カテゴリー: 経営環境

デジタルディバイドを拡大させる収受印押なつの廃止方針に異議あり~納税者サービスを後退させる国税庁に反対の声上がる~

国税庁のHPによると、『国税庁は令和7年1月から、申告書等の控えに収受日付印の押なつを行わない方針です。』としています。

その趣旨は要約すると、『国税庁においては、政府の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を踏まえ、納税者の利便性の向上等の観点から、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指し、申告手続等のオンライン化、事務処理の電子化、押印の見直し等、国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直しを進めているところです。

令和4年度のe-Tax利用率は、所得税申告で65.7%、法人税申告で91.1%に達しており、今後もe-Taxの利用拡大が更に見込まれるので、国税に関する手続等の見直しの一環としての措置です。』としています。

では、紙で提出している、個人で約3分の1、法人で約1割の納税者はどうしたらいいのでしょうか。国税庁は、『書面申告等における申告書等の提出(送付)の際は、申告書等の正本(提出用)のみを提出(送付)していただきますよう、お願いいたします。申告書等の控えへの収受日付印の押なつは行いませんが、必要に応じて、ご自身で控えの作成及び保有、提出年月日の記録・管理をお願いいたします。』としています。

つまり納税者の自己責任での管理を求めています。確定申告の内容を証する公的な書類が必要な場合はどうしたらいいのでしょうか。次の方法がありますが、いずれも納税者の時間と費用が発生します。①申告書等情報取得サービス(オンライン請求のみ)…マイナンバーカードが必要。②保有個人情報の開示請求・・・有料で300円(オンラインは200円)、取得に1ヶ月程度かかり、法人は使えません。③税務署での申告書等の閲覧サービス・・・閲覧先は税務署窓口のみ、写真撮影は可、申告当日は対応しない。④納税証明書の交付請求・・・有料で税目ごとに1年度一枚につき400円(オンライン申請は370円)となっています。

税理士会もこの国税庁の方針に異を唱えました。その反対に対して国税庁は、当初令和6年4月と予定をしていた実施期限を、令和7年1月と9ヶ月延長をしました。

多くの反対の中で、国税庁の方針に柔軟化がみられます。令和7年1月以降、当分の対応として、窓口で交付するリーフレットに申告書等の提出を収受した日付や税務署名を希望者に渡すというものです。そんなめんどうなことをするなら、従前通り収受日付印の押なつの対応をすればすむことです。ほかの省庁では、収受日付印押なつは継続するのに国税庁だけが異例の方針を決めています。

インターネットやパソコン等の情報技術を利用できる人とできない人との間に生じる格差をデジタルディバイドと言います。利用の格差は、高齢者、低所得者、ひとり親層、単身者に多いと言われています。省庁の中でも総務省は、インターネットにアクセスできないことで生活に必要なサービスにアクセスできず、負の連鎖を生むことを懸念しています。

そうした中で、国税庁が今般の収受日付印押なつの廃止措置により、e-TAXに半ば強制的に誘導することは総務省の考え方に反すると言わざるを得ません。大いに異議ありです。

SNS社会、同じ過ちを繰り返してはいけません!!~関東大震災と福田村事件の歴史を振り返って~

「防災の日」は、台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波などの認識を深めて備える日で、毎年9月1日に設けられています。1960年に、災害を未然に防止し、被害を軽減する目的で制定されました。「防災の日」が9月1日に制定されたのは、1923年9月1日に未曾有の大被害をもたらした『関東大震災』に由来しています。

その巨大地震により、東京府(当時)を含む関東地方は最大震度7の地震に見舞われ、死者10万5千人、家屋全半壊21万棟、地震関連の家屋焼失21万棟を記録しました。

その混乱の中、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「朝鮮人や社会主義者が暴動を起こした、放火した」などのデマを妄信した官憲や自警団などが、関東各地で多数の朝鮮人、社会主義者、無政府主義者を殺傷した事件が発生しました。日本人や中国人も誤認により殺傷されました。現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」でも、関東大震災での朝鮮人虐殺にふれた場面がありました。その被害者は1,000人とも6,000人とも言われていますが、その数は判然としません。過去から学ぶために、しっかりと調査すべきです。

家電メーカー・シャープの創業者である早川徳次氏は「朝鮮人従業員の一人が亀戸の自宅を訪ねてきた。そこに町内の連中がやってきて『朝鮮人はいるか?いたら殺すぞ!』と。私は何も悪いことをしていない人を突き出すわけにはいかない。動揺した家族に口止めして彼をかくまった。街で朝鮮人が殺されるのを目撃したこともあった。歩きながら殺される人もいた。しかし、それを止めようとしたらこちらが殺されると。」と証言されています。

ところで101年前の9月6日、千葉県福田村(現野田市)で「福田村事件」は起きました。朝鮮人に対する流言蜚語がこの村でも飛び交い、香川県からやってきた薬売りの行商団に、緊急勅令で急遽結成された自警団は日本人かどうか疑念を抱きました。村の巡査が本署に行って確認してくると行って出かけた間に事件は起こりました。地元自警団をはじめとした群衆は行商団を取り囲み興奮のるつぼと化しました。エスカレートした彼らには、行商団の話す讃岐弁がよく理解できず、朝鮮人だと思い込み、15人のうち幼児や妊婦を含む9人を竹やりや鳶口(とびぐち)日本刀などで殺害し、利根川に捨てました。

この歴史に埋もれていた事実を映画化したのが映画「福田村事件」です。放映は昨年9月1日、100年前の関東大震災の日に放映されました。この映画を是非見たいと思っていたところ、マイナーな映画だったので都会の限られた映画館でしか上映はされませんでした。ところが、最近ふとネットでこの映画の検索をしていたらU-NEXTで見られることがわかりました。直ぐに登録して見ました。被害者目線でなく、ごく普通の人も加害者となりえるという視点でこの映画は作られています。

「流言蜚語=確証のないうわさ話、根拠のない扇動的な宣伝、デマ」は100年後のSNS社会でさらに大きくなっています。SNSの匿名性は誹謗中傷、差別的発言の温床になりかねないことから、実効性のある対策が講じられるべきではないでしょうか。私たちは、同じ過ちを繰り返さないよう、歴史に学ぶべきです。

防衛費の増加分は災害対策へ回すべきでは!!~戦争は最悪の人災です~

台風10号は、非常にゆっくりと日本列島を縦断して、多くの被害を発生させました。今度の台風10号は、台風の進路とその周辺だけでなく、東海地方や首都圏などでも大雨をもたらし、新幹線などの交通機関にも大きな影響を与えました。

プロ野球も屋根付きの名古屋のバンテリンドームでの試合が中止になりました。9月1日にKDDI維新ホールで開催が予定されていた「NHKのど自慢」も中止になりました。

ところで、災害には自然災害と人為災害があります。日本は自然災害が大変多い国です。古くからの格言に「地震・雷・火事・親父」というものがありますが、親父の由来といわれる説の一つに、台風説があります。昔の台風は『大山嵐(おおやまじ)』『大風(おおやじ)』と呼ばれていました。いつしかこれが親父に変化した、というのが台風説です。

自然災害のうち、地震は最新科学でも予知は不可能ですが、南海トラフ地震は今後30年のうちに70~80%の確率で、また、首都直下地震も今後30年のうちに70%の確率で起こると言われています。台風の、進路予想などの分析はできるようになりましたが、この台風に関してはままならなかったというのが実情です。いずれにしても、防災や減災は必須です。政府や地方自治体にできることは十分に予算を確保してさらに積極的に実行すべきです。まだ成すべき対策はあります。個人でも防災グッズの準備を含めて、対策が必要です。

一方で、人為災害には、戦争(紛争を含む)、公害、労災事故、交通事故などがあります。これらのうち公害は未然に防ぐ余地があります。労災事故、交通事故などもその発生を極限まで縮小できます。しかし、戦争を未然に防ぐには自ずと限界があります。

戦争は国際法上、一方の宣戦布告によって戦争状態となり、どちらかが負けを認めるまで続きます。しかし戦争にもルールがあります。世界的な戦争ルールの整備の先駆けとなったのが「ジュネーブ条約」です。1864年に赤十字国際委員会が提唱したものです。幾多の改訂と追加を経て、第二次世界大戦後の1949年に全面的に見直されました。2019年現在、世界196ヶ国と地域が批准しています。ロシアやイスラエルも批准しています。

その内容は、非戦闘員・施設の保護、捕虜の殺害の禁止、捕虜等への拷問又は非人道的行為の禁止、病院や救命隊員の保護、非戦闘員への避難径路の確保・提供、非戦闘員・負傷者等の人道支援物資入手の権利、使用兵器による過度な損失・苦痛の禁止です。

ところが、ウクライナでは捕虜や市民への拷問や虐待が確認されて、民間施設(病院、学校、原子力発電所にまで)への攻撃が頻発しています。中東でも子どもら大量の民間人が犠牲になっています。いったん戦争が起こると、もはや収拾がつかないのが現実です。

政府の概算要求が8月末に出そろいましたが、防衛費は今年度当初予算を約6千億円上回る約8.5兆円になりました。朝日新聞の9月1日の社説でも「膨張への一途 持続可能か」という見出しで、批判的な内容を掲載しています。防衛費は、「国を守る」ためのものです。同じ国を守る観点で言えば、「国防」より「防災・減災対策」です。「国防」は外交努力によって成すべきです。いつまでも米国の言いなりになることは人為災害を招きかねません。

金融所得や金融資産に課税強化を!!~次期首相は格差の是正を責務とすべきです~

 

岸田文雄首相は終戦記念日の前日の14日、唐突に記者会見をし、9月の自民党総裁選に出馬しない意向を明らかにしました。マスコミは自民党の派閥裏金事件を受けての退陣と報じています。早くも二桁の議員が次期総裁に「我こそは」と立候補を表明しています。

しかし、岸田首相はその任期内にせめて国民の多くがその真相を知りたがっている、統一教会問題や自民党の裏金事件を彼のお得意の言葉である「丁寧な説明」をしてからその身を引いてほしいものですが、その意思も気迫も今の彼にあるとは思えません。

さて、厚生労働省が7月に発表した2023年度の国民基礎調査によると、22年の1世帯あたりの平均所得金額は524万円と前年比3.9%減少し、21年の3.3%減に続くマイナスでした。相対度数分布(ある階級の度数における全体に対する割合を表すもの)では、平均所得金額以下の世帯数が62.2%で、300万円未満の層が36%を占めます。つまり、富が「富裕層」に偏在していることを示しています。また、23年7月時点での生活意識への問いでは「苦しい」の回答が59.6%と22年の51.3%を大幅に上昇しています。

一方、野村総合研究所が23年に発表した21年を対象にした推計によると、純金融資産(保有している預貯金や株式、債券などの金融資産の総額から負債を差し引いた金額)が1億円以上の「富裕層」、5億円以上の「超富裕層」は合計148.5万世帯で、全世帯の2%台を占めています。日本証券業協会が23年に発表した調査によると、日本の総人口に占める個人株主の割合は22年度で11.9%に過ぎず、年齢階層別では、60歳以上の合計が4割強となっています。生活資金にゆとりのある一部の人が投資で恩恵を受けています。

政府は新ニーサを24年から始めました。比較的若い中間層に老後資金を意識させる仕組みです。この制度は、非課税期間が無期限なことから、長期運用に適しています。一般的に運用期間は長期になるほどリターンが安定するとされています。

岸田首相は、前回の総裁選挙で新しい資本主義と言う概念を打ち出し、金融所得課税を表明していましたが、株価の低迷で腰砕けになっていました。

もとより非課税枠の増大と金融所得課税はワンセットと言われていました。新ニーサが創設されたことで、金融所得や金融資産(相続税における金融資産に対する課税)に対する課税強化の土俵ができあがりました。

アベノミクスで様々な部面で格差が広がりました。労働市場における正規雇用と非正規雇用、都市と地方、基地がどんどん拡大している沖縄、教育の質、高齢者とひとり親世帯の相対的貧困率などです。

3分の1の世帯が年収300万円未満で生活し、6割の国民が生活実感を「苦しい」と答えています。憲法第25条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」としています。次期総理は、経済格差を真正面から受け止め、すべての国民が平和で豊かな暮らしを享受できるようにする責務があると思います。

いかなる暴力も許されない!!~平和こそ人類が求める最大の英知ではないでしょうか~

トランプ氏がペンシルベニア州で7月13日に開かれた集会で、演説開始直後に右耳に銃撃を受け、その場で容疑者は射殺されました。米連邦捜査局(FBI)は、暗殺未遂事件として捜査していますが、いまだ容疑者の犯行動機や思想を特定できずにいるようです。

大統領選への立候補予定者を暴力で抹殺しようとする事件が起きたことに、米国社会で激しい衝撃が広がっています。安倍元総理の銃殺事件を彷彿させるものでした。いかなる理由があったとしても、このような卑劣な暴力行為は断じて許されるものではありません。

その2日後の15日、ミルウォーキーで開催された共和党大会が開催されました。全米から集まった参加者は口々にトランプ前大統領の名を叫び、自分たちの大統領候補決定に熱狂しました。この大会でトランプ氏は共和党の候補者として正式に決定をされます。

さて、このトランプ氏の言動にも問題はあります。7月15日の日経新聞では「3月の集会で、自身が敗北したら『この国が血の海になるだろう』と話していた。」「4月公開の米誌タイムのインタビューで、大統領選で自身が勝利した場合、議会襲撃事件で訴追された支持者への恩赦を『必ず検討する』と明言した。」と報じていました。

米国には現在、約4億兆丁の銃があると推定されているそうです。 米国は世界でも有数の裕福な国にも関わらず最も銃による殺人の死亡率が高い国です。前述の日経新聞は「米誌ニューヨーク・タイムズによると、米シカゴ大学の6月の世論調査で回答者の10%がトランプ氏の大統領就任を阻止するために『暴力は正当化される』と答えた。このうち3分の1が銃を所有していたという。」「トランプ氏が大統領に返り咲くために『暴力を支持する』と答えた人も7%いた。このうち半数が銃の所有者だった。」とも報じていました。

ことを世界に向けるとさまざまな国や地域で、いまなお戦争や紛争が起きています。それにより、多くの人が亡くなり傷ついています。また多くの難民の発生や食糧不足、貧困などの様々な重大な問題を引き起こし、人々の生活はどん底に陥っています。

さて、日本国憲法第九条は、次のように規定しています。『日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。』と「平和主義」を高らかに宣言しています。その中身は「戦争をしない」「武力を持たない」「交戦権を否定」です。平和こそ人類が求める最大の英知ではないでしょうか。

自衛隊が、陸海空軍その他の戦力に当たるかどうか議論が分かれるとことですが、私は違憲だと思います。国を守ることは必要ですが、それは武力ではなく、外交努力により解決すべきです。日本は唯一の核被爆国として、1971年に核兵器を「持たず、作らず、持ちこませず」という「非核三原則」を国会で決議しました。

これを援用して、世界中であらゆる武器を「持たず、作らず、持ちこませず」を高らかに宣言したらどうでしょう。間違いなく憲法9条は「ノーベル平和賞」を受賞できます。

中国電力は電気料の値下げをすべきです!!~山口県はモノ言う株主になるべきでしょう~

6月後半は上場会社(3月決算法人)の株主総会のラッシュです。2024年6月26日に中国電力の第100回の株主総会定時株主総会が開催されました。この株主総会は、広島市中区の同社本店で246名の出席者が決議を行いました。決議は会社の提案とおりでした。

営業収益は、電気料金の値上げを行ったものの総販売電力量の減少などの要因で、1兆6,287億円と前年度に比べ658億円の減収となりました。しかし営業利益は、2,067億円と前年度に比べ2,756億円の増益となりました。また、支払利息などの営業外損益を加えた経常利益は1,940億円と前年度に比べ3,008億円の増益となりました。経常利益、純利益ともに過去最高となり4年ぶりの増益となっています。売上高対経常利益率は11.9%、総資産は2.31%増の4兆1,332億円、株主資本は31.51%増の5,508億円、利益剰余金は56.89%増の3,642億円と絶好調です。

2024年はじめの電気料金は変動が少なく安定していましたが、5月に再生可能エネルギー発電促進賦課金の増額によって値上がり。加えて政府の電気・ガス料金に対する補助の適用が6月請求分で終了となったため、7月請求分の電気料金はさらに高くなることが見込まれます。世帯平均で中国電力は783円増の15,444円となる見込みです。

ただし、政府は8月使用分から3か月間補助金の再開を行うことを決定しました。この措置は岸田内閣の支持率を上昇させるための方策だと識者は指摘しています。

したがって、9月請求分(8月使用分)の電気代は値下がりする予定です。政府からの補助金が終わり、燃料価格の上昇などの要因で今後年末にかけて、さらに値上がりするのではという見方も出ています。

政府の補助金がいくらなのかは定かではありませんが、そもそも過去最高益を計上している会社に、補助金を出す必要があるのでしょうか。少なくても補助金なしでも値下げは可能だと思います。政府は電力各社とまともに交渉をしたのか甚だ疑わしい限りです。中小企業の多くは、コスト分上昇を価格転嫁することが極めて困難な状況にあります。

山口県の対応も問題です。実は、県は中国電力の大株主です。なんと約3,400万株8.78%を保有して第2位の大株主です。株価は2024年7月8日現在1,014円なので、保有時価総額は約344億円です。ところが、県は2013年以降株主総会を欠席し、議決権行使書は白紙提出する対応を続け、事実上経営方針に賛成をし続けています。株は県民の共有財産です。県民の暮らしを少しでもよくするために電気料金の引き下げ要求するモノ言う株主になるべきです。

景品表示法違反にあたるとして、消費者庁は課徴金としては過去最高額の16億5,600万円を求めた不祥事について、また同様に、事業者向けの電力販売をめぐり関西電力との間でカルテルを結んでいたとして、公正取引委員会から707億円の課徴金納付命令を受けた不祥事について、その経営体質についての言及が必要でした。

何より、上関への原発と中間貯蔵施設の建設について、この地震大国に本当に原発が必要かどうか広く県民の声をよく聞いて、意見表明をすべきです。問題を先送りすればするほど住民の分断は広がります。

豊かさとは何か~今必要なのは、自己肯定感、人権そして相互承認!!~

 

2024年6月21日付けの朝日新聞、オピニオン&フォーラムに暉峻 淑子(てるおか いつこ)先生へのインタビューが載っていました。11面5段の紙面を使っての特集でした。

先生が一躍脚光を浴びたのは岩波新書から出版された「豊かさとは何か」でした。ちょうどバブルの最盛期1989年に出版されました。

その内容は、『 モノとカネがあふれる世界一の金持ち国・日本。一方では、環境破壊、過労死、受験競争、老後の不安など深刻な現象にこと欠かず、国民にはゆとりも豊かさの実感もない。当時の西ドイツでの在住体験と対比させながら、日本人の生活のあり方を点検し、真に豊かな社会への道をさぐる。』と言うものです。

実は先生とは、曰くがあります。総合会計を開業して程なく、新入職員向けの独習文献にこの本を指定しました。中学生時代につらい目に遭い、自らの進路に思いあぐねていた二女に、この本を手渡すとものすごく興味を持ち、未来へ一筋の光明が見いだされました。

私は先生の自宅の住所を調べ、早速、彼女は先生に長い手紙を出し、先生からの返事が来ました。先生のアドバイスは「大学でドイツ語専攻したら」という内容で、それを機にがむしゃらに勉強を始め、とうとう大阪外大ドイツ語学科に進学することができました。先生が大阪で講演されたときには、わざわざ出向き、控え室で先生と直接話す機会を得て、勉強のモチベーションを高めました。今でも先生とはメールで繋がっているそうです。

先生は96歳ですが、バリバリの経済学者です。朝日新聞のインタビューには、いつも怒っておられますね、という質問に「私は日常生活の中では、決して怒りっぽい人間ではありませんよ。しかし、人権や民主主義を踏みにじり、ないがしろにする政治を承認できますか。貧困化してフードバンクの列に並ぶ人々がいるのに、一方で政治家たちは何億のカネを裏金にして私物化する。子どもの義務教育の場がブラック企業のような労働現場になっているのに、ほぼ放置したまま。どうして起こらずにいられますか。笑ってみていなさい、という方が不自然ではないですか」と答えておられます。

「バブルが自信過剰の絶頂期だったとすれば、いまは逆に、自信喪失の時代です。でも変わっていないものもあります」と続けられ、具体的には「例えば、労働時間は相変わらず長く、社会保障も削減される一方です。新自由主義によって非正規労働が広がり、フリーランスや、ギグワークなど生活の計画を立てられない働き方が多くなりました。偏差値重視の教育もそう。私たちの意識の画一化、つまり権力持つものになびきやすいという特徴も変わっていません」と指摘されています。

「10年近く『安倍一強』が続く中で起きた民主主義の毀損は、今も回復されていません」その流れを変えるには「多くの人が、社会参加し、そこに連帯が生まれれば、恣意的な権力を止めることができると信じています」と締めくくられています。

この記事のタイトルになっている「誰もが自己肯定感,他者の人権を考える、相互承認を起点に」は実に素晴らしく、多くの人々がこの感覚を持てば社会は変わるでしょう。

年金の改定について思うこと ~公的年金の引き上げで経済の好循環は生まれます!!~

今年の6月1日付けで厚生労働大臣から年金改定通知書が送付されてきました。

公的年金の支給額は、物価と賃金の変動に応じて毎年度改定され、厚生労働省は、今年4月からの新年度は、去年の物価上昇率が3.2%、過去3年間の名目賃金の上昇率が3.1%となったことを受け、2.7%引き上げると発表しました。

引き上げは2年連続で、伸び率はバブル経済の影響があった1993年度以来で最も高くなりました。しかし、将来の給付水準を確保するため、物価や賃金の伸びよりは低く抑えられていて、実質的には目減りとなります。

物価上昇は3.2%ではすまないと思います。どのような手法で物価の上昇率がはじかれたのかわかりませんが、円安の影響などもあり予想以上に物価が上昇し、しかも長期化していることは否めません。特に食料品で非常に値上がり幅が大きく感じられます。

車の使用が必須の地方ではガソリンの値上げは深刻です。また、電気料も7月請求分から中国電力が一世帯平均453円上がって8,514円になります。今年の夏も猛暑が予想され日中症対策としてエアコンの使用が呼びかけられている昨今です。頭が痛いです。

さて、公的年金額は、毎年度、賃金や物価の変動に応じて自動改定する仕組みとなっています。この仕組みがあるため、仮に物価や賃金が上昇すれば、年金も自動的に金額が増えることになります。しかし、盲点になっているのがマクロ経済スライドです。

マクロ経済スライドとは、年金額は賃金や物価の変動を考慮するほか、年金を支える現役人口の減少や平均余命の伸びを年金額に反映する仕組みです。つまり、賃金や物価が上昇すれば年金額は上がる反面、現役人口の減少や平均余命の伸びは年金額を下げることにつながるため、マクロ経済スライドが発動されれば、実際には年金額は賃金や物価が上がるほどは伸びないことになります。2024年度の調整率は-0.4%が適用され、その結果年金改定率は+2.7%になりました。

年金の低さにも驚かされます。国民年金から支給される老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間、国民年金保険料を支払った人で、1人1カ月6万8000円、厚生年金額は、標準的なモデル夫婦2人で23万483円です。自営業者などで老齢基礎年金だけの受給者は生活できません。諸事情により無年金の人も散見されます。これで、暮らせますか?

日本国憲法第二十五条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」としています。

所得税の最高税率の引き上げと金融所得課税の強化、法人税の累進課税化、相続税のうち金融資産に対する課税の強化、住民税の累進課税化、社会保険料と介護保険料の頭打ちの廃止などで歳入を賄い、防衛費の段階的な縮減、不必要な公共事業の見直しなので歳出をカットして、公的年金に回すべきです。年金の増加がそのまま消費に回ります。つまり経済の好循環が生まれるはずです。定額減税と比べ貯蓄になる蓋然性は低いでしょう。

工事の大幅な遅れ、万博は本当にできるの?~開幕から1年を切ったのにまるで高揚感がありません!!~

先日、所用で大阪に行く機会がありました。私が青春時代の15年間を過ごした街でもあり、妻の実家もあります。そこで会った人、会った人が異口同音に、あと一年を切った万博について大きな懸念を持っていました。

その万博(2025年日本国際博覧会)は、大阪市此花区夢洲(ゆめしま)で2025年4月13日から10月13日の184日間開催されます。公式略称は、「大阪・関西万博」です。

問題は山のようにあります。まずは建築費の高騰です。会場の建設費は、1850億円と見込まれていましたが、資材価格や人件費の高騰などを背景に、これまでよりおよそ500億円多い2350億円程度になるという見通しです。吉村大阪府知事は「国家プロジェクトだが、大阪府と大阪市は、開催地である責任者だ。確認はきちんと行うが、国と大阪府・市、経済界で3分の1ずつ責任を持って、万博を成功させるという立場が筋だと思う」と述べています。全国民、とりわけ大阪府・市にとっては大きな税金の負担となります。

そんな中、物議を醸しているのが、会場内に設置する「公衆トイレ」です。40カ所あるトイレのうち、若手建築家が設計するデザイナーズトイレを8か所設置するといい、うちの2か所の設備費用がそれぞれ約2億円とのことです。常識外れの金額です。

メタンガスが原因で発生した爆発事故も起きました。24年3月28日午前10時55分頃その事故は発生しました。現場では4人が作業していましたが、幸いけが人はいませんでした。SDGsを掲げる万博会場から、最強の温室効果ガスのメタンガスが湧き出すというのでは洒落にもなりません。元々、夢洲はゴミの埋め立てのための人口島です。今後も、同様の事故が起きる可能性はあります。

会場までのアクセスの問題も深刻です。会場近くには地下鉄中央線の夢洲駅が2025年1月末に開業予定で、開催期間中は列車の本数を増やすものの、ピーク時の1日あたり28.5万人(大阪府による見込み)の来場者数をカバーすることはできません。そこで重要な役割を担うのが主要駅と会場とを結ぶシャトルバスです。しかし、バスの運転手は慢性的な人手不足と高齢化という深刻な問題があります。地下鉄などに掲示されている、時給2,000円の広告に大きな効果はないようです。

さらに深刻なのは関心度の低さです。大阪・関西万博に関する関心度は低迷を続けており、全国平均で約30%、エリア別に見ると、大阪圏が最も高く約50%、名古屋圏約30%、首都圏は約24%です。高度経済成長時に行われた前回(1970年3月15日から半年間)のような高揚感はありません。チケットも全然売れていないそうです。小学校の修学旅行での動員をもくろんでいるようですが、それもうまくいっていないようです。

おそらくこの大阪・関西万博は、大きな赤字を出して幕を下ろす蓋然性が高いでしょう。この誘致を積極的に推し進めた松井一郎元大阪府知事・元大阪市長が61歳の若さで2023年4月任期満了の大阪市長を退任し、政治の世界から身を引いたのは、そのような結果になると言うことがわかり、その責任を免れるためだと思うのは私だけではないでしょう。

二階氏の三男が、立候補~世襲議員のあり方を考える~

自民党の二階俊博衆議院議員の三男で秘書の伸康氏(46歳)が5月17日、地元の和歌山県田辺市で会見し、次期衆院選和歌山新2区からの立候補を表明しました。自民党の政治資金問題に秘書としての連帯責任を感じる半面、40件を超える出馬要請に応える責任があると出馬を決断、「地方の消滅はこの国の消滅につながりかねない。故郷を愛する仲間の皆さんと一緒に一歩を踏み出し、最終的に私自身は選挙において、有権者の皆様の審判を仰ぎたいと決意を固めた。世襲ということも含めて、最後は有権者の皆様に選挙という機会でご判断いただく」とコメントをしました。

新2区を巡っては、自民党を離党した世耕弘成参院議員(61歳)(和歌山選挙区)がくら替えに意欲を示していて、早期の表明で同氏をけん制する狙いもあるとみられています。

同時にこの会見で父である俊博氏(85歳)が病院に入院していることを明らかにしました。伸康氏は「(大型)連休前に風邪をこじらせた」と説明、「リハビリに努めており、間もなく復帰できる見込みだ」と語りました。政治資金問題で、次の総選挙に立候補者しないと言うことで、その責任を免れた二階氏だが、その年齢や最近の言動を見るにつけ、もはや自分の息子に世襲すると言うことは既定路線ではなかったと言わざるを得ません。

さて「世襲議員」とは、親が議員でありその政治地盤を受け継いだ議員のことです。本来、議員は世襲するものではなく、選挙により選ばれるものです。しかし親の政治基盤などの圧倒的なアドバンテージがあることを揶揄して「世襲議員」という呼称を使うのです。

選挙における3つの「ばん」があります。地盤(後援会組織など強固な後ろ盾)、鞄(政治資金)、看板(知名度)です。世襲議員は他の候補と比べて圧等的な優位性があります。

その優位性は、総理大臣にも見られます。小選挙区制が導入されて以降(1996年~)の内閣総理大臣12名のうち、世襲でないのは3名(野菅直人氏、野田佳彦氏、菅義偉氏)で、自民党に限れば菅義偉前総理以外は全員世襲ということになります。

時事通信の調査(2021年10月)では、「父母、義父母、祖父母のいずれかが国会議員、または三親等内の親族に国会議員がいて同一選挙区から出馬した候補」を「世襲」とすると、2021年衆院選は131人が世襲議員です。地元の山口県の小選挙区の議員を見ても、4区の故・安倍晋三元首相の後継者の吉田真次氏以外は名だたる世襲議員です。

世界の政治家の世襲状況を調べた米国の研究者ダニエル・スミス氏の調査では、国会議員で世襲が多いのは1位のタイ、2位のフィリピンが40%程度、日本が4位の約30%です。一方、 アメリカでは、ケネディ兄弟や、ブッシュ一族などの世襲議員で知られていますが、米連邦議会に占める世襲議員の割合は5%程度です。

世襲議員のすべて不適格者だとは思いませんが、その弊害の方が大きいと言わざるを得ません。国民にとって適切な議員を選ぶには、小選挙区制度などの選挙制度の見直しと有権者の意識を高めるしかありません。政治とカネの問題がこの国にうごめいています。次の総選挙では、この国の将来を委ねられる的確な議員を国民の手で選びましょう。