月別: 2022年9月

「上がる・下がる」、「上げないといけない・下げないといけない」の一考察~日本経済を良くする「最適解」はあります!~

上がると言えば、間近に迫った国葬に反対する世論です。FNNの世論調査では、賛成33.5%、反対は62.3%にもなりました。岸田首相が説明すればするほど反対の声が大きくなるのは、その決め方や内容に道理がないことが国民の共通認識になっているからでしょう。

さらに上がるのは消費者物価です。8月は2.8%の上昇です。この数字は消費税増税の影響があった期間を除けば、バブル景気直後の1991年9月以来、約31年ぶりの水準です。今後もしばらく続くと考えられる円安やロシアのウクライナ侵攻などでさらに物価は上昇すると思われます。10月からは、後期高齢者の窓口負担や労働保険料も上がります。

反対に下がっているのは、内閣支持率です。時事通信が9月9日から12日にした世論調査では、前月比12.0%減の32.3%と急落し、昨年10月の政権発足以来最低となりました。この原因は、国葬だけでなく、統一教会問題の対応の不十分さ、新型コロナウイルスへの対応のまずさなどがあります。

さて、結論から先に言えば日本経済を良くするには大企業の法人税負担を上げること、併せて国民の手取り収入を上げること、消費税率を下げることが「最適解」と考えます。

財務省が9月1日に発表した法人統計によると、国民の暮らしや中小企業の営業が大打撃を受ける中、大企業の内部留保は2021年度末で484.3兆円となり、前年度に比べ17.5兆円増加しました。大企業は第2次安倍晋三政権が発足した2012年から、売上高が1.02%と横ばいにとどまる一方で、配当金は2.02倍に急増しています。一方で、賃金はわずか1.05%の上昇しかありません。また、同調査での4~6月期の法人の経常利益は前年同月比17.6%増の28.3兆円になりました。4半期ベースでの過去最高益を4年ぶりに更新しました。

ところが、法人税の実質負担率は低いままです。「不公平な税制をただす会」の菅隆徳税理士は、その理由として「大企業優遇税制による莫大な減税があるため」と訴えています。氏は、有価証券報告書から個別企業の減税額を推定しています。その減税額は多い順に①トヨタ自動車=受取配当金の益金不算入額(以下受配という)2,376億円、試験研究費の税額控除608億円②本田技研工業=受配1,768億円③伊藤忠商事=受配3,430億円④三菱商事=受配1,399億円というように膨大な減税額になっています。

また日本経済新聞(8月20日号)が一面トップに「繰り返す法人税ゼロ」の大見出し、「15年で課税4回」という小見出しをつけてソフトバンクG(通信会社のソフトバンクの親会社)が、2021年3月期の決算で1兆4,538億円の利益を上げながら法人税がゼロだったことを報じています。大企業優遇税制を廃止して、法人税に累進課税を導入すれば約20兆円の財源が生まれてきます。併せて企業責任として労働者の賃金を引き上げることです。

一方で、引き下げるべきは消費税です。世界はコロナ禍や物価高に対応するため、96カ国で付加価値税(消費税)の減税に踏み切っています。もはや従来の物価対策では限界があります。消費税減税は世界の流れであり、所得の低い人が高い負担率になる最も不公平な税制である消費税の減税こそが国民の生活や商工業者の最大の応援になります。

デジタル化社会の盲点と雑損控除について考える!~ショートメールに国税庁からのお知らせ~

8月21日、私のスマホのショートメールに、国税庁「未払い税金お支払いのお願い。詳細はこちら。https://… …」という送付がありました。

最近、ニセの国税庁のホームページにアクセスをさせてクレジットカード情報を抜き取る事案や金銭の払い込みを要求してくる事案が後を絶たないようです。国税庁はホームページで注意喚起をしました。

「国税局・税務署をかたった不審なメールにご注意ください」「最近、国税局・税務署をかたった不審なメールが送信されております。国税局・税務署では、電子メールで納税に関する催告を行っておりません。指定されたURLをクリックしないようお願いします。」と言った内容です。

こうして仕組まれた詐欺を「フィッシング詐欺」といい、『送信者を詐称した電子メールを送りつけたり、偽の電子メールから偽のホームページに接続させたりするなどの方法で、クレジットカード番号、アカウント情報(ユーザID、パスワードなど)といった重要な個人情報を盗み出す行為のことを言います。

なお、フィッシングはphishingという綴りで、魚釣り(fishing)と洗練(sophisticated)から作られた造語である』と定義されています。

また、警察庁のまとめによると、公共機関の職員を名乗ってキャッシュカードや現金をだまし取る「預貯金詐欺」や親族のふりをして送金させる「オレオレ詐欺」と言った「特殊詐欺」の認知件数は1万件を超えて増加傾向にあります。

コロナ禍で在宅時間が増えたことが増加の要因になっているようです。件の「税金の未払い」を理由にしたものだけでなく「医療費や保険料の払い戻し」があるということをえさに主に高齢者からお金をだまし取る「還付金詐欺」も横行しています。

私もこの被害に遭遇した人を知人の紹介で知りましたが、こうした詐欺の被害者の多くは残念ながら返金を受けることができないのが実情です。

また、税務上も「雑損控除」の適用を受けることはかないません。所得税法上の「雑損控除」は、医療費控除や寄付金控除などと同じく一定の要件に該当した場合には損害額のうちの一部をその被害を受けた年分の所得から控除できる仕組みを言います。

その対象となる災害などは、5つです。具体的には(1)震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害(2)火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害(3)害虫などの生物による異常な災害(4)盗難(5)横領です。

「特殊詐欺」損失は、そのいずれにも該当しないという2011年の国税不服審判所の裁決があります。犯罪被害者であることに変わりはないのですが、「騙され」たり「脅され」たりしたにせよ、「自らお金を渡した」という点が「横領」などとは違う、と解釈されたのです。

残念ながら、依然としてなくならない「振り込め詐欺」や「還付金詐欺」のような「特殊詐欺」の被害は、現行上は税の面からは救済されません。

法改正して、「特殊詐欺」も災害とすべきです。「多額の所得税を納めていない高齢者は、税制では救済できない」という仕組みにも、一工夫の余地はあるのではないでしょうか。