突然の方針の大転換!!岸田首相が言い出した驚きの「原発の新増設」~「聞く耳」は財界だけなのでしょうか?~

中学校の公民では、資源・エネルギー変遷と未来のことを次のように教えています。(蔭山克秀著、「中学校の公民が1冊でしっかりわかる本」かんき出版を参考にしました)

『明治以降、日本のエネルギーの主役は「石炭」でした。1950年代、中東などで大規模な油田が相次いで発見されました。「石油」は液体で輸送しやすく、公害被害も少なく、燃料効率も良く、さらに石炭より安かったのです。程なく石炭に変わり石油が主役と変わりました。

ところが73年「オイルショック」が起き、それを機に、日本では「未来のエネルギー」と注目されていた原子力発電の商業化が本格化します。そして2010年頃には日本の発電比率はおよそ、火力65%、原子力25%、水力10%に達しました。

しかし、11年東日本大震災が発生します。この地震で福島第一原子力発電所が深刻な被害を起こしたため、政府は原子力発電の安全基準をとても厳しい再稼働基準に設定しました。そのため、新基準をクリアできない原子力発電所が相次いでいます。

今もっとも注目されているのが再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーは、風力・地熱・太陽光など自然界から無尽蔵にとれるエネルギーで、これなら価格高騰も温暖化も事故も心配ありません。』

この中学校公民の内容どおり、原発の事故後、歴代政権は、原発依存度の将来的な低減を国民に約束し、新増設や立て替えは想定していないと説明してきました。昨年10月に閣議決定されたエネルギー基本計画でも、原発の新増設には言及はありませんでした。

ところが、一転8月24日に重大な方針転換に舵を切りました。原発の「新増設」と既設原発の「運転期間も延長する」と言うのです。ロシアのウクライナ侵攻や急速に進む円安で、原油などの輸入コストが跳ね上がっています。新増設などは、その不安に乗じた「手のひらが返し」です。ずいぶん以前から、自民党、電力業界、原子炉メーカー、経産省の役人はその必要性を考えていました。再稼働もまた、原発の危険をさらに高めることは自明の理です。

この大きな方針の真相は、経団連の十倉会長が7月27日のGX(グリーントランスメーション)実行会議の初会合で「新設方針を明示」するように要求し、それに首相が応じたのです。財界には「聞く耳」を持っても、国民の世論は聞こえないのでしょうか。発言直後の朝日新聞の世論調査では、原発の新造設に「賛成」が34%、「反対」が58%でした。

この重大な方針を転換するには、まずは原発事故の検証とその始末が不可欠です。これには、長い年月と莫大なコストがかかります。それが不十分なままの方針転換に多くの国民は不信感を抱いています。最新の世論調査では岸田内閣支持率は33.1%まで下落しています。

原子力産業の延命に政府が取り組めば取り組むほど、再生エルギーの本格的な普及などがおざなりになります。太陽光や風力は純国産です。エネルギーの安全保障にとっても気候変動対策にもとても有効です。事故後10年余り政府は何をしてきたのでしょうか。

原発事故の教訓を真摯に受け止めるのであれば、中学校公民の中身を多忙な公務の間でも、岸田首相には是非一読してもらい、本来の「聞く耳」を待っていただきたいと願います。