消費税の総額表示化のねらいは?~インボイス化と一体で消費税を「付加価値税」にする布石か~

4月1日より消費税の価格表示が総額表示方式に移行しました。4月以降は店頭の表示のほか、チラシやカタログ、パンフレットなどの表示媒体にかかわらず、総額表示が求められます。この移行に伴い、多くの出版や流通業界から反対や戸惑いの声があがっています。

財務省は「総額表示の義務付けは、それまで主流であった『税抜価格表示』ではレジで請求されるまで最終的にいくら支払えばいいのか分りにくく、また、同一の商品・サービスでありながら『税抜表示』のお店と『税込表示』のお店が混在しているため価格の比較がしづらいといったことを踏まえ、事前に、「消費税額を含む価格」を一目で分かるようにするものである。このような価格表示によって、消費者の煩わしさを解消していくことが、国民の消費税に対する理解を深めていただくことにつながると考えて実施」としています。

今回の事態は、2013年に成立した消費税転化対策特別措置法が3月31日に失効するためです。このことにより、消費税法の第63条が機能します。この規定は「事業者は、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない。」という内容です。

ただし、この規定には罰則はありません。つまりこの規定は、法律上は義務とはいえず、事業者に協力を求める「訓示規定」と考えられます。そもそも、価格の表示をどうするかは、事業者の裁量にゆだねられるべきです。それは、営業の自由を保障する憲法第22条の規定により、価格表示も自由であるべきだからです。再販売制度により定価販売が認められている書籍などは、総額表示になじみません。

4月1日からは、例えば100円ショップの価格表示は、「110円」「110円(税込み)」「110円(うち消費税額10円)」になります。ただし、この表示だと100円ショップは、「110円ショップ」に名称を変えないといけなくなるのではないでしょうか。

さらに、この機会に乗じて価格表示で大きな動きをしたのが、ファーストリティリング社の傘下であるユニクロとGUです。3月12日よりすべての商品を総額表示にするとともに、商品の本体価格をそのまま据え置いて、消費税込みにしたのです。つまり約9%の価格の引き下げに踏み切ったのです。商品タグを、例えば「1,990円+消費税」から「1,990円」としました。この引き下げについて、柳井正氏は「できるだけ多くの商品価格をそのままに、消費税込みのお求めやすい価格で販売し、お客様の生活に寄り添っていきたいと思っている」と発言しています。

このような動きをみると、消費税は紛れもなく『価格転嫁ができる力の強い事業者』と『価格転嫁できない力の弱いでない事業者』を生み出します。ファーストリティリング社は間違いなく前者です。価格に転嫁できない中小零細事業者は消費税相当金額を持ち出して負担しなければなりません。

総額表示の欠点は税率が変更される度に表示替えのコストがかかることにあります。さらに政府は、小規模事業者の取引排除を招くインボイス制度を強行しようとしています。1989年にむりやり導入した「消費税」を他国で実施している「付加価値税」に本格的に移行しようと画策しています。その本質とねらいをよく監視し、反対の世論をあげるべきです。