カテゴリー: 経営環境

所得税の確定申告の申告期限が延長

「国税庁は27日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて所得税の確定申告の期間を1カ月延長し、4月16日までにすると発表した。個人事業者の消費税の受付期間も3月31日から4月16日までに延長する。」という情報をネットで配信しました。

※2020年2月27日 日本経済新聞電子版より引用

早速、翌28日に弊税理士法人が所在する所轄署の山口税務署、徳山税務署、下関税務署にそれぞれ問い合わせたところ、予定通り納税への相談業務はそれぞれの会場で行うと言うことでした。また、アルコール消毒液、マスクの準備もしているそうです。

広島国税局の納税者支援調整官に問い合わせたところ、大きな会場の場合にはマスクが不足する可能性もあるとのことでした。3月17日以後の納税者への相談体制については協議中とのことでした。

日経新聞では、1面トップに「全国小中高に休校要請」との大見出しで、さらに関連記事で2~4、9、11、15面に関連記事が出ていました。それに対して前例のない全国一斉の実施の申告期限延長という異例の措置が、社会欄(最終ページの文化欄の1ページ前)の中段にわずか20行しかその記載はありませんでした。

記事の要点は「~東日本大震災後に被災者などを対象に期間を延長した前例はあるが、全国一律の延長は初めて。国税庁によると全国で約400万人が期間中に相談や申告に訪れる。期間延長により混雑緩和をはかる。~」という内容でした。

もちろん、インパクトの点で言えば「全国小中高に休校要請」の方が大きいのでしょうが、400万人もの多数が関わる所得税の確定申告もせめてもっと目立つようなところに記載して欲しかったと言うのが私の思いです。

国税庁のホームページでは次のように記載されています。

令和2年2月27日 国税庁

申告所得税、贈与税及び個人事業者の申告・申告期限の延長について

『~今般、政府の方針を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、申告所得税(及び復興特別所得税)、贈与税及び個人事業者の消費税(及び地方消費税)の申告期限・申告期限について、令和2年4月16日(木)まで延長することとしました。

これに伴い、申告所得税及び個人の消費税の振替納税をご利用されている方の振替日についても、延長することとしています。』

デジタルデバイス(PCなどを使える人と使えない人による情報の格差)とよく言われますが、国税庁も早く方針を早急に固め、特に高齢や障がいをお持ちの方々に速やかに、分かり易く広報して欲しいと願っています。

因みにアメリカの申告期限は4月15日、ドイツは7月末、イギリスはなんと翌年1月31日です。

今般の新型コロナウイルス感染症だけではなく、わが国の確定申告の申告期限はインフルエンザや風邪等が流行る時期と重なります。アメリカのまねがお好きなわが国も今回の措置を特例だけに終わらせずに、次年度から4月15日にしたらどうでしょうか。

3つの財務分析指標の計算式とその活用(その2)

前回は、損益分岐点売上の考え方とその応用を考えました。その中で、売上至上主義は問題があると言いました。そんな考え方をP/L(損益計算書の略です)思考と言います。売上高をひたすら追求すれば事業の規模の拡大にはつながりますが、この考え方は実は非常に怖いところがあります。なぜかと言えば売上高は、ある意味「いけいけどんどん」である程度まではいくのですが、「薬物中毒」のごとく頭の中は「売上高」だけしか無くなってしまうのです。

P/L思考の経営者の会社は、気づいてみたら肝心な貸借対照表の「内部留保」が非常に少ない場合や果ては「欠損企業」に陥っていたと言うこともままあります。

企業は存続させることに意味があります。「企業30年説」と言う言葉を聞かれた方もあるかもしれません。会社は「設立5年で約85%の企業が消え、10年以上存続出来る企業は僅か6%、20年続く会社は0.3%、そして30年以上存続する会社は何と0.025%」だそうです。

逆説的に言えば30年間続いた企業は「老舗」と言われています。企業の使命は、永続すること(ゴーイングコンサーンと言います)です。にもかかわらず30年企業は、日本の定期預金の金利程度しかありません。その原因はB/S(貸借対照表の略です)思考がないからです。つまり、強靱な財務体質を作るための努力目標、言い換えれば、潰れない企業を作るための指標が自己資本比率なのです。

自己資本比率とは

(1) 自己資本比率の算式

この算式の自己資本とは返さなくてもよい資本を言います。つまり、貸借対照表の貸方(右側)にある純資産の部が該当します。具体的には資本金+資本剰余金(配当をしたときなどで使う程度で余り使用頻度は高くありません)+利益剰余金(よう使う内部留保に近いものです)の合計額を言います。貸借対照表の貸方は、資金をどこから調達したかを示しています。結局、自己資本とは誰にも返済しなくてもかまわない資金を言います。

総資本とは、自己資本+他人資本(将来誰かに返済を要する債務です)を言います。具体的には貸借対照表の合計欄を言います。

 

(2) 自己資本比率は30%必要

自己資本比率は、よく「潰れない指標」と呼ばれています。業種によって違いますが、一般論としてこの指標が50%を超えていると倒産リスクがほぼ無い「超優良企業」とされ、40%以上だと倒産リスクの極めて少ない「優良企業」だと判断されます。この40%の根拠は、上場企業の平均値だと言われています。ちなみに中小企業だと10%内外で低迷しているのが実情です。

したがって自己資本比率が40%になるまでは、資金の伴う節税(例えば短期前払い費用や包装資材のまとめ買いなど)はしない方が良いと考えられます。キャッシュフローに優しい(資金の流失が伴わない)税額控除(例えば雇用促進税制や中小企業等投資促進税制など)は活用しても良いかもしれません。

「納税をする」とは別の言い方をすれば、「潰れない会社にするためのコスト」とも言えます。

 

(3) 自己資本比率の改善の方策~自己資本を多くする

まず、上記(1)の自己資本に着目してください。自己資本を良くするには二つの方法があります。

その一つは、税引き前の利益を積み上げることです。法人税の基本税率は、昭和49年の43.3%を最高に、この間9回の改訂により平成30年分では23.2%と約半分になっています。また、中小企業(期末資本金が1億円以下の法人)は、課税所得が800万円までは15%(本則では19%です)と大幅に軽減されています。したがって、以前より大幅に会社に貯まる内部留保の金額は増えます。このことを理解できない社長が多く、説明し納得していただくのには相当に苦労します。

もう一つは、資本金を増やすことです。会社の資金繰りの事情で社長個人の余剰資金を会社に貸し付けている例が多くあります。そうした場合、その貸付金(会社から見れば借入金)を元手に増資をすることです。資本金が過小なとことは、1,000万円までだと法人住民税の均等割は変わりませんので検討の余地はあります。この手法をデット(債務)・エクイティ(資本)・スワップ(交換)(DES、略してデスと呼びます)と言います。具体的には会社に対して貸付金(金銭債権)を有している社長(債権者)がその債権を自社(債務者)の株式に振り替えることをいいます。もし、多額の貸付金があっても、住民税の均等割は高くなっても資本金1億円までは法人税法上は中小企業なので一度検討してみてはいかがでしょうか。

 

(4) 自己資本比率の改善の方策~総資産を減少させる、その1、余剰な預金は極力減らす

今度は分母の自己資本に着目しましょう。当然のことながら、分母の数字が小さければ分子の数字がさほどでなくても、目安の40%をクリアーできます。

具体的な例で説明しましょう。分子の数字を例えば500万円とします。分母の数字が5,000万円だとすると自己資本比率は、(500万円÷5,000万円)×100なので10%になります。上記(2)で示した中小企業の平均値くらいになります。この分子を5,000万円から1,250万円にしたらどうでしょうか。すると(500万円÷1,250万円)×100なので潰れない指標の目安である40%をクリアします。

そうするためにはどんな方法があるでしょうか。B/Sに着目すると、右側(貸方)と左側(借方)は必ず一致すると言う会計の大原則があります。細かい原理は知らなくても構いません。ただ、覚えていて欲しいのは、右側の合計額を「総資本」と言い、資金をどこから調達したかを示しています。そのうち、いつかは誰かに返さないといけない資金を「他人資本」と言います。そして、上記(1)で説明したように誰にも返さなくてもいい資金を「自己資本」と言います。

左側(借方)は、右側で調達してきた資金をどのように運用したかを示しています。したがって、その合計額を「総資産」と呼びます。総資本には、「流動資産(1年以内に換金できるものや在庫から構成されています)」と「固定資産(1年を超えないと換金できないものや設備投資にかかった帳簿価格から減価償却を控除したものや土地などから構成されています)」から成り立っています。

自己資本=自己資産なので、自己資産の見直しをすることにより自己資本を少なくすることができます。まず、チェックしないといけないのは流動資産の預金です。今は、金融庁のお達し(金融機関の優越的地位の濫用)で表だってはできなくなりましたが、金融機関が融資をする条件として、金融機関の貸付金の一部を「融資を円滑にするために定期預金にお願いできませんか?」とお願いされることが散見されます。これを「歩積み両建預金や」「にらみ預金」と言ったりしますが、低金利の時代に多めに融資をして、それを定期預金にしてもらえればその金利差が金融機関の儲けになりますし、もし返済があやしくなればその定期預金を解約して返済金の一部に充てることができます。こんな定期預金は不必要なので即刻解約しましょう。

次に多いのは、いつも資金繰りを楽にしようと思って、例えば月末のピーク時の資金をいつも当座預金や普通預金にしている会社があります。こうした会社にお薦めなのは「当座借越契約」です。月末のピーク時に足らなくなった資金だけ金融機関から融資を受け、売掛金等の回収ができ次第返済をする契約です。この契約を締結すれば、少しだけの資金不足のタイム・ラグを少ない金利で済ますことができますし、日常的にピーク時の資金を持っていなくても会社の資金繰りに支障が無くなります。それと同時に、その資金のために金融機関から借りている運転資金を最小化でき支払利息の減少にもつながります。ただ、金融機関との信頼関係が前提ですので、支店長などに会社の状況を「月次決算報告書」で説明するなどの努力が不可欠です。

もちろんですが、無借金経営をすることが理想ですし、自己資本比率の高い会社は無借金経営をされている会社が多いことも事実です。ただ、金融機関との良好なお付き合いはすべきです。それは、「まさか」というときの資金需要があるときのためだけでなく、金融機関が持っている情報力やノウハウを活用するためです。例えば、得意先や不動産などの情報や会社をその金融機関がどのように評価しているかが分かります。

 

(5) 自己資本比率の改善の方策~総資産を減少させる(その2、売上債権を減らす)

次に着目したいのが、売上債権(受取手形や売掛金)を減少させることです。売上高を上げることはP/L的思考の代表的な考え方ですが、売上高を上げることが会社の資金の獲得の必須条件です。

問題はその売上高により生じた相手方からお金をもらう権利(これを売上債権と言います)をどのように管理しているかです。理想は、商品やサービスを提供したと同時に現金をもらうことです。そうすれば、長期間回収できない売上債権も発生しませんし、回収不能(貸倒れ)にもなりません。

反対に、営業マンに過度な売上高のノルマを課す営業方法をとるなどした場合や、売上高の多寡により給料が決まる歩合制を採っていたら「架空売上」が発生するリスクが生じます。

売上債権が少なくなればなるほど「総資産」は減少します。まずしなければならないことは、売上債権の分析です。

受取手形を貰っているところは、現金化するまで相当の月日が必要です。今は少なくなったでしょうが業界によっては「台風手形」や(210日サイト、振出日から決済日まで210日の長期手形、古来より9月1日前後に台風が多いのでそのようなネーミングなったと言われています)や「お産手形」と言って(お産になぞらえて決済まで十月十日という超長期手形)と言った信じられない手形が業界(例えばきもの業界)によっては存在します。

こんな手形を持っていたら売上代金が上がれば上がるほど運転資金が必要になります。得意先と交渉をして、受取手形での決済をやめてもらうか、そのサイトを極力小さくしてもらうか、少なくても半金・半手(半分現金で残りの半分を手形)にしてもらうことが大事です。交渉ごとなので、何かのサービスを付加するか、単価の引き下げを交渉材料にしても悪くは無いでしょう。

それでも、受取手形が残るときは、仕入債務(買掛金等)に手形を裏書きするか、安い金利で銀行割引してもらうことで「受取手形」という妖怪のようなものが「総資産」から無くなります。

受取手形は、やっかいなものですからそれで決済しないと仕方ないときの前提としては「与信管理」が必要です。「与信管理」とは、得意先の経営状況を判断して「正常先」なのかどうかを確かめます。そのときに必要なものとしては、得意先の決算書や税務申告書を入手したり、金融機関やリサーチ会社からの「与信情報」の提供を受けることです。前述したように、金融機関との良好な関係はそんな時に役立ちます。また、その評価により、「与信限度」と言って取引ができる上限を設けることが有効です。

次に、売掛金です。有効な手法として「年齢調べ」があります。取引先1件ごとの売掛台帳を作成して、それがいつ発生して、いつ回収されているかをチェックすることです。その回収までに長期間かかっていたり、回収期間に「ムラ」があるところは要注意です。その売上先との取引条件などを記した「契約書」を結んでいるかどうか、また新規の取引先の場合は「契約書」を作成し、それが正しく履行されているかどうかを常に確認しましょう。

有能な営業マンは、その取引先が信用できるかどうかの勘所を知っているようです。例えば、トイレがきちんと掃除されているかどうか、また、受付の人の対応や社内の空気などで分かるそうです。デジタル情報より「アナログ」情報の方が信じられる場合もあります。債権の回収では利益を生みません。場合によっては弁護士などに相談したり、いざとなったらその売掛金を債権回収機関に売買することも可能です。しかし何より大事なことは、不良債権を作らないようにきちっとした管理や情報の収集をすることです。

 

(6) 自己資本比率の改善の方策~総資産を減少させる(その3、在庫を極力少なくする)

意外に効果的に総資産を減少させる方法は在庫を減らすことです。中高年になると、加齢によりよほど意識していないとおなか周りが気になるものです。在庫もそれと同じく、よほど意識していないとついつい在庫過多になってしまします。

経営者や営業マンの潜在的な意識の中で醸成されるものが、「注文即納品」です。そうなると商品のラインナップを増やし、色やサイズもそろえなければなりません。すると、必然的に在庫過多になり、その取扱商品が流行ものであれば、売れ残りを生じさせることになり、バーゲンセールなどで見切り販売するか、食品等で消費期限や賞味期限などがあるものは商品を廃棄することになります。

そうしたことに陥らないようにするため、編み出されたものにトヨタの「カンバン方式」があります。日本の大規模製造業は、子会社、孫会社、ひ孫会社など「立て系列」の「重層型」になっています。「カンバン方式」は、従前の常識を根幹から変える画期的な発想、つまり在庫を持たない、つまり「明日生産する部品は看板に書き込み」それを見た納入業者はそれを見て、あらかじめ定められた部品と数量、納入時間を厳守しなければペナルティーが課せられるというものでした。究極の在庫ゼロ作戦です。

業種、業態により在庫を極限までにゼロに近づけると言った発想の転換が必要になります。そのための工夫や知恵を業界の先進的なところから学ぶとか、営業マン以外の社員からその発想を聞き出すことにより意外な知恵が出てくるものです。

また、消化仕入れ(売上げ仕入れ)のように販売所の一部を貸すといった発想や委託販売では在庫のリスクはなくなります。

それと、大事なことは商品の実地棚卸です。最近ではコンピュータのソフトによって在庫管理をしているところが増えてきていますが、少なくても決算のときは実地の棚卸をして、ソフトの理論値との差額を突き止めることです。そのことにより、在庫の横流しやソフトの不正入力などがないかが検証できます。したがって、実地の棚卸には、営業マンやPCのソフトへの入力をしていない社員に棚卸をしてもらうなどの工夫で内部牽制制度ができる副産物もできます。

 

(7) 自己資本比率の改善の方策~総資産を減少させる(その4、仮勘定をなくす)

B/Sの流動資産の中には、貸付金(誰かに将来の返済を条件にお金を貸したもの)や立替金(役員、従業員、取引先などが払うべきお金を会社が一時的に立て替えたもの)、仮払金(用途が不明な支出で、あとでその原因を究明して適切な勘定科目に振り替えるべきもの)という勘定科目があります。これを「仮勘定」と呼びますが、その金額が異常に大きな会社があります。ここにも、チェックの目を入れることが大事です。

「仮勘定」中には、社長や特定の者が不正流用しているケースや粉飾の手段として使われていることもあります。原因を早期に解明し、もし「不正」なものや「不正常」なものがある場合には、該当する者に「返済計画書」や「債権確認書」を取り交わし、きちんと返済させることが肝要です。また、その金額が大きく問題があると認められるものについては早く弁護士などに相談しましょう。

こうした「仮勘定」の大きな会社は、「金融機関」や「税務署」が不信と感じる一番大きなものです。ずるずると「仮勘定」に置いておくのではなく、むしろその芽を早く取り除く必要があります。そして、そうしたものが発生しないような経理規定を作るべきでしょう。

 

(8) 自己資本比率の改善の方策~総資産を減少させる(その5、固定資産を減らす)

総資産を減少させる最後の項目として固定資産の減少について考えてみましょう。固定資産とは、「会社の収益の源泉となることを前提として取得した投下資産で、長期間の使用ができるもので、その金額が大きいもの」を言います。機械、車両、建物などの償却できるもの(減価償却資産)と償却ができない土地が主なものです。かたちが見えるものなので「有形固定資産」と言います。また「営業権」「特許権等」「ソフトウェア」などのかたちが見えないものを「無形固定資産」と言います。その他「投資有価証券」「子会社株式」のような「投資その他の資産」からなります。

大事なことは、今の流行語でコスパ(コストパフォーマンスの略語で費用対効果を意味します)をどれだけ意識した投資が必要です。

個人的には、利益を直接生まない事務所は賃貸の方が良いと考えます。もし、土地を購入して、そこに自社物件を建てれば使い勝手は良くなるのでついつい購入する「土地神話」がありますが、これから先は、AI技術の発展に伴い10年先が読めない時代になります。どんな時代にも即応できるように、多少の不便さはあっても賃貸物件にすれば、償却のできない土地が総資産を増やすことはないと思います。

同じく、機械や車両もリースにすることも考えた方が良いのではないでしょうか。ただし、リース物件は会計基準の変更より資産計上となりましたが、メンテナンスなどのことを考えると購入をするかどうか、慎重に考えるべきでしょう。

3つの財務分析指標の計算式とその活用(その1)

財務分析は、企業経営者、財務管理者のみならず多くのステークホルダー(その企業の財政状態や収益力が直接・間接に関係する人々をいいます。具体的には、エンドユーザー、従業員、株主、金融機関、売上先、仕入先、外注先、税務署等の行政機関、地域社会などです)にとって、その会社の財務の状況を把握するのに有効です。

しかも、パソコンの普及と会計ソフトの熾烈な開発競争から、もの凄い量の財務分析データを見ることができます。しかし、簿記や会計の基礎知識がないとその指標が意味することを理解することは容易ではありません。いくら多くの分析データあっても「絵に描いた餅」と化してしまいます。つまり会計の専門家でない人に多くを求めるのは酷な話となります。

しかし、今回説明する3つの指標だけをそれなりに理解して、定点観測を続けることができれば経営のあるべき姿(経営戦略)を見いだすために有効だと考えます。

この3つはあくまで私が大事だと思うものですので、「教科書的」には違うかもしれませんが重要なのは、肝心なのは①その分析指標を自分で計算し、②その改善策を練って、③その改善策を実行してみて、④その成果を評価して、⑤次へのステップアップにつなげていくプロセスだろうと思うのです。世に言われる「P→D→C→A」サイクルそのものです。

私が大事だと思う3つの指標は「損益分岐点売上高」「自己資本比率」「総資本対経常利益率」です。

 

損益分岐点売上高

最近の経営指標として「損益分岐点売上高」の応用(損益分岐点売上高の逆数)として「経営安全率」が使われることが多くなってきました。

しかし、その基礎になっている損益分岐点売上高の計算式がまずわからないと、今後の事業計画が机上の空論となります。中小企業に携わる人がまずもって考えることは売上高です。なぜならば、売上高がその会社の器(規模)と考えられるからです。私見ですが、まずは、売上高を年間1億円にすることを目標としましょう。この1億円のラインが「零細企業(個人型事業)」から「小企業(組織型経営)」の脱皮点になると考えています。1億円になれば、社長自身が社長業を自ずとやる必要が出てきます。言い換えれば、組織経営(管理者を配置し、その管理者と責任分担をしていくこと)をして、売上高の増加とともに、現場に入る割合より管理業務のウェイトが高くなって行くと考えられます。

次にめざすべき売上高は10億円です。この域に入るのには相当の苦労が伴います。10億円の壁をなかなか超えられない企業が多いのが私の経験則上あります。売上高10億円を「中企業(もちろん業種や業態によって一概には言えないところもありますが)」と言っても良いと思います。

日本の企業の中で中小企業の占める割合は99.7%です。その中で、売上高が10億円を超える会社は僅か6%強です。労務集約型のサービス業でおよそ100人、製造業ではおよそ50人程度、粗利が少ない卸売業でも20人程度の規模になります。こうした人数を安定的に束ねていくには相当の苦労が入ります。

この程度の売上になると、金融機関の見方も変わってきます。日本政策金融公庫も、国民生活事業(旧国民生活金融公庫)から中小企業事業(旧中小企業金融公庫)に変わる頃だろうと思います。もちろん売上至上主義ではいけませんが、上述したようにステークホルダーの目が変わるのがこの10億円の壁です。

前置きが長くなりましたが、まずは損益分岐点売上高について解説します。

 

(1) 損益分岐点売上高の求め方

(2) 目標売上高の求め方

(3) 損益分岐点売上高とはそもそも何か

損益分岐点は、「売上高」から仕入、外注費・一般管理費・支払利息などを含むすべての「費用」を引いたときに利益がゼロと計算される「売上高」のことを言います。

つまり「損益分岐点」がピッタリの売上高をあげた場合、その企業は「利益も出せていないけれども、赤字も出していない状態」となります。換言すると「最低でも損益分岐点に到達するだけの売上高を獲得していれば、なんとか現状維持をすることができる」と表現することもできます。

英語では「Break Even Point」と言います。損益分岐点売上高では、いささか長いので略して「BEP」と表記することもあります。

 

(4) 限界利益率の求め方

限界利益とは、売上高から変動費(売上が多くなればそれに比例して多くなり、反対に売上が少なくなればそれに比例して少なくなるものを言います。例えば、仕入や外注費、販売手数料などそれに当たります。業種や業態によって違うこともあります)を引いたものを言います。

この考え方は、税金の計算などで使う「制度会計」(過去会計とも言われます)ではなく、「管理会計」(未来会計とも言われます。それでも分かりにくければ経営者会計と呼んでも良いでしょう。)という考え方だからです。厳密さを求められる「制度会計」と違って「管理会計」は、その仕組みを理解し、問題点を把握し、実際の経営に役立てるために使うので余り緻密に計算する必要はありません。

例えば、人件費の内の残業代は変動費になるのではないかと言うことは理論的には正しいかもしれませんが、そんなことをやらなくても「ざっくり」人件費として考えるべきです。肝心なことは、いかに「ざくっと」会社の損益構造を経営者として考えることです。だだし、試運転の時はあれこれ迷うかもしれませんが、なれてきたら「こうだと決めて」継続的にやってみることが肝心です。

 

(5) 固定費とは何か

固定費とは、生産量や販売量の増減に関わらず固定的にかかる経費のことを言います。

具体的には一番比率の高い人件費や減価償却費などが固定費にあたります。また、事務所の賃借料や水道光熱費、コンピュータやソフトなどのリース料、広告宣伝費などといったもろもろの経費も固定費と区分します。

ポイントは、人件費には、社員の給与(皆勤手当や残業代なども含みます)や賞与だけではなく社会保険や労働保険の負担金、福利厚生費や通勤交通費、退職金なども含むことです。

 

(6) 目標利益の考え方

目標利益は、最低限、借入金の1年間の元本返済額とします。そうしないと、借入金の返済のために再度借入をする(自転車操業という言葉で表現されることもあります)つまり、この状態に陥ると、金融機関との信頼関係は相対的に落ちていきます。すると金融機関は返済ができなくなるという一定のリスクに備えて、相対的に金利が高く設定するという悪循環に陥る可能性も考えられます。

さらに、今後の設備計画、人材採用計画、売上規模の拡大などに必要な利益を目標利益加えます。その際、考慮すべきことは、いかに限界利益率を高めていくか、つまり付加価値の高いサービスや商品仕入、製品製造、建設工事などを行うことです。

また、(5)の固定費をいかに少なくするかを検討することも必要です。固定費削減の「3K」ということ言葉も使うこともあります。ここで言う3Kとは、「広告宣伝費」「交際費」「交通費」ですが、その「コツ」は「ムダ」を省くために「費用対効果」を考慮することです。別な表現で言えば、「ムリ」「ムラ」「ムラ」の「3ム」を意識することです。

 

(7) 具体的な算定方法の例

まずはオーソドックスに損益分岐点売上を算出してみましょう。

算式は上記のようにでした。

 

具体的に数字をあてはめてみましょう。

仮に①固定費…3,000万円、②限界利益率…30%とします。

となります。

つまり、1億円の売上高を確保して損益とんとん、黒字も赤字も出ない数字になります。

 

次のステップとしてその応用型で③目標利益…300万円にしたい場合には、

が必要になります。

さらにそれを月次に落としていきます。つまり、必要売上高を毎月に落とし込む作業が必要になります。

どの企業とも、変動要因があります。季節変動(多く売れる月と売れない月をその割合に応じて変動させる)や趨勢変動(扱い商品が伸びているものなのか、衰退気味のものなのかを考慮します)などの要素を活用して、年間目標売上高を毎月の売上高に落とし込んでいきます。

それができて、初めて月次決算の第一歩です。それをいかに早く算出して目標売上高に達していなかったら、どうしてという原因を追及します。そして、その原因を販売戦略に活かしていきます。ある経営者団体で報告をされた経営者曰く「月次決算をきっちりすれば赤字が出るわけない。」と、私もまったく同感です。

その場合、考慮すべきは、例えば①固定費を削減する、②限界利益を上げていく、言い方を変えれば付加価値の高いものにブラッシュアップ(精度を高くすること)するなどを考えることです。戦略無きところには、利益は出ないことを肝に命じてください。因みに、件密にすれば税金のことも考慮すべきですが、まずは基本から習得しましょう。

決して難しいことではありません。まずは、直近の決算書を良く眺めてみましょう。分からなかったら、分かる人に聞きましょう。決して恥ずかしいことではありません。分からないまま放置する方が恥ずかしいことなのです。

99.7%の声を聞け

年の瀬には恒例行事となっている今年あった○○のランキングが話題となります。税理士業会をめぐるランキングのダントツ第一位はなんといっても消費税率の10%への引き上げでしょう。

納税通信(エヌピー通信社発行)10月28日号に「中小企業イジメの消費増税、日本を支える99.7%の声を聞け」というセンセーショナルな記事が掲載されていました。また、中見出しは「今こそ5%への減税を」後見出しには「税制は経団連だけのモノじゃない!」とまるで私の声を代弁してくれているような特集を組んでいました。

記事の内容を要約すると①今回の消費増税によってGDPの牽引力になっている個人消費がさらに冷え込むことは避けられない、②休廃業・解散する企業が増え続けているが消費増税との関連性は否定できない、③先進国のGDPは過去20年で約2倍になっているが日本は1.02というひときわ目立つ低調ぶりで、OECD36カ国中最下位になっていることも消費税の影響といわざるを得ない、④消費税の税制の仕組みから税率の引き上げのしわ寄せは常に弱い立場の下請けなどにきていたが、10%の大台に乗った今後はさらに買いたたきや価格転嫁拒否などの不当な取引が増加するとみられることを指摘しています。

さらに紙面は、「軽減税率、ポイント還元、プレミアム付き商品券などの政策」にも批判的に論評しています。

その一方で、優遇されてきたのは大企業と超富裕層への施策で、①31年間で集めた消費税収は397兆円に上るが、法人3税の税収は275兆円減ってきたこと、②租税措置法や「輸出戻し税」で増税するほど得する仕組みとなっていること、③所得税は、証券優遇税制により所得が1億円を超えると負担が減っていく仕組みで、保有時価総額が1000億円以上の超大株主は2012年の末には12人だったのが、18年には58人に増え保有総額は3.5兆円から17.6兆円と急増したことが記載されています。

こうした状況から、国民や中小企業からは「少なくとも8%へ引き上がる前の5%に戻し、国内消費を喚起すべき」という声が上がり、デフレ脱却のためにも今こそ減税という提案には説得力があり、99%以上を占める中小企業が元気にならなければ日本経済の復興はあり得ないとされ、最後にいま、勇気をもってそれに踏み切るのはあながち無謀な選択ともいえないのではないかと締めくくっています。

過日、私は中小企業家同友会という全国で5万人の会員を目指してがんばっているまじめな中小企業の経営者団体の、とある支部で消費税を中心にした報告をする機会がありました。そのときには上述した記事はなかったのですが、話のあらすじはほぼ同じ内容でした。

そこで私は、中小企業の経営者がこのような事実をあまりにもご存じなかったことに驚きました。

さらに驚いたことはインボイス制度に対する理解がまるでなく、経営に与える大きさに議論白熱しました。

おそらく、スポンサー企業から莫大な広告収入を得ているマスメディアがそうした「不都合な事実」を伝えることをサボタージュしていることが最大の要因なのだと思います。

すでに政党では、日本共産党やれいわ新撰組、社民党が5%への減税をすることで合意をし、他の野党もその方向で協議しています。しかし私たちは、政治家だけに頼ってばかりではいけません。ありとあらゆる機会に、政府にとっての「不都合な真実」を伝える責務があります。

そのためには、このブログをご覧になった方が一番身近な家族、同業者、関与先、ご近所などと消費税について対話し、5%への減税の世論をもり立てることが必要のではないでしょうか。

 

税理士的行動心理学へのアプローチ(後編)~人手不足問題のありかた、自社の社員からのクレーム、後継者対策を考える~

(1) 人出不足対策とその対応策

人手不足は全国であらゆる分野で本当に顕著です。それは少子化によるものが主な原因でしょう。そのように誘導してきたのは政府の責任でもあります。特に中小企業ではそれが際立っています。建設関連業、介護施設、保育園・幼稚園などの分野では死活問題です。
それを打開するために強行採決で「入管法」を変えて安い外国人の労働者が日本で働きやすくしたのです。

二女がドイツで働いていますが、彼女からの情報では外国人の労働者を雇用したら、その企業の責任でドイツ語を教える義務を課しているとのことです。

特に日本語は、文法が他国と違うので就労する外国人労働者も大変な苦労をされていると思います。例えば、「結構です」という言葉は「Yes」にも使い「No」にも使いますが、英語を使う人は信じられないとのことです。さらに日本語を難しくしているのは、漢字、カタカナ、ひらがな、おまけにローマ字まであります。また日本語では主語を使わなくても文章を作れますが、英語では主語がなくては文章になりません。そこで架空の主語で例えば「it」などを使います。一方、英語には尊敬語も謙譲語もありませんし、一度慣れれば英語圏の人が日本語を学ぶより、英語の習得のほうが私の経験上簡単です。

日本は島国ですが、グローバル社会の一員です。せめて、中学生レベルの英語力は身に着けたいものです。私も、今NHKで放送しているラジオ番組の「基礎英語」の勉強を還暦になって始めました。現在、中学3年生の5月号をやっています。どんなに忙しくても、5分だけは勉強をしています。

外国人労働者には、日本語教育を企業の責任でやることが大事です。財政負担が大変な中小零細企業にはその全額を国庫で補助すべきでしょう。また、せめてインバウンドの人と接する事業者や外国人労働者を管理・監督する管理者にはせめて中学3年生レベルの英語力を身につけせることが大事だと思います。同じく財政負担が大変な中小零細企業にはその全額を国庫で補助すべきだと思います。中小零細企業でも、どんどん外国で活躍しています。

今後ますますその勢いが増すと思います。例えば、2013年12月4日に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。それを外国に広めるためには世界共通語でもある英語力の有無で、展開が大きく変わります。専門用語などは通訳がいるにしてもコミュニケーション能力としての英語力があれば、ビジネスも円滑にいくと思います。

また、外語人労働者が日本で働くことで、日本人労働者の賃金が相対的に下がらないようにすることは、政府の責任です。もう一つ、日本の優れた技術やサービスを母国に帰ってからも活用できるような職種に就けることが大事だと思います。例えば、建物の建て方がまるで違う国に優れた日本の建築技術を身に着けても、母国ではまるで役に立ちません。結局、優れた技術を生かせずまったく違う職業に就かざるを得ません。それでは、外国人労働者が日本の高い賃金だけを目的に出稼ぎに来るだけになります。これでは、「win‐win(互いに得をする)」の関係にはなりませんし、国際貢献にもなりません。それをうまくマッチングできるようにするのも政府の責任だと思います。

(2) 社員からのクレームに対する対応

人間にも様々な個性があるように、会社にも個性(社風)があります。もちろん人材確保難の中で、1人でも辞めてもらうことは会社にとって痛手です。もちろん、お互いにどんなに努力しても社風になじめなく辞めることのほうが双方にとって良い場合が例外的にあります。

社員の努力不足で辞める場合には、何らかのシグナルがあります。会社の理念や社風について不満を持っていたり、自分の考え方と違うとクレームを言ってくれる社員には、グッドマンの法則通り対処すればいいのですが、理念や社風になじむ努力をあまりせずに「家庭の事情で」「体調が悪くなったので」などの理由で退職届が出れば、労働基準法上1か月で退職ということになります。しかし退職届が出る前に、何らかのシグナルがあるはずです。経営者だけでなく管理者もそのシグナルに気づけば対応策が打てます。そのシグナルは、「出勤時間が遅くなる」「月曜日に体調不良で有給休暇を取る」「昼休みに誰とも話さないようになった」「愚痴が多くなってきた」「ため息の数が増えてきた」「独り言を言うようになってきた」など様々な変化です。それに気が付く感性を磨く必要性があります。

反対に、会社がとことん努力しても「ちっとも成長しない」「うっかりミスを連発してしまう」「時間を守れないようになってきた」「不必要なムダ話しがやたらと増えた」「失敗の言い訳がすごくうまくなってきた」「失敗を報告しなくなった」「自分の頑張りを他の社員にやたらとアピールするようになってきた」「自分の派閥を作ろうとし始めた」「同僚の忠告を聞かなくなった」などの現象が複数出てきたら、本人だけではなく会社の組織を破壊するようになるので辞めてもらうことの意思決定をしないと、双方が「loss‐loss(お互いが損をする)」になってしまいます。

こんな事にならないためには、社員に年始に目標(社員としても個人としても)を立ててもらって、定期的にヒアリングすることが必要です。少人数の会社であれば社長自らが、できれば4半期、少なくとも半期(できたら賞与の支払い時)、それも無理であれば年1回(決算書ができた時点)にすることが有効だと思います。「話し上手は、聞き上手」という諺がありますが、社員の愚痴や気持ちを本音で引き出すことが会社の成長にも経営者の人間力の向上にもつながります。

(3) 後継者の育成と絡めて

組織が大きくなると、その社員の上司にその役割を委ねましょう。最初は上手くいかないのは当然です。いらだちもあるかもしれませんが、アレコレと指示をしないでグッとガマンするのが、管理者としての資質を高めることにつながります。

経営者は、その管理者のヒアリングをすることに徹します。今の管理者の能力の高さを図ると同時に、どの管理者の「伸びしろ」が高いかどうかで「後継者の選考」につなげていきます。

難しいのはむしろ「同族経営」をしている会社です。経済産業者の調査では、アラフォー世代でのバトンタッチがその後の会社の成長を加速するという統計があります。しかし、山口県は「後継者がいない」というアンケートのワースト2位です。早くから「後継者育成」を考えていかないといけません。バトンタッチする候補者がひとりであれば、なるべくアラフォー時に権限を委譲して、自らは例えば顧問のような役割に徹して、後継者からの相談があるまでに「口」を出してしまっては後継者の「ひとり立ち」につながりません。ガマンが何より大事です。

バトンタッチのタイミングも大事です。例えば、現経営者が「古希を迎えた日」「会社の○○周年、例えば30周年」「後継者の40歳の誕生日」などが考えられます。「バトンタッチの時を日付に落とす」ことで、今、何をなすべきかという「後継者の成長戦略」が立てられます。そして、父としてもその背中を見せることが重要です。

さらに難しいのは、後継者候補が複数人いる場合です。できれば年長者に「後継者」になってもらうことが理想ですが、年長者にその資質があるとは限りません。経営者の能力が高い方を「後継者」にすべきです。年少者を後継者にする場合には、相当な覚悟が必要です。年長者の「役割」をどうするかです。個人的には、別会社(分社するか、子会社にするか)の経営者にするのが最善策と考えますが、「ケースバイケース」でいろいろな選択肢の中から選びましょう。

(4) 最後に…解決策の私案も含め

「モンスタークレーマー」や「パワーハラスメント」や「セクシャルハラスメント」など様々なハラスメントが発生の背後には「社会の荒廃」にあると思います。「ストレス社会」とよく言いますが、そのストレスの元凶は「格差型社会」にあると考えます。猟奇的な殺人事件やストーカー行為なども同質の元凶だと思います。

経済的に言えば、「アベノミクス」の唯一の成功と誇られている「株価至上主義」にあると思います。株価を上げようと思えば、「四半期ごと」の業績を良くしないといけません。そのためには、固定費の中で一番高い人件費を最小限にすることが一番効果的です。それを実現するために財界が時の政権に迫って、労働者派遣法の要件を緩和してきました。また、その一環として「入管法」の改定で外国人労働者を入国しやすくし賃金を安く使う、さらに今般の「働き方改革」も賃金の抑制が狙いです。働く人の権利は次々となくなっていきます。そうした反映が多くの国民のストレスを増幅させていきます。

また、われわれが選んだ政治家が、平気で噓をつく、文書を改ざんする、資料を出さない、「2018ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞とトップ10にも選ばれた「ご飯論法」もまかり通るようになりました。因みに「ご飯論法」とは、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の危険性を国会で野党議員が追及した際に、加藤勝信厚生労働大臣が行った悪質極まりない論点ずらしの話法など異常な事態のことを言います。しかも、重要な法案が数に力を任せて強行採決することなどの民主主義が崩壊しています。その責任は、「立法府の長」と言ってはばからない「行政府の長」にあると思います。つまり、「力の強いもの」がその権力を笠に着て「力の弱いもの」をいたぶるという「本末転倒」なことをしていることをまねしていることもあると思います。

こうした状況を打開するために、私たちも主権者として、国民を幸せにしてくれる議員を選ばないといけません。ところが危険をする人が実に多きことを危惧しています。黙っていたら、白紙委任状を出すことと同一です。

一方、自分たちも自らの人間力を高めるために、様々な人と触れ合い、本音を出し合うことが大事だと思います。良書を読むのも効果的だと思います。そして、何より自分の仕事や日常生活の中でも、誰かの役に立っていると思って行動することが肝要だと考えます。

また、良い会社を作ろうと思えば、「トップダウン」でなく「ボトムアップ」を中心にした「社内民主主義」を確立することが重要だと思います。換言すると、会社で働く人を大事にすることです。そのことが良い製品づくりやサービスにもつながるのではないかと思慮します。そんな組織にするには大変困難な取り組みです。しかし、そうした取り組みが社会全体やられ、「ステップ・バイ・ステップ」で改善していくことが「クレーム」などがなくみんなが幸せと感じる社会に接近していくのだろうと思います。考えていても物事は前進しません。とにかく半歩だけでもいいので歩を前に進めましょう。

税理士的行動心理学へのアプローチ(中編)~悪質な業者へのクレーマー、悪質企業経営者や企業、問題点が多い働き方改革を斬る~

(1) 最近のクレーマーの特性と対応策

日経新聞の2019年2月24日号に「悪質クレーム企業が対策」という大見出しでカスタマーレーマー(以下、カスハラと言います)の実態とその対応策が掲載されていました。

リードには『ささいなミスに暴言を浴びせかけ、上司を読んで土下座を求める。こんな顧客から従業員を守る対策を企業が求められている。執拗なクレームを受けると働く人の意欲が下がり、最後はサービスの低下につながるためだ。かつては顧客の泣き寝入りが問題だったが、今は顧客重視の姿勢が従業員を追いつめる。厚生労働省は働く人を守るための指針作りに動き出す』とありました。

本文を要約すると『ある鉄道会社、駅員がつけているネクタイは引っ張るとすぐに外れる。2017年度には、乗客から駅員の暴力が午後10時から終電までに77件あった。外れるネクタイは、酔って暴力を振るう乗客から身を守る手段の一つだ。カスハラはある日突然、見知らぬ人から受けて精神的に追いつめられる。

消費者の声は本来、企業にサービスの改善を促すものだ。顧客の苦情から商品の不具合がわかり、リコールにつながることも少なくない。一方、客業で働く人の半数以上が暴言や脅迫的な態度などの迷惑行為を受けていた。ごく一部の顧客とのトラブルでも従業員との重いもめ事は他の顧客を不快にする。各企業は、ガイドラインを作成し、警察などに相談したり、カウンセラーにも相談できる体制づくりをしている。

厚生労働省も今の通常国会には、パワーハラスメントを防ぐ措置を企業に義務づける法案を提出する。ハラスメント問題に詳しい弁護士は「厚労省が指針を作っても、クレームが悪質かどうかを判断することは難しい」と指摘。それは、もし正当なクレームだった場合には、企業の機会損失にもなりかねないという。』

AI(人工知能)を活用して、電話やメールなどの内容を分析し、担当者が見逃している顧客の顕在的な不満を解消するシステムを開発したベンチャー企業もあります。また、悪質クレームに対応するための弁護士費用をカバーする新しい損害保険も発売されています。企業がその他多くの対策を練ることが求められています。

(2) 企業とそこで働く人の問題点

反対に、飲食業のスタッフが不適正な動画をネット上にアップして炎上したことも多々発生しています。そのために、大手飲食チェーンが全店休業してスタッフ教育したということにもあるように企業内部からの悪質ないたずらや個人情報の流失、使い込みなど頭の痛いことも数多あります。そういう例は、スタッフに限った話ではありません。

カルロス・ゴーン氏にみられるように企業のトップが企業を食い物にしているモラルハザードもあります。鶏卵大手創業者が外国子会社からの配当のほとんどが非課税になるという方法を悪用したことで、創業者が所得税を約7億円申告漏れされたことが新聞報道されました。その記事を見ると、その端緒が富裕層や多国籍企業が利用しているタックスヘイブン(租税回避地)との関わりを記した「パナマ文書」であったということでした。もっと多くの個人や企業名が記された「パラダイス文書」を追いかけていけば、もっと不正をしている企業経営者や企業もあると推認できます。

(3) 働き方改革の背景と問題点

厚生労働省のホームページから引用すると「時間外労働の上限規制が導入されます」という見出しを出しています。
残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。施行は大企業が2019年4月から中小企業が2020年4月から実施されます。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下を超えることはできません。年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)の労働時間になります。「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内になります。月100時間 未満(休日労働を含む)月80時間は、1日当たり4時間程度の残業に相当します。

また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。
※上記に違反した場合には、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

改正前法律上は、残業時間の上限がありませんでした(行政指導のみ)、としています。

1947年に制定された労働基準法の約70年ぶりの大改正となる働き方改革関連法は、これまで“青天井”だった時間外労働(残業)の上限を決め、違反に罰則を設けたことが特徴でした。

働き方改革を後押ししたのは、2015年に過労自殺した日本最大手広告会社「電通」の新入社員、高橋まつりさん=当時(24)=の違法残業でした。彼女の月の残業は100時間を超え、1日2時間の睡眠を強いられ鬱病を発症しました。夢を持って入社し、将来のある高橋さんのケースは社会問題へと発展し、電通を罰する刑事事件に発展しました。

因みに、日本の長時間労働は国内外から批判の的で「過労死(karoshi)」が初めて英語の辞書に掲載されたのは2002年です。今や「寿司(sushi)」と同じく国際用語になっています。

しかし、この法案は様々な問題点と「偽装」を抱えながら、最近の与党の常とう手段である数の力での強行採決でした。どうして、そんなに拙速にしなければならないのでしょうか。

最大の問題点は、雇用対策法の役割を大きく変質させることです。法律の名称を「雇用対策」から「労働施策」に変え、他の先進国から大きく遅れているといわれている「労働生産性の向上」を目的にしています。また「多様な就業形態の普及」が国の施策と位置付けられています。換言すると「同一労働、同一賃金」という当たり前のことをかなぐり捨て、労働者同士を分断して格差を助長することにつながります。また、労働者保護法制が適用されない働き方も含む「多様な就業形態の普及」を国の施策に加えることは、無権利・低所得の労働者を増大させることにつながります。

さらに、あまりにも低い最低賃金のかさ上げ不足と「都道府県別」に格差があることです。つまり首都圏との賃金格差です。例えば神奈川県の最低賃金(2018年10月1日)は1時間983円です。因みに東京都は985円です。県境である千歳川を挟んでいる静岡県は858円でその差は125円、山口県は802円でその差は181円です。仮に2000時間働くと年間362,000円の差が出ます。それが若年労働力を中心とした首都圏への社会減の要因の一つとなっています。首都圏には公共交通機関が充実していますが、山口県のそれは余りにも不十分で、車がないと実質的に移動ができません。したがって、医療機関の診療報酬のように全国一律とすべきです。

仮にこの法律が施行されても、形式上は時間外労働に押さえられても実質の労働時間は変わらないでしょう。例えば私の義理の息子は、上場企業のエンジニアである素材の試験や研究をやっています。帰宅はほぼ毎日、日付が変わる時間です。休日でも2人の子どもが寝静まって会社に行きます。それは、いったん動き出した実験装置を止めると正確なデータが取れないからだそうです。休日でも、自宅にPCを持ち帰りデータの異変がないか時々見ています。当然、そんな働き方でどこまでが所定内労働時間か残業なのかの線引きをするのは極めて困難です。

また、知人の娘さんは市役所に勤務し毎日相当な残業をされているそうです。予算で賃金が決まっているので残業時間と残業手当がスライドしていません。大阪維新の創設者の橋下氏は、公務員の給料が高すぎるのでそれを民間並みにして「公務員貴族」に大ナタを振るったといいますが、公務員は公僕です。かつては、民間企業よりもはるかに低い賃金で長期間働いていました。いざ災害や火事事件等が発生した場合は命を賭して住民を守る義務があります。現に、東日本大震災の時や消防士や警察官等は自らの命を賭した人がたくさんおられます。民間で働く労働者の賃金を上げることのほうが正論です。財政難であるならば、ムダな公共投資をやめるべきでしょう。

税理士的行動心理学へのアプローチ(前編)~クレームの本質と私の実践~

(1) はじめに

最近時の人となった藤井聡京都大学大学院教授は2018年まで7年間内閣官房参与の要職(防災・減災ニューディール担当)に就かれていました。

一方、経済学も研究分野で2018年11月10日に「10%消費税」が日本経済を破壊する~今こそ真の「税と社会保障の一体改革」を~という書籍を出されました。その主な主張は①速やかに消費税の増税の「凍結」を決定する、②凍結された増税で増えることが見込まれていた税収の代替財源のために、当面は、躊躇なく国債を発行する、③経済成長を目指し、それを通じて、「税収を拡大」して、それを、「消費税の代替財源」としていく(そうすることで早晩、増税するよりもさらに大きく成長し、むしろ「おつり」がかえっている)。④同時に、様々な「税と国民負担」のあり方を見直し、「消費税」に代わる様々な税項目について論議を深め、経済活性化、適正な投資の促進、株式市場の安定化、適正な土地利用の促進等の「公益の増進」を促していく、というものです。その要因はデフレ状況下で消費税を増税すれば「デフレスパイラル」に陥り、日本が「衰退先進国」になるという警鐘を鳴らされています。

その藤井聡教授は、「行動心理学」という学問もその研究テーマだそうです。「行動心理学」とは、例えば「Tax Sallience(税の顕著性)」では、消費税が10%になれば19,800円の商品には1,980円の消費税がかかることが誰にも分かり、特にいつも買い物をされる女性が買い控えをするという実証研究をするものがその学問領域だそうです。

私は藤井先生のような学者でもありませし、経済の専門家でもありません。しかし、実社会の現場の中で皮膚感覚として「行動心理」を見てきた税理士です。そうした経験則などを3回に分けて紹介をします。

(2) クレームは誤訳です

日本では、商品やサービスへの不満をその提供者側に伝えることを一般的には「クレーム」といいます。しかしクレーム「claim」を英語の辞書を引くと、動詞として「主張する」「要求する」、名詞として「主張」「要求」となっています。この誤訳された「カタカナ英語」を正確な英語で表現すると動詞としてはコンプレイン「complain(不平を言う)」同じく名詞で表現するとコンプレイント「complaint(不平)(不満)(苦情)」になりますが、なぜそうなったかわかりません。

間違った「カタカナ英語」は他にもたくさんあります。広島カープファンである私は、マツダスタジアムで「ナイター」観戦をしたいのですがなかなかチケットが取れません。この「ナイター」も間違った「カタカナ英語」です。正しくは「night game」ですが、おそらく運動選手が「play(運動をする)」に「er」をつけて「player(運動選手)」になることに合わせて、「night(夜)」に「er」をつけて「nighter(ナイター)」という誤訳につながったのだと思います。

他にも身近な「カタカナ英語」があります。それは「ホッチキス」です。英語では「stapler(ステイプラ)」といいます。「ホッチキス」は考案者「Hotchkiss」の名による商標です。

(3) クレームの本質は何かを学ぶ

クレームの本質を学ぶには「グッドマンの法則」というものがあります。その法則は大手経営コンサルト会社に所属するジョン・グッドマン氏の調査や理論を顧客ロイヤリティ協会の設立者の佐藤知恭氏が命名し普及させているものです。

その法則から私たちは学ぶことが必要だと考えています。それは3つの法則で構成されています。

第1の法則…クレームをいだいた顧客のうち、実際にクレームを申し立て、そのクレームに対しての解決に満足した顧客のリピーター率は圧倒的に高い。また、不満を持っていてもクレームを申し立てる顧客は10%にも満たない。換言すれば、圧倒的な顧客が何も言わずに去ってしまう。

第2の法則…クレームを抱いてもそれを申し立ていない顧客や実際にクレームを申し立ててもその対応のまずさで不満を持った顧客の悪い噂は、クレームを申し立て満足した顧客の良い噂は前者に比較して、2倍も強く影響を与える。

第3の法則…企業の行う消費者に対してのアピールによって、その企業に対する消費者の好感度が高まり、良い噂が期待されるばかりか、その商品を購入する確率が高まることだけでなく、ひいては自社だけでなくその商品の市場拡大に貢献できる。

この法則は、すべての企業にあまねく当てはまるのではないでしょうか。もちろん、私たち税理士事務所にも当てはまります。この法則を学び、実践することがすごく大事です。

(4) 私のクレーム申し立て術

私は「グッドマンの法則」を少しかじったことで、商品に不満があるときはクレームの申し立てをすることにしています。ただし、苦情を申し立てるときには、まず自分の残念な気持ちを率直に伝え、「いつ」「どこで」「どんなことがあったのか」の客観的な事実を淡々と文書にして、現物とともにメーカーに送付するのを原則としています。その必要のないときに限り、お客様相談室の連絡先が書いている企業には電話連絡をしています。

その中で、とても良い対応をして頂き大ファンになった例と、反対にもう2度とそこでは買わないという例をそれぞれひとつずつ紹介します。

まず、よい例からご紹介します。私の趣味のひとつである登山中に起きたアクシデントです。昨年夏、あこがれの北アルプスの雲ノ平へのアタックした時のことです。天気予報通り、かなりひどい風雨に見舞われました。そんな場合はザック(登山用のリュクサックです)が濡れないようにカバーをかけます。そのカバー(ザックカバーといいます)が破損してザックの中身が大事な財布のお札までずぶ濡れになりました。因みに、登山仲間には、ザックの内部にもビニール袋で防水処理をしている人もいます。私は、「めんどくささ」と「通風が悪くなるのではないか」と思いそんな処理をしていませんでした。

帰宅後すぐにそのメーカーに現物と手紙をつけて送付しました。メーカーに現物が到着するとすぐに「カスタマー・サービス」という部署から早急に原因究明をする旨のメールが届きました。これまたすぐに、その原因が経年劣化によるものとわかりました。そのメーカーでは商品の品番を毎年変え、いつ製造したかをわかるようにしているそうです。なんと15年近く前に製造された商品でした。アウトドア用品は使用しないときに収納袋にずっと入れていたとしたら経年劣化が早く進むので、使用しないときは中身を出して風通しの良いところに保管するのが良いとのアドバイスと、不具合があったところは無償で修理する旨が書かれてありました。

私はそのメーカーの新品を購入することを決め、修理を断るとともに、収納袋に入れていて床下収納庫で保管をしていたものをすべて出してクローゼットに移動させました。

その後現物がメーカーから送付されてきましたが、丁重なお詫びとより良い製品づくりに向けて弊社一同尽力して参る旨が書かれている手紙が添付されていました。

そのメーカーは1975年に社長と2人の山仲間と共に大阪で設立した会社で、機能・軽量・迅速をコンセプトに商品開発をして、現在では約千人の社員を擁するまでに成長しています。アウトドア用品を購入する人々の中で一目置かれています。私もさっそくこのメーカーの製品を購入するとともに、その対応の良さを山仲間に宣伝しています。

悪い例は、私の連れ合いは彼女の個性なのかクレームの申立てはしません。実は、彼女がある「道の駅」で購入したジャムの蓋が空かないのです。ネットでそうした場合の対処方法を調べてやってみても空きませんでした。そこで、私にそのお鉢が回ってきました。私もこれまで経験したやり方で、開けようと試みましたが、どうしても空きませんでした。

そこで、現品を駅長あてに宅急便の着払いで送付しました。私が購入したものではないので、彼女に聞き取りをしましたが、いつ買った物なのか、はっきりしないので手紙の添付ができず、「蓋が空かない」旨と私の連絡先をメモとして入れました。

ところが、待てども暮らせども何の連絡がありませんでした。そこで、私のほうから連絡をすると現品は製造した農家に渡してあるが、まだ連絡がない旨の話でした。それと駅長は名ばかりで、そうしたクレームの責任は売り場にあるとのことでした。私は、例え名ばかりであっても最終責任者はあなたにあると伝え電話を切りました。

しばらくして現品が着払い(807円)で送られてきました。その中には現品だけでした。その後、駅長から「私がやったら問題なく蓋は空きましたよ」との連絡がありました。こちらのクレームに何の答えもありませんでした。今後もこんな対応をしていたらと思うと、この「道の駅」の将来性が心配になりました。

彼女にその顛末を話すと、2度とあの「道の駅」で買い物をしない、とかなりの憤慨ぶりでした。今までの「ファン」から一転しました。

この2つの事例からすべての企業(大も小にかかわらず)が「グッドマンの法則」をもっと学び、実践しなければならないといけないと思います。

迫り来る消費税増税!~私たちの暮らしはどう変わるのか?~【4】

【4】消費税の増税は阻止できる

(1) 財界は消費税の税率をヨーロッパ並みの20%を要求

EU委員会や学者から批判が続出→軽減税率は国家間、企業間に不公平をもたらす→軽減税率の利益を受けているのは大企業だけ→その恩恵を受けるためにロビー活動が盛んになる→低所得者対策にならない→国の税収不足を生じさせている。日本の消費税(地方消費税を含む)は歳入の約28%。標準税率が19%のドイツは約31%→もし10%への引き上げがされたら逆転する→軽減税率をなくせば標準税率を下げられる→中小事業者の事務負担の負担軽減のことも考慮し見直すべきだとEU委員会は考えている。

(2) ドイツのマクドナルドの例

ドイツの軽減税率は7%、標準税率は19%→店内で食べれば19%、お持ち帰りは7%のはず→しかしいずれも同じ価格(内税)→低所得者対策になっていない証拠→ドイツの学者はマクドナルドが悪いのではなく、付加価値税そのものに欠陥があると論評→日本の大手外食業者もその方向性で動いている。→国税庁は最終的には消費者が負担している間接税だと宣伝しているが、その宣伝に惑わされてはならない→消費税は「預かり金」という批判から「預かり金的」と言い直しているが、それも違う。

→あくまで、消費税は価格の中に含まれている。

(3) カナダの付加価値税

カナダの付加価値税は1991年に7%で導入されたが、2006年7月に6%に引き下げ、さらに2008年1月に5%に引き下げられている。

(4) EU委員会では、輸出還付制度の見直しを検討中

不正還付制度の悪用が余りにも多い→日本でも金塊の不正輸入とこの制度の利用で不正還付が横行→輸出企業には還付金を渡さない仕組みを検討している→2022年からの実施の予定と発表→もともと輸出促進税としてフランスで導入された0%課税→これがアメリカとの貿易で軋轢を生んでいる→EUの財界の抵抗は必至→日本でも輸出免税制度がなくなれば、財界も消費税の考え方を変えるはず。

(5) 財界人でも消費税を批判

鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディング名誉顧問「今のタイミングで消費税を上げたら、間違いなく消費は冷え込んでしまう」「国内景気がさらに悪化して、消費の減少、企業倒産の増加、失業率上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある」(『文藝春秋』1月号)→元伊藤忠商事会長、元中国大使の丹羽宇一郎氏「消費増税より資産課税を」「富の再分配で若者の情熱を引き出せる」との新聞インタビュー

(6) 軍事費の無駄遣いを見直すべき

安部首相の「お買い物リスト」は「攻撃型兵器」のオンパレード→自衛隊を「専守防衛」から「海外で戦争する軍隊」に変容させる→イージス・アショアの命中率は50%、その命中率を高めるためミサイル一機が10億円から、いつの間にか40億円に→下表参照→その他不公平税制を改めれば17兆円の財源あり。特に法人税の累進税率化は有効であり、アメリカではこの方法を取っている。何でもマネをする政府はアメリカのすぐれた点のマネしないのか
→消費税(付加価値税)もアメリカには連邦税(州税としてはある)としては存在しない。

(7) 富裕層、大企業から応分の負担を

富裕層対策→上場株式の譲渡・配当を総合課税に、所得税の超過累進課税の最高税率を45%からせめて55%に、住民税を一律10%から、5%~15%の超過累進課税に。

法人の税率を比例税率から超過累進税率に→資本金により5%から45%の5段階にすれば約19兆円の増収になる。

(8) 社会保険料の上限をなくす

税と社会保障というならば、今話題のカルロス・ゴーン氏も年収1億円以上の高額所得者も頭打ちをなくせば→健康保険は月額133.5万円で、厚生年金は月額63.5万円が上限になっている。

(9) 国保料の引き下げと均等割と上限額廃止

全国市町村会が提言している1兆円あれば引き下げは可能→上記(8)を財源にすれば可能になる。

(10) 今後どのように行動したいいのか

思想・信条などの違いを超え消費税の署名運動を→YouTubeを見れば立場の違いを超えて様々な分野の著名人が対談等をしている→自ら話すことも大事だがYouTubeの有効活用も。

迫り来る消費税増税!~私たちの暮らしはどう変わるのか?~【3】

【3】軽減税率は大混乱をもたらす

(1) 軽減税率の対象は、飲食料品と定期購読新聞

高級食材、例えば世界の3大珍味と言われる「トリュフ・フォアグラ・キャビア」と、夜8時になったら半額のシールが貼ってある売れ残りセール食品も同じ税率→新聞は週2回以上発行のものに限る。

(2) 判別しにくい飲食料品

基本は人の食用と飲料に供されるものが軽減税率の対象だが、人が食べるクッキーをペットの犬のおやつにしても軽減税率の対象→人が飲む牛乳をペットのねこが飲んでも軽減税率の対象→ノンアルコールビール(アルコール度数が1%未満)は、軽減税率の対象→甘酒は、「酒」とネーミングされていてもアルコール度数が1%未満であれば、軽減税率の対象→医薬品は標準税率だが、サプリメントや健康食品は軽減税率の対象→オロナミンCは清涼飲料なので軽減税率の対象だが、リポビタンDは医薬部外品なので標準税率となる。

(3) 自販機のジュース類は全て軽減税率の対象だが、飲食店で出すと標準税率

ホテルや旅館の部屋にある冷蔵庫の烏龍茶は軽減税率の対象→宴会場で冷蔵庫にあるものと同じ烏龍茶は標準税率となる。

(4) 牛丼屋で食べると外食になり標準税率だが持ち帰ると軽減税率の対象

店の側にあるベンチで食べても軽減税率の対象→法事のため高級料亭で会食すると標準税率だが、同じ高級料亭から仕出し弁当を取ると軽減税率の対象となる。

(5) かしわ餅の葉は餅と一体になっているので「一体資産」とみなし軽減税率

販売価格が1万円以下で、かつ食品部分の価格が3分の2以上のものに限る。例えば、1万円のうち、8,000円がコーヒーで2,000円がマグカップであれば、一体資産とみなされる。

(6) 外食とは飲食店でテーブルやカウンターのあるところで食事を提供すること

飲食店で容器に入れて持ち帰るものは軽減税率の対象→残した料理を容器に入れて持ち帰るものは標準税率→高級料理店で仕出しを取れば軽減税率の対象だが、ケータリングにすると標準税率となる。

(7) 食堂車で食べると外食になり標準税率、ワゴン車の座席で弁当を食べると軽減税率

食堂車(今は少なくなったが)で食べると会食になり標準税率→食堂車から弁当を持ってきてもらうと軽減税率の対象となる。→コンビニで買って車内で食べれば軽減税率の対象となる。

(8) ミネラルウオーターは軽減税率のだが、水道の水は風呂にも使うので標準税率

氷の販売は食用のものは軽減税率の対象だが、保冷用のものは標準税率→ケーキ屋さんでサービスでくれる保冷剤は軽減税率の対象だが販売するものは標準税率となる。

(9) 重曹は食品に限定されるものは軽減税率の対象

→ただし、ホームセンターで売られている「掃除用」など食品以外の用途にも使用できる旨の記載があれば、標準税率となる。

(10) PayPay、LINE Pay

スマホを持っていない高齢者や未就学児童などは使えない→事業者にとってのメリットはあるのか?

(11) 「ポイント還元」と「軽減税率」

「ポイント還元」と「軽減税率」がセットになることによって、①買う商品②買う店③買い方の三つの要素で税率が3%、5%、6%、8%、10%の5段階になる。

(12) 「ポイント還元」は、カード決済しかできない

多くの高齢者はカードを持っていないし、未成年者もカードを持っていない→販売店もカード対応をするのに設備投資が必要になる→わずか9ヶ月の限定なのにそれで設備投資をするのは採算が合わない→カード会社への手数料も高いし、現金化するまで時間がかかる→マイナンバーカードでも使えるようにして普及率が10%にとどまっているのを飛躍的に増やしたい企図がみえみえである。

(13) プレミアムつき商品券

次の買い物の呼び水になると公明党幹部の発言あり→その商品券を使うと自らが低所得者であることが分かるためかえって使いにくくなるのでは?→それ自体が売買の対象となるので悪徳商法が出てくる可能性あり。

(14) 本来「軽減税率」という言葉を使うのであれば8%ではなく、5%にするのが筋である。

常識的に「軽減税率」という言葉を素直に理解すれば、以前の5%に下げることが当たり前である。

迫り来る消費税増税!~私たちの暮らしはどう変わるのか?~【2】

【2】消費税増税が実施されると どんな影響が起こるのか

(1) 2回延期した消費税増税を平成30年6月の「骨太の方針」に入った。令和元年10月1日から10%の引き上げと複数税率(軽減税率)の実施。

引上げの理由は・・・

「景気回復は、緩やかではあるが長期間にわたって継続しており、今回の回復の長さは戦後2番目となっている可能性が高い。賃金は、春季労使交渉では、中小企業を含め、定期昇給を含む月例ベースで2%程度の高い上昇が続いている。多くの企業で5年連続のベースアップが行われ、2018年についてはその額も大半で前年を上回っているほか、賞与・一時金も前年を大きく上回る水準となっており、年収ベースで3%以上の積極的な賃上げが行われている。」(骨太の方針2018)→急成長には「からくり」がある。政府は平成28年12月、GDP(国内総生産)の計算方法を変更した。それまで算入していなかった「研究開発投資」の項目を追加(いわば粉飾)するなどをした結果、平成27年度の名目GDPは32兆円近く増えて532兆2億円に跳ね上がり、一気に600兆円に近づいた。→賃金についても、「毎月勤労統計」の不正調査の影響で「昨年の実質賃金の伸び率が下がる可能性が予想される」との厚労省の参事官発言、偽装統計は底なしの泥沼化

(2) 平成30年10月15日の臨時閣議決定で正式に意思表示されたという不正確な情報

平成30年10月15日の臨時閣議で、安倍首相は平成31年10月に消費税率10%に引き上げることを表明→このことは新聞やテレビで広く報じられ、大きなニュースとして受けとめられたが、この「表明」が意味することについての認識はさまざまであり、必ずしも共通の理解が得られているとはいえない状況にある。(日経新聞報道)

(3) 特にひどいNHKの報道

平成30年10月の「日曜討論」では、出演者6人中5人が増税論者で、1人が条件付き増税を言ったのみ→「公共放送」なら国論を2分している問題を論議するなら反対論者も半数にすべきが民主主義の原則である。

(4) 菅官房長の発言

リーマンショック級の経済情勢がきたらと言うが既に、GPIFは平成30年10月から12月で約15兆円の損失を被っている→トランプ大統領の発言で世界中が大混乱し、「米中貿易戦争」で消費税増税どころではない→かの竹中平蔵でさえも雑誌「プレジデント新年招福版」で「最初に明らかにしておきたいのは、私は消費税の増税に反対だと言うことです」と発言をしている→その後、安倍首相と二人で夜の会食

…平成31年4月13日の朝日新聞のインタビューで10月に予定されている消費税に反対と明言している。

(5) 首相は「食料品などを軽減税率にするから低所得者の負担はそんなに増えない」と言うが・・・

軽減税率の対象は「食料品の内容物」と定期新聞の購読料だけである。→これらの価格があがらない保証はまるでない→価格決定権者は企業にあり、据え置く義務はない。

(6) 既に政府主導の業界ぐるみが始まっている

10月からの消費税増税にもかかわらず、政府はガイドラインを作って、業界ぐるみで値上げをしている→日本乳業協会は4月1日から1.6%~8.7%、日本アイスクリーム協会は3月1日より4%~20%、10円から20円、日本即席食品工業協会は6月1日より3%~8%、全国清涼飲料連合会は5月1日より20円、日本冷凍食品協会は3月1日から5%~13%まで→日付を業界ごとにずらしている→この値上げは軽減税率のものばかりである。

(7) バス代、電話代、水道代、電気代、ガス代などの公共料金のような庶民の生活必需品は値上げされる

軽減税率は低所得者に配慮したものとは言えない→水道水をペットボトルに詰め替えると軽減税率になるのは明らかにおかしい→ペットボトルで水を買う人は生活にゆとりがある人である。

(8) 軽減税率の対象物品である新聞も・・・

既に日経新聞は2017年11月に4,509円から4,900円に値上げしている→他紙も値上げしたいが購読部数はどんどん減っているので今はできない→特に首相お気に入りの読売新聞の「取り紙」はすさまじく、販売代理店の収益はどんどん減少し廃業も続出している。

(9) 平成31年10月1日に一斉値上げが起きた時の学習効果は・・・?

「一気に景気が冷えこむ」という前回の引き上げ時の「学習効果」で、さまざまな施策(ポイントカードやプレミアム商品券など)で景気の後退をかわそうとしているが、それが終われば元の木阿弥になる→小手先だけの対策(オリンピック開始までの9ヶ月の期間限定)で本質は変わらない。

(10) 結局、先取り値上げによって物価は上昇しても、庶民の収入や賃金は上がらず、年金は下がる

消費者の買い控えがおこり、事業者の売上は伸びない→消費税の滞納は増えるが、大企業の法人税率の引き下げだけは続ける→ますます貧富の差が激しくなり、倒産が増え失業者も増大し経済は大混乱→オリンピック景気も思うようにはならなく、景気は確実に後退し、先進国から落ちこぼれるようなリセッション(景気後退局面)が起きる。