出国税に疑問符あり!~課税と使い方の発想の転換~

「観光立国は地方創生の起爆剤だ。観光先進国にふさわしい快適な良好観光の整備を行う」と安倍首相は先月(2018年2月)22日の施政方針演説で強調しました。

その費用を賄うために税制改正に急遽「国際観光旅客税」、いわゆる「出国税」です。

2019年1月7日以後、日本を出国する人から1回につき1人1,000円を航空運賃などに上乗せ、外国人がインバウンドで日本に訪れるだけでなく、ビジネスかアウトバウンド(海外旅行)かわからない日本人も対象にするらしいのです。これにより財務省の試算では430億円の税収増になるそうです。

税制のあり方の原則は「累進課税」です。この税を導入するならば、例えば、エコノミークラスは運賃の1%、ビジネスクラスは5%、ファーストクラスは10%という具合に経済的にゆとりがある人からは応分な負担をしてもらうべきではないでしょうか。

例えば成田空港発の直行便でニューヨークに行くならばエコノミークラスで片道約13万円、ビジネスクラスなら約55万円、ファーストクラスなら約200万円の料金(HPで検索した料金なので、季節や早割などでかなり変動はあるとは思いますが。)です。すると出国税は、エコノミークラスで1,300円、ビジネスクラスで27,500円、ファーストクラスなら20万円の税負担になります。この方法で税収がいくらになるかはまったくわかりませんが、今まで、ファーストクラスやビジネスクラスを利用していた人が、税負担が大きくなるからといってエコノミークラスに変更することはレアケースだと思います。

また、この税があくまで観光立国にするための目的ならばビジネスで国外に出国する人は、予め入国管理事務所等に申請をしてこの税がかからないようにすべきではないでしょうか。

私は国内線でも国際線でも飛行機を利用した場合に、エコノミークラスしか乗ったことがありませが、国内線でも同様の趣旨で課税をしても良いのではないでしょうか。また、新幹線や在来線特急を利用する人においても同様な課税をすることを検討したらどうでしょうか。仮に新山口から東京ディズーニーランドに遊びに行くとしたら、片道約20,000円で税金は200円です。この200円があるから、東京ディズーニーランドをやめる人はまずいないと考えられます。また、この程度の税金でビジネスの申請はしないと考えられます。

問題なのはその使途です。過去の事例などに見られるように、増税して無駄遣いをすることです。観光振興を名目に従来型の公共事業(はこもの)に振り向けてはなりません。それは公共投資の性格として、動き出したらもうやめられないことと、大手ゼネコンの儲けの温床になるからです。さらに危惧するのは、官僚の天下り先になるおそれもあることです。つまり、費用対効果のないものに税金をつぎ込むことです。例えば今、旬な会社でもある「電通」に効果の少ないパンフレットの作成の仕事などをさせることです。こんな使い方をすると無駄遣いの温床になる蓋然性が高いのではないかと思います。

日本社会の負の遺産として、いったん制度を導入すると既得権益が生まれ、必要性が薄れてもなかなか廃止できずにいる例が多いことは歴史が証明しています。特定財源はその象徴でもありました。出国税を創設するならば、「費用対効果」を不断に「第三者委員会」などを立ち上げて検証し、国会議員が責任を持って毎年見直すことを義務づけるべきだと考えます。そして、いつも、誰も責任をとらないこの国の悪しき「慣習」を断ち切るべきでしょう。