税理士的行動心理学へのアプローチ(後編)~人手不足問題のありかた、自社の社員からのクレーム、後継者対策を考える~

(1) 人出不足対策とその対応策

人手不足は全国であらゆる分野で本当に顕著です。それは少子化によるものが主な原因でしょう。そのように誘導してきたのは政府の責任でもあります。特に中小企業ではそれが際立っています。建設関連業、介護施設、保育園・幼稚園などの分野では死活問題です。
それを打開するために強行採決で「入管法」を変えて安い外国人の労働者が日本で働きやすくしたのです。

二女がドイツで働いていますが、彼女からの情報では外国人の労働者を雇用したら、その企業の責任でドイツ語を教える義務を課しているとのことです。

特に日本語は、文法が他国と違うので就労する外国人労働者も大変な苦労をされていると思います。例えば、「結構です」という言葉は「Yes」にも使い「No」にも使いますが、英語を使う人は信じられないとのことです。さらに日本語を難しくしているのは、漢字、カタカナ、ひらがな、おまけにローマ字まであります。また日本語では主語を使わなくても文章を作れますが、英語では主語がなくては文章になりません。そこで架空の主語で例えば「it」などを使います。一方、英語には尊敬語も謙譲語もありませんし、一度慣れれば英語圏の人が日本語を学ぶより、英語の習得のほうが私の経験上簡単です。

日本は島国ですが、グローバル社会の一員です。せめて、中学生レベルの英語力は身に着けたいものです。私も、今NHKで放送しているラジオ番組の「基礎英語」の勉強を還暦になって始めました。現在、中学3年生の5月号をやっています。どんなに忙しくても、5分だけは勉強をしています。

外国人労働者には、日本語教育を企業の責任でやることが大事です。財政負担が大変な中小零細企業にはその全額を国庫で補助すべきでしょう。また、せめてインバウンドの人と接する事業者や外国人労働者を管理・監督する管理者にはせめて中学3年生レベルの英語力を身につけせることが大事だと思います。同じく財政負担が大変な中小零細企業にはその全額を国庫で補助すべきだと思います。中小零細企業でも、どんどん外国で活躍しています。

今後ますますその勢いが増すと思います。例えば、2013年12月4日に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。それを外国に広めるためには世界共通語でもある英語力の有無で、展開が大きく変わります。専門用語などは通訳がいるにしてもコミュニケーション能力としての英語力があれば、ビジネスも円滑にいくと思います。

また、外語人労働者が日本で働くことで、日本人労働者の賃金が相対的に下がらないようにすることは、政府の責任です。もう一つ、日本の優れた技術やサービスを母国に帰ってからも活用できるような職種に就けることが大事だと思います。例えば、建物の建て方がまるで違う国に優れた日本の建築技術を身に着けても、母国ではまるで役に立ちません。結局、優れた技術を生かせずまったく違う職業に就かざるを得ません。それでは、外国人労働者が日本の高い賃金だけを目的に出稼ぎに来るだけになります。これでは、「win‐win(互いに得をする)」の関係にはなりませんし、国際貢献にもなりません。それをうまくマッチングできるようにするのも政府の責任だと思います。

(2) 社員からのクレームに対する対応

人間にも様々な個性があるように、会社にも個性(社風)があります。もちろん人材確保難の中で、1人でも辞めてもらうことは会社にとって痛手です。もちろん、お互いにどんなに努力しても社風になじめなく辞めることのほうが双方にとって良い場合が例外的にあります。

社員の努力不足で辞める場合には、何らかのシグナルがあります。会社の理念や社風について不満を持っていたり、自分の考え方と違うとクレームを言ってくれる社員には、グッドマンの法則通り対処すればいいのですが、理念や社風になじむ努力をあまりせずに「家庭の事情で」「体調が悪くなったので」などの理由で退職届が出れば、労働基準法上1か月で退職ということになります。しかし退職届が出る前に、何らかのシグナルがあるはずです。経営者だけでなく管理者もそのシグナルに気づけば対応策が打てます。そのシグナルは、「出勤時間が遅くなる」「月曜日に体調不良で有給休暇を取る」「昼休みに誰とも話さないようになった」「愚痴が多くなってきた」「ため息の数が増えてきた」「独り言を言うようになってきた」など様々な変化です。それに気が付く感性を磨く必要性があります。

反対に、会社がとことん努力しても「ちっとも成長しない」「うっかりミスを連発してしまう」「時間を守れないようになってきた」「不必要なムダ話しがやたらと増えた」「失敗の言い訳がすごくうまくなってきた」「失敗を報告しなくなった」「自分の頑張りを他の社員にやたらとアピールするようになってきた」「自分の派閥を作ろうとし始めた」「同僚の忠告を聞かなくなった」などの現象が複数出てきたら、本人だけではなく会社の組織を破壊するようになるので辞めてもらうことの意思決定をしないと、双方が「loss‐loss(お互いが損をする)」になってしまいます。

こんな事にならないためには、社員に年始に目標(社員としても個人としても)を立ててもらって、定期的にヒアリングすることが必要です。少人数の会社であれば社長自らが、できれば4半期、少なくとも半期(できたら賞与の支払い時)、それも無理であれば年1回(決算書ができた時点)にすることが有効だと思います。「話し上手は、聞き上手」という諺がありますが、社員の愚痴や気持ちを本音で引き出すことが会社の成長にも経営者の人間力の向上にもつながります。

(3) 後継者の育成と絡めて

組織が大きくなると、その社員の上司にその役割を委ねましょう。最初は上手くいかないのは当然です。いらだちもあるかもしれませんが、アレコレと指示をしないでグッとガマンするのが、管理者としての資質を高めることにつながります。

経営者は、その管理者のヒアリングをすることに徹します。今の管理者の能力の高さを図ると同時に、どの管理者の「伸びしろ」が高いかどうかで「後継者の選考」につなげていきます。

難しいのはむしろ「同族経営」をしている会社です。経済産業者の調査では、アラフォー世代でのバトンタッチがその後の会社の成長を加速するという統計があります。しかし、山口県は「後継者がいない」というアンケートのワースト2位です。早くから「後継者育成」を考えていかないといけません。バトンタッチする候補者がひとりであれば、なるべくアラフォー時に権限を委譲して、自らは例えば顧問のような役割に徹して、後継者からの相談があるまでに「口」を出してしまっては後継者の「ひとり立ち」につながりません。ガマンが何より大事です。

バトンタッチのタイミングも大事です。例えば、現経営者が「古希を迎えた日」「会社の○○周年、例えば30周年」「後継者の40歳の誕生日」などが考えられます。「バトンタッチの時を日付に落とす」ことで、今、何をなすべきかという「後継者の成長戦略」が立てられます。そして、父としてもその背中を見せることが重要です。

さらに難しいのは、後継者候補が複数人いる場合です。できれば年長者に「後継者」になってもらうことが理想ですが、年長者にその資質があるとは限りません。経営者の能力が高い方を「後継者」にすべきです。年少者を後継者にする場合には、相当な覚悟が必要です。年長者の「役割」をどうするかです。個人的には、別会社(分社するか、子会社にするか)の経営者にするのが最善策と考えますが、「ケースバイケース」でいろいろな選択肢の中から選びましょう。

(4) 最後に…解決策の私案も含め

「モンスタークレーマー」や「パワーハラスメント」や「セクシャルハラスメント」など様々なハラスメントが発生の背後には「社会の荒廃」にあると思います。「ストレス社会」とよく言いますが、そのストレスの元凶は「格差型社会」にあると考えます。猟奇的な殺人事件やストーカー行為なども同質の元凶だと思います。

経済的に言えば、「アベノミクス」の唯一の成功と誇られている「株価至上主義」にあると思います。株価を上げようと思えば、「四半期ごと」の業績を良くしないといけません。そのためには、固定費の中で一番高い人件費を最小限にすることが一番効果的です。それを実現するために財界が時の政権に迫って、労働者派遣法の要件を緩和してきました。また、その一環として「入管法」の改定で外国人労働者を入国しやすくし賃金を安く使う、さらに今般の「働き方改革」も賃金の抑制が狙いです。働く人の権利は次々となくなっていきます。そうした反映が多くの国民のストレスを増幅させていきます。

また、われわれが選んだ政治家が、平気で噓をつく、文書を改ざんする、資料を出さない、「2018ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞とトップ10にも選ばれた「ご飯論法」もまかり通るようになりました。因みに「ご飯論法」とは、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の危険性を国会で野党議員が追及した際に、加藤勝信厚生労働大臣が行った悪質極まりない論点ずらしの話法など異常な事態のことを言います。しかも、重要な法案が数に力を任せて強行採決することなどの民主主義が崩壊しています。その責任は、「立法府の長」と言ってはばからない「行政府の長」にあると思います。つまり、「力の強いもの」がその権力を笠に着て「力の弱いもの」をいたぶるという「本末転倒」なことをしていることをまねしていることもあると思います。

こうした状況を打開するために、私たちも主権者として、国民を幸せにしてくれる議員を選ばないといけません。ところが危険をする人が実に多きことを危惧しています。黙っていたら、白紙委任状を出すことと同一です。

一方、自分たちも自らの人間力を高めるために、様々な人と触れ合い、本音を出し合うことが大事だと思います。良書を読むのも効果的だと思います。そして、何より自分の仕事や日常生活の中でも、誰かの役に立っていると思って行動することが肝要だと考えます。

また、良い会社を作ろうと思えば、「トップダウン」でなく「ボトムアップ」を中心にした「社内民主主義」を確立することが重要だと思います。換言すると、会社で働く人を大事にすることです。そのことが良い製品づくりやサービスにもつながるのではないかと思慮します。そんな組織にするには大変困難な取り組みです。しかし、そうした取り組みが社会全体やられ、「ステップ・バイ・ステップ」で改善していくことが「クレーム」などがなくみんなが幸せと感じる社会に接近していくのだろうと思います。考えていても物事は前進しません。とにかく半歩だけでもいいので歩を前に進めましょう。