カテゴリー: 経営環境

小選挙区制度は廃止すべきです!~人物本位で選ぶ中選挙区制度と政党本位で選ぶ比例代表制度の組み合わせがベスト~

「1票の格差」が最大2.08倍だった2021年10月の衆院選は「投票の価値の平等に反し違憲だ」として、弁護士グループが岡山県内の選挙区選挙の無効を求めた訴訟の判決が、2月10日広島高裁岡山支部であり、裁判所は「合憲」と判断しこの請求を棄却しました。

昨年の衆院戦での一票の格差をめぐる訴訟の判決はこれで6件目になりますが、「合憲」と「違憲」がそれぞれ各3件となりその判断が大きく分かれています。訴訟は全国14の高裁・支部で提起されており3月までに判決が出そろいます。その後、最高裁が年内にも統一判断を示す見通しになっています。

一票の格差については、最高裁大法廷が2009年以降の衆院選について、3回連続で「違憲状態」としました。それを受けて国会は16年、都道府県の人口比をより反映しやすい「アダムス方式」の導入を決め、経過措置として小選挙区の定数を「0増6減」としました。ただ昨年の衆院選ではこの方式の導入が間に合わず、2倍を超える格差が生まれました。

今後、衆院選挙区画定審議会(区割り審)は6月25日までに、新たな区割り案を首相に勧告する予定です。この案では「10増10減」を軸に調整が進められていますが、自民党の内部では異論が噴出しています。例えば山口県では、定数が4から1減少して3になり、安倍元首相(4区)と林外務大臣(3区)の公認争いになるとの見方も出ています。

朝日新聞は、2月11日の1面トップに、2040年「16増16減」という大見出しで「アダムス方式」を当てはめた試算がされていました。試算を都道府県別でみると、40年には東京が8増、神奈川が3増などで、山形、栃木、新潟、岐阜、長崎などが各1減となるとしています。この記事で減少となる16都県では、戦々恐々となっているのではないでしょうか。

いま小選挙区制度の矛盾が露呈しています。この制度にしがみつく限り、こうした問題は未来永劫続きます。小選挙区制度では、有効投票の多数で当選者が決定まり、当選者以外の候補者に入れた票は無かったこと、つまり「死票」となります。民意を歪め、その結果投票率をも下がり、さらに政権与党に圧倒的に有利な小選挙区制度は廃止し、多様な民意が正しく国政に反映される選挙制度に改革する必要性があるでしょう。

朝日新聞のオピニオンの投稿(21年11月6日付)でなるほどと頷かされた投稿があったので紹介します。「~前略~『田中角栄 戦後日本の悲しき自画像』」(中経出版)の一節を思い出した。中選挙区制の時代、旧新潟3区には、角栄氏のほか、社会党の三宅正一氏がいた。選挙戦の街頭演説で、角栄氏は『この選挙でわれわれは勝たねばならないが、農民の恩人である三宅先生だけは落選させてはいけない。もし落選させたら新潟県人の恥になる』と話したという。~中略~人物を選びやすくするためにも中選挙区制の復活を望む。その方が民意がより国会に反映されるはずだと思う」この意見に賛同します。

さらに、定数の半分を人物本位で選ぶ「中選挙制度」と半分を政党本位で選ぶ「全国区比例代表制度」の組み合わすのが理想の選挙制度だと思います。

こうした選挙制度の改革と併せて、有権者の権利でもあり義務でもある投票を必ず行い政治に自ら進んで参画する意識を持つことが大事です。

辺野古新基地建設の警備費、何と1日2750万円~住民運動の監視に巨額の税金~

防衛省沖縄防衛局が、沖縄県名護市の辺野古新基地建設の警備業務の費用についてコメントをしました。

その業務契約は陸上と海上とそれぞれ別にされていて、建設に着工した2014年7月から21年12月までで、陸上警備業務・海上警備業務それぞれ約300億円で合計約600億円が支出されています。さらに埋め立て工事契約の中にも警備業務が含まれています。その金額は約150億円で、合計すると750億円を超えます。これらを単純に契約日数で割ると、1日あたり約2750万円になります。地方の新築住宅1棟分に相当する金額ですから驚きです。

基地建設に反対する人からは「辺野古の海上では朝7時から1日10隻ほどの警備船が配置され、制限水域から『出てください』とアナウンスするだけ。10隻の必要はなく、税金の無駄遣い。警備費が膨大なのは、県民の理解が得られていないことの裏返しに他ならない。新基地建設に湯水のように税金を使うのではなく、沖縄の経済や医療に回すべき」との声が上がっています。

安倍・菅・岸田政権は、沖縄県民に「よりそう」と言ってきました。その本心は、「沖縄振興対策費は上積みするから、新基地建設には反対するな。」とでも言いたいのでしょうか。

しかも、埋め立て工事の海域には、「マヨネーズ並」といわれる軟弱地盤が存在し、それを改良するために当初5年としていた工期は9年3カ月に延び、工費も約2.7倍の約9300億円に膨らむことが伝えられています。

その渦中の名護市で、先月(1月)23日に市長選挙がありました。その結果は、自民・公明両党が推薦した現職の候補者が57.5%を獲得し再選されました。得票率は68.32%で過去最低になり、前回を8.6%で前回を大きく下回りました。また、期日前投票が投票総数の6割を超えるという異例の選挙戦でした。

その結果をどのように考えたら良いでしょうか。25日の朝日新聞の天声人語(抜粋しています)は次のように伝えています。

「~1997年、移設の是非を問う住民投票があった。反対票が賛成票を上回り、過半数をしめた。~しかし、その後の政府の振る舞いぶりをみると、直接民主主義であれ、間接民主主義であれ、移設への抵抗を示す沖縄の世論を切り捨て続けている。『オール沖縄』を掲げて移設に反対した翁長雄志氏が県知事に当選したときも、聞く耳を持たなかった。辺野古の海に土砂が投入された後の県民投票で、埋め立て反対が7割を上回ったが、作業をやめようとはしなかった。~相手が何を言っても無視するというのも、精神的な暴力にあたる。抵抗する意思を失わせるための手法である。基地を受け入れるとも、反対するとも言わない『沈黙』の市長が2期目の当選を果たした。反対しても無駄だと思わされてきた末の結末だろうか。過去最低であった投票率からも、諦めの気持ちがにじんでいる。」

やるせない名護市民・沖縄県民の思いを私たちも当事者意識を持って真摯に受け止め、この問題をどう捉え、どのように行動するかをわが身のこととして考える必要があります。

時代に取り残されないための30のワード~いなさら聞けない重要単語をひもときます~

「通販生活」というカタログハウス(ユニークな商品を通販で売っている会社で、テレビCMもしています)が刊行している季刊誌の2022年春号にカタカナ語辞典という付録がありました。日常生活で使う「カタカナ」から502語が厳選されています。それを参考に、30の単語を4区分にまとめてみました。

A+(知らないと時代から完全に取り残される)

ICU……集中治療室。大手術後の患者や重傷患者を特別な訓練を受けた医師や看護師が24時間交代で見守り、高度な治療を行う病室のこと。

インフルエンサー……世間に大きな影響を与える人で、芸能人、スポーツ選手、有識者やユーチューバーと呼ばれる人気動画投稿者のこと。

エッセンシャルワーカー……医療・介護、日用品店舗従業員、警察官、消防士、公共交通の運転士、ゴミ収集など社会生活に欠かせない職業に従事している人のこと。

クラスター……コロナなどの疾患が特定の条件下で蔓延する集団感染。

ジェノサイド……ある人種、民族、宗教、思想に属する人々を計画的に絶滅させること。

スクリーニング検査……地域、職場、学校、新生児、妊婦、高齢者などの集団の中から病気の疑いのある人を発見するための検査。ふるい分け試験ともいう。

バズる……短期間で爆発的に話題が広がり、多くの人の注目を集めること。

フェーズ……段階、局面。単位や数字で明確に区切れないが変化するものに使われる。

ボトルネック……障害、支障。円滑な進行や発展の妨げになるものや場所のこと

ポピュリズム……大衆主義。大衆の意見を尊重した政治的主張や政治運動のこと。

A(知るとニュースの理解が深まる)

アナフィラキシーショック……アレルギーを起こす物質が体内に入ることで、急激に発症するアレルギー反応(じんましん、呼吸困難、腹痛、嘔吐など)をいう。

インボイス……商品名、金額、適用税率、消費税額が記載された適格請求書のこと。

M&A……企業の合併・買収のこと。相手方企業の資本や人材、経営手腕などを取り入れ、相互に自社の弱点を補うための手法。

デドックス……解毒・浄化。体内の有毒物や老廃物を排出すること。

パラダイムシフト……一般的、常識的とされる考え方や枠組みが劇的に転換すること。

フードバンク……製造や流通段階で出る余剰品や賞味期限が迫って廃棄される予定の食品を企業などから寄付を受け、必要な人や団体に無償で提供するボラティア活動のこと。

フェイクニュース……主にインターネット上で拡散される、事実とは異なる情報のこと。

プレゼンス……存在、存在感。個人や企業、国家に対して使われ、特にある地域に対して軍事的・経済的に影響力があることを指す。

ベーシックインカム……すべての個人が生活するために必要とする基本的な所得を無条件で現金給付する制度のことをいう。

リカレント教育……社会人になってから再度学校などの教育機関で学び、また社会に出るのを繰り返すこと。社会人の学び直し。

B(知ったら他人に教えたくなる)

EV……電気自動車のこと。ガソリンや軽油などの石油資源を使わず、車に搭載したバッテリーに充電した電気を使って走る。環境に優しい自動車として期待をされている。

クオータ制……政治、行政、企業の組織内で、役職の男女間格差をなくすため、事前に取り決めた一定数を両者に割り当てる制度のことをいう。

ダイバーシティ……多様性のこと。会社の組織管理や人事の分野では、性別・国籍・年齢・宗教などで区分せず、様々な人材を積極的に受け入れようとする考え方を指す。

デカップリング……連動性の強い二つのものを切り離すこと。経済成長や利便性を保持したまま消費エネルギーを減らした状態などのことをいう。

レガシー……遺産、語り継がれる業績のこと。東京オリンピックの時に多用された。

C(知らなくても暮らしに支障はないけど)

アンバサダー……大使、施設、代理人のこと。企業や組織の依頼を受けて商品やサービスの認知度を向上するために活動する人。

イシュー……議論すべき課題、問題点。長期にわたって検討するという意味合いが強い。

オルタナティブ……代替物。他の選択肢。元は二者択一の意味。通称オルタナ。

サステイナブル……環境破壊をせずに維持、継続する経済活動のことをいう。

バイアス……傾向、偏向、先入観、データ等の偏り、思考や判断に特定の偏りをもたらす思い込み要因、得られる情報が偏っていることによる認識の歪みのことをいう。

 

「思いやり予算」新協定で負担増~思いやるべきは米軍ではなく、国民の命と暮らしです~

日米両政府は今月7日、外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開催し、2022~26年度まで5年間の米軍に対する「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)の新たな特別協定に署名しました。政府は17日からの通常国会にこの協定を承認案件として提出し、3月末までの承認をめざしています。

日米両政府は昨年12月21日、「思いやり予算」にかかわる新たな特別協定に基本合意しました。その内容によると、今後5年間の負担総額は、16~20年度より1086億円増の1兆551億円に及ぶ見込みです。

米軍駐留経費負担の根拠になっている日米地位協定は1960年に締結されました。その第24条では、米軍基地を提供するために要する地権者補償などを日本側が、それ以外に生じる全ての維持経費を米側がそれぞれ負担すると規定しています。

しかし、駐留経費の一部を日本が負担する仕組みは、米側の「円高・ドル安」を口実として78年から始まりました。この年は基地従業員の福利費、翌年には米兵用の住宅や学校などの施設整備費なども負担するようになりました。

当時の金丸信防衛庁長官が国会審議で「思いやりがあってもいい」と発言し、以来この負担は「思いやり予算」呼ばれるようになりました。同時に、政府はこれらの支出を「地位協定の範囲内」と拡大解釈をするようになりました。しかし、米国からの負担要求はさらに強まり、解釈では乗り切れなくなったために87年度からは「特別協定」を締結するようになり、現在のように労務費や光熱水費を負担するようになりました。96年からは、訓練移転費までも負担するようになりました。

「思いやり予算」は、90年代まで増え続け、99年には歳出ベースで2756億円にもなりました。さすがに米軍が使うボーリング場やゴルフ場の整備などに対する費用負担は批判の的となり、その後は無駄を削減せざるを得ませんでした。

他方、「思いやり予算」の通称について米国側は、日本による駐留経費負担は当然の「責任分担」であると不快感を示していました。そこで、政府は今回の特別協定から「自衛隊の能力強化へも資する」としてその名称を「同盟強靭化予算」と改めることとしました。おまけに、訓練機材調達費を新設し5年間で最大200億円の負担をすることになりました。

防衛省の試算では、日本政府の米軍に対する在留経費の負担割合は86%で同様の負担をしている韓国の40%やドイツの32%よりも突出して高いことはあまり知られていません。

沖縄や岩国だけでなく各地の在日米軍基地でオミクロン株の大規模な感染が相次ぎ、その地元で住民の感染が爆発的に拡大しました。米軍のずさんな感染防止態勢が明るみなっているにもかかわらず、政府の対応はきわめて及び腰と言わざるを得ません。

政府は社会保障費や教育費など生活予算を削減するばかりか、消費税の増税で国民は塗炭の苦しみを強いられています。米軍ばかりを思いやる政府の姿勢に国民の怒りが噴出するのは当然です。思いやるべきは、米軍ではなく国民の命と暮らしではないでしょうか。

インボイス制度廃止には消費税の減税が最も有効!~総選挙の公約を実現することが喫緊の課題です~

来年(2023年)10月1日からインボイス制度が実施されようとしています。すでに、昨年10月1日よりインボイス制度の登録申請が開始されましたが、その周知がされていないのが現実です。

日本商工会議所の昨年11月10日のアンケート調査によると、インボイス制度への準備状況で、「対応を始めている」と回答して割合はわずか6.4%で、「何もしていない」と回答した割合は59.9%にものぼり、実に92.7%の企業が具体的な対応をしていないことが浮き彫りになっています。

また、昨年10月11日号の納税通信では「内容を知っている」「対応を検討している」がいずれも1割台で「制度がわからない」「検討していない」がいずれも8割を超えています。

財務省の思惑は「論語」にある「知らしむべからず、由らしむべし」を地で行っているのではないかと疑わざるを得ません。つまり「人民大衆というものは、政府の政策に盲目的に従わせておけばよいので、彼らには何も知らせてはならない」、有り体に言えば「このインボイス制度の真の姿を中小零細事業者に知らせるとすったもんだの大騒ぎになる」ことを恐れているのではないでしょうか。

消費税は導入時の3%から、5%、8%、10%と順次引き上げられてきました。その都度、中小零細事業者は、消費税の欠陥の一つである「価格への転嫁」が力関係で決まることで、元請け先からの値引き要請に甘んじ、元請け分の消費税分をかぶらされてきました。今回のインボイス制度でも同様なことが繰り返されることが容易に想定されます。

このインボイス制度導入の理由として「複数税率」になったこととしていますが、今の帳簿方式で十分に対応できます。おそらく、現在の軽減税率(8%)と標準税率(10%)の差を遠くない将来に広げていく、つまり標準税率をEU並の20%位にしたいとの思惑が透けて見えます。

インボイス制度の理由が「複数税率」と言うなら、最も効果的なのが消費税を減税し、複数税率をなくすことです。

昨年10月末に実施された総選挙では、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合と立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党の4党による政策合意で、消費税の5%への引き下げが共通政策になりました。

また、躍進した日本維新の会も2年間、国民民主党も経済状況が好転するまでの間という限定付きですが5%に引き下げるマニフェスト(公約)を掲げて戦いました。政党として消費税引き下げを拒否しているのは自由民主党と公明党だけです。しかし、自民党の若手議員を中心として消費税の引き下げを支持している議員が相当数います。

経済格差を是正するためにも「逆進性」の強い消費税の減税は効果があります。国民の世論と運動をさらに大きくして、喫緊に消費税の減税を実現すれば、インボイス制度の導入理由が存在しなくなります。今年は、消費税の減税が実現できる年にしたいと願っています。

賃上げ促進税制は有効に機能をするのか~金融所得課税や炭素税には触れずじまい~

12月10日に自民、公明両党は2022年度の税制改正大綱を決めました。閣議決定されたこの大綱をもとに、国税の改正法案については財務省が、地方税の改正法案については総務省がそれぞれ作成し、来年1月招集の通常国会に提出されます。現在の国会の力関係ではこの改正法案が年度内(3月末)に可決、成立します。

この大綱の目玉は、「成長と分配の好循環」を掲げる岸田政権のもと、企業の賃上げに対する税の優遇措置のさらなる拡充が盛り込まれました。減税規模は1,000億円と見込まれています。

具体的には、全体の給与総額をベースにみた賃上げ率などに応じ、大企業は最大で30%(現行は最大で20%)、中小企業は最大で40%(現行は最大で25%)の税額控除を行うというものです。

果たして、賃上げ促進税制の効果はあるのかはなはだ疑問です。そもそも賃上げは税制の優遇策で決まるものではありません。それは、労使の交渉などによって決まるものです。現にこの制度は13年度の導入以来、見直しがされて継続してきましたが、13年度に比べ20年度の実質賃金は、非正規社員の増加などが要因で低下しているとの指摘があります。

また、中小企業では赤字申告が約60%を占め、黒字申告をした企業でも納税額はわずかなところがほとんどです。こうした企業はその恩恵は受けられません。つまり、賃上げする体力がないと言うことです。中小企業の割合は99.3%で、そこで雇用されている従業員は全労働者の約7割を占めています。政府が取り組まなければならないのは、赤字企業などに対する支援です。例えば、社会保険料の負担割合を軽減するなどの措置が考えられます。

岸田首相が総裁選挙で掲げていた金融所得課税の見直しには、株式市場の急落などの要因で、やはり次年度に先送りとなりました。

欧米などは風力発電や太陽光発電になどに対する投資を促進する税制が進んでいますが、それに対しても何の言及もありません。また、温暖化ガスの排出量に応じて課税をする炭素税にも言及がありませんでした。

日本経済新聞の12月11日号で、矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストがこの大綱について的を射たコメントをされているので紹介をします。『中長期の税の在り方がまったく見えなかった。法人税の引き下げと消費税の引き上げをセットで進めてきた流れが世界的に転換するなか、新しい税体系をどう考えるのか。カーボンニュートラルも骨太の論議から逃げた。

賃上げ税制は2013年から導入して効果がなかったものを多少変えたところで劇的には変わらない。賃上げに対応できるのは大企業だけで、赤字の多い中小企業との格差が開く皮肉な結果になるだろう。労働市場の改革をしないと持続的な賃上げは無理なのに、この10年ほど政治が議論から逃げている。

政府の税制調査会が中長期の税の在り方について論議をしないことも問題だ。』

インボイス制度、その先に~中小・零細業者を切り捨てる制度改正が待っている?~

2023年10月1日より開始予定のインボイス制度は500万社ある消費税の免税事業者に大きな税負担と事務負担を強います。財務省は、免税事業者のうち161万社が課税事業者を選択することを想定し、その税収増は2,480億円、1社あたり約15.4万円になります。この負担は経済格差が拡大している現在、決して少ない額ではありません。

さらに懸念されるのが、課税事業者を選択することを余儀なくされた事業者がどのように消費税実務をこなすかです。これまで、消費税の計算とは縁もゆかりのなかった者がにわかにその税額を算定するための申告書を自らが作成できるとは思えません。

インボイス制度が導入されれば、その先に待っているのは、現行の消費税の根幹をなす制度に大きな手が加えられる懸念です。以下、考えられることを検証してみます。

(1)簡易課税制度は縮減され、やがて廃止される

消費税の課税事業者のうち現在約4割が簡易課税制度を選択しています。また、新たに課税事業者の選択をすると思われる大半がこの制度を選択すると考えられます。

インボイス制度の導入は、「正確な」適用税率や消費税率等を明示するという趣旨です。そういう点では現行の簡易課税制度では「正確な」納税額を算定できません。

今後は、みなし仕入れ率を低くするなどの改定をして、簡易課税制度を選択すれば税負担が原則課税より重くなる状況をつくり、簡易課税選択者を原則課税の方に誘導し、やがて廃止し、「正確な」税額を国庫に納めさせようとする企図があるのではないかと危惧します。

(2)事業者免税点が引き下げられる

消費税の事業者免税点制度は、小規模事業者の納税事務負担等に配慮して納税義務を免除する制度です。現行の制度では、基準期間における課税売上高が1,000万円以下です。

インボイス制度が導入され定着したら、次に考えられるのがこの引き下げです。しかし、この制度を廃止すれば、課税当局は事務負担が増加する割には、税収は増えないということなります。要は、課税の適正化と事務処理の煩雑さを考慮してその水準が決められます。

そこで考えられるのが国際水準です。OECD加盟国の免税点の水準が、500万円以下である状況を踏まえ、現行の半分の500万円に引き下げられる可能性があります。

(3)基準期間は廃止される

基準期間という仕組みが存在するのは、日本の消費税が帳簿方式を採用しているための仕組みです。インボイス制度が導入されれば、帳簿ではなく、インボイスで事業者免税点などの判定ができるのでこの仕組みが不要になります。

換言すれば、インボイス制度により起業をすればすぐに誰もが消費税の世界へと誘われる仕組みに様変わりすることになります。

消費税の近未来を考えると空恐ろしいことになることが想定されます。さらに、待ち受けているのがさらなる消費税率の引き上げです。そうなればこの国のかたちはすっかり様変わりするでしょう。インボイス制度、止めるなら「今」です。

国際連帯税でグローバルな課題の解決を~ワクチン接種、気候温暖化、貧困問題などに有効です~

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」は、アフリカ南部から世界各地に広がったとみられています。アフリカをはじめとする途上国では、設備や資金面の問題からワクチン接種の進展が先進諸国に比べて遅く、こうした「ワクチン格差」が感染拡大の要因となったとの見方も出ています。命の格差が広がっていることが顕在化しています。

経済が国際的に減速している一方、株価は高騰しています。数多くの人々が経済的に困窮している中で、超富裕層や多国籍企業はますますその富を増やし続けているという現象があります。しかも、その稼得した富に対してまっとうな税金を払っていません。パラダイス文書など国際的な報道機関が明らかにしたようにタックスヘイブン(租税回避地)に資金を移転するなどの方法を巧みに利用しています。

このような国際的な富の偏在を是正するには、グローバル・タックス(国際連帯税)の導入が必要です。金融取引税、デジタル課税、地球炭素税、富裕税、武器取引税などが提唱されています。デジタル課税については、12月2日の記事で触れていますが、今年大きな前進がみられました。今回は、金融取引税について考えてみます。

金融取引税とは、金融市場で取引のある金融商品の売買に対して低率の税を課するものを言います。その課税対象は、株式、債券、金融派生商品(デリバティブ)為替です。この課税の効果としては、財源調達と投機的な金融取引の抑制があります。かなり大きな財源が新たに生まれるとともに、1秒間に何百回もの売買をするような投機的取引を抑制し、マネーゲームに制限をかけることが可能になります。

この課税方式はすでにEU諸国で議論され、フランスでは時価総額10億ユーロ(130億円)以上の国内株式の購入に0.2%を課税する金融取引税を2012年に導入し、その後、税率を0.3%に引き上げています。イタリアも導入し、さらにスペインやポルトガルでもその検討をしています。

EUでは、金融取引税のことを「ロビン・フッド・タックス」と命名しています。その理由は「強きをくじき、弱きを助ける」税金だからです。日本の消費税のように「逆進性」はありません。

日本では超党派の「国際連帯税の創設を求める議員連盟」が、議員立法で金融取引税などを候補とする国際連帯税の実現をめざすことを確認しています。また、市民団体や専門家も外務省などに長年働きかけをしています。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は記者会見で、ワクチンの公正分配は「慈善事業でなく、全ての国にとっての最善の利益」と強調し、「ワクチン不平等が長く続けばそれだけウイルスを拡大させ、予防や予想ができない形で進化させる」とし、格差是正が急務だと訴えています。

こうした格差是正を抜本的に行うためには、利ざやを稼ぐことを自己目的化している金融取引に対して、低率で課す金融取引税は大きな効果を上げるのではないでしょうか。

国際課税の新ルールに注目が向けられています~9年越しの議論、100年ぶりの改正で大きく変わる世界の税制~

1980年代にイギリスのサッチャー政権とアメリカのレーガン政権が法人税減税に舵を切って以来、世界的な法人税率の引き下げ競争がされてきました。この際限のない引き下げ競争は結果として法人税収を引き下げ、自らの首を絞める「チキンレース」を興じてきました。「チキンレース」とは「相手を屈服させようとして互いに強引な手段をとりあう争い」と言う意味です。これは和製英語で、英語では「チキンゲーム」と言います。日米欧などが失った可能性がある税金は過去10年だけでも170兆円との試算がなされています。

経済協力開発機構(OECD)は、10月8日、多国籍企業の税逃れを防ぐための新たな国際課税ルールに関する交渉会議を開き、136カ国・地域が最終合意に達しました。合意に達しなかったケニア、パキスタン、スリランカ、ナイジェリアの4カ国については引き続き協議を進めます。

2012年に本格的な国際課税の強化の協議が始められて約9年越しでまとまりました。これは約100年ぶりのルール改正です。鈴木財務大臣は、新たな国際課税のルールで最終合意に達したことについて「100年来、続いてきた国際課税原則の見直しが、グローバルな枠組みのもとで合意されたことを高く評価する。今後、多国間条約の策定・批准や、国内法の改正に向け、引き続き各国と協調しながら取り組みたい」という談話を発表しました。

この「国際課税の大改革」は2つの柱からなっています。ひとつは「デジタル課税」、もうひとつが「法人税の最低税率」です。

デジタル課税とは、これまで国際課税の大原則として、人や施設など物理的な拠点のある国のみが課税できるとされていたものの大転換です。近年急速に成長してきたGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などに代表されるIT企業などは、インターネットを通じて世界中にサービスを提供して利益を上げる一方で、物理的拠点は法人税率の低い国のみに設置して税負担を低く抑える抜け穴がありました。新ルールでは、売上高が200億ユーロ(約2.6兆円)を超え、利益率が10%を超える企業が対象で、売上高の10%を超える利益の25%について、売上高に応じて各国・地域に配分するというものです。

もうひとつの柱が、法人最低税率の導入です。これは、一定規模以上のすべての多国籍企業に対し、最低15%の実質税負担率を課す仕組みです。単に法人税の最低税率を15%にするというものではなく、法定税率を15%以上としている国でも、税制の抜け穴や優遇措置を利用して実質税負担率を15%未満に下げている仕組みを許さない仕組みです。今回の新ルールでは、最低税率を下回る国に拠点がある企業は、親会社のある国に最低税率との差額を納めなければならなくなります。

「この合意は21世紀の税制革命だ」とフランスのルメール経済・財務相が語っています。また、アメリカのイエレン財務長官は「有害な『底辺の競争』に終止符を打つ国際ルールをすべての主要国が支持した」と歓迎声明を出しています。

完全だとは思いませんが、これを前に進めることが求められているのだろうと思います。

農業破壊を食い止めなければ~米価暴落で農家は塗炭の苦しみに~

「昔は北海道のお米は厄介道米(やっかいどうまい)という程、売れない米だった。今はその北海道がやたら美味い米をつくるようになった。農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです」こんなとんでもない発言を、一国の副首相が総選挙の遊説で脳天気にしました。しかし、米農家は今まさに非常事態なのです。

コロナ禍によって外食を中心に米需要が大きく減少して、今年収穫された米の生産者価格が昨年対比で軒並み2割から3割も下がっています。産地や銘柄によって金額のばらつきはありますが、人気の北海道の「ななつぼし」が一俵(60㌔)で11,000円、昨年比-2,200円、千葉県の「ふさおとめ」にいたっては、6,400円、昨年比₋5,200円です。

米の生産コストは、農水省の調査では一俵あたり15,155円です。農家が現金支出する機械代・肥料代・農薬代など(物財費)は、9,180円です。この物財費と生産者価格がほぼ同額になっています。つまり、生産コストの中に含まれる労働費が確保できない、換言すると農家は賃金ゼロ、あるいはマイナス(持ち出し)の状態になっています。

史上最大の減反を達成したにもかかわらず、米価の大暴落に苦しむ農民がいます。そして、来年も同様の減反が強制されようとされています。政府は、生産量の5%に当たる36万トンの転作・減反を求めています。他方、その2倍にあたる77万トンの外国産米を「ミニマムアクセス(最低輸入機会)米」として輸入をしています。

米価を市場原理だけで考えて良いのでしょうか。それでは、日本の農業や食の未来は見えてきません。わが国の一人当たりの米の消費量は過去50年で半減しています。その減少分が小麦や大豆などの輸入産品に置き換えられました。その結果、カロリーベースの食糧自給率は37.17%という低水準になってしまいました。飢饉など、世界中が食糧危機になった場合にどのように対処するのでしょうか。

この水準は、G7の中でも異常なまでの低さです。カロリーベースの食糧自給率は高い順からカナダ264%、アメリカ130%、フランス127%、ドイツ95%、イギリス63%、イタリア60%です。日本の農業は、「過保護」との指摘がありますが、それは間違っています。日本の農業所得に占める補助金の割合は30%ですが、ドイツでは77%、フランスで64%、イギリスで53%など国家としてその自給率向上に努めています。

また、アメリカでは昨年余剰になった農産物を買い上げ、生活困窮者の食糧支援に提供しました。今年も、低所得世帯やシングル家庭、貧困高齢者への食料配布補助などの支援政策を強化しています。農業予算の60%を消費者の食料購入支援に充てています。

わが国では、コロナ禍で職を失ったなどの理由で米が食べたくても食べられない人が急速に広範囲に拡がっています。アメリカなどのように過剰米を政府が買い取り、生活困窮者などに食料支援をすることが求められています。

このままでは、来年も米価の大暴落が想定され、農業をやめてしまう人がさらに増えるでしょう。日本の農政を抜本的に変えなければならないときにきています。