カテゴリー: 経営環境

裏金問題で政界は大揺れ!!~実態解明と税務調査で適正な対応を~

政治とカネをめぐる問題で、政治は大揺れになっています。どこまで実態の解明がされるかに国民の最大の関心事になっています。

ことの発端は、2022年11月6日の「しんぶん赤旗日曜版」のスクープからでした。しんぶん赤旗は、「桜を見る会」や「日本学術会議」などの報道で、日本ジャーナリスト会議JCJ賞を2年連続で受賞しています。大企業からの広告を一切載せないから、このようなスクープができるのだろうと思います。

この報道を受け、神戸学院大の上脇博之教授が、2018~2021年の4年間を調べ直し、東京地検に告発しました。

裏金の本質は、1994年に成立した小選挙区比例代表並立制と政党交付金の導入にあるのではないでしょうか。

小選挙区制度の最大のデメリットは、死票が多く存在することです。2021年の衆院選小選挙区を見ても、自民党は48%の投票率で65%の議席を獲得しています。この制度により、「一党他弱」の政治状況を生み出し、それが政治とカネに対する緊張感が喪失したのだろうと考えます。

多くの識者が国民の価値観の多様性を認め「それを社会に反映させる仕組み作りが大切だ」と論評していますが、わが国の選挙制度はまるで反対の極めて問題のある制度になっていることは否めません。

さらに、問題なのは政党助成金です。昨年は総額315億円余りで、自民党には最も多いおよそ159億円が交付されました。政党交付金は、政党助成法に基づき交付されるもので、国民一人当たり250円の税金が使われます。

自分の支持していない政党にも交付されることから憲法違反ではないかと思慮されます。日本共産党は政党交付金の制度に反対して交付金を受け取っていません。同党へ交付相当額は他党へ交付されます。政党交付金は、政治活動費を特定の企業や団体からの献金に頼らなくてもいい政治にするために、国民みなが負担する税金から支出されることに意味があります。政党が政党交付金をもらうことには、極めて重い責任が伴うのです。このことへの自覚が欠如しているのではないでしょうか。

さて今回の裏金をどう考えるかですが、政治資金であれば収支報告書に記載しなければならないので、このカネは当然のことながら政治資金ではないと考えざるを得ません。議員側もそういう認識で受け取っていたのだと思います。つまり課税所得ということになり、税務申告すべきで、仮に申告しなければそれは申告漏れということになります。

多くの国民や零細業者には税務調査という公権力で課税を強いています。もちろん、課税は公平であるべきです。税の隠語で、10.5.3.1(とう、ごう、さん、ピンと呼びます)という言葉があります。税の補足率が、サラリーマンを10とすると、自営業者は5、農業者は3、政治家は1という意味です。

裏金問題で、検察庁が法律の壁(政治資金規正法がざる法であるゆえに)で十分に力を発揮できないのであれば、国税庁が今こそその力を発揮すべきです。税務調査をすべきです。

この目で見たドイツの付加価値税事情~やはり日本の消費税は減税し、そして廃止すべきです!~

今年の正月はドイツで迎えました。ドイツの新年は花火を打ち上げてお祝いするのですが、泊まっていた宿の火災報知器がけたたましくなるのに目が覚めました。花火の煙に火災報知器が作動したのではないかと思います。消防車も出動して大あらわでした。

さて、ドイツの付加価値(日本では消費税というネーミングになっています)は、標準税率は19%、軽減税率は7%です。日本の消費税の軽減税率は8%ですが、その範囲は食料品と新聞です。ドイツ付加価値税は、食料品という括りで軽減税率を適応するのではなく贅沢品かどうかで判断します。チョコレートなどは贅沢品として標準税率で課税されます。

軽減税率の範囲は日本より広く、書籍、生理用品、博物館などの入場料、地方自治体又は50㌔未満の公共交通費など生活必需品や文化については軽減税率を適用しているようです。

おもしろかったのは、ジャガイモは7%でさつまいもは19%を使うことです。日本ではさつまいもは生活必需品ですがドイツでは贅沢品とみなされています。ケータリング業界では、コーヒーは19%ですがカプチーノはどうなるのでしょうか?生活必需品である牛乳が75%以上使われていたらその税率は7%になるようです。まるでクイズの世界です。

昨年10月からインボイス制度が実施されました。これは将来的に消費税の税率アップの布石だと考えます。もし消費税の引き上げが再燃したら、ドイツのように軽減税率と標準税率の区分をめぐってややこしい論議になることが予想されます。

ドイツではコロナ禍の消費低迷を緩和するために、2020年7月1日から半年間、標準税率を19%から16%に、軽減税率を7%から5%に軽減しました。また、レストランでの食事代を2023年12月31日まで、暖房代は2024年3月31日まで軽減税率にしました。

年明けに、フランクフルトで、娘の知り合いのご夫婦と会食をしました。その方は、レストランでの飲食代が新年から値上げされることについて懸念をされていました。

ドイツも物価が高騰していますが、日本と違って労働者の賃金も引き上げされています。日本より約3割人口の少ないドイツが日本のGDPを抜いて3位に浮上することが報じられています。適時、適格な付加価値税減税も功を奏しているのではないでしょうか。

日本も、コロナ禍での経済停滞は言うに及ばず、円安やウクライナ戦争などを物価の高騰は国民を苦しめています。その対策として野党などが消費税の減税の要求をしていますが、岸田首相は「考えていない」と繰り返し発言しています。消費税については「社会保障目的税なので、減税はできない」と言うのがその理由ですが、社会保障目的税としているのは日本だけです。また、「消費減税すると、商品の買い控えなどで社会が混乱する」という言い訳をしていますが、他の先進国でそのような混乱をしているところはありません。

消費税減税は、所得の低い人に高い割合で課される不公平な税金です。消費税を5%に減税すればその経済効果は絶大です。こんな不公平税制はいっそやめるべきです。その代替財源として旧物品税を応用するのはどうでしょうか。例えば高級車には高額な、軽自動車については低額の税で対応し、サービスについては新たな税を課したらどうでしょうか。

県議会議長、副議長はVIP待遇!!~最高級車センチェリーでの送迎は即刻やめるべきです~

11月29日、山口県センチュリー裁判を支援する会の代表松林俊治氏らが、山口県知事に次のような請願書を提出しました。

(件名)山口県知事は県所有の皇室対応用車両センチュリーの県議会への貸出しを行わないよう求めることについて

(要旨)山口県が2020年8月、皇室対応用車両として2,090万円でトヨタの高級車センチュリーを購入したことが、同年9月、マスコミに取り上げられ、県内外から強い批判が上がった。センチュリー購入の是非については、住民訴訟が提起され、判決が確定した。

ところで、山口県には今回購入されたものを含め、2台のセンチュリーがある。2台とも県知事から県議会に貸し出され、日常的に県議会議長と副議長が使っている。そのため、少なくない県民から「なぜ議長・副議長がセンチュリーに乗る必要があるのか」との疑念、怒りの声が上がっている。

こうした状況が続くことは、県議会議長及び副議長が「特別扱いされるべき立場」との誤った認識を自他に与える。「議会の構成員である議員は、法令上完全に平等であり、対等である」(議員必携)という基本に返るべきである。

ついては、公平公正であるべき山口県の姿勢を県民に示すためにも、下記事項を請願する。

(記)山口県知事は、県所有の皇室対応用車両センチュリーの県議会への貸出しを行わないこと。

ウィキペディアによると、センチュリーは、『トヨタ自動車が1967年から製造・販売している最高級乗用車。「センチュリー(世紀)」の名称は、初代モデルが発表された1967年が、トヨタグループの創設者である豊田佐吉の生誕から100年であることに由来している。

主に日本国内の官公庁・企業などでの公用車・社用車(役員車)の利用を想定し、後部座席の広さや乗降のしやすさなど、快適性に重きを置いた作りにすることで、乗客をもてなす設計がとられており、御料車(天皇皇后両陛下がご乗車になる車両)や、内閣総理大臣専用車としても使用されている。

ただ公用車としての採用に関しては車両の性質上、主に値段や維持費が高すぎること 環境性能に劣ること、他社の拠点が地場産業となっている地域において、そのメーカーの車種を採用すべきだという意見、などによる批判を受けることも珍しくなく、それらを避ける目的から「脱・センチュリー」の動きが見られることもある。』とあります。

村岡山口県知事は来年度の予算編成にあたり、「特別プロジェクト以外は一律20%の削減」を指示しています。センチュリーは、燃費も悪く、保有するだけでコストもかさみます。

一方、自宅から120㌔の送迎を受けている柳井議長は、「県が乗ってくれと言うからそうしている」と公言しています。

知事は、センチェリーを2台とも売却して、他の公用車で効率的に運用し県民の要求に耳を傾けるべきです。物価高などで苦しむ県民の気持ちをくみ取るのが知事の責務です。

バラマキより消費税減税を~多くの国民の願いに「聞く耳を」発揮すべき時です!!~

11月11日付朝日新聞朝刊の声欄に次の投稿がされていました。この「声」に私は全く同じ意見なので全文紹介をします。

『岸田文雄首相は、総合経済対策として、1人4万円の定額減税を来年6月めどに、住民税非課税世帯には7万円を年内から年始にかけて給付をするという。税収増を還元するのだそうだ。国の歳出が歳入を上回り、毎年国債で補っているというのに、どこにそんな余裕があるのだろうか。あるのなら財源確保が難しい少子化対策に回すべきではないか。

それに、今回の規模の減税で、バラマキの効果はあるのだろうか。半年も先に、4万円程度の減税で、物価高に苦しむ庶民が少しでも効果を実感できるのだろうか。減税をするなら、願わくば所得税・住民税より、日々の生活に直結する消費税を減税してもらいたい。1年間の期間限定でも買い物時に付加される消費税が減税・免税になったら、確実に今より暮らしが楽になる。

賃金の上昇が、物価の上昇に追いつくのはまだ先になりそうだ。減税のあとに増税が控えていると言われる。それでは国民の生活は立ち行かない。防衛力強化のための増税は中止して欲しい。防衛費がGDPの2%になれば、世界3位の軍事大国になる。もっと親身になって国民に寄り添うべきだ。』

共同通信社が11月3~5日実施した全国電話世論調査によると、政府が経済対策に盛り込んだこの減税政策に62.5%が「評価しない」と答えました。これらの政策を評価しない理由について「今後、増税が予定されているから」が40%で最多に、「経済対策よりも財政再建を優先すべきだ」が20.6%、「政権の人気取りだから」が19.3%と続きました。

また、内閣支持率も28.3%に落ち込み、過去最低を更新しているなど、政権に対してかなり厳しい目が注がれている状況です。

さらに追い打ちをかけるように、鈴木俊一財務大臣は野党の質問に答える形で、「税収の増えた分は、政策経費や国債の償還などで既に使っている。減税をするなら国債の発行をしなければならない」と発言しています。

消費税減税については、自民党の若手議員がつくる「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が10月4日に消費税率を時限的に5%に引き下げる提言を行うなど与党サイドからも消費税減税の声が出ています。

現在の物価高は日本だけの問題だけではありません。既に世界107の国と地域では、国民の生活を守るための緊急で有効な経済対策として、付加価値税(消費税)の減税が実施されています。

ところが、岸田首相は「全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけている消費税の減税は考えていない」とかたくなに拒否をしています。

日本国憲法から導き出される「生活費に税金をかけてはならない」(生活費非課税)、「能力に応じて公平に負担する」(応能負担の原則)からも消費税減税は早急に実施すべきです。

あなたも注意してくださいね!!~忍び寄る特殊詐欺~

特殊詐欺のニュースが頻繁に新聞などのメディアに流れます。最近、山口県内で60歳代の男性が仮想通貨(暗号資産)への投資名目で3000万円超をだまし取られたという記事が新聞に載っていました。

特殊詐欺は、犯人が電話やハガキ、封書、SNSなどで親族や公共機関の職員を名乗り、被害者を信じ込ませて現金やキャッシュカードをだまし取る犯罪です。特殊詐欺の主な類型は下記の通りです。

  • オレオレ詐欺: 親族を名乗り、現金をだまし取る手口。
  • 預貯金詐欺: 警察官や銀行職員を名乗り、キャッシュカードをだまし取る手口。
  • 架空料金請求詐欺: 未払い料金を言い立てて金銭をだまし取る手口。
  • 還付金詐欺: 医療費や税金の還付金を言い立てて被害者の口座から送金させる手口。
  • 融資保証金詐欺: 融資保証金を言い立てて金銭をだまし取る手口。
  • 金融商品詐欺: 未公開株などの嘘の情報で購入させ、金銭をだまし取る手口。
  • ギャンブル詐欺: 登録料や情報料として支払わせて金銭をだまし取る手口。
  • 交際あっせん詐欺: 女性紹介などで会員登録料金として金銭をだまし取る手口。

特殊詐欺は高度な分業化によって再び深刻化しており、被害額は年間数百億円規模に上っています。警察は対策に取り組んでいますが、犯人の巧妙さは衰えることを知りません。

ある方からの相談で「税金の還付金の連絡があり、手続きをしていたところ税務職員を名乗る男性から、保証金として○○円を口座に払えば還付をする、というので振り込んだがまだ還付がされない」との内容でした。私が「それは還付金詐欺ではないでしょうか。警察に連絡した方が良いですよと。」アドバイスをしましたが、その後、何の連絡もありませんでした。間違いなく還付金詐欺ですね。犯人は、あなたの身近にも存在します。

相談者だけではありません。私のEメールにも、それを臭わすような怪しい内容のものが頻繁に送信されてきて思わず引っかかりそうになることがあります。

例えば。Amazonプライムからは、「会員資格が○○に切れるので下のアカウントにログインしてください。」

セゾンカード(そのカードは待っていません)からは、○○円が口座から引き落としになります。ご利用明細はNetアンサーまで。」

三井住友銀行(その銀行の口座を持っていません)からは、「ご本人確認のお知らせというタイトルで、今年の○月○日から、当社の社名を名乗って不正な手口でログイン情報を入力させる手口で不正送金をさせる事件が多発しています。ご本人確認はこちらから」

携帯のショートメッセージには、「お客様が不在な為お荷物を持ち帰りました。こちらでご確認ください。WWW: //○○」

何とも物騒な世の中です。社会の歪みや格差の拡大の中で行き場を失った若者が、「楽をして大金を得られる」そんな短絡的な犯罪ではないでしょうか。社会の構造を変えないと!

県民は貧困に喘ぐ、一方県議は贅沢三昧?!~庶民感覚を知るのが県議の使命では?~

昨年11月11日から17日にかけて、シンガポール、ベトナム、フィリピンの3カ国を自民党6人、公明党と民政会それぞれ1人の合計8人の県議が海外視察をしました。報道によると、県議会への情報公開で明らかになったのは、旅費が約140万円、このうち航空運賃が約120万円にも及んでいるとのことです。

ところで、昨年から日本では急激な物価高が続いています。この要因はロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響によることが大きいと言われています。一方、私たちの賃金の上昇は物価高に追いついておらず、物価高で生活が苦しいと多くの庶民は感じています。また年金の支給額はこの物価高にもかかわらず、その支給額は減少しているという異常事態です。そのため、多くの国民が生活防衛のために涙ぐましい苦労をしています。

さて、その航空運賃ですが、ネットで検索してみると、東京・羽田国際空港からシンガポール・チャンギ国際空港までの往復の航空運賃は、エコノミークラス約10万円、プレミアムエコノミークラス約30万円、ビジネスクラス約50万円、ファーストクラス約120万円でした。

おそらく件の県議会議員たちはファーストクラスを利用したものと考えられます。ファーストクラスでは、扉や仕切りの付いた個室となっているものが大半で、座席もフルフラットにして寝転がることができます。また食事はレストランや料亭のようなお皿に盛り付けて提供されます。ドリンクも厳選されたワインや日本酒などが用意されています。

ファーストクラスに乗って悦に興じているかもしれませんが、庶民はこの円安のときに海外旅行をエンジョイできる人は限定されるでしょうし、できてもエコノミークラスがせいぜいという人が多数なのではないでしょうか。

海外視察旅行を全否定するわけではありません。しかし、ファーストクラスを利用した大名旅行のようなことをしていては、庶民の暮らしぶりに関する感度が鈍ってしまうのではないでしょうか。個人のお金で海外視察旅行を行くならいざ知らず、その支出は全額、私たちの血税なのです。

山口県は貴賓車として、トヨタの最高級セダン「センチュリー」を2,090万円で購入したのは違法な公金支出として住民が県を相手取った訴訟を起こしています。原告で元県職員の松林俊治さんは「最小経費で最大効果を上げるという地方自治の原則を軽視した」と批判するコメントを出しています。まさに、この視察旅行もこのコメント通りです。

香川県議会8人がブラジル、パラグアイ、アメリカへの視察旅行の一人当たり費用が約263万円かかると報じられ「高すぎる」批判をあび、同県議会事務局が188万円に減額すると発表しましたが、県民の理解を得られていないようです。

本来、県議会議員には、住民目線で行政機関の政策や運営をチェックする機能が求められています。その「住民目線」という感覚を忘れないように、海外視察旅行をする必要がどうしてもある場合には航空券はエコノミークラスにするようにすべきではないでしょうか。

消費税は「付加価値税」と名称を変えるべき!!~益税とインボイス制度を再度考えます~

日本の「消費税」は、1989年4月1日、当時の竹下登(DAIGOの祖父です)政権のもと3%の税率で施行されました。その当時、「消費税」のような「大型間接税」は広く「付加価値税・VAT 」という名称でした。ちなみにVATとは “Value Added Tax” の略です。

導入に強く反対していた中小零細事業者を懐柔してこの税をどうしても導入したかった政府は、その名称を「消費税」としました。誰がそのネーミングにしたのかは謎ですが、中小零細業者までが納税義務者となるヨーロッパ型付加価値税とは趣を変えて反対の矛先を変えたいと思ってのことだったと推測できます 。

その「消費税」というネーミングが国民に誤解を与え、消費者自身が税金を負担している錯覚をしています。また、財務省も「益税の解消」というプロパガンダを与えている土壌になっています。

そもそも「付加加値税」を最初に導入したのはフランスです。1954年のことです。当時は、第2次世界大戦が終わり、戦勝国だったアメリカが世界最大の貿易大国でした。そのアメリカに対抗するため、自国経済を盛り立てるためには輸出企業に頑張ってもらうしかないという発想で輸出補助金を出していました。しかし、ガット(現在はWTO)という関税と貿易の協定ができたとき、自国企業だけに補助金を与えるのは自由な貿易に反するとの理由でガットに抵触してしまったのです。

それでも何とかして自国の輸出企業に輸出補助金を与えられないかと、フランス政府が考えたのが「間接税」としての付加価値税です。初めから輸出企業を援助するという目的が強い税金でした。日本でも「輸出免税」として、その効果を果たしています。

現在、140カ国余りで付加価値税を採用(主要国ではアメリカだけが採用していません)していますが、「消費税」というネーミングをしているのは日本だけです。

今年の10月からインボイス制度が始まりますが、その影響を受ける多くの中小零細事業者の認知度は必ずしも高くなく、一般消費者は、ほとんどこの制度の理解ができていません。それどころか、財務省の巧妙な「益税論」の影響を受けています。

インボイス導入の理由に「益税の解消」が挙げられてから、免税事業者にはまるで「消費者から預かった税金を懐に入れている」という非常に厳しい目が向けられています。「益税」でも「預かり金」でもないのに、言われなき差別を受けています。新たな社会的分断です。

消費税という法律を読み解けは、「消費者」とか「価格の転嫁を義務づける」という規定はありません。小売業者が受け取った金額は単なる価格であり、「消費者」は「消費税」を負担はしていません。これは、裁判でも確立されています。つまり消費者からの「預かり金」ではないので「益税」などは存在しません。レシートなどを見れば勘違いしやすい(外税表記なので)のですが、実際の納税義務者は消費者ではなく、事業者です。

消費者が消費税を負担しているような誤解を与える「消費税」という名称を今こそ「付加価値税」に今こそ変えて消費者に大いなる誤解を解消する必要性を痛感します。

誰も喜ばないインボイス制度導入は無期限の停止、そして廃止へ!~声をあげる税理士が立ち上がっています!!~

今年の10月から実施されようとされているインボイス制度ですが、その仕組みが明らかなになるにつれ様々な反対の声が上がっています。

そもそもインボイス制度とは端的に言えば、課税事業者が売上にかかる消費税から、仕入れにかかる消費税を差し引く際に、インボイスと呼ばれる請求書で納税する仕組みです。この制度は消費税(多くの国では付加価値税と呼んでいます)を実施している国では納税額計算の前提となっています。

では、わが国では今までなぜこの制度がなかったのでしょうか。それは、消費税が導入された1989年(平成元年)当時、多くの中小企業者が反対の声を上げ、その声を懐柔するためにこの制度に変えて、日本独自の制度である「帳簿方式」を採用しました。帳簿方式とは、事業者が自ら記帳した帳簿にもとづいて仕入税額控除を計算して納付する消費税を決定する方式です。わが国では、記帳の精度が高いのでほとんど課税に支障はありませんでした。

この制度が導入されれば、複雑な事務作業が中小零細業者に強いられます。特に、課税売上高が1000万円以下の免税事業者は、取引先からの要請でやむなく課税事業者を選択すれば、消費税を負担しなければなりません。また、免税事業者のままだと取引中止や消費税分の値下げをされるおそれがあります。つまり、この制度は消費税率を変更せずに増税ができるという代物です。将来の消費税率のアップを見越しての政府の狙いが見え隠れします。

インボイス制度の中止を求める税理士の会が結成され、国会議員に要望書を提出しました。その要望書の中でこの制度が複雑で理解できないのを以下の6点にまとめています

(1)前提となる消費税の納税計算の仕組み、仕入税額控除がわかりにくいこと。

(2)消費税の免税制度の意義や簡易課税制度の意義・仕組みがわかりにくいこと。

(3)免税事業者からの仕入も3年間80%仕入税額控除が可能、その後3年間50%仕入税額控除が可能という経過措置がわかりにくいこと。

(4)令和5年税制改正で導入された、「売上げの80%を仕入税額控除できる特例(3年間の時限立法)」や、「売上高1億円以下の事業者が1万円未満の支払をした場合、インボイスなしで仕入税額控除ができる特例 (6年間の時限立法)」がわかりにくいこと。

(5)インボイスは店を構えている人だけでなく、サラリーマンや主婦のわずかな副業でも発行義務が生じる場合があり、いわゆる「事業者」の範囲がわかりにくいこと。

(6)インボイスの発行が免除される例外取引、例えば「農協特例」、「中古品の売買」、「コイン販売」等々があり、自分の業種・業界がインボイス発行の対象になるか否かわかりにくいこと。

さらに、具体的な問題点をとして、①自分が適格請求書発行事業者に該当するか否か判断できない者がたくさんいる。②申告・納税事務で税理士事務所も税務署も大混戦に陥る③消費税の滞納が増大し、廃業する事業者が増大する、と指摘しています。

だれも喜ばないこの制度(喜ぶのは一部の財務省の官僚だけでしょう。)は無期限に停止をして、そして国民の合意の上で廃止すべきです。今ならまだ間に合います。

若き経済思想家、斉藤幸平氏の著書を読んで~日本社会は、もはや変えることができないのか?~

わが国の防衛費が2023年度からの5年間で総額43兆円、27年度にはGDP(国内総生産)比で2%に膨れ上がることが決りました。その金額は、米国、中国に次ぐ世界第3位です。平和憲法はどこに行ったのでしょうか。さらに、原発再稼働や新増設の容認も決まりました。12年前の福島での、あの大惨事は過去のことで忘却の彼方となったのでしょうか。

本当に残念なことですが、これが日本の政治です。しかも共通しているのは、閣議決定で拙速に決めて、まともに国会論戦をしなかった点です。こうした大転換に民意をまともに聞こうとせずに強行した姿勢はもはや民主主義国家の体をなしていません。異常な政治がまかり通るなか、国民生活は上がる物価や高い教育費の負担を余儀なくされています。

日本社会は、もはや変えることはできないのでしょうか。こうした問題に果敢な提言をされているマルクス研究の第一人者でもある斉藤幸平先生の著書を参考に、日本のあるべき社会を紐解いてみましょう。

ベストセラーになった人新世の「資本論」では、社会を変える構想を5点にまとめておられています。要約して紹介します。

その第一は、使用価値経済の転換です。具体的にはGDPの増大を目指すのではなく、人々の基本的ニーズを満たすことを重視する必要があるということです。

第二は、労働時間の短縮です。それは、ストレスを減らし、子育てや介護をする家庭にとっても、役割分担を容易にするということです。

第三は、画一的な分業の廃止です。つまり、経済成長のための効率化が最優先ではなく、利益よりも、やりがいや助け合いが重視されること経済社会に移行するということです。

第四は、生産過程の民主化です。生産手段を民主的に管理することです。つまり、生産をする際にどのような技術を開発し、どうした使い方をするのかについて、開かれた形での民主的な話し合いによって決めることです。

最後に、エッセンシャル・ワークの重視です。役に立つ、やりがいのある労働をしているという理由で低賃金・長時間労働を強いられているのがケア労働に代表されるエッセンシャル・ワークたちです。彼らがきちんとされる社会が必要です。

締めくくりで筆者は次のように括られています。『「人新世」とは、資本主義が生み出した人工物、つまり負荷や矛盾が地球を覆った時代と説明した。ただ、資本主義が地球を壊しているという意味では、今の時代を「人新世」でなく、「資本新世」と呼ぶのが正しいかもしれない。けれども、人々が力を合わせて連帯し、資本の専制から、この地球を唯一の故郷を守ることができたら、そのときには、肯定的にその新しい時代を「人新世」と呼べるようになるだろう。』

私たちにできることは、この政治や社会の有り様をただ評論家的に批判するだけでなく、何らかの行動を起こすことです。経済社会が大きく変われば必然的に政治の有りようも変わります。私たちの少しの変化が大きなうねりとなって、時代を変えることを信じて。

納税者相談停止命令は憲法に抵触するのでは?~納税者の権利を取り締まるのではなく、納税者権利憲章を策定すべき~

岸田内閣が国会に提出した所得税法等改定案に納税者の権利を著しく制限する疑いがある内容が盛り込まれています。

この法案には「税務相談停止命令制度」を創設する税理士法の改定案が創設されています。その内容は要約すると次の通りです。

①財務大臣は税理士でないものが税務相談を行った場合にはその停止を命令することができる。

②命令の違反者には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科し、違反者名を3年間インターネットで公表され官報でも公告される。

③国税庁長官は税務相談者を質問検査できる。その質問検査に対する拒否又は虚偽の答弁者等には30万円以下の罰金を科す。

④この改正は令和6年4月1日より実施する。

つまり、政府が創設しようとしている法案は、税理士でないものが反復して税務相談を行って脱税や不正還付を指南して納税義務の実現に重大な影響を及ぼし、防止のための緊急措置が必要と財務大臣が判断した場合にはその税務相談の停止などの必要な措置を命令できるというものです。そしてその税務相談を行った者に対して、命令すべきか否かの調査権限を国税庁長官(税務署)に与えるという内容です。

財務省はこの制度の創設の背景について「コンサルタントを名乗り、SNSやインターネットでセミナーを開き、不特定多数に脱税などの方法を指南して手数料を取るなどに事例が散見される。納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼす相談活動を防止するための措置が必要」と説明しています。さらに、「納税相談が税理士業務に当たるかどうかは、個別に判断する」という不明確な回答しかしていません。

この法案について、浦野広明税理士は「法案はほとんど抽象的に書かれており、どうでも解釈できる。意図的な乱用で納税者団体の運動を阻止する治安立法といわざるを得ない」と批判。また、鶴見佑策弁護士は「申告納税制度のもとで税金の相談を誰がするかは自由なのに、罰則で禁じることは問題だ」と指摘しています。

税務相談の前提になっている税法の解釈自体が、思想・信条・価値観を内在したもので、課税庁や税理士の税法が全面的に正しいものだとは言い切れません。つまり、解釈権や共助行為に国家権力が介入して、罰則で停止されるという立て付けは憲法13条(個人の尊厳)19条(思想信条の自由)21条(集会・結社の自由)に繋がる大きな問題をはらんでいます。

納税者の権利憲章をつくる会の平石共子税理士は「世界の多くの国では納税者同士の相談は自由。税理士法で抑制する日本の異常さが際立つ。『命令制度は要らない』の声を上げ日本でも納税者権利憲章を」と提起されています。

憲法の理念に基づく、納税者権利憲章を制定していない国はOECDの中ではわが国だけです。今こそ、納税者の権利を保障する政治の実現が必要です。