カテゴリー: 経営環境

迫り来る消費税増税!~私たちの暮らしはどう変わるのか?~【4】

【4】消費税の増税は阻止できる

(1) 財界は消費税の税率をヨーロッパ並みの20%を要求

EU委員会や学者から批判が続出→軽減税率は国家間、企業間に不公平をもたらす→軽減税率の利益を受けているのは大企業だけ→その恩恵を受けるためにロビー活動が盛んになる→低所得者対策にならない→国の税収不足を生じさせている。日本の消費税(地方消費税を含む)は歳入の約28%。標準税率が19%のドイツは約31%→もし10%への引き上げがされたら逆転する→軽減税率をなくせば標準税率を下げられる→中小事業者の事務負担の負担軽減のことも考慮し見直すべきだとEU委員会は考えている。

(2) ドイツのマクドナルドの例

ドイツの軽減税率は7%、標準税率は19%→店内で食べれば19%、お持ち帰りは7%のはず→しかしいずれも同じ価格(内税)→低所得者対策になっていない証拠→ドイツの学者はマクドナルドが悪いのではなく、付加価値税そのものに欠陥があると論評→日本の大手外食業者もその方向性で動いている。→国税庁は最終的には消費者が負担している間接税だと宣伝しているが、その宣伝に惑わされてはならない→消費税は「預かり金」という批判から「預かり金的」と言い直しているが、それも違う。

→あくまで、消費税は価格の中に含まれている。

(3) カナダの付加価値税

カナダの付加価値税は1991年に7%で導入されたが、2006年7月に6%に引き下げ、さらに2008年1月に5%に引き下げられている。

(4) EU委員会では、輸出還付制度の見直しを検討中

不正還付制度の悪用が余りにも多い→日本でも金塊の不正輸入とこの制度の利用で不正還付が横行→輸出企業には還付金を渡さない仕組みを検討している→2022年からの実施の予定と発表→もともと輸出促進税としてフランスで導入された0%課税→これがアメリカとの貿易で軋轢を生んでいる→EUの財界の抵抗は必至→日本でも輸出免税制度がなくなれば、財界も消費税の考え方を変えるはず。

(5) 財界人でも消費税を批判

鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディング名誉顧問「今のタイミングで消費税を上げたら、間違いなく消費は冷え込んでしまう」「国内景気がさらに悪化して、消費の減少、企業倒産の増加、失業率上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある」(『文藝春秋』1月号)→元伊藤忠商事会長、元中国大使の丹羽宇一郎氏「消費増税より資産課税を」「富の再分配で若者の情熱を引き出せる」との新聞インタビュー

(6) 軍事費の無駄遣いを見直すべき

安部首相の「お買い物リスト」は「攻撃型兵器」のオンパレード→自衛隊を「専守防衛」から「海外で戦争する軍隊」に変容させる→イージス・アショアの命中率は50%、その命中率を高めるためミサイル一機が10億円から、いつの間にか40億円に→下表参照→その他不公平税制を改めれば17兆円の財源あり。特に法人税の累進税率化は有効であり、アメリカではこの方法を取っている。何でもマネをする政府はアメリカのすぐれた点のマネしないのか
→消費税(付加価値税)もアメリカには連邦税(州税としてはある)としては存在しない。

(7) 富裕層、大企業から応分の負担を

富裕層対策→上場株式の譲渡・配当を総合課税に、所得税の超過累進課税の最高税率を45%からせめて55%に、住民税を一律10%から、5%~15%の超過累進課税に。

法人の税率を比例税率から超過累進税率に→資本金により5%から45%の5段階にすれば約19兆円の増収になる。

(8) 社会保険料の上限をなくす

税と社会保障というならば、今話題のカルロス・ゴーン氏も年収1億円以上の高額所得者も頭打ちをなくせば→健康保険は月額133.5万円で、厚生年金は月額63.5万円が上限になっている。

(9) 国保料の引き下げと均等割と上限額廃止

全国市町村会が提言している1兆円あれば引き下げは可能→上記(8)を財源にすれば可能になる。

(10) 今後どのように行動したいいのか

思想・信条などの違いを超え消費税の署名運動を→YouTubeを見れば立場の違いを超えて様々な分野の著名人が対談等をしている→自ら話すことも大事だがYouTubeの有効活用も。

迫り来る消費税増税!~私たちの暮らしはどう変わるのか?~【3】

【3】軽減税率は大混乱をもたらす

(1) 軽減税率の対象は、飲食料品と定期購読新聞

高級食材、例えば世界の3大珍味と言われる「トリュフ・フォアグラ・キャビア」と、夜8時になったら半額のシールが貼ってある売れ残りセール食品も同じ税率→新聞は週2回以上発行のものに限る。

(2) 判別しにくい飲食料品

基本は人の食用と飲料に供されるものが軽減税率の対象だが、人が食べるクッキーをペットの犬のおやつにしても軽減税率の対象→人が飲む牛乳をペットのねこが飲んでも軽減税率の対象→ノンアルコールビール(アルコール度数が1%未満)は、軽減税率の対象→甘酒は、「酒」とネーミングされていてもアルコール度数が1%未満であれば、軽減税率の対象→医薬品は標準税率だが、サプリメントや健康食品は軽減税率の対象→オロナミンCは清涼飲料なので軽減税率の対象だが、リポビタンDは医薬部外品なので標準税率となる。

(3) 自販機のジュース類は全て軽減税率の対象だが、飲食店で出すと標準税率

ホテルや旅館の部屋にある冷蔵庫の烏龍茶は軽減税率の対象→宴会場で冷蔵庫にあるものと同じ烏龍茶は標準税率となる。

(4) 牛丼屋で食べると外食になり標準税率だが持ち帰ると軽減税率の対象

店の側にあるベンチで食べても軽減税率の対象→法事のため高級料亭で会食すると標準税率だが、同じ高級料亭から仕出し弁当を取ると軽減税率の対象となる。

(5) かしわ餅の葉は餅と一体になっているので「一体資産」とみなし軽減税率

販売価格が1万円以下で、かつ食品部分の価格が3分の2以上のものに限る。例えば、1万円のうち、8,000円がコーヒーで2,000円がマグカップであれば、一体資産とみなされる。

(6) 外食とは飲食店でテーブルやカウンターのあるところで食事を提供すること

飲食店で容器に入れて持ち帰るものは軽減税率の対象→残した料理を容器に入れて持ち帰るものは標準税率→高級料理店で仕出しを取れば軽減税率の対象だが、ケータリングにすると標準税率となる。

(7) 食堂車で食べると外食になり標準税率、ワゴン車の座席で弁当を食べると軽減税率

食堂車(今は少なくなったが)で食べると会食になり標準税率→食堂車から弁当を持ってきてもらうと軽減税率の対象となる。→コンビニで買って車内で食べれば軽減税率の対象となる。

(8) ミネラルウオーターは軽減税率のだが、水道の水は風呂にも使うので標準税率

氷の販売は食用のものは軽減税率の対象だが、保冷用のものは標準税率→ケーキ屋さんでサービスでくれる保冷剤は軽減税率の対象だが販売するものは標準税率となる。

(9) 重曹は食品に限定されるものは軽減税率の対象

→ただし、ホームセンターで売られている「掃除用」など食品以外の用途にも使用できる旨の記載があれば、標準税率となる。

(10) PayPay、LINE Pay

スマホを持っていない高齢者や未就学児童などは使えない→事業者にとってのメリットはあるのか?

(11) 「ポイント還元」と「軽減税率」

「ポイント還元」と「軽減税率」がセットになることによって、①買う商品②買う店③買い方の三つの要素で税率が3%、5%、6%、8%、10%の5段階になる。

(12) 「ポイント還元」は、カード決済しかできない

多くの高齢者はカードを持っていないし、未成年者もカードを持っていない→販売店もカード対応をするのに設備投資が必要になる→わずか9ヶ月の限定なのにそれで設備投資をするのは採算が合わない→カード会社への手数料も高いし、現金化するまで時間がかかる→マイナンバーカードでも使えるようにして普及率が10%にとどまっているのを飛躍的に増やしたい企図がみえみえである。

(13) プレミアムつき商品券

次の買い物の呼び水になると公明党幹部の発言あり→その商品券を使うと自らが低所得者であることが分かるためかえって使いにくくなるのでは?→それ自体が売買の対象となるので悪徳商法が出てくる可能性あり。

(14) 本来「軽減税率」という言葉を使うのであれば8%ではなく、5%にするのが筋である。

常識的に「軽減税率」という言葉を素直に理解すれば、以前の5%に下げることが当たり前である。

迫り来る消費税増税!~私たちの暮らしはどう変わるのか?~【2】

【2】消費税増税が実施されると どんな影響が起こるのか

(1) 2回延期した消費税増税を平成30年6月の「骨太の方針」に入った。令和元年10月1日から10%の引き上げと複数税率(軽減税率)の実施。

引上げの理由は・・・

「景気回復は、緩やかではあるが長期間にわたって継続しており、今回の回復の長さは戦後2番目となっている可能性が高い。賃金は、春季労使交渉では、中小企業を含め、定期昇給を含む月例ベースで2%程度の高い上昇が続いている。多くの企業で5年連続のベースアップが行われ、2018年についてはその額も大半で前年を上回っているほか、賞与・一時金も前年を大きく上回る水準となっており、年収ベースで3%以上の積極的な賃上げが行われている。」(骨太の方針2018)→急成長には「からくり」がある。政府は平成28年12月、GDP(国内総生産)の計算方法を変更した。それまで算入していなかった「研究開発投資」の項目を追加(いわば粉飾)するなどをした結果、平成27年度の名目GDPは32兆円近く増えて532兆2億円に跳ね上がり、一気に600兆円に近づいた。→賃金についても、「毎月勤労統計」の不正調査の影響で「昨年の実質賃金の伸び率が下がる可能性が予想される」との厚労省の参事官発言、偽装統計は底なしの泥沼化

(2) 平成30年10月15日の臨時閣議決定で正式に意思表示されたという不正確な情報

平成30年10月15日の臨時閣議で、安倍首相は平成31年10月に消費税率10%に引き上げることを表明→このことは新聞やテレビで広く報じられ、大きなニュースとして受けとめられたが、この「表明」が意味することについての認識はさまざまであり、必ずしも共通の理解が得られているとはいえない状況にある。(日経新聞報道)

(3) 特にひどいNHKの報道

平成30年10月の「日曜討論」では、出演者6人中5人が増税論者で、1人が条件付き増税を言ったのみ→「公共放送」なら国論を2分している問題を論議するなら反対論者も半数にすべきが民主主義の原則である。

(4) 菅官房長の発言

リーマンショック級の経済情勢がきたらと言うが既に、GPIFは平成30年10月から12月で約15兆円の損失を被っている→トランプ大統領の発言で世界中が大混乱し、「米中貿易戦争」で消費税増税どころではない→かの竹中平蔵でさえも雑誌「プレジデント新年招福版」で「最初に明らかにしておきたいのは、私は消費税の増税に反対だと言うことです」と発言をしている→その後、安倍首相と二人で夜の会食

…平成31年4月13日の朝日新聞のインタビューで10月に予定されている消費税に反対と明言している。

(5) 首相は「食料品などを軽減税率にするから低所得者の負担はそんなに増えない」と言うが・・・

軽減税率の対象は「食料品の内容物」と定期新聞の購読料だけである。→これらの価格があがらない保証はまるでない→価格決定権者は企業にあり、据え置く義務はない。

(6) 既に政府主導の業界ぐるみが始まっている

10月からの消費税増税にもかかわらず、政府はガイドラインを作って、業界ぐるみで値上げをしている→日本乳業協会は4月1日から1.6%~8.7%、日本アイスクリーム協会は3月1日より4%~20%、10円から20円、日本即席食品工業協会は6月1日より3%~8%、全国清涼飲料連合会は5月1日より20円、日本冷凍食品協会は3月1日から5%~13%まで→日付を業界ごとにずらしている→この値上げは軽減税率のものばかりである。

(7) バス代、電話代、水道代、電気代、ガス代などの公共料金のような庶民の生活必需品は値上げされる

軽減税率は低所得者に配慮したものとは言えない→水道水をペットボトルに詰め替えると軽減税率になるのは明らかにおかしい→ペットボトルで水を買う人は生活にゆとりがある人である。

(8) 軽減税率の対象物品である新聞も・・・

既に日経新聞は2017年11月に4,509円から4,900円に値上げしている→他紙も値上げしたいが購読部数はどんどん減っているので今はできない→特に首相お気に入りの読売新聞の「取り紙」はすさまじく、販売代理店の収益はどんどん減少し廃業も続出している。

(9) 平成31年10月1日に一斉値上げが起きた時の学習効果は・・・?

「一気に景気が冷えこむ」という前回の引き上げ時の「学習効果」で、さまざまな施策(ポイントカードやプレミアム商品券など)で景気の後退をかわそうとしているが、それが終われば元の木阿弥になる→小手先だけの対策(オリンピック開始までの9ヶ月の期間限定)で本質は変わらない。

(10) 結局、先取り値上げによって物価は上昇しても、庶民の収入や賃金は上がらず、年金は下がる

消費者の買い控えがおこり、事業者の売上は伸びない→消費税の滞納は増えるが、大企業の法人税率の引き下げだけは続ける→ますます貧富の差が激しくなり、倒産が増え失業者も増大し経済は大混乱→オリンピック景気も思うようにはならなく、景気は確実に後退し、先進国から落ちこぼれるようなリセッション(景気後退局面)が起きる。

迫り来る消費税増税!~私たちの暮らしはどう変わるのか?~

【1】消費税は平成に始まり令和で大きく変わるのか、消費税の歴史を振り返る

導入前夜…昭和の話

『政界で消費税(付加価値税)が話題に上ったのは昭和45年でした。欧州の税制視察から帰国した自民党の水田三喜男政調会長は「国民生活向上のための財源として間接税導入は必要だ」と語りました。高度成長が終われば、直接税の所得税収に頼る歳入構造は限界を迎えるという問題意識を持っていました。

具体的な議論が始まったのはそれから約10年後でした。当時の大平正芳首相が昭和54年1月、一般消費税の昭和55年度からの導入準備を閣議決定すると、野党はこぞって反対しました。小売業者や消費者団体の反発を受け、自民党内でも慎重論が台頭、同党から200人以上が参加した財政再建議員懇談会は増税の前提として「歳出の無駄の見直し」を掲げ、導入は時期尚早と訴えました。

昭和54年10月の衆院選の直前、日本鉄道建設公団のカラ出張問題など政府機関の大規模な不正経理問題も明らかになり、各方面から集中砲火を浴びた大平首相は選挙戦のさなか、増税を断念しました。

政府はその後「増税によらない財政再建」を掲げました。マイナス・シーリングによる厳しい歳出抑制や、国鉄、電電公社、専売公社などの民営化を掲げた中曽根康弘首相が売上税法案を手掛けることができたのは、その政権の終盤に入ってからでした。

慎重に準備を進めた中曽根首相は「公約違反」という批判に足をすくわれました。昭和61年7月の衆参同日選の前、記者会見で「多段階、普遍的、網羅的で投網をかけるような大型間接税はとらない」「国民や自民党員が反対する大型間接税はやらない。この顔が嘘をつく顔に見えますか?」と強気な発言し、同日選で圧勝した後に売上税導入を打ち出し、猛反発を浴びました。

当然、嘘をついたことによる国民の反発は強く、同年2~3月にかけて都内各地で「売上税反対集会」が開催され、昭和62年3月の参院岩手補選で自民党候補が売上税反対を掲げた社会党候補に敗北し、4月の統一地方選でも自民党退潮が鮮明になり、売上税法案は廃案となりました。』
※2019年5月8日 日本経済新聞電子版より引用

『その後、中曽根内閣は4月23日に原健三郎議長の調停案を受けて、売上税の通過を断念したが、この調停案には「税制改革問題は、今後の高齢化社会に対応する等、将来の我が国の財政需要を展望するとき、現在における最重要課題の一つであることはいうまでもない」と再び大型間接税導入の火種になる文章が残されていました。』
※2016年2月9日 消費税増税に反対するブログより引用

導入時…平成元年4月1日

消費税導入が決定されたのは、昭和63年12月24日、竹下政権のときです。そして、わずか4ヵ月後の平成元年4月1日に実施されました。導入までの議論の長さを考えると、異例の速さともいえる展開です。

『消費税導入の理由は、国家による税の再分配機能の視点から考えたとき、所得課税(法人税を含む)には所得の再分配機能、消費課税(酒税等を含む)には消費力の再分配機能、資産課税(固定資産税や相続税)には資産の再分配機能があるとされています。年金や生活保護等の社会保障制度は、消費力を再分配しているため、再分配機能の視点からは消費税が合致していると考えられ、実際に社会保障制度が充実している欧州国家では消費税率が高いところが多いことから、現実問題としても日本は将来予想される少子高齢化にともない社会保障支出が高まることが分かっていたことにあります。

また、シャウプ勧告以後から続いた所得税などの直接税中心の制度から、消費税のような年金生活高齢者や貯蓄生活者層などを含む幅広い各層からも広く薄く徴収することのできる間接税とのバランスが取れた税体系に変えるべきだという議論がありました。概ねこれらの理由を中心とした議論から消費税が導入されたのです。』
※フリー百科事典「ウィキペディア」 日本の消費税議論より引用

ちなみに、「消費税」というネーミングは、いかにも「消費者が税を負担する」イメージを強くするためのもので、EU諸国の「VAT(付加価値税)」のように「インボイス」を発行して「事業者が税の負担をする」ということがないとしたため大反対運動をした多くの中小企業者を煙に巻いたのです。実際に消費税法には、「消費者」とか「転嫁」を強制する条文はありません。

『消費税は元々「直間比率の是正」という文脈で説明されてきましたが、その後は社会保障→財政再建→被災地復興→世代間の公平な負担とその時の為政者のご都合で変化しています。

一般消費税導入以前には、奢侈品・贅沢品とみなされるものについて、個別消費税の一種である「物品税」が課されていましたが、対象となる物品の範囲、税率、指定のタイミングなどをめぐって企業側から不公平感が指摘されることもありました。』
※フリー百科事典「ウィキペディア」 日本の消費税議論より引用

具体的には、自動車、電化製品、ゴルフ用品、毛皮製品、宝石類等に課税されており、奢侈度で税率が異なっていました。毛皮製品やゴルフ用品、水上スキー、普通の家具、日本酒の特級酒・一級酒、コーヒー等に対して課税されていたのですが、高級織物、テニス用具、スキー、桐の家具、漆塗りの家具、日本酒の2級酒、紅茶・緑茶等には課税されていませんでした。類似製品でありながら課税について大きく異なることから、不公平感が指摘されるようになりました。もちろん生活必需品は非課税になっていました。

また、所得水準が上昇し、国民の価値観や消費態様の多様化もあって、消費支出全体の中から課税すべき物品やサービスを客観的基準によって、選択し、特定するのが困難となってきました。このように直面している真に新しいカテゴリの商品のうちは対象にならず、法令の改正などを経るためにある程度普及してから課税対象になることが可処分所得の相対的に少ない世帯にとって新商品の入手をいっそう困難にする結果となるなどの問題は、広く財を対象にする消費税では生じにくいという論議がされるようになりました。当時は公平の論議として「垂直的公平」と「水平的公平」のいずれが「公平」なのか論議が伯仲しました。

「物品税」は贅沢品を中心に課税され、食品などの生活必需品は課税されなかったことから富の再分配にかなう利点も存在しましたが、多くの反対論議を押し切る形で昭和63年の税制改革による消費税の導入に伴い、平成元年4月1日に廃止されました。

『消費税は創設当時から「逆進性が強いこと」が懸念されていました。つまり、直接税は、所得の少ない人ほど負担が軽く、所得の多い人は負担が重い累進性があります。所得の多い人ほど高い税金を払う所得税と異なり、消費税は消費のみによって決まる税制であるため、所得が多い人も少ない人も消費額に対しては同じ税率となります。

そのため、消費税は所得が少ないほど不利な税制(逆累進的税制)だという指摘がありました。所得の少ない人は貯蓄する余裕がなく、所得の多くの割合を消費に回してしまう傾向があるので、所得に対してはより高い割合で消費税を払わねばならなくなるからです。また、消費税は収入が無い人でも消費する際に課税されるため、所得が低い人ほど負担感が大きくなります。実際、利子や配当などの資本所得を得られる金融投資には消費税はかからないため、こうしたものに投資する余裕がある人(≒所得の多い人)ほど有利な(所得に対する税負担が少ない)税制となります。一方、貯蓄を切り崩して消費に回せばそこに消費税がかかるが、一生使われなかった貯蓄には(相続税は控除しきれない分に課されますが)消費税はかからないことも、消費税が、貯蓄から消費に回す額が相対的に多い人(≒所得の少ない人)に不利な税制と言われる原因です。

日本の事例では平成14年の総務省「家計調査」にもとづく勤労者世帯の所得階級別消費税負担率と所得税負担率の計測によれば、所得がもっとも低い分類階層においては所得の2.8%にあたる消費税を負担しており、これは最高所得分類階層が2.1%であったことから逆進性の存在が確認できます。所得税については負担率が4%に対し最高所得階層では12%であり累進的です。またこの消費税率が10%に上昇した場合、年収1300万円世帯の消費税負担は4%程度、年収125万円では9%程度と逆進性が高まるとの試算もあります。』
※フリー百科事典「ウィキペディア」 日本の消費税議論より引用

『平成9年4月1日、橋本内閣のもとで、消費税率は3%から5%に増税されました。導入から8年経ち初めての増税です。またこの増税では地方消費税が導入され、5%のうち1%は地方税となりました。

ただ、この時期はバブル崩壊後の不良債権処理の最中だったため、増税後に金融機関が次々と倒れました。「消費税増税がバブル崩壊後の長引く不況の原因」とまで言われました。その後も増税の必要性は再々主張されましたが、5%の時代は結局17年も続きました。

平成24年8月に「社会保障と税の一体改革」の名のもとに、消費税の税率引き上げ法案が民主党の野田政権で成立しました。この増税も反発が大きく、その後衆院選で民主党は大敗しました。

そして平成26年4月1日、消費税は5%から8%に増税されました。このときは増税による事業者側への影響を考慮して、平成16年に始まった税込価格での表示も、特例として税別価格での表示が認められるようになっていました。』
※2018年12月27日 消費税・軽減税率がよくわかる情報ポータルサイト 消費税・軽減税率情報Café 平成と共に歩んだ消費税の歴史、そして令和へ より引用

しかし、その増税の反動で、平成が終了としている今日でも「デフレ状態」は続き、経済格差は大きくなり、GDP(国内総生産)の約7割を占める消費は一向に増加の兆しが見られません。

変貌時…令和元年10月1日

そしていよいよ令和元年10月1日に、法律上は消費税率が10%になります。しかし、景気の判断、国民世論、政治上の思惑できわめて流動的です。

本来は平成27年10月から10%への増税予定でしたが、政治的な思惑などで2回延期をされ、4年も延期されてようやくの増税法案です。

消費税が10%にもなると、逆進性の影響で低所得者の負担はかなり大きくなります。そのため今回の増税は、前回と同じ轍を踏まないように様々な対策が取られていますが、どの対策も多くの国民の賛同が得られていません。また、政権内部にも動揺が見られます。4月18日には安倍首相の側近中の側近の萩生田田幹事長代行(前内閣官房副長官)が、6月の日銀の短期経済観測調査を見てからの判断と解散総選挙をちらつかせるような発言をし、麻生財務大臣等がそれを打ち消すような動きをしています。

7月にある参議院選挙は、自民党にとって大変苦しい選挙になっています。夏の参議院選挙の前哨戦と言われた4月21日の大阪と沖縄の衆議院補欠選挙で自民党は2敗を喫しました。平成24年末の第二次安倍内閣発足以降、自民党が国営補選で敗れたのは平成28年の衆院京都3区補選(候補者を立てませんでした)を除いて初めてです。
仮に、今まで2回のような政治的思惑で3度目の延期がなされると、参議院選挙と解散総選挙のダブル選挙をすれば自民党の大勝となるのではないでしょうか。

しかし一方で、政府は日本経団連からは20%、IMF(国際通貨基金)からは23%から30%の消費税率にするように迫られています。また、軽減税率(現状税率)と標準税率の差が2%しかないということは、EU諸国のほとんどの国と大きく乖離しています。その是正も視野にいれていることだと思慮されます。

政治的な思惑でなく、デフレ状態で消費税を増税することで税収は下がるという経済的な側面と国民の大きな世論の高揚の両面で消費税増税を止めないとすでに「衰退先進国」といわれている日本がますます急激に衰退すると考えられます。

和暦 西暦 首相 出来事 詳細
昭和54年 1979年 大平正芳 一般消費税導入が打ち出される 閣議決定までされたが、その年10月の選挙で自民党が大敗した。この法案は頓挫した。その導入の目的は、「財政再建」で税率は5%であった。翌年ハプニング解散で衆参同日選挙に打って出たが、その第一声中に、体調を崩し現職首相が急逝し、その弔い合戦で自民党が大勝した。
昭和62年 1987年 中曽根康弘 売上税法案が国会提出される 2月、消費税と同様の大型間接税である売上税の導入を柱とした関連法案を国会提出した。しかし、前年に行われた衆参同日選で中曽根首相は「国民が反対する大型間接税と称するものはやらない」「皆さん、この顔がうそをつく顔に見えますか?」などと遊説で発言していた。このため国民が強く反発し、売上税法案は5月に廃案になった。小売業界からの反発が大きく、更に直後の選挙で自民党が敗れたことで廃案となる。税率は5%であった。
昭和63年 1988年 竹下 登 消費税法成立 昭和63年11月に発足した竹下内閣は、税制の抜本改革を掲げ、物品税を廃止すると共に、消費税の導入法案を翌年7月の臨時国会で提出。大平一般消費税、中曽根売上税が5%であったが、「消費税」は税率3%で提案された。
竹下は消費税導入と同時に、法人税、所得税、相続税など総額2兆円を上回る程度の減税を実施する考えを示した。こうした消費税を上げる代わりに、大企業や富裕層向けの減税を進め、国民の不満を解消するやり方は現在の安倍内閣まで続くことになる。
日本初の付加価値税である消費税が、12月24日可決、成立された。
平成元年 1989年 消費税法施行 4月1日より税率3%の消費税がスタートした。しかし1988年当時、政界では総理自身や安倍晋太郎などの主の幹部も関われる「リクルート事件」が大きな問題となっていた。その責任をとる形で同年6月退陣に追い込まれる。
平成6年 1994年 細川護煕 国民福祉税導入構想 消費税廃止と国民福祉税(税率7%)の導入を記者会見で発表したが、国民に総スカンされ、即日白紙撤回した。
村山富市 増税法案が成立 社会党委員長が首相になるという変則的な内閣の元で平成9年に消費税を5%に増税することが決定される。
平成9年 1997年 橋本龍太郎 消費税率5%へ増税 山一證券破綻が破綻に象徴されるようなデフレ状況下の中で4月1日より税率5%の消費税がスタートする。
平成21年 2009年 鳩山由紀夫 政権交代 年金記録問題や道路特定財源制度などの政治課題を始め、1年で首相が投げ出し辞任をする自民党への批判を争点に掲げるなか日本の選挙史上で過去最高を記録し圧勝して、日本政治史初の本格的な政権交代を実現した。
平成23年 2011年 野田佳彦 消費税増税案の提出 「税と社会保障の一体化」を大義に税率を平成26年8%、平成27年10%とする案が税制調査会に提出される。
平成24年 2012年 上記案が可決 参院本会議で可決成立し、軽減税率導入も民自公の3党合意。このことが、民主党分裂のきっかけとなった。
平成26年 2014年 安倍晋三 消費税率8%へ増税 緩やか景気回復の兆しはあったが、デフレが続く中、4月1日より3党合意の税率8%の消費税がスタートする。
10%への増税を延期 平成27年10月に予定していた消費税率10%への引き上げを平成29年4月まで1年半延期し、衆院解散・総選挙に踏み切る。延期の理由を「今年4月の消費税率引き上げに続き、2%上げることは個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却も危うくなる」と説明。「税制こそ議会制民主主義と言ってもいい。税制において大きな変更を行う以上、国民に信を問うべきであると考えた」と訴え大勝した。
平成28年 2016年 10%への増税を再延期 5月の伊勢志摩サミットで、あらゆる指標が「平成20年のリーマンショックと同様に悪化している」とするデータを示し、各国首脳に再延期の理由を説明。同時に参院選で国民の真意を党と言い、6議席増の大勝をした。
平成30年 2018年 増税と軽減税率の導入表明 平成31年10月に消費税率を10%に増税すること、軽減税率を導入することが表明。景気条項を外す一方、再びリーマンショック級の景気悪化があればとの含みも持たせた。

2018年12月27日 消費税・軽減税率がよくわかる情報ポータルサイト 消費税・軽減税率情報Café 平成と共に歩んだ消費税の歴史、そして令和へ 消費税のあゆみ一部加筆

「改元」に際して「元号」の取り扱いを変えたら?~仕事でもプライベートでも扱いにくい「元号」~

平成という元号が終わり、4月1日に新しい元号が発表されます。安部首相は当初、4月10日に財界などが天皇ご在位30年の「お祝いと感謝の集い」を開くことから、翌11日に新元号を公表する方向で検討を進めてきました。ところが、米マイクロソフト社の基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」の更新が間に合わず、企業の決算作業が混乱しかねないことが判明したことに加え年金や失業手当の給付に支障をきたす恐れもあるため、4月1日に前倒しして公表することにしました。

平成天皇の正式名は明仁(あきひと、1933年〈昭和8年〉12月23日生まれ)で、日本の第125代天皇(在位: 1989年〈昭和64年〉1月7日から)です。

明仁天皇は、平成最後の誕生日のメッセージを、途中涙ながらに「平和」と「反戦」に対する強いお気持ち、皇族以外の女性を伴侶とした美智子様に対する労いの言葉、また、火炎瓶を投げられるという事件もありながらも11回も沖縄訪問された思いを熱く語られました。

それはまるで「県民と寄り添いながら」と言いながら「辺野古基地」の埋め立て工事を平然とやってのける安倍首相を皮肉るように私には聞こえました。そして、県知事選挙で公明党(創価学会)を含む徹底的な組織選挙と小泉進次郎議員など人気高い議員を大量動員しながら大惨敗を喫したことや埋め立て工事区域に軟弱地盤の存在がわかり当初の予算が10倍の約1兆円かかること、台風の影響で予定していた桟橋が使えず遠方から民間の桟橋を借りてまで既成事実を作るために埋め立て工事をすることを考えたとき私の頭は思考停止になります。

明仁天皇は、このお歳でありながらも憲法で定める「象徴天皇」とは何かと自問自答しながら、国内の被災地を初め海外にも旺盛に渡航されるなど、多くの公務を遂行されたことには敬意を表します。

私は明仁天皇に対するリスペクトとは別の観点、つまり職業会計人としてその実務面での煩雑さから「元号(和暦とも言いますが)」の使用を替えた方がいいと考えます。政府は何かにつけて「グローバル化」の必要性を論じますが、「元号」の使用を当たり前のように使います。もし新しい「元号」になれば、所得税の確定申告書の生年月日欄が「明治」「大正」「昭和」「平成」そして新しい「元号」の5つが存在することになります。

もちろん「明治」の終わりは1912年生まれなので齢107歳になるので極々少数です。因みに、国内最高齢は鹿児島県喜界町の田島ナビさんで117歳、男性の最高齢は北海道足寄町の野中正造さんで112歳、奇しくも南の孤島の女性と北の最果ての街の男性とは興味深いですね。

「大正」の終わりは1926年生まれなので93歳となります。「人生100年社会」と言われる時代になったので少数ながら元気でおられると思います。私の父は大正9年(1920年)生まれでした。昨年4月29日「七回忌」の法要を営みましたが、最後は認知症が酷くなり私のことも認識できなくなっていました。できれば「健康寿命」での100歳を迎えたいものです。例えば、山口市湯田温泉出身で聖路加病院の名誉院長だった日野原重明先生は満105歳まで健康で天寿を全うされました。また私が敬愛する教育学者で、何回も講演も聴き、本も愛読した大田 堯(たかし)先生も昨年12月23日、100歳で昇天されるまでお元気だったそうです。おそらく、お二人とも規則正しい生活と何にでも興味を持ち、いろいろなことに挑戦されたからだと推測されます。

「昭和」の終わりは1989年生まれなので30歳(三十路)を迎えます。この年は、「天下の悪税」だと個人的に強く思う「消費税」が4月1日から実施された年です。この年に3%で誕生した消費税は、政府の思惑とは違い現在8%の水準で留まっています。これは、消費税には「逆進性」という大きな問題点があり、その「引き上げ」を口にした首相はその後の選挙で大惨敗をしています。しかし、安倍首相はそれを2014年(平成26年)4月1日より実施しましたがその後の個人消費は冷え込んだままで、8%から10%への引き上げをめぐって当初は、平成27年10月の予定でしたが、2度にわたって延期しました。それを2019年(○○元年)10月1日から実施しようとしています。

さて私の提案ですが、政府や民間等が作る文書や提出する文書(例えば所得税の確定申告書や不動産の売買契約書など)はすべて西暦にすることで、今後「元号」が変わってもコンピュータのシステム改修などの「不要な経費」が不要になります。

また、元号で覚えていた誕生年を西暦に変換する必要性がなくなります。自分の誕生年は、昭和32年が1957年だとすぐに変換できますが、母や娘の誕生年を西暦に変換することは至難の業です。「昭和」ならまだしも「平成」や4月1日に発表される「元号」を西暦に変換することはさらに困難です。今でも「数字に弱い(税理士なのに数字に弱いと誰かに言えば多くの人が驚かれますが、情けないのですが本当です)」私は、スマホの変換機能を使う始末です。

ただし、「元号」や「和暦」にこだわる人もいるだろうし、それは日本という国の独特的な文化でもあります。したがって現在、新聞紙の最上段に使っている日付の欄のように西暦の後に「かっこ」で、元号を入れるようにしたら誰もが納得するのではないでしょか。

今年の経済を占う?!~識者の見方と私の見方~

みなさん、明けましておめでとうございます。今年こそ、世界が平和で紛争のない社会になることを念願しています。しかし、それは多くの人類の「希望」ではありますが、実態はそれとは反対の方向に向かう蓋然性が高いと思うのは私だけではないと思います。

無料のスマホのアプリに「らじる☆らじる」という便利なものがあります。都会ならクリアに聞こえるNHKのラジオが田舎やそもそも電波が入りにくい山の谷筋など不自由を感じる方も多いと思います。わが家も、FM放送が入りにくいのでケーブルテレビから配線をしています。するとものすごくきれいな音が聞こえます。特に音楽を楽しむためのFM放送に雑音が入っていたら興ざめです。

ところが、AM放送は雑音が入り聞くに耐えないような不快感があります。ところが「らじる☆らじる」は、全く雑音がないばかりか、「HHKラジオ第一放送が「R1」、同じく第二放送が「R2」と「FM」の3放送が今、どんな番組を放送しているかも表示されます。それだけではありません。番組表や聞きたい放送局の選択はもちろんのことチャンネル予約や曜日選択、通知タイミング、チャイム音の選択、バイブレーション機能など満載です。

まだまだ付加機能があります。「読むらじる。」という機能では、ジャンルごとに文字で表記されます。例えば、「エンタメ・音楽」「子ども科学電話相談」「くらし・健康」などのジャンルがあります。これがあると「聴覚に障がい」がある方でも使えます。

私が重宝しているのは、「聞き逃し」機能です。日頃は片道65㎞の自動車通勤をしているので、聴きたい番組をダイレクトに聴くことは事実上不可能です。そこで重宝しているのは、その分野の専門家がわかりやすく話してくれるビジネスに役立つものや川柳などの趣味に関するものの、高齢者の隠れたヒット番組の「ラジオ深夜便」、古典朗読などメニューは豊富です。

私が時々利用しているのが、「NHKマイあさラジオ」の「社会の見方・私の視点」です。その中の番組で新年の2日~4日まで3人の論者が「新春シリーズ2019年の経済展望」を番組のパーソナリティとインタビュー形式で放送していました。その要約を紹介します。

1日目は、立教大学大学院特任教授の金子勝さん、2日目は、慶應義塾大学名誉教授東洋大学教授の竹中平蔵さん、最終日は一般財団法人日本総合研究所会長の寺島実郎さんでした。

まず今年の経済を4文字で表現するという問い(宿題になっていたようでした)には、金子さんが「長期衰退」、竹中さんが「消長遷移」、寺島さんが「実事求是」でした。

金子さんの「長期衰退」の意味合いは「経済が国際的にみて長期衰退に入ろうとしているが、今の経済政策のやり方を変えて是非くい止める必要性があること」の意味合いを主張されていました。

竹中さんの「消長遷移(しょうちょうせんい)」の意味合いは、「第4次産業革命の中で、伸びていく企業とそうでない企業、伸びていく産業とそうでない産業、伸びていく国とそうでない国が出てくる、混沌とした時代」であることを主張されていました。

寺島さんの「実事求是(じつじきゅぜ)」とは、漢書に書いてあるように「事実に即して心理・真実を探求する年であり、過去のようなインチキやごまかしを捨てて物事の本質をえぐり出すことが大事だ」と主張されていました。

それぞれの論者の主張を要約すると、金子さんは、「リセッション(景気の後退局面)に入っていることは確実で、自動車産業以外の産業は衰退している。これをくい止め貿易収支の赤字をなくさないとバブル崩壊になってしまう可能性がある。円安・株高・貿易黒字の時代は終わった。日銀の大量金融緩和は、出口のないネズミ講のようで、止めたとたん、金利高などものすごいダメージがくる。マイナス金利政策で、高く国債を買っているので、満期償還後の差額は10兆円ある。いわば、政府の財政赤字を日銀に付け替えていることはあまり知られていない。その国債で日経平均株価などに連動した投資信託を大量に買って日本の株価を支えている。このまま株価が下がると日銀が債務超過に陥ってしまう。

それを防ぐためには、原発輸出や官民ファンドなどの失敗から学び、エネルギー・シフトや情報産業、バイオ医療に舵を切ることが必要。また、地域経済の内需や雇用を良くして地域分散型の社会へシフトする必要がある。格差の固定化を是正するためには、軍備に偏重した予算を捨て、子育て支援など国民が安心できる予算に組み替えていく必要がある」というものでした。

竹中さんの主張は「日本経済について強気の論者も多いが、昨年に比べその数は少なくなっている。アメリカ経済は良い。経済は、実物経済と金融経済に分けられるが、特に実物経済には死角がない。引き続き好調さをトランプ大統領が政策を総動員させて経済はますます良くなる。大幅な減税とFRB(日本で言えば日銀のような組織)にも口を出してこれ以上金利を上げさせない。

一方、金融経済は弱気である。株価は将来を見定める先行指標だが昨年はボラタイル(不安定という意味)の変動が大きくなって上値が重くなってきた。そのため、新興国のお金が大量に米国に流れ、その国はインフレになり、そのために世界経済自体が悪くなっている。アメリカがねじれ議会になってもやや強気の見方の方が多い。ただ、あまり楽観的になってはいけない。ここは、慎重にみておく必要がある。保護貿易主義や米中の貿易戦争が、世界経済を収縮させる。2019年にそれがスタートする。そういう意味では、やや弱気に立つことが必要。

日本国内は、10月に消費税が増税されるのが重要なポイント。これまで2回消費税の増税を引き延ばしてきたが、これ以上の引き延ばしは、総理やその取り巻きは増税したくないと思ってもこれ以上引き延ばすことはできない状況にある。消費税増税で、5.7兆円民間から吸い上げることになり、GDPを1%引き下げる要因となる。そうならないように、マイナス効果を打ち消す対策を取っている。食料品の軽減税率で1兆円位は国民にもどり、幼児教育の無償化などの社会保障は2兆円弱がもどってくる。プレミアム商品券、住宅減税などで消費税の増税とチャラになる政策を打つ必要がある。駆け込み需要で1.5兆円~2兆円があるが、マイナスの影響もある。来年度1.3%成長の強気の予測が出ているが少し慎重にみておく必要がある。」というものでした。

寺島さんの主張は、「ロンドンエコノミストなどを観ていると、世界経済はすでに変調して、減速していると多くの識者が論点にあげている。IMFの発表では、昨年の地球全体の経済成長は3.5%、今年の予想は当初3.7%であったが、下方修正して3%前半になる見通しだ。実体経済が地球全体で3%成長するというのは、長い歴史を振り返ってもかつてなかったと言うことができる。

ではなぜ、経済の減速不安があるのかと言えば、株式市場の乱高下にある。2017年にトランプ大統領が就任してからアメリカの株価は24%跳ね上がった。実体経済が3%しか上がっていないのに、株価が跳ね上がるのはマネーゲームの加熱と言ってもよい。日経平均も一昨年20%ニューヨークに引きずられるように上がったこと自体が異常である。トランプ大統領になったらだめだと言っていたウォールストリートは一転して、減税やインフラ投資をしていることを理由に加熱と言えるほど株価を跳ね上げたが、昨年は年初の株価よりも年末の株価が下回るような水準でニューヨークダウも日経平均も年を越した。株価が跳ね上がっているから景気が良いという景況感が問題である。株価が下降をすると実体経済が3%上昇しているにもかかわらず非常に悲観的になっている。株価だけを持って景況感を観てしまうことを改めないといけない。

平成という時代の30年間を振り返ってみても、冷戦が終結し、グローバル時代が招来し、金融市場がマネーゲームと化した。アジア通貨危機、エンロンの崩壊、そしてリーマンショックをウォールストリートは金融市場を拡大することによってこの危機を乗り越えようとした。

今や世界のGDPの4倍の金融資産がある。借金をしてまで景気を拡大しようと世界中の国家、企業、個人が金融市場にどっぷりはまっている。経済の話をしているときに株価と為替だけでいいのか。本当に景気を支えている産業や技術について論議をしなくなっている傾向になっていることに気がついていない。本質はアメリカの変化だ。トランプ大統領1人が世界をかき乱している。創造的破壊をしているトランプでも悪くないと思っていた人の血を凍らせているのが、米中貿易摩擦だがデジタル覇権を巡っても大きな争いになっていることだ。ワシントンにおけるトランプが機能不全になっている。国境に壁ができないことも、ロシアゲートにトランプファミリーが関わっていていた疑惑など米国の政治が揺らいでいる。ロシア・中国が強権的になっている。他にも様々な国で自己主張の強い政権が誕生してきているのは、アメリカが鏡になっているからだ。アメリカが自国の利害だけに走れば走るほど他国でもそうなる傾向になってきている。リーダーに堪えることができなくなって世界全体がそうなってきている。日本はもはや耐久性が弱い状態でリセッションを迎えているが、それでもまだ、お金をジャブジャブにして金融政策で乗り越えようとしているが、もはやその余力はない。健全な資本主義を考えるときにきているし、いやでも事実を観ることが大事である。」というものです。

最後に、パーソナリティから「今年の株価や為替の動向についてどうなるか?」との質問に対してどの識者とも共通に「不安定な展開になる」との予測でした。

3人がそれぞれの経済の展望について論じられていますが、私が経済のオーソリティの見解について論ずる資質を備えているわけではないので個別的な論評は差し控えますが、共通しているのは決して経済は「バラ色」ではないことでした。

私の経済について思うことの根底にあるのが、消費税の増税をするかしないかによってこの国の経済の形が大きく変わってしまう大きなターニング・ポイントにあると言うことです。

日本経済も金融資本主義に取り込まれています。その典型が年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)です。私たちの大事な公的年金の運用のあり方を大きく転換して、リスクの高い株式に大きく転換したのです。株価が今年の秋口から大きく下落したのに伴い、昨年10月から12月までの資産運用で過去最悪の14兆円の損失を被ってしまったのです。アベノミクスの唯一の評価は株価の高さでした。それが、見事に瓦解してしまった形になりました。

もし、消費税の増税とそれに伴う軽減税率やそれを保証する日本型インボイス制度が導入されれば、金融資本主義にどっぷりつかりアメリカの言いなりになっているわが国は、財政が厳しくなれば魔法の杖である「消費税の増税」でその穴を埋めることになる構造ができてしまいます。おそらくそうなれば早晩、EU並の20%程度の税率になることになるでしょう。

もともと消費税は「逆進性」の強い税金です。したがって、消費税の税率が上がれば上がるほど富の偏在が際限なく起きてしまうでしょう。今でさえ、貧富の差が拡大しているというのに、とんでもないことになります。おまけに、消費税の税率が高くなればなるほど輸出免税で海外への輸出割合が高い自動車産業は、笑いが止まらない状態になるのではないかと思います。

本来の税制のあり方は、累進課税が基本です。にもかかわらず、消費税が導入されてから、累進税率にゆがみが出てきました。一部の大企業や超富裕層にその恩恵が受けられる仕組みがすでにできあがっています。

消費税の増税は、その道を加速させるのか、あるいは消費税増税を三度延期して、「本来の税制のあり方」をもう一度大多数の国民が主体的に参加して日本の「社会保障のあり方」や「財政の危機」をどう乗り越えるかを真摯に論議すべきする機会にするのかが問われているのだろうと思います。

 

 

不安がいっぱいの税の集め方・使われ方~税制改正の問題、くらしと地域経済をどう守る~

『1』税金の集め方の問題点

(1)広がる格差

①「世界で新たに生み出した富の82%を世界の最も豊かな1%を手にした一方で、世界の貧しい37億人が手にした富の割合は1%未満であった。」と国際協力団体オックスファムは分析しています。もはや課税問題はグローバル化しています。世界を震撼させたカルロス・ゴーン容疑者の逮捕もしかりです。

パラダイス文書などに見られるようなタックスヘイブン(租税回避地)で課税漏れになっている税収は個人資産で21兆ドル~32兆ドル、多国籍企業で約1000億ドル~2400億ドルもあります。もはや、グローバル経済にはグローバル税制が必要ですが、これに真っ向から反対しているのがアメリカで、日本もそれに金魚の糞のごとく追随しています。

②国内の主な税制問題点

所得税(出所:財務省「2015年説明資料」より作成)

申告納税者の所得税負担率

この表からも分かるように合計所得金額が1億円を境に累進制課税が逆転しています。これは、株式の譲渡や配当などが分離課税になっていることが原因です。その税率は20%(国税・地方税を含み、復興特別税を除きます)です。土地などの売却益も同様です。それを総合課税にすればと個人的には考えるのですが、そうすると証券市場や土地取引に支障があるという理由で分離課税の低税率のままになっています。

財務省でも、平均的な国際水準である30%にしてはどうかという論議もあったようですが、株価の低迷につながると言うことになり改訂はなさそうです。どう考えても、株取引などで利益を上げている人は高額所得者(いわゆる富裕層)です。こうした税制が格差をますます助長していると思います。

ここにメスを入れるだけでも大きな財源が生まれてきます。あるべき税制の姿は「累進課税」です。

法人税 (出所:国税庁「会社標本調査」などにより作成)

資本金規模別の法人税の実際の負担率(2014年度)

法人税は所得税と違い中小企業者等の特例(課税所得が800万円までは税率が15%)を除き「比例税率」になっています。したがって、このグラフでは理屈上はフラット化されないとおかしいのですが、資本金が5億円を超えるとその比率が下がっています。

つまり、資本金が大きい大企業が実際の負担率が少ないことが分かります。これは、大企業しか使えないような租税措置法(研究開発税制など数多くあります)の存在があります。さらに、海外からの子会社からの配当については実質非課税となっている優遇策を採っています。

日本が、いろいろな点でマネ(正確には追随していると言った方が正しいのかもしれませんが)をしているアメリカの法人税は「累進課税」です。日本は99.7%が中小企業です。そこで働く人は7割います。税の公平と格差の是正の観点から言えば、日本もアメリカのように緩やかな「累進課税」を問うべきだと考えています。

消費税滞納率 (出所:「国税庁統計年報書」により作成)

消費税滞納率の表(2009年〜2015年)

(2)税制改正の行方…気になる方向性

消費税の最大の問題はその滞納率の高さにあります。2015年と少し古い資料になりますが、その滞納率は64%に及びます。期限内に納められない比率がこんなに高いというのは、いかに消費税が欠陥税制と言えると思います。

それを是正しないまま、2019年10月から10%に増税すればさらに滞納率は高まることが予想されます。当初、消費税は「補完税」と言われていましたが、今では「基幹税」と化しています。また、軽減税率と日本型インボイス制度の導入で中小事業者(それをサポートする税理士事務所も同様)の実務の負担は確実に増えます。また、各種のポイント制度や商品券のばらまきなどの施策は余りにも現実離れをしているかが為政者には分からないでしょうか。

日本は、コンビニ大国です。その功罪もいろいろ言われていますが、本部の直営店の多くは中小業者です。今のポイント制度などを実施することになれば、多くの消費者は、カード決済ができない中小業者からコンビニへと流れてしまいます。そうした環境ができない中小業者は倒産のリスクが高くなることは容易に推測されます。

私は今般の消費税増税は、「3度目の正直」ではなく「2度あることは3度ある」べきだと考えます。既に、大企業などはさまざまな理由を付けて商品価格の値上げを実施しています。そうしないと、日本経済の底が抜けてしまい、「先進国」から脱落する危機が待っていると思います。その先に待っているのは「大企業栄え、民滅ぶ」ではないでしょうか。

『2』税金の使われ方の問題点

①本来の予算の決め方が逆転しています。本来の予算のあり方は企業や家計と違って「こんな国を作りたいからこんな予算がいる」から出発するのが原則です。それを誰がどのように分担するのを決めるのが議会であり、それを執行するのが行政です。そして、それを監視するのが司法の役割です。その役割分担(三権分立)がまるで機能していないのが悲しいかな日本の現実です。

また、そんな風にさせているのも少なくない国民がこの国の根幹である「憲法」や政治参加に無関心だからだろうと思います。各種世論調査では国民の多くが異論と思っているものが、数を力に易々と立法化し、それを「運用」という言葉で「ご都合主義」の執行をする行政、下級審では良い判決が出ても「最高裁事務局」を意識して、国側を最終的に勝たせる上級審、どこか狂っていると思いませんか。

②よく富裕層に対する課税の強化をすれば彼らはこの国から逃げてしますと言ったことが言われていますが、既に富裕層はさまざまな手を使って実質日本から脱出しています。いわゆる「タックス・ヘイブン(税金天国の方が的を射ていると思いますが、正確には租税回避)です。大企業の名だたる経営者や富裕層と言われる人は、都合のいい時は「愛国心」を強調し、都合が悪くなったら「この国から脱出する」なんともはや言いようがないお粗末さと私は思います。

③この国の首相は、現行の憲法を変えたい、特に9条に3項を追加したいと前のめりです。仮にそうなれば、武器輸出大国であるアメリカからさらに防衛型ではなく戦闘型の武器を恐ろしく高値で買わされるのではないでしょうか。そんなお金があるのだったら、イージス・アショアを配備するよりは、生活に困窮している人へ温かな支援をすることや災害復旧やR賃貸住宅の修繕などに回すことが筋ではないでしょうか。それは、消費税の増税の理由が「社会保障」という理由だからです。

④マレーシアは選挙の結果、消費税を廃止しました。一方でIMFは日本の消費税は15%(財界は20%とも言っています)まで必要としていると勧告しています。消費税の「逆進性」のことは、当初から政府も周知のことであったのですが、消費税の誕生秘話を知らない国民が増えてきています。再度、消費税ほど不公平で「強きを助け、弱きを挫く」ものだと言うことを国民が真剣に論議すべきだろうと思います。

⑤平成の大合併で、一瞬30万人の人口になり中核市になった下関市(安倍首相選挙区)の人口は、約26万人と約4万人減少しています。また、山口県は後継者が決まっていないランキングでワースト2位(因みに1位沖縄県)です。安倍首相は、外遊での大企業の製品等の売り込みはお上手なようですが、まずは足下のこの下関市や山口県を「ふるさと創生」のモデルケースにして欲しいものです。しかし、首相が適材適所で選んだふるさと創生大臣のいきなりの「スキャンダラス」と「上から目線」の言い訳、首相はこの国と地方を平気で切り捨てるおつもりなのでしょうか?

『3』私たちにできることってどんなこと?

①マスコミに、「不公平な税制」や「いびつな予算の使い方」をどんどん書いてもらうことが大事だし、ジャーナリズムの本質は「国家権力」に対する批判精神だと学生時代に「マスコミ論」という講義で学んだ記憶があります。骨太の方針で書かれている来年10月からの消費税の税率アップと軽減税率の問題点について一大キャンペーンを張ってもらい世論を喚起してもらうことが大事です。特に、軽減税率は「逆進性」が強くなるので富裕層を圧倒的に利することを書いて欲しいのですが、新聞は食料品と同様に8%の軽減税率になったためいわば「骨抜き」状態となっています。マスコミをその気にさせるのは、やはり世論の力だろうと思います。そのためには、多くの国民が、「知り・学び・行動」に移すことが肝要です。

②軽減税率の対象となるのは食料品の「本体」部分だけなので、それにかかった運送費や包装資材費は含まれていません。つまり今の価格が8%に維持されないことをほとんどの消費者に知らされていません。

卑近なことかもしれませんが、「井戸端会議」や「ママ友」などの日常会話の中で、そのことから出発するのが大事だろうと思います。そうすると、「なぜ?」という疑問符が必ず生まれて来ると思います。私たちにできることは、一番生活に密着したことから始まり、それが「燎原の火」のごとく大きくなることだろうと考えます。

③安倍一強体制にしたのは、私たち有権者にもその責任の一端があるのかもしれませんが、小選挙制度の問題(3割の得票率で7割の議席が獲得できる)と合わせて、特に若い人の政治的関心と投票率を上げるような工夫が必要です。その点では、アメリカの中間選挙の民主党の躍進には学ぶことが多いと思います。そして、個人的な見解ですが、政治を弄んでいる感がする今の与党には投票しない世論を形成すべきではないと考えます。

憲法を中小企業経営の視点で捉えると~マネジメントの常識を覆す次世代組織論の出現~

経営コンサルタントの奥長弘三先生は、山口県中小企業家同友会の主催している「経営指針塾」の初期の頃、東京から薄謝で何度も足を運んでいただきました。

その奥長先生が毎月、私にメールで「朋友だより」と言うニュースレターを送付してもらっています。おそらく「朋友」という意味は「For You」と言う英語をもじったものだと思います。

その「朋友だより」の中で、「次世代組織と日本国憲法」を重ね合わせた特集を組まれていましたので、それを要約してご紹介します。

このテーマになっている書籍は『ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代組織の出現―』F、ラルー著(鈴木立哉訳、英治出版 2018年1月)です。奥長先生によると、まさに従来の常識を覆す次世代型組織の実例が12件、世界から集められているそうで、収録の条件としては①最低5年以上継続していることと、②少なくとも100名以上の従業員を抱えているところで、事業分野としては、小売り、メーカー、エネルギー、食品、教育、医療に及ぶそうです。

 

ティール組織の特徴

事例の紹介は割愛しますが、ティール組織の特徴を5つにまとめてあります。

1.規模の大小に関わらず、内部の運営は10~30人程度の少人数のチーム制になっています。このチームが売上、顧客との関係、採用、教育などについて権限を持っていることです。

2.自主経営、全体性そして存在目的の追求がディール組織が重視する3つのポイントです。

自主経営…社長や管理職からの指示命令からでなく、メンバーや組織が自律的に機能する。

全体性…一人ひとりのメンバーが自分らしさを取り戻す。メンバー全員の能力が存分に発揮されている状態。

存在目的…組織が何のために存在し、今後その方向に向かうのかを常に探求し続ける組織であること。

3.意思決定の際の助言システムが有機的に機能しています。誰がどんな意思決定をしても構わないことになっています。ただし、その意思決定の専門家に助言を求めることが義務づけられ、その助言に基づき討論をし、その助言を採用するかどうかは、本人に任される。

4.CEO(最高経営責任者)が交代すると、従来型の組織に戻ることがあります。

5.ティール組織は、ゼロ成長、循環型経済を想定しています。

 

日本にも存在している次世代型組織

実は、日本にも次世代組織を模索している組織があります。奥長先生も私も長らく学ばせていただいている中小企業家同友会では、以前から経営者と社員が、双方の信頼関係をもとに、経営指針(同友会の用語で、経営理念、経営戦略、経営計画の三点セットをそのように呼んでいます)にもとづく全員参加型経営と社内で自由闊達な意思素疎通のできる社風をめざして努力しています。そこでは社員一人ひとりが生き生きと目標を持ち、自主的に働くこと、そして働く中で成長することが追求されます。その結果、厳しい経営環境の中で、順調な業績を上げている企業が多数生まれています。

 

税理士法人総合会計の次世代型組織の挑戦

わが税理士法人総合会計も、極めてユニークな経営を試行錯誤でやっています。新山口駅至近にある本部事務所が18名、新南陽駅至近にある周南事務所が7名、中国道の下関インター至近にある下関事務所が7名の合計31名(税理士4人を含む)のスタッフが働いていますが、本部事務所から周南事務所と下関事務所の距離はそれぞれ約60㌔離れています。しかし、同じ経営理念に基づき、日頃は顔が見えないけれど、それぞれの事務所から複数名の経営に携わるメンバー(経営委員)と言いますが、その経営委員が、基本的に毎月第2火曜日の午前の2時間会議を開催し、それぞれの事務所の顧問先様の事業及び業務内容の特徴の報告や、運営に関わることを決めます。それを「サイボウズ」というグライドベースのグループウェアで共有化しています。

また、それぞれの事務所は毎月のはじめに「月初会議」という意思統一の会議をします。そこに、一昨年私と代表を交代した中村代表が参加し、それぞれの事務所の雰囲気や事務所全体としての方針などを伝えます。

併せて、3つの事務所が年2回(6月と12月)、スタッフからヒアリングをして、その意見を反映させた事務所総会をスタッフ全員参加で実施します。内容はその期の決算報告と前年の総括、今年度の方針を発表し、それを各事務所のスタッフをばらばらにしてのグループ討論で深めます。もちろん、グループごとに討議の内容を報告します。いろいろな意見が出ますが、その意見を反映させた方針書を経営委員会の責任で作成します。中間決算の報告を兼ねて、その方針の軌道修正をします。決算総会と同じくグループ討論で深めていきます。私たちの税理士業界も凄く動きが速いので、ときには大きく方針を変えることもあります。

その繰り返しを重ねそれぞれの事務所の地理的な距離は離れていても、それぞれの事務所が税理士法人総合会計として融合できるように工夫をしています。もちろん平日の一日を使うわけですから、その中に様々な研修を織り交ぜます。そして、6月には暑気払い、12月には忘年会を実施しています。そんな取り組みを試行錯誤しながら、「全職員一体型経営」をめざしています。

完成形になるのは「何時」になるかは分かりませんし、どこまでも完成しないかもしれません。私たちと同じような組織運営をやっている会計事務所が、年に一度持ち回りで二桁の事務所が参加する「会計事務所交流会」というものをやっています。今年は、10月12日に浅草でやりました。来年は、大阪でやることが決まったそうです。山口でも今まで2回ほど主催して全国の先進例や悩みを共有しています。

 

会社は誰のものか

話をもとに戻します。奥長先生のニュースレターには、『日本でいちばん大切にしたい会社』と言う本を既に6冊書かれて、全国で講演も積極的にされている法政大学、坂本光司教授が、会社が大切にすべき5人を掲げられています。そして、その順番が大事だと主張されています。

1.社員とその家族

2.外注先・下請企業の社員

3.顧客

4.地域社会

5.株主、出資者

会社は、誰のものかという論議が一時、流行ったことがありましたが、坂本先生流に解釈すれば、社員のものであると思いますし、わが税理士法人総合会計も「全スタッフのもの」となりますし、それが理想だと考えています。

 

次世代型組織と日本国憲法が想定している社会

さて結論ですが、奥長先生は、次世代型組織は社員一人ひとりの個性が全面的に発揮される組織であり、それはまさに日本国憲法が想定している社会だと論じられています。

以下、その憲法の重要な項目を掲げられています。

第13条 すべての国民は個人として尊重される。

第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束を受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服されない。

第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第27条 すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。

第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得努力の成果であって、この権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対して、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

上記のうち、第97条は特別な意味を持っています。憲法は章ごとに区分されており第10章が「最高法規」で第97条から第99条までとなっています。すなわち「最高法規」の章の冒頭に第97条をおいて、人権の重要性をうたい、憲法はそれを保障する法であるから、最高法規なのだということを実質的に示していると考えられています。(伊藤真著『日本国憲法の論点』

最後に奥長先生は、憲法が13条の「個人の尊重」をはじめ、個人の基本的人権を最も大切にしているのは重要で、これからの時代の組織を先進的に示している次世代型組織(ティール組織)が、私たちの憲法が想定している社会と整合性があることは嬉しい限りです、と書かれています。私も、まったく同感です。

 

活用する値打ちのあるビジネスマナーと人生訓~なかなか奥深い語呂合わせ~

よく使う語呂合わせとしてすっかり定着しているビジネスマナーに「ほうれんそう」があります。

ほう…報告する

れん…連絡する

そう…相談する

誰が考えたのか知りませんがビジネスの世界だけでなく、「コミュニケーション」の手段として多くの人が使っています。

過日、とある税務署の幹部の方から時代は「『ほうれんそう』からさらに進化をして『おひたし』になっているんですよ。署内でもこれを使った研修もやってるんですよ。」と聞いた語呂がなかなか奥深いのです。

私は、この『おしたし』は、なんだかんだと否定的に使われた「ゆとり世代」に対する配慮なのかもしれません。

お…怒らない

ひ…否定しない

た…助ける(困り事あれば)

し…指示する

「詰め込み教育」が否定され、「ゆとり教育」が始まった時代の若者を「ゆとり世代」と呼んでいます。そして「ゆとり世代は何かと使いにくい」と世の大人たちはよく言います。

しかし、いつの時代も何かと言われるものです。私が社会人になったときも先輩たちは、ひと世代前の「団塊の世代」のときに学生運動が盛んだった頃の反動として「しらけ時代」と昭和30年世代を揶揄してきました。それは、政治・経済・社会的な環境がどんどん変化しているので仕方ありません。

ただし、誰もがそれぞれ個性を持っています。ある世代の人たちを「ひと括り」にして、それを評価することは決して良いことではないと私は考えます。まるで、「血液型占い」の如くです。私の妻や二人の娘は、全員「A型」ですが、4人とも性格や思考に共通点はありません。確かに「真面目」という面では共通していますが、「几帳面」という点ではかなり温度差があります。言葉遊びで「血液型占い」をすることについて全面的に否定をするものではありませんが、何らの「科学的根拠」もありません。

話をもとに戻すと、「ゆとり世代」は、「打たれ弱い」「マイペース」「プライベート優先」「コミュニケーション能力がない」などと言われています。言われてみればそうかもしれませんが、前述した社会環境の変化によるもので「おひたし」を知っていて実際に頭の中にインプットしておくことで損をすることはありません。

「それもそうだな」と思った言葉がありました。テレビ東京系で放映された「ラストチャンス、再生請負人」というとても面白いドラマを観ました。主人公の仲村トオルがピンチに陥ると、ある「いかがわしい占い師」にすがるのですが、その占い師が言った言葉が「人生七味トウガラシ」です。その意味は、人生を生きて行くには「七つの『み』をくぐり抜けないといけない」と言うものです。

1.うらみ

2.つらみ

3.いやみ

4.ひがみ

5.ねたみ

6.そねみ

7.やっかみ

最後に、10月21日に観た「新婚さんいらっしゃい(萩市で収録されたもの)」で出演されていた看護師の奥さんが今まで一度も恋愛経験がなくて「男性をとりこにさせる『さしすせそ』を実践すると良いよ」と同僚に聞いて夫になる薬剤師さんをその通りにさせた言葉が印象的でした。

さ…流石ね

し…知らなかった

す…凄いわね

せ…センスいいね

そ…そうなんですかぁ

なるほど、自分の言った言葉に「さしすせそ」と言われると誰でも「とりこ」になるのも分かります。しかし、めでたく結婚して子どもさんができたら奥様が豹変して、言い出した言葉が実にユニークでした。

さ…触わらんで

し…しろうしい(山口弁です。標準語では、うるさい)

す…すぐ動く

せ…洗濯物、入れちょういて

そ…そうじゃない

語呂合わせって、実に奥深く、ユニークですね。

 

二女から聞いたドイツと日本の働き方事情~比較の対象とされる両国の文化の違い~

まず、はじめに私も含めて多くの国民が今の政治の姿勢について多くの不満を感じていらっしゃるのではないでしょうか。

森友学園や加計学園問題での首相の絡んだ問題について、財務省という「最強の省庁」の文書改ざん問題など2017年の流行語大賞になった「忖度」問題(実は私はそれまで私の語彙の中に「忖度」という単語は入っていませんでした。)や「働き方改革法案」や「カジノ関連法案」などについて世論調査では、約7割の人が真相を究明すべきだとか、もっと審議を尽くすべきだという実状でした。にもかかわらず、なぜ拙速な対応をするのか私には理解しがたい問題がうごめいています。

さらに死者・行方不明者が200人を超えるほどの甚大な被害を出した西日本豪雨(平成30年7月豪雨)、気象庁が異例の緊急会見を行った7月5日から、政府が非常災害対策本部を設置する7月8日までの間に約66時間も要しており、政府の対応の遅さが大きな非難を浴びました。

また、その対応が遅れただけでなく、気象庁が緊急会見を行った後の7月5日夜に、自民党議員が国会議員宿舎で開かれた「赤坂自民亭」という懇親会を開催し、安倍首相や小野寺防衛大臣も参加、そのドンチャン騒ぎしている様子を参加した議員たちがSNSにアップし、大きな非難を浴びていました。
同様に、被害が拡大している7月7日、安倍首相が午前11時に私邸に戻っていたことも非難を浴びていました。

「被災地のことを話し合うべきだ」という野党の反対を押し切り、この「働き方関連法案」も「カジノ法案」も強行したことは、政府が災害対応をおざなりにしているのではないかという疑念を強く抱かせる結果となりました。(スマダン・ホームページ参照)

人命救助より、様々な問題点が指摘されている両法案が審議不足な上にさらに強行採決をする必要があったのでしょうか。疑問を呈さざるを得ません。

「働き方関連法」の問題点がどこにあるのかをつぶさに論じませんが、日本は同じような「勤勉な性格」だとか、同じ第二次世界大戦の敗戦国だということで比較されることが多いですが、以前このブログでも書きましたが、私の二女は中学校の英語の教諭をわずか2年で辞めて、ドイツの国際人道団体の職員として働いて5年になります。

ところが、二女は今年になって体調を壊しその原因がかかりつけ医の診断で貧血であることがわかり、食生活を改善するなどの努力をしましたが一向に改善しませんでした。主治医は、もしかして他の何かの病気が「わるさ」をしているかもしれないと婦人科の受診を勧められました。

婦人科の医師はポーランド人で母国のポーランドの病院で働くよりもドイツの病院で働く方がかなり高い給料をもらえるのでその病院で働いているらしいのです。その女医の診断で、女性特有の病気で腹腔鏡を使った手術と3日位の入院の必要があることがわかりました。もちろん、ドイツでは治療費も手術費用も入院費も無料です。二女が働いている職場で、このような場合の対応が日本の研究データと合っているかどうか検証を試みました。

その研究データは、世界の働き方シリーズを特集している「Fujitu FSAS Portl For clood」のホームページを使いました。(一部改変しています。)早速、その中身を見てみましょう。

世界の働き方

世界の働き方“ドイツ”編

 

 

先進国の中でも、最も労働時間が短いと言われているドイツです。OECD(経済協力開機構)が年間平均労働時間を調査したデータ*1を見ると、ドイツは1,363時間、日本は1,713時間とおよそ350時間の労働時間の差がでています。

2016年、ドイツの1日の労働時間はおよそ6.11時間。日本の1日の労働時間はおよそ7.32時間になります。*2

1日約1.21時間の差が出ているにも関わらずGDP(国内総生産)では、一人当たりドイツでは41,902ドル、日本は38,917ドルと2,985ドルもの差が生まれています。また、ドイツ人口の約8,000万人に対して、日本人口は約1.27億人です。

日本はドイツに比べて1.54倍も人口が多いので、データからみて、いかにドイツのGDPが日本を上回っているかが分かります。同じ「物作り大国」を目指すドイツと日本です。なぜ、ここまでの差があるのでしょうか?それにはドイツの徹底された“働き方”があったのです。

 

 

厳格な労働時間の管理

ドイツでは1日10時間を越える労働は法律で禁止されています。
仮に、1日10時間以上の労働を従業員に強いた場合や、週末に働かされたことが発覚してしまうと経営者のポケットマネーで最高1,500ユーロ(日本円で225万円)の罰金を支払うことになってしまいます。また、最悪なパターンだと経営者が最高で1年間の禁固刑を

厳格な労働時間の管理

ドイツでは1日10時間を越える労働は法律で禁止されています。仮に、1日10時間以上の労働を従業員に強いた場合や、週末に働かされたことが発覚してしまうと経営者のポケットマネーで最高1,500ユーロ(日本円で225万円)の罰金を支払うことになってしまいます。また、最悪なパターンだと経営者が最高で1年間の禁固刑を科せられる場合もあります。

1日の労働は10時間まで許されますが、6ヶ月間の平均労働時間は1日8時間以下にしなければなりません。このため、管理職は繁忙期でも社員が10時間を越えて仕事をしないように細心の注意をはらいます。

それならば、“労働が1日10時間まで可能なのに、6ヶ月間平均で8時間以下にするのは無理なのではないか?”という疑問がでてくるかと思います。それが可能なのです。

効率的な労働時間貯蓄制度

ドイツでは「労働時間貯蓄制度」というものがあり、2時間残業した場合、別の日に2時間早く帰ることができます。残業した分の時間を貯蓄し、必要な時に早く帰ることができるので6ヶ月間で平均8時間以上の労働時間を上回ることがないのです。

このような時間にしばられない働き方の柔軟性が長時間労働につながらず、なおかつGDPが上がるキーポイントではないのでしょうか。

充実した有給休暇

ドイツの企業は週5日勤務であれば、年間に最低24日間の有給休暇を取れるよう法律で義務付けられています。(大半の企業は有給休暇を30日間設けています。)休暇を取るのは当然の権利だという考えを持っており、有給を消化するのは普通です。有給で1ヶ月程度、旅行に行くことも珍しい事ではありません。

プロジェクトごとに進歩状況やタスクが共有されているので、担当者が長期で会社を空けていてもプロジェクトに影響することはありませんし、長期で休暇を取ることは当然の権利なので、取引先の担当が休暇で不在でも怒りはしません。数週間待つことになっても、“休暇だから仕方がない”と考えます。

何故なら、そのクライアントと、その先のクライアントもみんな同じ考え方だからです。

また有給休暇と病気休暇は厳密に区別されており、社員が病気や怪我で働けなくなった場合、有給休暇のほかに6週間まで病休をとることができます。もちろん診断書は必要ですが、6週間は給与の保証があります。そのため、病気で有給がなくなった・・・ということはありません。
そもそも有給休暇は「健康な状態でとるもの」という考え方なので、病欠を有給にあてることはありません。

 


出展:Expedia URL:https://welove.expedia.co.jp/press/

 

日本の有休消化率は、2012年のドイツと比較してあまり取得されておりませんが、「有給休暇国際比較調査2017年」では、取得率が少しづつ改善されつつあります。しかし、未だ有給取得率50%の日本は、世界各国と比較すると最下位となっているのが現状です。

日本のこれから

ドイツの高い生産性の鍵は、いかに効率よく仕事をするか。「短時間労働で仕事を終わらせるか」ではないでしょうか。

また、従業員ごとのニーズに合わせた働き方を尊重していることも結果的に生産性向上につながっているように見受けられます。

日本がこれから「働き方改革」を推進していく上で避けて通れない課題は「労働生産性の向上」です。

労働時間の短縮・残業削減がキーワードになっている今、無駄な時間をいかに削れるかが重要なポイントだと思います。

ドイツと全く同じ働き方にするのは難しいと思いますが、良い部分は積極的にどんどん取り入れ、“仕事の量”を重視する日本から、“仕事の質”を重視する日本に。少しずつ変えていくことが、働き方改革の一歩だと思います。

企業側が従業員の“仕事の質”を向上させる環境を整えていくことで、企業全体の生産性も向上させていく。働き方改革が叫ばれている今、企業側にも努力が求められているのではないでしょうか。

*1 グローバルノート 世界の労働時間 国別ランキング2016

*2 有給休暇国際比較調査2016 (日本の有休消化率は平均50%消費のため、データブック国際労働比較の有休日数を半分にして計算しています。)

 

さてこの分析で不十分なのは、ドイツの場合には有給休暇の次年度の持ち越しがありません。また、祝日が州によって違いますが多くの州が9日だそうです。その祝日には振替がないそうです。その祝日もキリスト教の祭日にちなむもので、振替休日はないそうです。

反対に日本の場合15日の祝日があり、振替休日もあります。最近では2016年から「山の日」が設けられました。これで、お盆の長期休暇(公務員にはありませんが、民間の多くの企業は有給休暇とは別に休暇にしているところがほとんどです。)と連動できる会社が増えてきました。政府は「山の日」は12日にしたかったようですが、世界一の航空事故といわれている日航機墜落事故の遺族に配慮した経過があるようです。

ここで、二女から聞いた話ですが、100人程度の職場なのでうまく調整がとれず、前年の有給取得が全部できなくなり、トップが不利益を被ったので、今年は全部取得するように「キツく」注意されたと言っておりました。そこで、11月に日本びいきの友人と大相撲九州場所と東京見学をメインに帰国する計画のようです。

また、お子さんがいる家庭を最優先に夏休みと併せてまるまる30日の有休取得をする慣習のようです。休暇は、長期で取ることが当たり前のようになっているので、日本のように有給休暇を取ることに対する罪悪感はまるでないようです。

日本の場合には、正月休みやお盆休み、ゴールデンウィークなどのような祭日等で多くの国民が大移動して交通機関の大渋滞や特に航空機に見られる高い料金、それからレジャー施設の大混雑が問題になっていますが、ドイツの場合にはまるでないようです。結局、ドイツの労働者全員が休暇をシェアすることがモチベーションを高くしているのではないかと思います。

しかし、こなさなければならない仕事はたくさんあるので、就業時間中には無駄話は基本的に無いし、昼休みでもサンドイッチを片手にパソコンの前にいることもしばしばだそうです。特に生産現場などでは、午後4時(就業時間は午前8時から午後4時までが標準だそうです。)になったら帰宅することが当たり前のようになっているそうです。私もドイツに行ったとき、二女の住んでいるアパートは30万人の街の一番北の駅付近にありますが午後4時過ぎの電車に乗っても9両編成の列車なのにほぼ満員状態です。無人駅で改札口もありません。その駅だけではなく、大きな駅(例えば州都のディセルドルフ中央駅)でも改札口はあるのですが、日本のように改札券を通す必要もありません。要するに駅員がほとんどいないのです。

ただし、時々列車で改札をしていて、乗車券を持っていなければ、目の玉が飛び出るような罰金を取られるようで、無賃乗車をしている人はいないようです。少し不便と思うことは基本的に日本のような正確な時刻に運行はされていないことと、大幅に遅れる場合も車内放送もないことです。

また、電車のトイレは無料ですが、駅の中のトイレは10€(約120円くらいです)払わなければなりません。ベルリン中央駅では、2€かかりますが、そのうち1€はデポジット(預かり保証金)に似たような制度で、そこで発行されるチケットを加盟店に渡せば1€値引きしてくれます。

電車は確か9両のうち3両は2階建で、徒歩で降りてそのまま自宅に帰る人、自転車で帰る人、そのために自転車用の車両と自転車道が整備されています。片道3車線のアウトバーン(アウトは、英語ではオートを意味し、日本語に直訳すると「自動車が走る道」となります。

ヒットラーなどが飛行場に使おうと整備されたもので、無料です。速度制限がないと聞きましたが、正確には二女曰く、法定速度はないが、推奨速度は130㎞で坂道等は100㎞のところもあるようです。)を使わない人のために駅前に無料の駐車場がありますが、良くこれだけ詰められるのかという止め方をしています。

ちなみに、自宅には駐車場はなく路上駐車です。二女曰く、この駅の近くは割と高級住宅街だということですが、高級車のベンツやBMWはなく、フォルクスワーゲン(日本語に直訳すれば国民車)やオペル、マツダを初めとする日本車が多いです。洗車をする慣習もなく、バンパーなどのへこみも気にしていません。ただし、タクシーや二両連結のバスはベンツ製です。

これも文化の問題かもしれませんが、日本の場合には5分前にはアポイント先の場所に行くことがマナーとされていますが、ドイツの場合には5分遅れて行くことがマナーだそうです。二女に理由を聞くと、約束の時間までにここまでは仕事をこなしていこうという慣習があるとのことです。これも生産性を上げるには合理的な考え方です。

買い物は、コンビニはありません。スーパーも夜8時には閉まります。ガソリンスタンドや空港などの免税店などの例外を除き日曜日には営業はできない法律になっています。法律で決められた営業しても良い日時以外で営業すれば罰金を取られるそうです。

付加価値税(VAT日本で言えば消費税)は、標準税率は19%で軽減税率は7%ですが、日本で予定されている軽減税率8%のような食料品と新聞代のような狭い範囲ではなく、生活必需品と考えられるものはほとんど軽減税率の対象と言ってもいいくらいです。

ホテルの宿泊費も軽減税率なのには驚きました。そもそもドイツで住んでいる人は、レシートでどの商品が7%でどの商品が19%という意識がなく、物価として消費税を考えています。お店の開店時間は9時がほとんどですが、例外的にパン屋さんは5時に開店します。

買い物で驚くのは、包装をするという概念がないことです。日本のような何重にも包装した高級和菓子のような文化はありません。あるところでは、お土産にするのに包装を頼んだら別途料金を請求されました。包装も下手だし、時間もかかり多少いらいらしました。

レジも違いがあり、レジを打つ人は座っています。人に優しいのでしょうか。買い物をしたカートをベルトコンベアーのようなものに置き、仕切りをして他の人の買い物と区別しています。

カートやペットボトルもデポジットになっています。ペットボトルの水もほとんど1.5㍑で統一されています。硬水で炭酸入りが主流です。飲み終わったペットボトルをスーパーにある回収機の中に入れてそこを通過すれば料金がもどってきます。いろいろな意味で合理的にできています。

さて、日本には「病気になるのは自己管理が悪いからだ。」換言すれば、自己責任=自業自得という思考回路があり、突然の病休した穴を埋めるのにオロオロし、病欠してたスタッフを恨んだりします。

しかし、ドイツにはそんな発想がなく「病気になるのは従業員のせいではない。」という風潮だそうです。二女が病気になったときも、休暇中のスタッフが当たり前のように出勤して対応したとのことです。日本の社会保障が大きく転換し、公序、共助自助から、自助、共助、公序になったのと似ています。

病欠の判断は、日本では会社の上司が判断しますが、ドイツでは医師が判断します。病状については、日本では自らが上司に説明することが一般的です。ドイツでは、本人のプライバシーは守られます。

また、日本では後日、有給休暇申請書を提出します。医師の診断書を提出させている会社もあると聞いたことがあります。ドイツでは、医師が書いた「就労不能証明書」を3日以内に提出し、その中に「何日間の療養期間が必要だ。」と書いてあるそうです。その療養期間は、有給休暇とは別に労働者に与えなければならないそうです。

二女の場合には3週間と書いてあったそうで、トップから「3カ所ある保養所のいずれかで静養するか、日本に帰国して静養しなさい。」と言われ帰国を選択しました。

以上書いたように、日本の労働生産性が低く、ドイツのそれがかなり高い理由を二女から聞いたことから書きましたが、キーワードになるのは、労働者に対する「優しさ」や「思いやり」ではないかと思います。

日本の場合は、いかに労働者を安く使うかを最優先として考えているのではないでしょうか。それが、この間の労働法制の改定にも垣間見られます。

日本の労働生産性を上げるためには、中小企業同友会も提唱している「人間尊重の経営」を大企業も含めて、憲法13条に明記してある「個人の尊重」『すべての国民は、個人として尊重される。

生命、自由、及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする』を尊重するような発想の転換が求められると思います。

 

参考に、中小企業家同友会の提唱する人間尊重の経営をそのホームページより紹介します。

人間尊重の経営(にんげんそんちょうのけいえい)

「人間尊重の経営」の考え方の基本となるのも自主・民主・連帯の精神で、それは次の三つの側面から考えることができます。

かけがえのない人生の全面開花を保障する―個人の尊厳(自主) 

人間は一人ひとりが皆違います。同時に、誰もが無限の可能性を持ち、その可能性への挑戦を自主的、主体的に継続できる環境の保障が大切です。社員が働くことを通じて自分の成長を見出し、働きがい、生きがいを実感できる企業こそ社員の自主性が発揮され、個人の尊厳(自主)が尊重される企業といえましょう。

生きること、平等な人間観が民主主義の根幹―生命の尊厳(民主)

人間が生きていくためには、最低限の生活保障が必要です。企業で働くことは、本人及び家族の生活を維持、安定させることが大前提です。企業としては、雇用を守り、賃金を保障する、安心・安全な労働環境を整備することが法的にも義務付けられています。

「人間一人ひとりの生命に軽重はない」といわれますが、これは人類が長い年月をかけて確立した生命の尊厳を守るという人間尊重の価値観であり、そこから平等な人間観が育まれ、民主主義の原点を形成してきたといえるでしょう。

あてにし、あてにされる関係を生み出す―人間の社会性(連帯)

人間は孤立して生きることはできません。人間がより人間らしく生きていくためには、相互に信頼し、「あてにし、あてにされる関係」を尊重することが大切です。このことで、お互いに手を携えあって社会を築いていくという、人間の社会性が高まり、ほんものの連帯をあらゆる組織の中でつくっていくことができます。

企業では、労使間はもとより、職場の仲間と信頼しあい、共に育ちあう関係が育まれることによって、お客様や地域社会からの信頼を高めることができます。

素晴らしい提言ではないかと思います。皆さんは、どう思われますか。