月別: 2018年12月

不安がいっぱいの税の集め方・使われ方~税制改正の問題、くらしと地域経済をどう守る~

『1』税金の集め方の問題点

(1)広がる格差

①「世界で新たに生み出した富の82%を世界の最も豊かな1%を手にした一方で、世界の貧しい37億人が手にした富の割合は1%未満であった。」と国際協力団体オックスファムは分析しています。もはや課税問題はグローバル化しています。世界を震撼させたカルロス・ゴーン容疑者の逮捕もしかりです。

パラダイス文書などに見られるようなタックスヘイブン(租税回避地)で課税漏れになっている税収は個人資産で21兆ドル~32兆ドル、多国籍企業で約1000億ドル~2400億ドルもあります。もはや、グローバル経済にはグローバル税制が必要ですが、これに真っ向から反対しているのがアメリカで、日本もそれに金魚の糞のごとく追随しています。

②国内の主な税制問題点

所得税(出所:財務省「2015年説明資料」より作成)

申告納税者の所得税負担率

この表からも分かるように合計所得金額が1億円を境に累進制課税が逆転しています。これは、株式の譲渡や配当などが分離課税になっていることが原因です。その税率は20%(国税・地方税を含み、復興特別税を除きます)です。土地などの売却益も同様です。それを総合課税にすればと個人的には考えるのですが、そうすると証券市場や土地取引に支障があるという理由で分離課税の低税率のままになっています。

財務省でも、平均的な国際水準である30%にしてはどうかという論議もあったようですが、株価の低迷につながると言うことになり改訂はなさそうです。どう考えても、株取引などで利益を上げている人は高額所得者(いわゆる富裕層)です。こうした税制が格差をますます助長していると思います。

ここにメスを入れるだけでも大きな財源が生まれてきます。あるべき税制の姿は「累進課税」です。

法人税 (出所:国税庁「会社標本調査」などにより作成)

資本金規模別の法人税の実際の負担率(2014年度)

法人税は所得税と違い中小企業者等の特例(課税所得が800万円までは税率が15%)を除き「比例税率」になっています。したがって、このグラフでは理屈上はフラット化されないとおかしいのですが、資本金が5億円を超えるとその比率が下がっています。

つまり、資本金が大きい大企業が実際の負担率が少ないことが分かります。これは、大企業しか使えないような租税措置法(研究開発税制など数多くあります)の存在があります。さらに、海外からの子会社からの配当については実質非課税となっている優遇策を採っています。

日本が、いろいろな点でマネ(正確には追随していると言った方が正しいのかもしれませんが)をしているアメリカの法人税は「累進課税」です。日本は99.7%が中小企業です。そこで働く人は7割います。税の公平と格差の是正の観点から言えば、日本もアメリカのように緩やかな「累進課税」を問うべきだと考えています。

消費税滞納率 (出所:「国税庁統計年報書」により作成)

消費税滞納率の表(2009年〜2015年)

(2)税制改正の行方…気になる方向性

消費税の最大の問題はその滞納率の高さにあります。2015年と少し古い資料になりますが、その滞納率は64%に及びます。期限内に納められない比率がこんなに高いというのは、いかに消費税が欠陥税制と言えると思います。

それを是正しないまま、2019年10月から10%に増税すればさらに滞納率は高まることが予想されます。当初、消費税は「補完税」と言われていましたが、今では「基幹税」と化しています。また、軽減税率と日本型インボイス制度の導入で中小事業者(それをサポートする税理士事務所も同様)の実務の負担は確実に増えます。また、各種のポイント制度や商品券のばらまきなどの施策は余りにも現実離れをしているかが為政者には分からないでしょうか。

日本は、コンビニ大国です。その功罪もいろいろ言われていますが、本部の直営店の多くは中小業者です。今のポイント制度などを実施することになれば、多くの消費者は、カード決済ができない中小業者からコンビニへと流れてしまいます。そうした環境ができない中小業者は倒産のリスクが高くなることは容易に推測されます。

私は今般の消費税増税は、「3度目の正直」ではなく「2度あることは3度ある」べきだと考えます。既に、大企業などはさまざまな理由を付けて商品価格の値上げを実施しています。そうしないと、日本経済の底が抜けてしまい、「先進国」から脱落する危機が待っていると思います。その先に待っているのは「大企業栄え、民滅ぶ」ではないでしょうか。

『2』税金の使われ方の問題点

①本来の予算の決め方が逆転しています。本来の予算のあり方は企業や家計と違って「こんな国を作りたいからこんな予算がいる」から出発するのが原則です。それを誰がどのように分担するのを決めるのが議会であり、それを執行するのが行政です。そして、それを監視するのが司法の役割です。その役割分担(三権分立)がまるで機能していないのが悲しいかな日本の現実です。

また、そんな風にさせているのも少なくない国民がこの国の根幹である「憲法」や政治参加に無関心だからだろうと思います。各種世論調査では国民の多くが異論と思っているものが、数を力に易々と立法化し、それを「運用」という言葉で「ご都合主義」の執行をする行政、下級審では良い判決が出ても「最高裁事務局」を意識して、国側を最終的に勝たせる上級審、どこか狂っていると思いませんか。

②よく富裕層に対する課税の強化をすれば彼らはこの国から逃げてしますと言ったことが言われていますが、既に富裕層はさまざまな手を使って実質日本から脱出しています。いわゆる「タックス・ヘイブン(税金天国の方が的を射ていると思いますが、正確には租税回避)です。大企業の名だたる経営者や富裕層と言われる人は、都合のいい時は「愛国心」を強調し、都合が悪くなったら「この国から脱出する」なんともはや言いようがないお粗末さと私は思います。

③この国の首相は、現行の憲法を変えたい、特に9条に3項を追加したいと前のめりです。仮にそうなれば、武器輸出大国であるアメリカからさらに防衛型ではなく戦闘型の武器を恐ろしく高値で買わされるのではないでしょうか。そんなお金があるのだったら、イージス・アショアを配備するよりは、生活に困窮している人へ温かな支援をすることや災害復旧やR賃貸住宅の修繕などに回すことが筋ではないでしょうか。それは、消費税の増税の理由が「社会保障」という理由だからです。

④マレーシアは選挙の結果、消費税を廃止しました。一方でIMFは日本の消費税は15%(財界は20%とも言っています)まで必要としていると勧告しています。消費税の「逆進性」のことは、当初から政府も周知のことであったのですが、消費税の誕生秘話を知らない国民が増えてきています。再度、消費税ほど不公平で「強きを助け、弱きを挫く」ものだと言うことを国民が真剣に論議すべきだろうと思います。

⑤平成の大合併で、一瞬30万人の人口になり中核市になった下関市(安倍首相選挙区)の人口は、約26万人と約4万人減少しています。また、山口県は後継者が決まっていないランキングでワースト2位(因みに1位沖縄県)です。安倍首相は、外遊での大企業の製品等の売り込みはお上手なようですが、まずは足下のこの下関市や山口県を「ふるさと創生」のモデルケースにして欲しいものです。しかし、首相が適材適所で選んだふるさと創生大臣のいきなりの「スキャンダラス」と「上から目線」の言い訳、首相はこの国と地方を平気で切り捨てるおつもりなのでしょうか?

『3』私たちにできることってどんなこと?

①マスコミに、「不公平な税制」や「いびつな予算の使い方」をどんどん書いてもらうことが大事だし、ジャーナリズムの本質は「国家権力」に対する批判精神だと学生時代に「マスコミ論」という講義で学んだ記憶があります。骨太の方針で書かれている来年10月からの消費税の税率アップと軽減税率の問題点について一大キャンペーンを張ってもらい世論を喚起してもらうことが大事です。特に、軽減税率は「逆進性」が強くなるので富裕層を圧倒的に利することを書いて欲しいのですが、新聞は食料品と同様に8%の軽減税率になったためいわば「骨抜き」状態となっています。マスコミをその気にさせるのは、やはり世論の力だろうと思います。そのためには、多くの国民が、「知り・学び・行動」に移すことが肝要です。

②軽減税率の対象となるのは食料品の「本体」部分だけなので、それにかかった運送費や包装資材費は含まれていません。つまり今の価格が8%に維持されないことをほとんどの消費者に知らされていません。

卑近なことかもしれませんが、「井戸端会議」や「ママ友」などの日常会話の中で、そのことから出発するのが大事だろうと思います。そうすると、「なぜ?」という疑問符が必ず生まれて来ると思います。私たちにできることは、一番生活に密着したことから始まり、それが「燎原の火」のごとく大きくなることだろうと考えます。

③安倍一強体制にしたのは、私たち有権者にもその責任の一端があるのかもしれませんが、小選挙制度の問題(3割の得票率で7割の議席が獲得できる)と合わせて、特に若い人の政治的関心と投票率を上げるような工夫が必要です。その点では、アメリカの中間選挙の民主党の躍進には学ぶことが多いと思います。そして、個人的な見解ですが、政治を弄んでいる感がする今の与党には投票しない世論を形成すべきではないと考えます。