月別: 2018年3月

申告をしても納税ができない人が増えています

最近多くの自治体で納税者の実態をつかまないまま差し押さえをするケースが増えています。『多くの自治体では、公的な保護・援護等として支給されたもの給付は差押禁止財産だが、これらが預貯金の口座に入った時点で、“受給者の預金債権に転化し、受給者の一般財産になるから、この預金債権は原則として差押等禁止債権としての属性を承継しないとした平成10年2月10日の最高裁判決をもとに、差押えが可能との立場をとっていました。』(土佐のまつりごと 鳥取県の児童手当差し押えは違法 判決が確定 2013年12月16日ブログ記事より引用)

『税金の滞納を理由に鳥取県が、禁止されている児童手当の差し押さえをしたのは違法だとして、鳥取市内に住む自営業の男性(40)が県を相手取り、処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、鳥取地裁(和久田斉裁判長)でありました。判決は差し押さえを違法と認め、「子を持つ父親として多大な精神的苦痛を被った」として慰謝料20万円と弁護士費用の支払いを命じました。

訴えていた男性は病弱な妻と子ども5人の7人家族(当時)で、本業の収入が激減したため、個人事業税や自動車税約24万円を滞納していました。2008年、2カ月半にわたり残高73円しかなかった銀行口座に児童手当13万円が振り込まれた9分後に、県は全額の13万73円を差し押さえました。児童手当は滞納していた子どもの教材費や給食費にあてる予定で、その後、子ども1人が高校中退を余儀なくされました。

児童手当が銀行口座に振り込まれた場合、「一般財産と混在」するとして最高裁は差し押さえを認める判例(1998年)をだしています。判決では、最高裁の判例を踏まえ、差し押さえは原則として許されるとしながらも、県が児童手当によって租税を徴収することを意図し、児童手当以外に預金口座への入金がない状況を知っているか、知りえる状態にありながら処分を断行した場合は、児童手当法の精神からの裁量逸脱であり、違法と認定し、県の処分を取り消しました。国家賠償法の違法があったとしました。』(しんぶん赤旗 児童手当差し押さえは違法 鳥取地裁「税金滞納理由」に断罪 2013年3月30日より引用)

『納期が過ぎても、国民健康保険料(税※)や住民税などの納付がない場合、自治体による資産差し押さえが許されている。ただし、そこには「生活を圧迫してはいけない」など、国税徴収法に基づいた制限が加えられている。滞納に詳しい角谷啓一税理士はこう話す。

「滞納している側にも問題がある場合が多い。しかし、そうした納税者を処分、処分で突き放すのではなく、地方自治体本来の機能を発揮して、生活改善を含め納税者に寄り添った徴収行政をやってほしい。ところが最近の徴収行政は、滞納者の個々の実情を見ず、売掛金や給与や預貯金など、事業の継続や生活の維持に打撃となる財産を差し押さえたり、「差押禁止財産」の児童手当まで差し押さえるといった違法とさえいえる事態が広がっているのです」』(サンデー毎日 怒・やり過ぎだろ!急増 年金・保険を差し押さえる役所の非道 2017年2月12日号より引用)

前川喜平氏の授業に対して介入した文科省に異議あり~大田堯先生の教育論と対比して感じたこと~

朝日新聞デジタル版2018年03月15日号によると

『名古屋市立の中学校で2月、文部科学省前事務次官の前川喜平氏が授業の一環で講演したことをめぐり、文科省が市教委に対し、前川氏を呼んだ狙いや講演の内容を問い合わせ、録音データの提供を求めていたことが15日、わかった。文科省が個別の学校の授業内容について調べるのは異例。

前川氏は文科省の組織的な天下りの問題に関与したとして、昨年1月に辞任し、その後は学校法人「加計学園」の獣医学部新設などをめぐって「行政がゆがめられた」と発言している。文科省教育課程課によると、総合的な学習の時間の授業で講演したことを報道で知り、前川氏が辞任したことや「出会い系バー」の利用が報道されたことを伝えたうえで、経緯や講演内容を尋ね、録音の提供を求めるメールを市教委に送った。市教委から講演内容は伝えられたが、録音の提供はなかったという。

教育課程課は電話で市教委に、前川氏を学校教育の授業に呼ぶことは「慎重な検討が必要だったのではないか」とも伝えたという。市教委に問い合わせることは文科省の初等中等教育局で判断しており、林芳正文科相ら政務三役は関わっていないとしている。

前川氏の講演を聞いた40代の女性によると、中学生やその保護者らが参加していた。幼少時代の話や科学技術で変わる社会について論じ、夜間中学校でのボランティアのエピソードなどを交え、「文科省時代にできなかったことに取り組んでいる」と話したという。女性は「政治的な話題や加計学園の話も一切出なかった。とても和やかな雰囲気だった」と話した。

文科省は学習指導要領など、全国共通の教育基準を作っているが、個別の学校の授業内容について調査をするのは異例だ。文科省の淵上孝・教育課程課長は「前川氏が天下り問題で国家公務員法違反と認定されたことなどについて、(学校や市教委が)どこまで十分にわかっていたかを確認しようとした。法的に、調査に問題があるとは思っていない」と話している。

〈流通経済大社会学部の小松郁夫教授(教育行政学)の話〉 夜間中学に携わる人が自らの経験を話すことは、文科省が定めた学習指導要領の「総合的な学習の時間」の狙いに照らして問題どころか、ふさわしい。指導要領で決められた教科の履修漏れなどの場合に文科省が是正指導をすることはありうるが、今回は一回の授業が対象であり、根拠がわからない。文科省が各時間の授業の調査をするようになれば、学校現場は萎縮するだろう。』

日本の教育界の第一人者と言っても過言ではない、今年の3月22日(本日)で御年100歳になられた大田堯(オオタタカシ)先生(広島県出身で東大名誉教授)は、こうした文科省の異常な教育介入にどう思っておられるでしょうか。

先生は、「教育基本法」の改訂に一貫して反対しておられました。先生が反対してこられた理由は、この法律(平成18年12月22日公布・施行)に、「公共の精神」や「愛国心」など戦前の「教育勅語」に先祖返りしたような条文が入っていたからです。

安倍首相夫人が名誉校長だった森友学園の幼稚園で園児が「教育勅語」を唱和し、昭恵夫人が涙したという逸話があるものです。

改訂教育基本法の(教育振興基本計画)第17 条政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

この条文を見る限り文科省が既報のような介入ができるはずはありません。今般の文科省の行為も誰かに対する「忖度」なのでしょうか?

一方、私の敬愛する大田堯先生は、エリック・カールの「はらぺこあおむし」という絵本を素材にして『……あらゆる生き物は、自ら変わる力、すなわち自己創出力をもっています。機械はすべて、どれほどすぐれていても人の力ぬきには作動しません。自分では、故障もなおせず、改良もできないのです。……人生山あり、谷あり、偶然の出会いありの過程をたどる自己形成は、至上の芸術作品創造というべき営みです。……

……教育は、この一人ひとりのかけがえのない自己創出力を介添えする、外部からの助成の営みであります。まず、その人のユニークな自己総出力を助け、必要とする情報を提供し、その人その人の持ち味を引き出すのです。……

教育に関する国民の考え方には「上から、心がけを説諭する」「教えて人間を変える」という教育観が依然として強くあり、「教育勅語」によって印象づけられた教育観が、政治家にも一般の人びとの間にも、抜きがたくあるのです。……

……本来、教育というものは、一人ひとりの「持ち味を引き出す」ということを助ける目的があるのです。教育はエデュケーションの訳語で、語源は「引き出す」というラテン語からきていると言われ、絶対王制を廃して市民革命が行われた以後に、欧米で一般に普及した言葉です。……』と書かれています。

「社員教育」もまさしく先生の言われる通りで、社員一人ひとりの個性や持ち味を「引き出し」、その潜在能力を最大限に発揮するために社員自らの「やる気」に「火をつける」、そして社長の役割はその火をつけるための「チャッカマン」であることだと考えます。

平成29年確定申告を終えて思うこと~医療費控除とふるさと納税について~

3月15日、所得税の確定申告の期限です。毎年毎年、早く終われるような工夫をしています。「これは」という特効薬はありませんが、PCの普及、進化などICT社会の到来により相対的に確定申告の作業時間は短縮していると思います。若い頃に、1週間分の下着をもって事務所へ泊まり込みをしたことを思い出すと隔世の感があります。

さて、この確定申告で医療費控除のシステムが大きく変わりました。今までは、医療費の領収書を手計算やエクセル等で集計していましたが手間がかかる割に還付額は少なく、なかなか割に合わない内容でした。最大のショックは、若いスタッフに集計作業をお願いし苦労してやっと終わったところ、いざ税額計算作業をしてみると事業の業績が悪く納める税額がゼロだったため、医療費控除をしても還付額はなく、その作業がまったくムダになったことです。このショックは幾度も経験しました。

平成29年分の確定申告からはこの面倒な作業を劇的に簡略化できるようになるはずでした。

従来はすべての領収書やレシートを申告の際に添付して提出する必要がありましたが、今年からは不要になりました。その代わりとして医療を受けた人と、病院や薬局ごとに医療費をまとめた明細書を添付することとなりました。これだけだとあまりメリットは大きくありませんが、この明細書の代わりとして健康保険組合や国民健康保険から送られてくる「医療費のお知らせ」を添付書類として利用できることになりました。「医療費のお知らせ」は加入者と扶養家族が医療機関にかかった日付や医療機関名、医療費の額がリスト化された書類です。

送付される時期は健康保険により異なりますが、協会けんぽであれば2月中旬に勤務先にまとめて送られてきます。今回送付される明細に記載されるのは前年10月から本年10月までの受診分なので、本年11~12月分の受診分は自分で追加する必要があり結構面倒くさくこのやり方でやった納税者は少数派だったのではないでしょうか。

因みに、「医療費の抑制」を意図していると思われる「セルフメディケーション税制」は、ドラッグストア側の宣伝が悪いのか納税者には余り浸透されていないようで、結局この制度を活用した人は1人もいませんでした。

一方、ふるさと納税をする納税者は増えてきています。かなりの納税者の申告書にこの寄付金控除の記載をしました。

ふるさと納税とは『ふるさとや応援したい自治体へ寄付をした個人や法人の納税額を軽減する制度で、公益にかなう寄付をした納税者の税額を減らす寄付税制の一種です。平成16年に長野県泰阜(やすおか)村が導入した寄付条例が前身で、改正地方税法が施行した平成20年から個人向け制度が始まりました。

自分の育ったふるさとを応援するという趣旨から「ふるさと納税」という名称でよばれていますが、全国どの自治体へも寄付できます。個人は寄付額から2,000円を差し引いた額について、年収などに応じて限度額まで個人住民税や所得税から控除されます。

寄付先から返礼品として高級和牛、温泉宿泊券などの特産品や特典をもらえることもあるため人気をよび、導入当初の納税額は年100億~150億円でしたが平成26年に388億円、平成27年は1653億円と急増しました。

被災地支援を目的とした寄付が納税額を押し上げた面もあります。ふるさと納税は使い道を指定できる唯一の税で、都市と地方の税収格差を是正する効果があると政府は説明しています。また、欧米に比べて遅れぎみの寄付文化を醸成する役割があるとの指摘もあると言われています。

一方、自治体の特典競争が過熱し、納税額の多くが高価な特産品購入に消えて自治体財政に寄与しない例も出ています。都市部自治体の住民税は平成28年に998億円減り、ふるさと納税は「受益者負担の原則」に反するとの批判が出ています。所得の多い人ほど控除額が多くなるため、「富裕層の節税対策」に使われているとの指摘もあります。総務省は平成27年、28年の2年にわたって換金性の高い返礼品や高額返礼品を使わないよう全国の自治体へ要請をしています。』(日本大百科全書(ニッポニカ)の解説引用し、一部改編しました)

この寄付金控除を受けるためには、確定申告書に「寄付金の受領書等の記載事項」という添付資料をつけないといけません。添付資料の(注)に、「上記、寄付先の所在地に代えて、電話番号(市外局番から)を入力していただいても構いません。」との記載があります。しかし、寄付した自治体から送付される「寄付金受領証明書」には、その自治体名と市町村長名の記載はあってもなぜか電話番号の記載がないのです。仕方ないのでその自治体のホームページで電話番号を調べることになってしまいました。しかし、もともとホームページに電話番号を載せていない自治体も散見されました。

総務省と財務省とその外局である国税庁とのコミニューケーションが上手くいっていたとしたら、こんな手間も省けたと思います。

知り合いがまさかの逮捕!~国選弁護人と私選弁護人の違いを深く知りました~

誰でもいつ何時逮捕されることがないとは限りません。逮捕とは、捜査機関(警察)などが被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐために一時的に身柄を強制的に拘束することを言います。

私の知り合いがまさかの逮捕をされ、国選弁護人(日本国憲法は第37条3項で、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」と定めています。したがって被告人国選弁護は、憲法上必置の制度であり、被告人からすればその依頼権『国選弁護人選任請求権』は憲法上の権利となる。ウィキペディアより)を選任しました。

その時にそのご家族に次のようなアドバイスをしました。まず、弊事務所の顧問弁護士に相談しました。不足のものはネットで検索してみました。そこで、知り得た情報でお役に立ちそうなものをまとめてみました。

※厳選刑事事件弁護士ナビ 国が弁護士費用を負担する国選弁護人にはデメリットも多い~いざという時の備えに~刑事事件コラムより以下引用

はじめに

国選弁護人にはあまり頼りにならない弁護士が付くこともありますが、厳密に言えば私選弁護士でも国選弁護士でも良い弁護士・悪い弁護士はいます。

悪い国選弁護人の特徴と言うより、悪い弁護士の特徴にはなりますが、国選弁護人を付けてはみたものの、あまり頼りにできないように感じれば、私選弁護士に切り替えてみてもいいかもしれません。

刑事事件に精通していない

国選弁護人は依頼者がどの弁護士を選任するのか選べないことから刑事事件に精通していない弁護士に当たってしまう可能性があります。では刑事事件に精通していない弁護士はどのように見分ければ良いのか気になることでしょう。

見分けるために「先生は年間で何件くらい刑事事件をやっていますか?」と質問してみてください。弁護士としての経験年数にもよりますが【年間で5件程度】やっているようであれば精通していると言って差し支えないと思います。その返答に窮たり、回答をはぐらかしているような場合は刑事事件に慣れていないことが考えられます。

スピード感がない

刑事事件での重要なことはスピード感です。国選弁護人は早くても勾留後からの選任になり、私選弁護士より一歩遅れます。その上、なかなか面会の日程調整が決まらない。電話をしても繋がらないような場合は、スピード感のある私選弁護士を探したほうが上手くいくケースもあります。

極端に若い・経験がない

また、国選弁護人の中には私選弁護士として依頼者からお金をもらう程の経験がない弁護士もいます。確かに若い分熱意はあるかもしれませんが、極端に若かそうにみえたり、経験がないように感じられるのであれば、経験豊富な弁護士に相談してみても良いかもしれません。

横柄な態度を取る

逆に、弁護士の中には昔ながらの頭の固い弁護士がいることもあります。弁護士選びでは依頼者や被疑者と弁護士の相性が重要です。少しでも「相性が悪いな」と感じたのであれば、他の弁護士に相談してみても良いでしょう。

国選弁護人から私選弁護士への変更は可能

以上のような感じの国選弁護人が付いて、不安や不満がありませんか?率直に言いますと、国選弁護人から私選弁護士への変更は可能です。国選弁護人は、国が選んだ弁護人ですので、簡単に変更はできません。

しかし、被疑者家族や被疑者が個人として私選弁護士を探して費用を払って選んだとなると、それまでの国選弁護人は解任されることになります。結果的に新しく選んだ私選弁護士に変更されたことになります。

国選弁護人から別の国選弁護人への変更は不可能

一方で、どんなに現在の国選弁護人に納得できなくても、他の国選弁護人への変更は原則的にできないとされています。したがって、現在の国選弁護人に対して不満があって変更したいようでしたら、費用を払って私選弁護士に依頼するしかなくなります。

初めて代用監獄で知り合いと面会

 以上のような基礎知識を入手して、生まれて初めての経験ですが、世に言う「代用監獄(警察留置場)」で、知り合いと面会しました。

『代用監獄とは、本来は逮捕、拘留された容疑者は、全国に114カ所ある拘留所に収容されるのが法律上の原則。だが実態は、本来「代用」のはずの警察留置場に収容されることがほとんどだ。日弁連は、捜査機関である警察が容疑者の身柄も管理すると「自白の強要などにつながる」と批判。廃止を求めている。一方、法務省や警察省は「取り調べを迅速に行うために必要」と主張。警察は80年以降、捜査と留置管理の担当者を別組織に分け、「冤罪の温床という批判は当たらない」と主張している。』(朝日新聞掲載「キーワード」の解説参照。)

知り合いは、私の顔を見ると安心したのか涙目になっていました。私の話を聞き、本人の意思で国選弁護人に委ねられることになりました。

私も、何時、どこで「逮捕」されかわかりません。今回の件で、新しい知識の箱が一つできました。しかし、そんな「まさか」がないように、様々な法令を可能な限り遵守していこうと思った次第です。

出国税に疑問符あり!~課税と使い方の発想の転換~

「観光立国は地方創生の起爆剤だ。観光先進国にふさわしい快適な良好観光の整備を行う」と安倍首相は先月(2018年2月)22日の施政方針演説で強調しました。

その費用を賄うために税制改正に急遽「国際観光旅客税」、いわゆる「出国税」です。

2019年1月7日以後、日本を出国する人から1回につき1人1,000円を航空運賃などに上乗せ、外国人がインバウンドで日本に訪れるだけでなく、ビジネスかアウトバウンド(海外旅行)かわからない日本人も対象にするらしいのです。これにより財務省の試算では430億円の税収増になるそうです。

税制のあり方の原則は「累進課税」です。この税を導入するならば、例えば、エコノミークラスは運賃の1%、ビジネスクラスは5%、ファーストクラスは10%という具合に経済的にゆとりがある人からは応分な負担をしてもらうべきではないでしょうか。

例えば成田空港発の直行便でニューヨークに行くならばエコノミークラスで片道約13万円、ビジネスクラスなら約55万円、ファーストクラスなら約200万円の料金(HPで検索した料金なので、季節や早割などでかなり変動はあるとは思いますが。)です。すると出国税は、エコノミークラスで1,300円、ビジネスクラスで27,500円、ファーストクラスなら20万円の税負担になります。この方法で税収がいくらになるかはまったくわかりませんが、今まで、ファーストクラスやビジネスクラスを利用していた人が、税負担が大きくなるからといってエコノミークラスに変更することはレアケースだと思います。

また、この税があくまで観光立国にするための目的ならばビジネスで国外に出国する人は、予め入国管理事務所等に申請をしてこの税がかからないようにすべきではないでしょうか。

私は国内線でも国際線でも飛行機を利用した場合に、エコノミークラスしか乗ったことがありませが、国内線でも同様の趣旨で課税をしても良いのではないでしょうか。また、新幹線や在来線特急を利用する人においても同様な課税をすることを検討したらどうでしょうか。仮に新山口から東京ディズーニーランドに遊びに行くとしたら、片道約20,000円で税金は200円です。この200円があるから、東京ディズーニーランドをやめる人はまずいないと考えられます。また、この程度の税金でビジネスの申請はしないと考えられます。

問題なのはその使途です。過去の事例などに見られるように、増税して無駄遣いをすることです。観光振興を名目に従来型の公共事業(はこもの)に振り向けてはなりません。それは公共投資の性格として、動き出したらもうやめられないことと、大手ゼネコンの儲けの温床になるからです。さらに危惧するのは、官僚の天下り先になるおそれもあることです。つまり、費用対効果のないものに税金をつぎ込むことです。例えば今、旬な会社でもある「電通」に効果の少ないパンフレットの作成の仕事などをさせることです。こんな使い方をすると無駄遣いの温床になる蓋然性が高いのではないかと思います。

日本社会の負の遺産として、いったん制度を導入すると既得権益が生まれ、必要性が薄れてもなかなか廃止できずにいる例が多いことは歴史が証明しています。特定財源はその象徴でもありました。出国税を創設するならば、「費用対効果」を不断に「第三者委員会」などを立ち上げて検証し、国会議員が責任を持って毎年見直すことを義務づけるべきだと考えます。そして、いつも、誰も責任をとらないこの国の悪しき「慣習」を断ち切るべきでしょう。

金メダル2個と日本新記録おめでとうございます!~2人の選手の税金はどうなるのか考えてみました~

平昌オリンピックの日本人選手の大活躍、本当におめでとうございました。特に小柄な体を逆に武器にして金メダルを2つ獲得した高木姉妹のお姉さんの菜邦選手に対して、血のにじむような練習を重ねてきたことに心より敬意を表したいです。

ところで彼女は、今回のオリンピックで6,000万円の報奨金を手にすることになりました。内訳は、日本オリンピック委員会(JOC)から金メダル受賞報奨金500万円×2=1,000万円とJOC加盟団体の日本スケート連盟から同額の1,000万円、彼女が所属する日本電産サンキョウから2,000万円、その親会社の日本電産会長の永守重信会長個人からポケットマネー2,000万円です。

まず、JOCからの報奨金は平成6年の所得税の改正で非課税(所得税法9条1項14号)となりました。この背景には平成4年にバルセロナオリンピックで、当時まだ中学生の岩崎恭子さんが金メダルをとって報奨金をもらったことにより課税をされる税制に対し、多くの国民の「かわいそうだ」との声で非課税となった経緯がありました。したがって、この報奨金1,000万円は非課税です。

次に、JOC加盟団体である日本スケート連盟からの報奨金1,000万円は、平成22年の所得税の改正で非課税となっています。

問題は、彼女の所属会社からの報奨金の2,000万円ですが、これは所得税の非課税には該当しません。従業員として法人からもらって報奨金は給与所得に該当します。彼女が所属会社からもらう給与に合算され課税されます。おそらく、所属企業からの年俸はそんなに多くはないと思いますが、2,000万円が合算されると相当多くの所得税の負担となります。また、一年遅れで住民税の課税が待っています。いずれにしても、大きな課税となります。もし、親会社である日本電産からの報奨金となれば、法人からの贈与となり一時課税の対象になり、後述する設楽選手のような算式の課税がされ、給与所得より低い課税となります。

永守会長のポケットマネーからの報奨金は個人から個人への資産の移転となるため贈与税が課税されます。日本の税制では受け取った彼女の方が課税されます。アメリカではあげた方が贈与税を支払うことになっています。贈与税は、相続税の補完税という意味合いを持っているとも言われかなりカーブの高い累進課税になっています。贈与税は、{受け取った金額-基礎控除(110万円)}×税率=贈与税額となります。この算式に当てはめると、2,000万円-110万円=1,890万円×税率(課税所得が1,000万円超の場合は課税価格×50%-225万円)となり、算出税額は720万円となります。

したがって、所得税、住民税(所得控除が所得税より低いですが課税所得の10%が課税されます)、贈与税とかなりの税金の負担となります。

次に、東京マラソンで日本新記録を打ち立てた設楽悠太選手は、日本実業団陸上連盟から1億円という多額の報奨金をもらいました。この制度は、2020年東京オリンピックへの強化策として2015年に創設されました。馬の鼻先に人参をぶら下げるような制度とも言えますが、これが功を奏したのでしょうか。また、これとは別に彼は、東京マラソン2位の賞金と日本記録更新のボーナスとして900万円を手にしています。

これらの報奨金などは日本実業団陸上連盟という法人からの贈与です。法人からの贈与は、個人からの贈与が贈与税になるのと異なり所得税の一時所得の課税になります。税法はなかなか難しいですね。さて、この贈与にはオリンピックの報奨金のような非課税規定がないので、課税上は前述したように所得税の一時所得となります。

一時所得の算式は、総収入金額-その収入を得るために支出した金額-特別控除(最高50万円)です。なお、一時所得は1/2が総合課税に合算され課税されます。おそらく、その収入を得るために支出した金額はあまり多くはなくまた、算定するのはかなり難しいのではないかと思われます。広義に解釈すれば、今までの陸上人生で支出した金額の合計額となりますが、狭義に解釈すれば、この東京マラソンだけに支出した金額だろうと思います。私見では、後者ではないかと思います。

後者だとすれば、その金額はかなり限定されると思います。仮に、ゼロだとすると、(1億900万円-0円-50万円)×1/2=5,425万円が総合課税の対象となり、彼が所属するホンダからの給与と合算されます。

いずれにしても、大きな課税が待っていますので、納税額を残して使わないと納税する段になってお金がないという事態も想定されます。高木菜邦選手も設楽悠太選手も若いので、お金に対する価値観が随分と違うと思います。くれぐれも無駄遣いをしないで、さらなる高見をめざして奮闘してもらいたいものです。