月別: 2021年4月

Madam, I’m Adam(奥様、私はアダムです)~おもしろきかな?回文~

回文(かいぶん)とは、始めから(通常通り)読んだ場合と終わりから(通常と逆に)読んだ場合とで文字ないし音節の出現する順番が変わらず、なおかつ、言語としてある程度意味が通る文字列のことで、言葉遊びの一種である。英語では palindrome (パリンドローム)という。『ウィキペディア)より』

私は、NHK基礎英語3で英語の学習をしています。この講座は中学校3年生を対象としていますが、「受験英語」からまるで進歩がなかったので悪戦苦闘をしています。さび付いた脳の活性化には、多少寄与しているかもしれません。

さて、そのテキストの巻末に回文の英語バージョンと日本語バージョンがあります。本編の勉強よりも回文の方に興味がわいてきました。そこで、私が個人的に気に入っているものの英語版をベスト5までランク付けしてみました。

第1位……

Rise to vote ,sir(投票のために立ち上がってください)

選挙に行かず、その政治の悪さを嘆く人はまだしも、政治のことについて無関心な層が多いことは嘆かわしいですね。

第2位……

Too bad ,I hid a boot(残念、ブーツの片方は隠しちゃったぞ)

軍靴(ブーツ)の響きがする昨今ですが、今私たちすることは、軍拡ではなく軍縮です。軍靴は片方隠して、戦争しない国をめざしたいですね。

第3位……

Now, I see, referees I won! (さあわかったぞ、審判のみなさん、私の勝ちです!)

プロ野球を始め、昨今はスポーツの世界でもビデオ判定が多くなりました。意外に判定が覆ることが多いですね。審判も良い緊張感を持って判定をして欲しいものです。

第4位……

Do geese see God?(ガチョウは神を見るか?)

「ガチョウを料理する」という慣用句は、「希望や計画を台無しにする」との語意でヨーロッパでは口にされているそうです。為政者は庶民のささやかな希望を奪うことなかれ。

第5位……

Never odd or even (奇数でもなければ、偶数でもない)

そんな整数はあるのでしょうか?数学が大の苦手で、人からは「よく税理士をやっているね」といわれます。さて、0は奇数か偶数か、答えは偶数だそうです。その理由がすんなりと答えたれたら、税理士なんかはやっていません。

言葉遊びに興じる暇があったら、関係代名詞を理解したりや使えそうな「word」や「phrase」を覚えろという神の声が聞こえてきそうです。しかし、勉強は楽しくやれば良いのではないかと思います。

「強き」を助け「弱き」を挫く税制のあり方を考える~現状を変えなければ格差は助長される~

米国のシンクタンク「政策研究所」の調査は昨年3月から今年2月までの1年間で、米国の富裕層664人が約1300億㌦(約143兆円)、44%の資産を増やしていると発表しました。彼らの資産はこの1年で約3兆㌦から約4.3兆㌦へと増加しています。これは所得下位半分の資産の総合計約2.4兆㌦の1.77倍です。また、バイデン政権がめざしている新型コロナ経済対策予算1.9兆㌦の3分の2の資産を増やしたことになります。

わが国でも同様の現象が起きています。衆議院財政金融委員会で参考人となった群馬大学山田博文名誉教授は、企業の利益剰余金(内部留保)が直近で538兆円に膨らみ、富裕層の金融資産もその資産を5000万円以上有する人だけで総額588兆円に上ると指摘しました。

さらに、過去5年間で株価は2.6倍、富裕層の金融資産は1.8倍に拡大したのに対し、消費税率や社会保険料の引き上げで国民生活は厳しさを増し「異常な歪みと格差が生じている」と強調しました。そして1989年まで存在していなかった消費税が21年の歳入では最多の19%を占める基幹税なる一方で、法人税は8.4%しかないと問題視しました。

このような格差拡大の流れは国際的なものになっています。国際NGO「オックスファム」の報告では、税制の変化が格差拡大になっていると指摘しています。その試算では、2007年からの10年間で法人税収入は9.9%減少し、富裕税(資産税)収入も1.3%減少したのに対して、社会保険料収入は13%、逆進性の強い消費税(付加価値税)収入は9.8%増えたとの報告をしています。これは、大企業と富裕層の「自由」の拡大をめざす「新自由主義政策」の下で、税収が低・中所得層にシフトされた結果です。

その打開策としてオックスファムは①租税回避地を閉鎖し、収益性の高い多国籍企業と裕福な個人に対して公平な課税をする。②際限なく法人税を引き下げる「底辺の競争」を転換し、法人税率を引き上げる。③不平等を減らす政策の資金を確保して、人々と地球を中心に置く経済をつくりあげることを呼びかけています。

この流れに沿う形で変化も少しずつ生まれてきます。英国では法人税が23年から現行の19%から25%へ引き上げられます。この引き上げは約50年ぶりのものです。年間利益が5万ポンド(約750万円)未満の中小企業には現行の税率が維持されるため、25%の法人税率が適用されるのは企業全体の1割程度と見込まれています。また、米国でもバイデン大統領が3連邦法人税率を現行の21%から28%へ引き上げるに加え租税回避地の税逃れの課税強化を発表しました。

一方日本社会では、「社会保障を望むなら消費税率を引き上げるしかない」という風潮がいまだ主流となっています。しかし、「株式の配当・譲渡益の課税強化」や「法人税率の引き上げと累進課税化」など他の道もあるということを国民に知らせ、大きな世論を作り出す必要だと思います。

「強き」を助け「弱き」を挫くような日本の税制のあり方を見直すことを「税の専門家」である税理士が積極的に発信しないといけないことを痛感しています。

消費税の総額表示化のねらいは?~インボイス化と一体で消費税を「付加価値税」にする布石か~

4月1日より消費税の価格表示が総額表示方式に移行しました。4月以降は店頭の表示のほか、チラシやカタログ、パンフレットなどの表示媒体にかかわらず、総額表示が求められます。この移行に伴い、多くの出版や流通業界から反対や戸惑いの声があがっています。

財務省は「総額表示の義務付けは、それまで主流であった『税抜価格表示』ではレジで請求されるまで最終的にいくら支払えばいいのか分りにくく、また、同一の商品・サービスでありながら『税抜表示』のお店と『税込表示』のお店が混在しているため価格の比較がしづらいといったことを踏まえ、事前に、「消費税額を含む価格」を一目で分かるようにするものである。このような価格表示によって、消費者の煩わしさを解消していくことが、国民の消費税に対する理解を深めていただくことにつながると考えて実施」としています。

今回の事態は、2013年に成立した消費税転化対策特別措置法が3月31日に失効するためです。このことにより、消費税法の第63条が機能します。この規定は「事業者は、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない。」という内容です。

ただし、この規定には罰則はありません。つまりこの規定は、法律上は義務とはいえず、事業者に協力を求める「訓示規定」と考えられます。そもそも、価格の表示をどうするかは、事業者の裁量にゆだねられるべきです。それは、営業の自由を保障する憲法第22条の規定により、価格表示も自由であるべきだからです。再販売制度により定価販売が認められている書籍などは、総額表示になじみません。

4月1日からは、例えば100円ショップの価格表示は、「110円」「110円(税込み)」「110円(うち消費税額10円)」になります。ただし、この表示だと100円ショップは、「110円ショップ」に名称を変えないといけなくなるのではないでしょうか。

さらに、この機会に乗じて価格表示で大きな動きをしたのが、ファーストリティリング社の傘下であるユニクロとGUです。3月12日よりすべての商品を総額表示にするとともに、商品の本体価格をそのまま据え置いて、消費税込みにしたのです。つまり約9%の価格の引き下げに踏み切ったのです。商品タグを、例えば「1,990円+消費税」から「1,990円」としました。この引き下げについて、柳井正氏は「できるだけ多くの商品価格をそのままに、消費税込みのお求めやすい価格で販売し、お客様の生活に寄り添っていきたいと思っている」と発言しています。

このような動きをみると、消費税は紛れもなく『価格転嫁ができる力の強い事業者』と『価格転嫁できない力の弱いでない事業者』を生み出します。ファーストリティリング社は間違いなく前者です。価格に転嫁できない中小零細事業者は消費税相当金額を持ち出して負担しなければなりません。

総額表示の欠点は税率が変更される度に表示替えのコストがかかることにあります。さらに政府は、小規模事業者の取引排除を招くインボイス制度を強行しようとしています。1989年にむりやり導入した「消費税」を他国で実施している「付加価値税」に本格的に移行しようと画策しています。その本質とねらいをよく監視し、反対の世論をあげるべきです。

えっ!!JTBが中小企業に~税額の軽減がねらい?~

3月31日で、従業員数約2.7万人を擁する旅行会社最大手のJTBが中小企業になるということが話題になっています。資本金を現在の23.4億円から1億円に減資することになりました。既に、株主総会による決議がされています。その背景とねらいについて考えて見ます。

コロナ禍で旅行需要が激減して、業績が急速に悪化しました。前年5月の旅行取扱高(売上高)は、前年同月比で96%の減少という信じられない程の落ち込みでした。上半期(4~9月)の赤字は781億円になり、利益剰余金(いわゆる内部留保金額)は、9月末までで799億円と半年でほぼ半減しました。21年3月通期では過去最大の1,000億円の経常赤字を予想しています。緊急事態宣言が首都圏で再延長されるなかの外出自粛や東京オリンピック・パラリンピックでの海外の観客者の入国禁止措置で、旅行事業者の収益改善の兆しは一向に見えません。

そうした状況でJTBが考えたのは資本金を1億円にすることで、税制上は中小企業にして税による資金の流失を押さえることでした。確かに資本金が1億円に以下の企業は税制上の優遇策があります。

具体的には、最大の節税効果は法人事業税(都道府県民税)です。資本金が1億円を超えると事業税が外形標準課税といって、給与・支払利子・地代などの付加価値といわれるものに一定の割合で課税がされます。JTBの場合、従業員などが多いため事業税の金額は多額になります。これに比べ資本金が1億円以下の場合には、赤字企業には法人事業税は課税されません。これにより、多額の資金流失を防ぐことができます。

さらに、中小企業に該当すれば法人が赤字になればその欠損金を次期以降の黒字と通算してくれる制度があります。もし、JTBが次期以降に黒字になってもその累計額が今期の赤字の金額に達するまでは今後10年間についての法人税は支払わなくてもいいことになります。資本金が1億円超になれば、控除してくれる金額は中小企業の半分の50%になります。

また、中小企業には、財務基盤が弱いことから年800万円以下の法人税が15%に軽減されるものや交際費の支出額が800万円までが損金になる制度、設備投資にかかる税額の軽減などがあります。

この「偽装中小企業化」はJTBだけではありません。既に吉本興業、スカイマーク、毎日新聞、カッパクリエイトなどが減資をして税制上の中小企業になったり、その決議をしたりしています。どう考えても、JTBをはじめ資本金を1億円にしたこれらの企業は大企業です。こうした中小企業「偽装」と思われても仕方ない減資に規制をかける必要性があります。

日本税理士会連合会では16年に資本金基準に加え「従業員1000人以下」を加えるように答申をしましたが、実現に至っていません。政府は、このような不自然な「中小企業化」を漫然と見過ごすのではなく、早急に法の抜け穴を塞いで欲しいものです。