月別: 2021年4月

消費税の総額表示化のねらいは?~インボイス化と一体で消費税を「付加価値税」にする布石か~

4月1日より消費税の価格表示が総額表示方式に移行しました。4月以降は店頭の表示のほか、チラシやカタログ、パンフレットなどの表示媒体にかかわらず、総額表示が求められます。この移行に伴い、多くの出版や流通業界から反対や戸惑いの声があがっています。

財務省は「総額表示の義務付けは、それまで主流であった『税抜価格表示』ではレジで請求されるまで最終的にいくら支払えばいいのか分りにくく、また、同一の商品・サービスでありながら『税抜表示』のお店と『税込表示』のお店が混在しているため価格の比較がしづらいといったことを踏まえ、事前に、「消費税額を含む価格」を一目で分かるようにするものである。このような価格表示によって、消費者の煩わしさを解消していくことが、国民の消費税に対する理解を深めていただくことにつながると考えて実施」としています。

今回の事態は、2013年に成立した消費税転化対策特別措置法が3月31日に失効するためです。このことにより、消費税法の第63条が機能します。この規定は「事業者は、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない。」という内容です。

ただし、この規定には罰則はありません。つまりこの規定は、法律上は義務とはいえず、事業者に協力を求める「訓示規定」と考えられます。そもそも、価格の表示をどうするかは、事業者の裁量にゆだねられるべきです。それは、営業の自由を保障する憲法第22条の規定により、価格表示も自由であるべきだからです。再販売制度により定価販売が認められている書籍などは、総額表示になじみません。

4月1日からは、例えば100円ショップの価格表示は、「110円」「110円(税込み)」「110円(うち消費税額10円)」になります。ただし、この表示だと100円ショップは、「110円ショップ」に名称を変えないといけなくなるのではないでしょうか。

さらに、この機会に乗じて価格表示で大きな動きをしたのが、ファーストリティリング社の傘下であるユニクロとGUです。3月12日よりすべての商品を総額表示にするとともに、商品の本体価格をそのまま据え置いて、消費税込みにしたのです。つまり約9%の価格の引き下げに踏み切ったのです。商品タグを、例えば「1,990円+消費税」から「1,990円」としました。この引き下げについて、柳井正氏は「できるだけ多くの商品価格をそのままに、消費税込みのお求めやすい価格で販売し、お客様の生活に寄り添っていきたいと思っている」と発言しています。

このような動きをみると、消費税は紛れもなく『価格転嫁ができる力の強い事業者』と『価格転嫁できない力の弱いでない事業者』を生み出します。ファーストリティリング社は間違いなく前者です。価格に転嫁できない中小零細事業者は消費税相当金額を持ち出して負担しなければなりません。

総額表示の欠点は税率が変更される度に表示替えのコストがかかることにあります。さらに政府は、小規模事業者の取引排除を招くインボイス制度を強行しようとしています。1989年にむりやり導入した「消費税」を他国で実施している「付加価値税」に本格的に移行しようと画策しています。その本質とねらいをよく監視し、反対の世論をあげるべきです。

えっ!!JTBが中小企業に~税額の軽減がねらい?~

3月31日で、従業員数約2.7万人を擁する旅行会社最大手のJTBが中小企業になるということが話題になっています。資本金を現在の23.4億円から1億円に減資することになりました。既に、株主総会による決議がされています。その背景とねらいについて考えて見ます。

コロナ禍で旅行需要が激減して、業績が急速に悪化しました。前年5月の旅行取扱高(売上高)は、前年同月比で96%の減少という信じられない程の落ち込みでした。上半期(4~9月)の赤字は781億円になり、利益剰余金(いわゆる内部留保金額)は、9月末までで799億円と半年でほぼ半減しました。21年3月通期では過去最大の1,000億円の経常赤字を予想しています。緊急事態宣言が首都圏で再延長されるなかの外出自粛や東京オリンピック・パラリンピックでの海外の観客者の入国禁止措置で、旅行事業者の収益改善の兆しは一向に見えません。

そうした状況でJTBが考えたのは資本金を1億円にすることで、税制上は中小企業にして税による資金の流失を押さえることでした。確かに資本金が1億円に以下の企業は税制上の優遇策があります。

具体的には、最大の節税効果は法人事業税(都道府県民税)です。資本金が1億円を超えると事業税が外形標準課税といって、給与・支払利子・地代などの付加価値といわれるものに一定の割合で課税がされます。JTBの場合、従業員などが多いため事業税の金額は多額になります。これに比べ資本金が1億円以下の場合には、赤字企業には法人事業税は課税されません。これにより、多額の資金流失を防ぐことができます。

さらに、中小企業に該当すれば法人が赤字になればその欠損金を次期以降の黒字と通算してくれる制度があります。もし、JTBが次期以降に黒字になってもその累計額が今期の赤字の金額に達するまでは今後10年間についての法人税は支払わなくてもいいことになります。資本金が1億円超になれば、控除してくれる金額は中小企業の半分の50%になります。

また、中小企業には、財務基盤が弱いことから年800万円以下の法人税が15%に軽減されるものや交際費の支出額が800万円までが損金になる制度、設備投資にかかる税額の軽減などがあります。

この「偽装中小企業化」はJTBだけではありません。既に吉本興業、スカイマーク、毎日新聞、カッパクリエイトなどが減資をして税制上の中小企業になったり、その決議をしたりしています。どう考えても、JTBをはじめ資本金を1億円にしたこれらの企業は大企業です。こうした中小企業「偽装」と思われても仕方ない減資に規制をかける必要性があります。

日本税理士会連合会では16年に資本金基準に加え「従業員1000人以下」を加えるように答申をしましたが、実現に至っていません。政府は、このような不自然な「中小企業化」を漫然と見過ごすのではなく、早急に法の抜け穴を塞いで欲しいものです。