カテゴリー: 経営環境

ドイツの付加価値税(VAT)について~現地で見聞して改めて制度の違いを感じました~

年末から年始にかけて、二女が働いているドイツに行ってきました。その文化の違いを体感しましたが、その中でも付加価値税(消費税)のことについて報告します。

標準税率は19% です。軽減税率は7%で、非課税に該当するものがあります。

軽減税率の対象品目 は、食料品、水道水、新聞雑誌、書籍、旅客輸送、宿泊施設の利用等 です。また、非課税のものは、不動産取引、不動産賃貸、金融・保険、医療、教育、郵便等 があります。

注1)食料品は基本的に軽減税率が適用されますので、高級食材のトリフ、キャビア、フォアグラなどが7%の軽減税率となります。また、ペット用のクッキーが7%の軽減税率なのに人間が食べるクッキーは19%の標準税率です。矛盾していますよね。

注2)食料品の中でもチョコレート飲料も標準税率ですし、ハーブティーでも成分によって標準税率のものもあれば軽減税率のものもあります。ドイツ人は内税方式にすっかりなれているので何が標準税率になるのか、軽減税率になるのか意識をしていません。どんなものが標準税率か、軽減税率なのか、非課税なのか、その適用区分についてはカオスな感じです。

注3)水道水は軽減税率ですが、ペットボトルの水は標準税率です。因みにほとんどが硬水の炭酸水です。また、いったんデポジットが加算され、スーパーなどのリサイクルBOXで処分すればデポジットが戻ってくるシステムです。ペットボトルは、ほとんどが1.5リットルなので買い物の際はとても重たくなります。

注4)ホテル代は軽減税率が適用されますが、ベルリンでは別途5%のホテル税が課税されます。他の地域でもホテル税が課税されているところ(例えばドレスデンなど)もあります。

注5) ビールは、0.5リットルの瓶ビールは一本65セント(約88円)前後。これに8セントのデポジットが加算され、瓶を返却するとお金が返ってきます。ビール税も、0.5リットルあたり4.3セント(約6.5円)と格安(ビールの種類、醸造所の規模により幅があります)。日本では0.5リットルあたり約111円。ドイツの約17倍の税金が課されています。ビールは16歳から飲酒が許されています。またアルコール度数が高いワインは18歳からです。因みに、トイレはほとんど有料ですが、その料金は1ユーロ(約135円)が平均です。

注6)何より注目したのが、ドイツでは標準税率が19%で国税収入に占める付加価値税の割合が30%強であるのに、日本の消費税のそれは29%強であることです。もし、税率の引き上げが予定通りされたら、その割合はドイツを超えてしまします。現在ドイツでは、標準税率を引き下げる変わりに軽減税率を廃止するという論調が高まっているそうです。

さて、わが国では来年10月より消費税を10%にし、軽減税率するという既定路線がありますが、消費マインドがあがらない昨今の経済情勢下で増税をすべきかどうか、また、仮に増税しても僅か2%しか差がない軽減税率を適応すべきか大いに論議すべきです。

自治体の地方創生が失敗する3つの理由

安倍政権がアベノミクスと並ぶ看板政策としている地方創生。全国各地でさまざまな地方創生策が打ち出されていますが、そのほとんどは失敗に終わっていま す。鳴り物入りで進める地方創生策はなぜ、うまくいかないのでしょうか。大きく分けて3つの原因が足を引っ張っているように感じます。

(1) 自治体の個性を消す横並び意識

その第1が自治体の横並び意識です。全国の都道府県、市区町村が急激に進む人口減少と高齢化の中、地方創生総合戦略策定しています。それぞれの地域をどうやって発展させていくか、各自治体が知恵を絞っているわけですが、盛り込まれた内容はIターンの受け入れ、特産品のブランド化、訪日外国人観光客の受け入れなどどこかで聞いたことがあるものばかり。ところどころにうまいキャッチフレーズが入っていても、目新しい中身は見当たりません。

総務省のホームページに掲載されたふるさと納税の返礼品も同じです。どの自治体の返礼品もお得感のある特産品がずらりと並びます。肉や水産物など目玉となる返礼品は違っても、特産品で釣り、寄付金を集めようとする発想は共通しています。横並び意識が個性発揮の邪魔をしていることは間違いないでしょう。

移住者の受け入れで先進地とされる島根県海士町、昭和30年代の商店街を再現して観光地となった大分県豊後高田市は、地域の歴史や自然、風土を地元の人たちが最大限に生かして地方創生策練り上げました。地道な努力を忘れ、どこかの成功例と似た施策を打ち出したところで、成功につながるはずもないのです。

施設建設から商品開発までありとあらゆる計画をコンサルタント会社に外注する自治体の姿勢も、この傾向を助長しています。オリジナリティに欠けたパクリの地方創生策が通用しないことを肝に銘じなければならないでしょう。

(2) 学ぶべきは過去の失敗例

第2の問題点は過去の事例から学んでいないことです。といっても政府やコンサルタント会社が宣伝している各地の成功例を学べといっているのではありません。学ぶべきなのは失敗例なのです。

青森県青森市は中心部に都市機能を集約するコンパクトシティ構想を掲げ、JR青森駅前に2001年、商業施設や公共施設が入った再開発ビルを開業しました。一時はコンパクトシティの先進地として注目を浴びましたが、客足が伸びずに2008年、事実上の債権放棄に陥っています。

中心市街地の再開発を望むなら、こうした失敗例を徹底的に研究しなければ、同じ過ちを犯すでしょう。失敗例を精査し、その原因を自分たちの計画に当てはめて考えれば、問題点が目に見えてくるはずです。

地方創生はどこかが成功すれば、別のどこかが影響を受けて廃れていく椅子取りゲームのようなものです。勝者はほんのひと握りしかいません。「予測が外れた」「状況が変わった」などと後で言い訳せずに済むよう失敗例から徹底的に学ぶ必要があるのです。

(3) 地域に不可決なリーダー育成

3つ目は地域を引っ張る民間のリーダーを育てることです。

長野県小布施町を観光の町として活性化させ立役者は、セーラ・マリ・カミングスさんという米国人女性でした。徳島県上勝町で木の葉を和食の飾りとして販売する葉っぱビジネスを成功させたのは、徳島県徳島市出身の農協職員横石知二さんです。

最終的に事業を動かし、地域に元気を与えるのは地元の人たちにほかなりません。自治体がいくら補助金を積んだところで、補助金が打ち切られればその効果は失われます。

カミングスさんや横石さんは自ら率先して地方創生に取り組み、自治体が後からついていきました。

自治体主導で地方創生策を進めるのなら、カミングスさんらに代わりうる地域のリーダーを同時に育てなければなりません。どれだけ立派な施設を自治体が整備しても、地元の人たちが積極的に動かない限り、その計画は失敗します。

世の中を変えるのは「よそ者、若者、変わり者」だといわれます。そういう人物を地域で発見するか、呼び込んで、リーダーに育てることが本当に大切なのです。多くの自治体はこの点を見落としているように感じてなりません。

※政くらべ 2016年1月9日 より引用

ここにも監視型社会が~税理士だって監視されている~

弁護士の場合は、弁護士自治により、弁護士会や日弁連が懲戒権を持っています。ところが、税理士の監督は税理士会、日本税理士会連合会、税務署、国税局、国税庁が担当しています。広島国税局に対応する中国税理士会は約3,000人の会員を擁していますが、以前はその監督役として税理士監理官1人でした。その後、総務課に税理士専門官を配置し、2名体制になりましたが、現在では、もう1名増員して3名体制で税理士も管理されています。

その管理は、税理士システムで行われています。「税理士システムは、税理士等に関する情報を管理することにより、税理士制度の適正な運営確保を図ることを目的とする。」と明記されています。「税理士システム事務処理要領(税務署用)の制定について(事務運営指針)」(官総-83、官参5-2 平成20年6月27日付)の冒頭のシステムの概要のところで記載されています。

事務運営指針は、「事務処理の範囲」のところで、税務署において「税理士システム」を行う事務として(1)入力事務、(2)検索・照会事務、(3)帳票出力事務が掲げられています。

興味深いのは、(1)入力事務として、①税理士会支部の役職歴情報入力②文書情報入力③税理士等の関与先・使用人情報入力④税理士等の指導監督状況入力があります。同じような内容が、 (2)検索・照会にあるにかかわらず、(3) 帳票出力事務にはこれらが掲げられていないことです。

さらに、(1)②の文書情報入力として「附加情報メニューの文書情報更新画面において、指導・監督等を行う上で参考となる情報を文書(全角600字以内)で入力とするとあります。いわゆる定性(個人)情報、例として税理士等情報連絡せんの情報、調査等で把握した情報、部外情報等」とあります。

残念なのは、これらの内容が帳票出力されないので、非公開情報として、開示請求がかなわないことです。こういう現象を「情報の非対称性」と言うのではないでしょうか。つまり、一方(国税局)がそれぞれの税理士の情報を所有していて、仮にその情報が誤りであったとしても、もう一方の当事者(税理士)には、それを正す権能さえないことです。

日頃から税理士の社会的使命を全うしようと努力している会員からすれば、自浄効果が期待される内容(税理士が税務当局から、どのように判断されているか。)が開示されず、不意に懲戒処分されるのではないかという一抹の不安が払拭できないのが私の思いです。

税理士には、税理士法第1条においてその使命が規定されています。それは、「税務に関する専門家として、独立した公正な立場」において、「申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ」、租税に関する法令に規定された「納税義務の適正な実現を図る」ことです。

このため、税理士には様々な義務と責任が課されており、これに違反した場合には、懲戒処分等に付す規定が設けられています。

税務当局が作成した資料から、非行事例に以下のものがあります。

1 脱税相談等

2 故意による不真正税務書類の作成

3 過失による不真正税務書類の作成(相当の注意を怠った場合)

4 自己脱税

5 多額かつ反職業倫理的自己申告漏れ

6 業務懈怠

7 その他反職業倫理的行為

8 2か所事務所設置違反

9 使用人等に対する監督義務違反

当然ながら多くの税理士には心当たりのないことばかりと思いますが、実際、私たちは税務当局からどのように見られているのでしょうか。

「独立した公正な立場」を堅持しながら、マイナンバー等これからも法令の遵守がますます求められる立場として、税理士システム等の開示請求がなされることで、「自律・自戒に基づき適正な業務遂行に励める」環境づくりがなされていくことを強く望みます。

監視型社会と人権を考える!~税法にも忍び寄る内心の自由の侵害~

IT型社会の進展に伴い私たちの暮らしは飛躍的に便利になっています。多くの事業所でも家庭でも監視カメラを置いています。弊事務所でもわが家でも管理システムで守られています。スマホのGPS機能を使えばカーナビの代わりになります。また、超方向音痴の愚妻は道案内に便利に使っています。このように私たちの生活は安全になり、そして便利になりました。

でも、こうした情報を誰がどのように管理しているのでしょうか?私たちが知らない間にその情報が利用されているかもしれません。どこもかしこにもある監視カメラで警察は犯人を割り出すのに役に立っているのかもしれませんが、冤罪を起こす可能性もあります。現に、山口県長門市のパチンコ店で女性が財布を盗んだとして警察に逮捕されました。それはたまたま店内の防犯カメラに彼女がその財布が置かれていた隣の席で遊んでいた姿が映っていたからでした。そのため、新聞にも大きく載り、警察にも8日間拘留されました。それが「誤認逮捕」とわかったのは店内のゴミ箱から財布が見つかり、それも防犯カメラに映し出された映像からまったく別の人物だったことがわかりました。「自分が取ったと言えば楽になると思った。」と報道もされました。もし彼女が警察の厳しい取り調べに屈服していたら、またまた冤罪を引き起こす可能性もあったのです。

「テロを未然に防止する」という名目で「盗聴法」「共謀罪法」が強行採決されましたが、「共謀罪法」が施行されているフランスでもテロは未然に防げていません。こうした個人の内心に踏み込むものが国税通則法改正に伴い来年3月から施行されます。改正通則法の126条には「扇動罪」なる規定が盛り込まれました。126条は「納税義務者が国税の課税標準の申告をしないこと、虚偽の申告をすること又は国税の徴収若しくは納付しないことを扇動した者は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。2項は、納税者がすべき申告をさせないため、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。」と規定しました。

「扇動」とは、「そそのかすこと。おだてたりあおりたてたりして、ある行動を起こすようにしむけること。アジテーション。教唆。」(日本国語大辞典より)と言う意味です。そうなってくると、税理士業務にも多く影響する可能性もありますし、ましてやこの中身を知らない人は処罰される危険性を孕んでいます。

また、この法律が「共謀罪法」の277ある対象犯罪の中の、地方税法、関税法、所得税法、法人税法、消費税法(なぜか相続税法が入っていません。富裕層に対する忖度なのでしょうか?)とリンクしているのではないかと思えて仕方ありません。

いずれにしても、これらの「内心の自由」に深く入り込んだ法整備は、戦前の最悪の法律と言われた「治安維持法」を彷彿させます。こんなことが、政府の手で着々とやられていくことに恐怖感を覚えます。ドイツの神学者ルター派の牧師、反ナチ運動家でもあるマルティン・ニーメラー牧師の言葉に「ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった。私は社会民主主義ではなかったから。彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は労働組合員ではなかったから。そして、彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった。」と名言がありますが、この国の進む方向がこれで良いのかもっと論議を重ねないといけないと思います。

ボン税務署訪問記~アポなしの日本人に会ってくれた税務署員~

前回に引き続きドイツでの訪問記を書きたいと思います。ちょうどクリスマスシーズンということもあってか、ベルリンの壁崩壊の前の西ドイツの首都であったボンの街もご多分に漏れずドイツらしいクリスマスマーケットで賑わっていました。歴史を感じるボンの市街をぐるりと一周回ることにしました。近くの教会、生誕地が彼の地であるベートーベンの像、そして、かの資本論(2013年に「共産党宣言」とともにユネスコの世界記憶遺産に登録された。)の執筆者であるカール・マルクスが学んでいたというボン大学(娘の出身大学の提携校でもありました。)の散策をすることになりました。大学へは立ち入り自由で、学生がくつろいでいる喫茶室、図書館などものぞきました。荘厳という形容詞が似合うキャンパスで、大学そのものが博物館のようになっています。

少し歩いたところにボン税務署があります。いよいよ今日のメーンイベントです。受付は全面ガラス張りで、受付の職員とはガラス越しで話すようになっています。もちろん写真撮影は禁止です。1階の受付を通り過ごして上の階へ行きました。1人の職員に対し1部屋のオフィスとなっているのは娘が勤めるドイツ国際平和村の事務所と同じです。3階へ上がろうとしたとき、50歳前後と思える男性職員が廊下を歩いていて娘に声をかけてきてくれました。

「何か用ですか。」娘は「私の父は日本の税理士で見学させてもらっています。」と説明したら、いきなり持っていたチョコレートとドーナツを私たちにくれて「私の部屋で話しをしましょう。」と誘われ、さらに上の階の彼の部屋に案内されました。

彼の仕事は、大きな法人の税務調査を6人1組でやっていると説明してくれました。驚くことに、ジーンズにカジュアルなシャツ姿です。また、ラジオを聞きながら仕事をしています。日本の税務署員の職場環境や仕事ぶりとはかなり異質です。娘の通訳で分かったことは、彼の仕事(法人税の税務調査)で最高の申告漏れの発見は5,000万ユーロ(1ユーロ130円で換算すると日本円にして65億円)、びっくりするような金額です。また、ボン税務署での最高額は、7億ユーロ(同じく910億円)の申告漏れだったようです。そんなに大きくない税務署でも、追徴税額の多さには驚きました。

ドイツでの法人税の基本税率は15%ですが、お隣の国のルクセンブルクに本店を移転させれば1%の課税で済む仕組みになっているそうです。ドイツでも日本や米国、英国などの先進国と同じくタックス・ヘイブンによる課税逃れに随分と頭を抱えている彼は饒舌?に話しています。娘曰く、「日常会話ならそれなりの通訳ができるけど、税金などの専門用語はよく分からないから、彼がそこらあたりを配慮してわかりやすい言葉に置き換えてくれて、メモ帳に単語を書いてくれたので助かった」と話してくれました。

彼は普段ラフなスタイルで仕事をしているそうなのですが、上司と週に1回の打合せと税務調査の1日目だけはネクタイをすると言ってロッカーからショッキング・ピンクのネクタイを見せて貰ったときはあまりの「ド派手さ」にびっくりしました。

また、個人課税のことは自分にはよく解らないので良い人を紹介しようとすぐに電話をしてくれました。紹介された方は個人課税のトップの人だったのですが、12月中旬ですごく忙しくて手が放せないので対応できないとの事でした。

クリスマスにみんなが好んで食べる焼き菓子のシュトレンをもらい記念写真も気楽に撮ってもらえました。娘が言うには、とかく税務署は愛想が悪いと事前に聞いていたので、彼と話せたのは幸運だったみたいです。

1階に降りて受付の女性職員に「税金に関するパンフレットを貰えませんか」と言うと、受付の責任者の人が地下室まで行って二種類のパンフレットを渡してくれました。この分厚く、豪華なパンフレットを娘に「後日訳してもらいたい」とお願いすると、ざっと見ただけで、専門用語とドイツの税制が書いてあって、まるで分からないらしく、「時間があればね」と上手くかわされました。

現職のドイツの税務職員と生で話ができたという満足感、高揚感を癒しに、駅前のパン屋さんでココアを呑み、マクドナルドでハンバーガーとコーヒーを注文しました。ココアとコーヒーは19%の税率、ハンバーガーは食料品なので軽減税率適用なのか7%の税率、また、同じ食べ物でも、カフェではテイクアウトでなく店内で食べると30セント(約40円)高くなるという仕組みになっていました。

日本の消費税が2019年から8%から10%にあがる際に、食料品が8%の軽減税率の適用になれば、それは、今後の消費税のさらなる増税の狼煙(のろし)になるのではないか危惧しています。それは、ドイツでは標準税率19%と軽減税率7%の差が12%あるのに対して、日本の場合は僅か2%しかないことです。また、インボイスの仕組みも定着させなければなりません。納税義務者や税理士事務所に過大な負担がかかりますし、免税業者も課税業者の選択をしなければ、経済の仕組みから抹殺される危惧があります。

私見ですが、消費税は増税をやめるべきです。反対に、5%から8%に消費税が増税して以来、消費者の購買意欲は削がれています。この際、消費税を元の5%に戻すべきです。さらに、先祖返りをして、消費税は廃止し、「個別物品税」に戻し、「基幹税」から「補完税」にすべきだと思います。消費税の逆進性をなくすには、その道しかありません。

あくまで、租税の基本は「累進課税」です。ICTやAI技術が進化すればするほど、「個別物品」の把握と税率の改定は容易にできるはずですし、末端の業者が価格を転嫁できないことはなくなります。サービスへの課税も財務省の主税局が知恵を絞ればできるのではないかと思います。

そして、課税庁にあっては、「滞納」ということが極めて少なくなるメリットが出てきます。高級車に乗りたい人は、25%の税率でも購入するでしょうし、農業で使う軽トラックが0%ならば、農業の自給率も上がるかもしれません。

ドイツの税理士との懇談~こんなにも違う税理士の仕組み~

私の二女は、ドイツ国際平和村の事務局で働いています。女優の東ちづるさんは、戦場で傷ついた子どもたちのリハビリなどをしているこの会を支援してくれており、また「ウルルン滞在記」などで取りあげてくれてご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

二女の強い要望で私たち夫婦がドイツとお隣のオランダを旅することになりました。何と、滞在費用一切は娘が出してくれました。何とありがたいことか。

ついでにドイツの税理士と直接話してみたいとの所望を実現してくれました。娘が住んでいる近くで開業している少しお年を召された方でしたが、貴重な体験でした。税理士制度は、ドイツ、韓国、日本で古くから制度化され、文献ではなく実際に実務をされている税理士と話がしたかったからです。

懇談する日は、勝負服として日本から持参した大島紬で訪問しました。午後3時の約束ですが、3時ちょうどに娘のアパートを出て、徒歩約2分のところにある税理士事務所兼自宅にしている税理士のお宅へいきました。日本では約束の時間5分前に到着して待っているのがビジネスの常識だとされていますが、ドイツでは約束の時間より2~3分程度遅れて会うのがエチケットとされているそうで、同じ「まじめ気質」の日本人とドイツ人の待ち合わせ慣習も違うことにまた異文化を感じました。

玄関で40代の女性が日本語で「こんにちは」と挨拶してくるのでビックリしました。オフィスは女性とその女性のお母さんともう一人の男性の三人体制で運営していることがわかりました。事務所の様子を少しですが見せてもらったあとにリビングに通されました。

お母さんは1975年に税理士試験に合格したというからもう38年の経験を持つ大ベテランです。おそらく80歳位の年齢と思われます。娘さんはこの事務所でお母さんと一緒に働いているそうです。お母さんは、「私は、娘が税理士試験に通るまで仕事やめたくてもやめられない。」と言っていたので、恐らくここで娘さんは働きながら試験勉強をしているのであろうと容易に想像できます。娘さんはコーヒーメーカーでコーヒーを入れてくれ、私たちに勧めてくれました。

娘さんも席に着いていくつかのランプシートのローソクに火を灯し部屋の照明が消されました。昼間だけどリビングのテーブルは、ローソクの照らすテーブルの上だけがぼんやり灯りがあるだけで薄暗いのです。改めてドイツはローソクの文化なのだと実感しました。テーブルには何種類かのクッキーが皿に盛られていました。どれが自家製でどれが市販のクッキーかの説明を受けました。ドイツではどこの家でもクリスマス前は自家製クッキーを毎朝焼くのが習慣だと説明され、「どうぞ」という言葉に甘えてすっかりご馳走になりました。

私の質問には、娘さんが中心に質問に答えてくれてお母さんがそれを補足し、娘が通訳をする形式をとりました。

日常業務・・・・毎月、四半期、年一とお客さんとの契約があるそうで、日本とまるで同じです。

法人・・・・・クライアントが法人を設立する場合は、ドイツは書類文化なので大量の書類作成のお手伝をすることになるが、これが大変だということです。

個人・・・大工、医者などの個人営業のところは給与所得とは違うので計算が複雑で大変になるのは日本と変わりません。

相続・・・・子どもだと税金が安くなるが、内縁の妻(意外に内縁関係の夫婦は多いらしい)だと相続権はあるが税率は高くなるそうです。相続の申告には6つの法律を駆使しないといけないので苦労するそうです。

娘さんは以前、デュッセルドルフで日本のある商社の支店で働いていた経験があるとのことがわかり、挨拶程度の日本語がしゃべれるのに納得しました。

税理士事務所・・・・規模の大小さまざまで、一企業に専属している税理士もいるそうです。お母さんの友人は、5人の税理士が事務所を経営していてスタッフが80人の事務所だそうです。オーバーハウゼン市(日本企業が集積しているデュッセルドルフから北へ30キロの人口21万人の小都市)でも約80人の税理士が登録しているそうです。

税理士試験のシステム・・・・受験資格は3年間専門の勉強をするか、税理士事務所で10年間働いていることが条件。まず、200ユーロ(約2万6千円)で受験のための書類を書き、認定を受けるがその認定がなかなか受けられないとのことらしいのです。日本では、受験資格は法改正で比較的簡単になっています。

認定されれば、1,000ユーロ(約13万円)の受験料を払い本試験を受けるのですが、事前にリサーチしていたとおり、人生の内わずか3回しか受験のチャンスがないことはやはり事実でした。ただし、認定料、受験料の高さにはいささか驚きました。勉強して認定を受けて合格するまで平均10年はかかるとされているそうで、日本の税理士試験より難関そうです。

試験は11月第2週目に3日間連続して午前9時から午後4時まで6科目の認定試験を受けます。合格発表は州によって違うそうですが、ほとんどは年内にあるそうです。ここノートラインゼストワーレン州(デュッセルドルフやボンがある州)では、一ヶ月遅れの1月に合格発表があるようです。日本は毎年1回、8月上旬に試験があり、合格発表が12月中旬とはいささか長すぎると思います。受験生の常識となっていますが、合格者の調整(毎年受験者の2%前後しか合格させない。)のための期間です。このシステムも変えないと行けませんよね。

さて、ドイツでは合格の認定がされて本試験までは各人の認定の評価によって違うのでしょうが4週間から12週間程度、予備校へ行かなければならないそうです。大きな税理士事務所はホリデイを与えてくれたり、有休で研修を受けさせてくれたりするそうですが、その代わり2年間その事務所で働くことが条件として付されることもあるということです。合格するのにお金と時間がかかることはドイツ国内でもでもあまり知られていないそうです。

ペーパー試験は成績が良い方から1~6段階の評価があり、5以上は不合格になるそうです。1や2段階の成績で通った受験生がいるとは聞いたことがないそうで、受験者のほとんどが3と4段階の評価で合格するようです。ペーパー試験で合格した後、3月に口頭試問があそうです。出題されてから30分考える時間を与えられるが参考書などは見ることはできないそうです。ペーパー試験と同じ科目から出題され、1科目につき10分で適切な回答をしないといけないとのことです。口頭試問は、日本も司法試験や弁理士試験では課されていますが、税理士試験では課されていません。おそらく、口頭試問を日本の税理士試験に取り入れたら受験者は激減するかもしれません。そうでなくても、私が受験していた頃(四半世紀前)の受験者数は約6万人から4万人を割っているのが実態です。

娘さんは日本で受験して資格を取る方が簡単で早く受かると思うが、日本で取った資格はドイツでは使えないので残念だとしきりに言っていました。

税理士の社会的評価は弁護士の評価と全く一緒であるとのことでした。税務署でも経験と知識を増やすのにかなりの研修があるそうで、その研修を受ければ税務署勤務経験者の税理士試験も通りやすくなるかもしれないが、その研修のレベルはけっして低くないらしいということでした。また、日本のように試験免除制度はあるそうですが、大学教授や裁判官などに限られるそうです。いずにしても日本もかなり難関です。

税務調査は長いものでは2週間あるらしく、税法だけでなくユーロのさまざま法律に適合しているか、労働時間は適正なのかのチェックもあるそうです。短いものでは2時間で終了する時もまれにあるようです。税理士は必ず立ち会いをするのが原則で、税務調査をして税務署の方で納得できない場合は、しばらくして無予告調査がありパソコンも含め一式没収されるそうです。日本でいう査察?に近いのでしょうか。通常の場合では事前通告が税理士のところにされるそうでが、無予告調査では税理士は何もできず、できることといえば弁護士を呼ぶことくらいらしいのです。

話し始めてからすでに2時間が経過、そろそろ娘さんも通訳をする娘も疲れてきているようなので最後の質問としてドイツにおけるタックスヘイブンの事を聞きました。

ドイツでも日本と同じで税金を安くしたいならベルギーに本社を置き、人件費を安くしたいならポーランドに工場を移すことが横行しているとのことでした。税理士(お母さん)の話では「ドイツの付加価値(稼得した所得)はドイツで課税すべきであるが、そうした規制がないことは問題だ」と話しておられました。

ローソクの灯の中2時間半の対話が終わりました。最後にお母さん娘さんと3人でオフィスにて記念撮影をして、またの再会を約束しました。玄関を出るとき娘さんが「さよなら」と日本語で言ってくれたのはとても印象的でした。午後5時、もっと聞きたかったとの思いもありましたが、妻と娘の「もうこれ以上の時間をとってもらうのはご迷惑よ。」との声に寂しくアパートへ帰りました。

何故このような出会いができたのかはひとえに娘のお陰です。ドイツへ渡航前からドイツ人の税理士にぜひ会って対談したい旨のことを私が懇願していました。娘のアパートのすぐ近くに税理士事務所の看板を掲げているのを見つけて思い切って訪問してくれ、私との懇談を実現させてくれたのです。たまたま税理士の娘さんは娘の職場であるドイツ国際平和村との関わりがあることも幸いしたようです。

娘さんの同級生で仲の良いベトナム人がいたのですが、その当時ベトナム戦争があり平和村は南ベトナムの子どもたちを受け入れていたそうです。戦争は北ベトナムが勝利し社会主義政権へ大きく舵を切るのですが、当時の西ドイツは「資本主義社会」でそこで教育を受けた平和村の子どもたちを「北ベトナム」としては受け入れすることを拒否、そのため帰るところを失った平和村の子どもたちは帰国できずに、ドイツで生きていくしかなかったという悲しい歴史があるそうです。そんなベトナム人の友人を持つ娘さんとの出会いは私たちにとって偶然の産物です。そんな機会を与えてくれた娘に感謝します。

 

酒税のあり方について考える

前回「たばこ税」について言及いたしましたが、今回は「酒税」について少し考えてみたいと思います。

「麦芽比率などで異なるビール類の酒税は平成32年10月、35年10月、38年10月の3段階で350ミリリットル缶あたり54.25円に一本化するといった方向です。ビールは現在の77円から減税に、発泡酒は46.99円、第3のビールは28円から大幅な増税になります。」

※産経ニュース 2016.12.8 より引用

ビールの酒税は、高級酒並です。それは、明治初頭に冷蔵技術がないときにそれを冷やすために多くのコストがかかったので、その当時は確かに「高級酒」であったかもしれません。しかし、現在は冷蔵庫のない家を探す方が難しい時代ですが、財務省は一向に税率を下げませんでした。しかし、今度は、ビール各社が競い合って酒税を逃れるために技術開発してきた発泡酒や第3のビールといったものを一本化するという大転換をします。税の原則の累進性とは、反対の方向性です。個人的(あることを機に3年半の長きにわたって現在も禁酒中ですが。)には、その節操のなさと酒税の高さに問題があると思います。海外と比べてもドイツの20倍、アメリカの12倍の高さになっています。庶民のささやかな楽しみであるビールは、ドイツ並みとはいいませんが、せめて半分程度に下げたらどうでしょうか。

「日本酒とワインの税額もそろえる方向です。日本酒は現在、350ミリリットルあたり42円、ワインは28円ですが、32年10月と35年10月の2段階で35円に一本化する方針です。製造方法が同じ醸造酒に区分されるのに税額差があると、日本酒の生産者から反発が出てきたことがその背景にあります。また、手軽な価格で人気のチューハイは350ミリリットルあたりの税額が28円ですが、38年10月に35円に増税することになっています。」

※産経ニュース 2016.12.8 より引用

私の酒税に関する考え方は、ビールなども含め、すべて累進課税にしたら良いのではないかと思います。国税庁の利き酒の専門官、ソムリエなどのプロの利き酒の専門家、醸造所の杜氏など、自薦・他薦を問わず任意で選んだ「われこそは利き酒名人」でチームを組んで、どの種類のお酒にもその味の良さで等級をつけ、高い等級のものには高い酒税を、低い等級のものには低い酒税を酒蔵から出るときに課税をし、どの販売所でも売価も仕入れ価格も同額で、愛飲家がそれをインターネットも含めどの小売店、大型スーパーコンビニで購入しても同じ値段にすれば、①酒税の確保ができる、②醸造技術の向上に資する、③零細小売店の救済にもなるのではないかと思います。

「自由競争を阻害する。」「規制は緩和・撤廃と矛盾する。」という批判が聞こえてきそうですが、「等級選定の公平性」「透明性」を担保すれば可能ではないかと考えます。このことにより、新しい酒文化に繋がっていくのではないでしょうか。

たばこ税のあり方について考える

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、たばこ税は国税と地方税の両方に課税されかなり多くの税収になっています。さらに、たばこ特別税は、旧日本国有鉄道が、JRとして民間化されたときに処理されなかった国鉄清算事業団の債務の返済にも充てられています。

ここ最近、紙巻きたばこの規制が急速に進んでいます。「徹子の部屋」という長寿番組がありますが、時々追悼番組をしています。以前はそのトーク番組で堂々とゲストがたばこを吸っていましたし、新幹線などの列車でも自由にたばこが吸えていました。

規制の理由としては、紙巻きたばこを吸う人だけでなく、そのそばでその煙(副流煙)を吸う人が、肺がんだけでなくその他の健康被害を及ぼし、結果的に医療費を押し上げるからだといわれています。

そこで「健康被害が少ない」と言うことで、加熱式たばこが爆発的に売れています。加熱式たばこは、タバコの葉を加工したスティックやカプセルを専用機器に差し込んで加熱し、蒸気を吸う方式のものです。現在、国内たばこ市場の1割超を占めるとされています。 紙巻きの税金は1本あたり約12.24円で、一般的な1箱20本入り(440円)の場合、価格の56%にあたる約245円がたばこ税ですが、これに対し、加熱式1箱の価格は420~460円と紙巻きと同水準ですが、税金はフィリップ・モリスの「アイコス(英語でIQOS、『私は普通のたばこをやめます』の頭文字です)」が200円前後、日本たばこ産業(JT)の「プルーム・テック」が約34円と安い税金になっています。

※朝日新聞デジタルHPより引用

また、日本肺がん学会で産業医科大学教授の大和先生は「加熱式たばこは空気を汚さないといいますが、虚偽です。安全性についても有害物質を吸引し、呼出します。本人だけでなく他人にも害をもたらします。加熱式たばこを禁煙の対象外にする自治体や飲食店もありますが、禁煙の場で使用は禁止すべきです。ニコチン依存症も解消されない」とコメントされています。

この加熱式たばこについて、政府は増税する方向で検討に入りました。従来の紙巻きたばこより税金が割安なため、同水準にそろえて税収の落ち込みを防ぐためです。今後、与党や関係業界との協議を本格化させ、年末にまとめる来年度の税制改正大綱に盛り込む方針だそうです。増税の程度によっては、商品の価格にも影響を与える可能性があります。

増税には一定の理屈が要ります。愛煙家への増税と国鉄清算事業団の借金返済にどんな因果関係があるのでしょうか。その点では、愛煙家は国に対してもの申すべきですが、「百害あって一利なし」といわれるたばこを将来なくす方向で考えなくてはなりません。そのためには、禁煙外来をもっと充実させたり、有害物質としての啓蒙も大事です。しかし、大病院のように周辺施設も含めて全面的に禁煙措置をとると小さなスナックなどで来店客数が少なくなるといった声も出てきます。

私見ですが、紙巻きたばこの1箱当たりの標準的な小売価格440円を、フランス並みの一律1,000円にしてみたらどうでしょうか。どうしても欲しい人はそれでも買うでしょうから、そんなに税収も落ちないのではないかと思います。それよりも、私や、私の義理の息子のように30歳で「たばこと縁を切る人」の数が増える方が良いのではないかと思慮します。

 

保険料と保険税の違いについて ~あなたの市町村はどちらでしょうか?~

国民健康保険の保険料は、「保険料」と呼ばれる場合と「保険税」と呼ばれる場合の2通りあります。その違いはどこにあるのでしょうか?

[1] 保険料と保険税、基本的には同じ

国保の運営者である保険者(市区町村)は、保険料と保険税のどちらかを選ぶことができます。国民健康保険法には「国民健康保険に要する費用を世帯主から徴収しなければならない」と規定されていますが、国民健康保険料と国民健康保険税のどちらの方式にするかは、保険者の裁量とされています。つまり、同じ国保という名称であっても、地域によって保険料のところと保険税のところが存在します。保険料も保険税も、基本的には同じです。どちらも市区町村に保険料(税)として納めるものです。また、受けられる医療も同じであり、通常通りに保険料を納めて医療を受ける場合は、保険料でも保険税でも違いはありません。では、違いはどこにあるのでしょうか。

[2] 関連する法令が異なる

保険料と保険税とでは、関係する法令が異なります。保険料の場合は国税徴収法、保険税の場合は地方税法により徴収されます。とは言え、これは私たち国民の側からするとあまり違いが分からないというか、これによって金額が「高い」か「安い」かの差があるわけでもないので、どちらでも大して変わりはありません。しかし、実際には保険料よりも保険税を採用している方が多いです。それには以下の3つの理由があります。

(ⅰ) 保険税は時効が長い

保険料と保険税で異なるのは、時効(消滅時効)の長さです。関連する法令が異なるため、時効に差があるのです。

国民健康保険料・・・徴収権の消滅時効 2年

国民健康保険税・・・徴収権の消滅時効 5年

[2]で関連する法令が異なると述べたように、保険料と保険税では定められている時効が異なっています。

(ⅱ) 保険税は差し押さえの優先順位が高い

これも関連法令に基づくものですが、保険料(税)を滞納して差し押さえになった場合は、優先順位の高いものから弁済を受けることができます。

国民健康保険料の優先順位・・・住民税の次

国民健康保険税の優先順位・・・住民税と同じ

このように、保険税の方が優先して弁済を受けることができます。あくまで滞納して差し押さえになった場合の話なので実際にこの順位が生きるのは稀なケースではありますが、法令上はこのようになっています。

(ⅲ) 保険税は遡って請求できる期間が長い

国保の保険料(税)は、加入の届出をした日からではなく資格を取得した日から課税されます。この届出が遅れると遡って課税されることになります。このとき、過去の滞納分に対して請求できる上限年数が、保険料と保険税で異なります。

国民健康保険料の遡及賦課・・・最大2年

国民健康保険税の遡及賦課・・・最大3年

 

以上のことから、保険税方式の方が国保の運営者(市区町村)にとって有利なので、保険税方式を採る方ところが多いわけです。

加入者側としては、ちゃんと保険料を納めている分には差はありません。滞納したときに違いが出てくる可能性がある、ということになります。

※「国民健康保険ガイド 国保の手続き・保険料・節約術などをわかりやすく解説」より引用

これで良いの?法人税制のあり方~内部留保課税のあり方を中心に考える~

今度の総選挙の中でも安倍首相はしきりに「アベノミクス」による経済効果を掲げていました。確かに、今続いている「好景気」がいざなぎ景気(1965年11月~70年7月の57ヶ月間続いた景気拡張局面)を超えたとの報道がされています。現在の好景気は2012年12月から始まりましたので、2017年9月で58ヶ月になり「いざなぎ景気超え」となるのでしょうが、問題はその中身にあります。いざなぎ景気の間に国民総生産(GDP)は1.63倍に増加しましたが、今回の景気拡張局面では1.06倍にしかなっていないのです。

国民にその実感がないのは、最初に①巨大企業や超富裕層だけが税などの恩恵などを受けていてますます格差の広がりを見せているからです。いわゆる富の偏在です。次に②安倍政権が始まってから実質賃金が年間10万円低下し、1所帯当たりの家計消費も年間22万円も落ちているからです。また、2005年には正規雇用が67.4%あったものが、62.5%と減っている反面、不安定雇用である非正規雇用が32.6%から、37.5%に激増していることも挙げられます。特に若者の不安定雇用が顕著です。これが「少子化」の影響の1つの要因になっていることは明らかです。最後に③今までは中小零細業者は法人であれば法的には強制適応であっても滞納者が増えるとの理由で、社会保険に加入できないことが問題でしたが、この2年前から手のひらを返したように未加入事業者への強制的な加入勧奨で、会社の負担が増え、そこで働く労働者は実質的な手取りがかなり減ることになったからです。

これらのことを実証するように、総務省が10月31日に発表した9月の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は268,802円となり、物価の変動の影響を除いた実質で前年同月比0.3%減少しました。マイナスは2ヶ月ぶり。消費税率を引き上げた2014年4月以後の42ヶ月中38ヶ月が前年割れです。

ところで、この総選挙の争点は「消費税増税の使途」でした。国の借金返済を先送りし「こども」を生け贄にして票をかすめとったとの印象を個人的には感じています。その代替の財源をどうするかということで選挙戦の中で、「企業の内部留保」に課税すべきかどうかが与野党双方からの議論になりました。10月20日の日本経済新聞の「大機小機」というマーケットのコラム欄に「内部留保課税が問うもの」というタイトルでこの問題が取りあげられていました。

記事を要約すると「……経済界は『内部留保は二重課税である』と反対している。そもそも内部留保は法人税等を支払った後に残った利益の集積というわけだ。また、我が国の法人税負担率が諸外国より高いとの経済界からの声に配慮して、2015年には32.11%であった法人税実効税率が来年度には29.74%にまで軽減される減税措置と整合性が合わないという声もある。

総務省の統計によると、内部留保総額は07年には269兆円であったが、年々確実に増加し、16年には406兆に達している。また、現預金は07年の135兆円が16年には211兆円にまで積み上がった。最近のシンクタンクの分析では上場企業の約6割が実質無借金経営である。

しかし、なぜ今内部留保課税なのか。

かねて『企業の6重苦』と言われた事態にたいして、法人税減税や円高対策、そして日銀の超緩和策の継続など、政府や中央銀行はプロビジネス政策を続けてきた。それにも関わらず、企業はリスクをとって事業を展開するとか、従業員への還元を増やすとか、~中略~ただ何かあった時のためにと利益と現預金を蓄積するだけであった。

現に設備投資の水準は1995年以来横ばいで、労働分配率は2001年の75%から67%に下がってきている。そこへの政策当局の不満や憤慨が背景にあると見てよかろう。

~中略~内部留保課税の論議で真に問われているのは、わが国の経営者にアニマルスピリットをいかに取り戻すかということなのだ。……情けないことに。」

私の視点とは多少違うかもしれませんが、このコラムを書かれた人に賛同をします。

中間決算発表のピークの時期ですが、どんどん内部留保は積み増しされる方向に動いていますが、従業員への分配どころか、残業の減少で労働者の賃金は減っています。

日本有数の電機メーカーであった東芝の粉飾、日産自動車に続いてスバルの正規検査員がしたようにして出荷をした改ざん事件や神戸製鋼所のデータ改ざん事件などなど、世界の中でも「メイド・イン・ジャパン」といわれた信頼が利益のためだったらモラルも何もなくなる風潮になっています。

私は、日経新聞のコラムにあったような「ただ何かあった時のためにと利益と現預金を蓄積するだけであった。」という企業には、応分な内部留保課税をすべきだと思います。

安倍首相は「そんなことをしたら、日本の企業は海外に逃げてしまう。」「二重課税が生じてしまう。」などと言っていますが、内部留保金課税をしなくても企業はどんどん海外に逃げています。また、財界人などはしきりに「愛国心」という言葉を言っていますが、真の「愛国心」があれば、応分な負担をすべきです。反対論者からは「台湾が98年から企業の内部留保に対して10%の税金を課し、企業は成長投資に動きにくくなった。」との指摘がありますが、消費税2%の増税での税収効果は約4兆円です。211兆円あると言われている超大企業を中心とした現預金に毎年わずか2%課税すれば消費税の増税の必要性がなくなります。また、二重課税で身近なところでいえば消費税には、ガソリンやたばこなど多くの二重課税があります。またそうした課税が「イヤだ。」という企業には、設備投資や人材投資や賃上げをすればその部分は控除するといった制度設計にすれば良いのではないでしょうか。

また、アメリカが実施しているような法人税の累進課税(15%~35%)をすべきだろうと思います。それとともに菅隆徳税理士が試算しているような租税特別措置法を使った大企業の減税額6.4兆円を廃止する、この間の法人税の引き下げによる減税額7.5兆を元に戻せば併せて14兆円の財源が生まれます。

「大企業栄えて、民滅ぶ」にならないように、立法府や行政府は真剣に法人税課税のあり方を考えて欲しいし、8時間働ければまともな暮らしができるような制度設計を本気ですべきだろうと思います。また併せて、「大企業と中小零細企業」と「超富裕層と貧困層」の格差是正にも本腰を入れて欲しいものです。

失われかけようとしている「ものづくり大国、ニッポン」の誇りと使命を国民全体で、自らのものとして考えて行ければ良いと真剣に思っている今日この頃です。