばこより税金が割安なため、同水準にそろえて税収の落ち込みを防ぐためです。今後、与党や関係業界との協議を本格化させ、年末にまとめる来年度の税制改正大綱に盛り込む方針だそうです。増税の程度によっては、商品の価格にも影響を与える可能性があります。

増税には一定の理屈が要ります。愛煙家への増税と国鉄清算事業団の借金返済にどんな因果関係があるのでしょうか。その点では、愛煙家は国に対してもの申すべきですが、「百害あって一利なし」といわれるたばこを将来なくす方向で考えなくてはなりません。そのためには、禁煙外来をもっと充実させたり、有害物質としての啓蒙も大事です。しかし、大病院のように周辺施設も含めて全面的に禁煙措置をとると小さなスナックなどで来店客数が少なくなるといった声も出てきます。

私見ですが、紙巻きたばこの1箱当たりの標準的な小売価格440円を、フランス並みの一律1,000円にしてみたらどうでしょうか。どうしても欲しい人はそれでも買うでしょうから、そんなに税収も落ちないのではないかと思います。それよりも、私や、私の義理の息子のように30歳で「たばこと縁を切る人」の数が増える方が良いのではないかと思慮します。

 

請願書の活用~これで税務調査が無くなった~

立正大学法学部客員教授でもある浦野広明税理士の著作の中(例えば納税者の権利と法など)に請願法を使って「納税者の権利」を守ることの実際の文章主張と実践例が記載されています。それまで、請願法についてもあまりくわしく知らなかったのですが、初めて納税者とともに書いた請願書が威力を発揮しました。

これを機会に、課税庁のあまりにも著しい法令違反や常識外れの行為についてこの文書を書くことによりその効果を数々得てきました。この税務調査は、無予告で臨場し納税者が「やめてくれ」と言ったにも関わらず強引な調査を進め結果として納税者の体調が悪くなり、経営していた飲食店の売上も落ちるなど人権を無視したあり方に対して出したところ、結果として税務調査そのものが無くなった事例です。

請願法や請願書を知らない税理士や納税者にその元本を一部改編して見本として作成したものです。活用されたい方は、チャレンジしてみて下さい。ただし、課税庁側の不法等が明確であり、納税者がそうした行為に対して怒りを感じ、代理人として税理士が関与するならば、その納税者と一体となって本気でたたかう姿勢がないと功を奏しないことも付言しておきます。

 

【  見   本 】

 

○○税務署長殿

下記の事実により日本国憲法第16条および請願法に基づく請願をする。また、請願法5条による誠意ある対応を求める。

 

1 事実経過

平成○○年○月○日(火)午前8時30分頃、○○税務署個人課税第2部門、統括国税調査官、○○○○氏(以下、統括官という)他1名の税務署員が来訪した。

玄関に対応に出た妻に対し税務署員である旨を告げ、2人は身分証明書を提示した。妻は2人に対し「主人は毎日明け方まで仕事をしていて、まだ2時間程しか寝てないので困る。」と言ったが、統括官は「ご主人の名前で申告しているので、起こしてもらえませんか。」と言った。

私は、たった今寝ついたばかりなのに何が起きたのであろうかとやっとの思いで起き上がり、パジャマ姿のまま玄関に出て「まだ寝たばかりなので今日は止めてもらえませんか。」と言うと、統括官は「ちょっと現状を見るだけなので見せてもらえませんか。」と答えた。

私が「何で昨日事前に電話をくれないんですか?そうすればもう少し早く寝るのに、このまま起きて夜中の3時まで16時間働かなくてはいけないのだから、そんな事をしたら、体を壊すから今日は止めてもらえませんか。」と言うと、統括官は再び「いや、ちょっと現状を見るだけですから。」と現状を見たらすぐ帰る様な事を言うので、私は「じゃあ、店の方へどうぞ。」と1階の店の方へ行ってもらった。

そこで、また私が「何で事前に電話をしてから来ないの。」と言うと、統括官は「すぐに帰りますから、ちょっとつり銭だけ見せてもらえませんか。」と、つり銭を見せれば帰る様な事を言いながら、その後は次々と「引出しの中を見せてもらえないか。」「帳簿を今つけている所を見せてもらえませんか。」などと要求。私が「家の中はちらかっているのでだめです。」と言っても「ちょっと見るだけですから。」とうまい事を言って家の中に入り込み、妻のハンドバックを半ば強制的に見たり、その間私が10回以上大声で「今日は帰って、少しでも寝かせてよ。」「30分でも1時間でも横にならないと体を壊すから。」と何回も何回も必死で訴えても無視して調査を約2時間余り続行した。

私はこのままではいつまでも帰りそうもないので「上司の方にお願いするから上司に電話してほしい。」と言っても無視してさらに調査を続行された。若い方の署員は、私が何回も「何をやっているんだ。早く家から出ろ。」と大声で言ってもまったく出る様子もなく、銀行通帳等を写しているので、私が「とにかく上司に直接お願いするから、これから一緒に税務署の方へ行きましょう。」と言っても行く様子はなく、私が3回4回と「上司に直接お願いする。」からと繰返すとしぶしぶ税務署に行く事になり、統括官は「上司に連絡しますので。」と言い3分位電話で打ち合わせをした後、「上司の○○に連絡しましたのでどうぞ署に来てください。」と言った。

税務署で午前10時50分頃上司の○○氏に面会。私は「何でこんな人権を無視したことをするのか。」と、激しく抗議した。○○氏は私から事情を聞き「確かにやりすぎた様だ。」と認めた。また、統括官も「引きずってしまった。」とやりすぎを認めた。さらに○○氏は「私は、ここまでひどいやり方をせよとは指示をしてない。」とも言及した。私は「こんなやり方は間違っていると思うので中止するか、延期してほしい。」とお願いしたが「それは出来ない。」と断られた。その間約30分程、私は「こんなやり方は、人権を無視しただけでなく、すぐ帰る様なことを言って人をだまして、サラ金の取立てよりひどいじゃないですか。」と抗議し、開店時間も過ぎていたので帰宅した。

その日は、肉体的にも精神的にもほとほと疲れたので店を休めば良かったのかもしれないが、せっかく当店で食事をするのを楽しみに来店してくれるお客様のことを考えるとそれもできず、そのまま仕事を続けました。しかし、夜になると立っていることもできなくなり、店をやむなく早仕舞いしてしまった。翌日も体調が極めて悪く店も早仕舞いを余儀なくされた。翌々日は体調が更に悪くなり三日も続けて早仕舞いせざるを得なくなった。

税務署員はこんな人権を無視したやり方をしても良いのか。そのために、体調を崩してとうとう店休日に医者に行く羽目にもなった。その病状を証するために医師の診断書を添付する。

また、私が体調を崩したことにより、この3日間店の売上げも減少した。この経済的損害をどのように考えているのだろうか。

 

2 請願事項

国税庁の「税務運営方針」では「調査方法等の改善」として次のように述べている。

「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものであることに照らし、一般の調査においては、事前通知の励行に努め、また現況調査は必要最小限にとどめ、反面調査は、客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。なお、納税者との接触に当たっては、納税者に当局の考え方を的確に伝達し、無用の心理的負担を掛けないようにするために、納税者に送付する文書の形式、文書等をできるだけ平易、親切なものとする。」とある。

しかし、今回の税務調査は、納税者が再三再四にわたり、体調不良を訴え「調査の延期を求めた。」にもかかわらず、長時間に及ぶ調査を続行したためについには体調を崩し医者への通院を余儀なくされ、しかもそのことにより店の売上げが減少していることは紛れもない事実である。

このことは、国税庁の「税務運営方針」からも大きく逸脱していると思慮される。

なぜ、事前通知がなかったのか、なぜ、「税務運営方針」から大きく逸脱するような、また日本国憲法第11条に定められた「基本的人権」を蔑ろにしたような調査が強行されたのか、その理由について速やかで、かつ誠意ある文書での回答を請願する。

 

平成○○年○月○日

請願人 ○○市○○町○丁目○番○号

○○○○

代理人 山口市小郡下郷1256-16-101

税理士法人総合会計

税理士 金巨 功

保険料と保険税の違いについて ~あなたの市町村はどちらでしょうか?~

国民健康保険の保険料は、「保険料」と呼ばれる場合と「保険税」と呼ばれる場合の2通りあります。その違いはどこにあるのでしょうか?

[1] 保険料と保険税、基本的には同じ

国保の運営者である保険者(市区町村)は、保険料と保険税のどちらかを選ぶことができます。国民健康保険法には「国民健康保険に要する費用を世帯主から徴収しなければならない」と規定されていますが、国民健康保険料と国民健康保険税のどちらの方式にするかは、保険者の裁量とされています。つまり、同じ国保という名称であっても、地域によって保険料のところと保険税のところが存在します。保険料も保険税も、基本的には同じです。どちらも市区町村に保険料(税)として納めるものです。また、受けられる医療も同じであり、通常通りに保険料を納めて医療を受ける場合は、保険料でも保険税でも違いはありません。では、違いはどこにあるのでしょうか。

[2] 関連する法令が異なる

保険料と保険税とでは、関係する法令が異なります。保険料の場合は国税徴収法、保険税の場合は地方税法により徴収されます。とは言え、これは私たち国民の側からするとあまり違いが分からないというか、これによって金額が「高い」か「安い」かの差があるわけでもないので、どちらでも大して変わりはありません。しかし、実際には保険料よりも保険税を採用している方が多いです。それには以下の3つの理由があります。

(ⅰ) 保険税は時効が長い

保険料と保険税で異なるのは、時効(消滅時効)の長さです。関連する法令が異なるため、時効に差があるのです。

国民健康保険料・・・徴収権の消滅時効 2年

国民健康保険税・・・徴収権の消滅時効 5年

[2]で関連する法令が異なると述べたように、保険料と保険税では定められている時効が異なっています。

(ⅱ) 保険税は差し押さえの優先順位が高い

これも関連法令に基づくものですが、保険料(税)を滞納して差し押さえになった場合は、優先順位の高いものから弁済を受けることができます。

国民健康保険料の優先順位・・・住民税の次

国民健康保険税の優先順位・・・住民税と同じ

このように、保険税の方が優先して弁済を受けることができます。あくまで滞納して差し押さえになった場合の話なので実際にこの順位が生きるのは稀なケースではありますが、法令上はこのようになっています。

(ⅲ) 保険税は遡って請求できる期間が長い

国保の保険料(税)は、加入の届出をした日からではなく資格を取得した日から課税されます。この届出が遅れると遡って課税されることになります。このとき、過去の滞納分に対して請求できる上限年数が、保険料と保険税で異なります。

国民健康保険料の遡及賦課・・・最大2年

国民健康保険税の遡及賦課・・・最大3年

 

以上のことから、保険税方式の方が国保の運営者(市区町村)にとって有利なので、保険税方式を採る方ところが多いわけです。

加入者側としては、ちゃんと保険料を納めている分には差はありません。滞納したときに違いが出てくる可能性がある、ということになります。

※「国民健康保険ガイド 国保の手続き・保険料・節約術などをわかりやすく解説」より引用

「虫の目」「鳥の目」「魚の目」

「虫の目」とは、複眼思考、つまり「近づいて」さまざまな角度から物事をみることです。

「鳥の目」とは、高い位置から「俯瞰(ふかん)的に全体を見回して」物事を見るということです。

「魚の目」とは、潮の流れや干潮、満潮という流れを見失わないという意味です。

一般論ですが、『情報』は、近づいてさまざまな角度から眺め、そして理解する必要があります。

組織で言えば現場に出かけ、直接『情報』を仕入れるということです。そのとき、一面的な見方をせず、「複眼的」に見るということが「虫の眼」です。

しかしながら、接近しすぎると全体が見えなくなるので一度距離を取り直して、地域や業界という大きな枠からその『情報』を見直す行為が「鳥の目」です。

そして、その『情報』を理解するときに、時代や社会の流れの中で考える必要性があります。それが、どのような変化の中で発生したのかをモニタリングすることが「魚の目」となります。

経営や組織運営に関して、経営者や経営幹部はさまざまな判断を行わなければなりません。あふれかえる『情報』の中から必要なものを集め、分解し、分析し、理解を重ね、次の一手を繰り出していかなければなりません。

その時に、『情報』を「虫の目」で [多角的に眺め]、「鳥の目」で[判断を下し]、「魚の目」で[決断を行う]、というプロセスが必要になります。この「プロセス」は組織の大小にかかわらず「トップ」にとっては必要不可欠な重要な素養になります。

ところが、現実の社会ではどうでしょうか?日産自動車、スバルの相次ぐ無資格検査、神戸製鋼所のデーター改ざん・隠蔽体質など、これまでの日本の「ものづくり」というブランドを揺るがす事件が多発しています。企業の不祥事をあげれば枚挙に暇がありませんが、「自分の会社だけ儲かれば良い」という「新自由主義的」な思考と「規制緩和」がこの国の将来に大きな毀損を起こすのではないかと心配をしています。

近江商人の教えにある「三方良し」の精神、つまり「買い手良し」「売り手良し」「世間良し」をもう一度考えるべきではないのではないでしょうか。

これで良いの?法人税制のあり方~内部留保課税のあり方を中心に考える~

今度の総選挙の中でも安倍首相はしきりに「アベノミクス」による経済効果を掲げていました。確かに、今続いている「好景気」がいざなぎ景気(1965年11月~70年7月の57ヶ月間続いた景気拡張局面)を超えたとの報道がされています。現在の好景気は2012年12月から始まりましたので、2017年9月で58ヶ月になり「いざなぎ景気超え」となるのでしょうが、問題はその中身にあります。いざなぎ景気の間に国民総生産(GDP)は1.63倍に増加しましたが、今回の景気拡張局面では1.06倍にしかなっていないのです。

国民にその実感がないのは、最初に①巨大企業や超富裕層だけが税などの恩恵などを受けていてますます格差の広がりを見せているからです。いわゆる富の偏在です。次に②安倍政権が始まってから実質賃金が年間10万円低下し、1所帯当たりの家計消費も年間22万円も落ちているからです。また、2005年には正規雇用が67.4%あったものが、62.5%と減っている反面、不安定雇用である非正規雇用が32.6%から、37.5%に激増していることも挙げられます。特に若者の不安定雇用が顕著です。これが「少子化」の影響の1つの要因になっていることは明らかです。最後に③今までは中小零細業者は法人であれば法的には強制適応であっても滞納者が増えるとの理由で、社会保険に加入できないことが問題でしたが、この2年前から手のひらを返したように未加入事業者への強制的な加入勧奨で、会社の負担が増え、そこで働く労働者は実質的な手取りがかなり減ることになったからです。

これらのことを実証するように、総務省が10月31日に発表した9月の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は268,802円となり、物価の変動の影響を除いた実質で前年同月比0.3%減少しました。マイナスは2ヶ月ぶり。消費税率を引き上げた2014年4月以後の42ヶ月中38ヶ月が前年割れです。

ところで、この総選挙の争点は「消費税増税の使途」でした。国の借金返済を先送りし「こども」を生け贄にして票をかすめとったとの印象を個人的には感じています。その代替の財源をどうするかということで選挙戦の中で、「企業の内部留保」に課税すべきかどうかが与野党双方からの議論になりました。10月20日の日本経済新聞の「大機小機」というマーケットのコラム欄に「内部留保課税が問うもの」というタイトルでこの問題が取りあげられていました。

記事を要約すると「……経済界は『内部留保は二重課税である』と反対している。そもそも内部留保は法人税等を支払った後に残った利益の集積というわけだ。また、我が国の法人税負担率が諸外国より高いとの経済界からの声に配慮して、2015年には32.11%であった法人税実効税率が来年度には29.74%にまで軽減される減税措置と整合性が合わないという声もある。

総務省の統計によると、内部留保総額は07年には269兆円であったが、年々確実に増加し、16年には406兆に達している。また、現預金は07年の135兆円が16年には211兆円にまで積み上がった。最近のシンクタンクの分析では上場企業の約6割が実質無借金経営である。

しかし、なぜ今内部留保課税なのか。

かねて『企業の6重苦』と言われた事態にたいして、法人税減税や円高対策、そして日銀の超緩和策の継続など、政府や中央銀行はプロビジネス政策を続けてきた。それにも関わらず、企業はリスクをとって事業を展開するとか、従業員への還元を増やすとか、~中略~ただ何かあった時のためにと利益と現預金を蓄積するだけであった。

現に設備投資の水準は1995年以来横ばいで、労働分配率は2001年の75%から67%に下がってきている。そこへの政策当局の不満や憤慨が背景にあると見てよかろう。

~中略~内部留保課税の論議で真に問われているのは、わが国の経営者にアニマルスピリットをいかに取り戻すかということなのだ。……情けないことに。」

私の視点とは多少違うかもしれませんが、このコラムを書かれた人に賛同をします。

中間決算発表のピークの時期ですが、どんどん内部留保は積み増しされる方向に動いていますが、従業員への分配どころか、残業の減少で労働者の賃金は減っています。

日本有数の電機メーカーであった東芝の粉飾、日産自動車に続いてスバルの正規検査員がしたようにして出荷をした改ざん事件や神戸製鋼所のデータ改ざん事件などなど、世界の中でも「メイド・イン・ジャパン」といわれた信頼が利益のためだったらモラルも何もなくなる風潮になっています。

私は、日経新聞のコラムにあったような「ただ何かあった時のためにと利益と現預金を蓄積するだけであった。」という企業には、応分な内部留保課税をすべきだと思います。

安倍首相は「そんなことをしたら、日本の企業は海外に逃げてしまう。」「二重課税が生じてしまう。」などと言っていますが、内部留保金課税をしなくても企業はどんどん海外に逃げています。また、財界人などはしきりに「愛国心」という言葉を言っていますが、真の「愛国心」があれば、応分な負担をすべきです。反対論者からは「台湾が98年から企業の内部留保に対して10%の税金を課し、企業は成長投資に動きにくくなった。」との指摘がありますが、消費税2%の増税での税収効果は約4兆円です。211兆円あると言われている超大企業を中心とした現預金に毎年わずか2%課税すれば消費税の増税の必要性がなくなります。また、二重課税で身近なところでいえば消費税には、ガソリンやたばこなど多くの二重課税があります。またそうした課税が「イヤだ。」という企業には、設備投資や人材投資や賃上げをすればその部分は控除するといった制度設計にすれば良いのではないでしょうか。

また、アメリカが実施しているような法人税の累進課税(15%~35%)をすべきだろうと思います。それとともに菅隆徳税理士が試算しているような租税特別措置法を使った大企業の減税額6.4兆円を廃止する、この間の法人税の引き下げによる減税額7.5兆を元に戻せば併せて14兆円の財源が生まれます。

「大企業栄えて、民滅ぶ」にならないように、立法府や行政府は真剣に法人税課税のあり方を考えて欲しいし、8時間働ければまともな暮らしができるような制度設計を本気ですべきだろうと思います。また併せて、「大企業と中小零細企業」と「超富裕層と貧困層」の格差是正にも本腰を入れて欲しいものです。

失われかけようとしている「ものづくり大国、ニッポン」の誇りと使命を国民全体で、自らのものとして考えて行ければ良いと真剣に思っている今日この頃です。