えっ!!JTBが中小企業に~税額の軽減がねらい?~

3月31日で、従業員数約2.7万人を擁する旅行会社最大手のJTBが中小企業になるということが話題になっています。資本金を現在の23.4億円から1億円に減資することになりました。既に、株主総会による決議がされています。その背景とねらいについて考えて見ます。

コロナ禍で旅行需要が激減して、業績が急速に悪化しました。前年5月の旅行取扱高(売上高)は、前年同月比で96%の減少という信じられない程の落ち込みでした。上半期(4~9月)の赤字は781億円になり、利益剰余金(いわゆる内部留保金額)は、9月末までで799億円と半年でほぼ半減しました。21年3月通期では過去最大の1,000億円の経常赤字を予想しています。緊急事態宣言が首都圏で再延長されるなかの外出自粛や東京オリンピック・パラリンピックでの海外の観客者の入国禁止措置で、旅行事業者の収益改善の兆しは一向に見えません。

そうした状況でJTBが考えたのは資本金を1億円にすることで、税制上は中小企業にして税による資金の流失を押さえることでした。確かに資本金が1億円に以下の企業は税制上の優遇策があります。

具体的には、最大の節税効果は法人事業税(都道府県民税)です。資本金が1億円を超えると事業税が外形標準課税といって、給与・支払利子・地代などの付加価値といわれるものに一定の割合で課税がされます。JTBの場合、従業員などが多いため事業税の金額は多額になります。これに比べ資本金が1億円以下の場合には、赤字企業には法人事業税は課税されません。これにより、多額の資金流失を防ぐことができます。

さらに、中小企業に該当すれば法人が赤字になればその欠損金を次期以降の黒字と通算してくれる制度があります。もし、JTBが次期以降に黒字になってもその累計額が今期の赤字の金額に達するまでは今後10年間についての法人税は支払わなくてもいいことになります。資本金が1億円超になれば、控除してくれる金額は中小企業の半分の50%になります。

また、中小企業には、財務基盤が弱いことから年800万円以下の法人税が15%に軽減されるものや交際費の支出額が800万円までが損金になる制度、設備投資にかかる税額の軽減などがあります。

この「偽装中小企業化」はJTBだけではありません。既に吉本興業、スカイマーク、毎日新聞、カッパクリエイトなどが減資をして税制上の中小企業になったり、その決議をしたりしています。どう考えても、JTBをはじめ資本金を1億円にしたこれらの企業は大企業です。こうした中小企業「偽装」と思われても仕方ない減資に規制をかける必要性があります。

日本税理士会連合会では16年に資本金基準に加え「従業員1000人以下」を加えるように答申をしましたが、実現に至っていません。政府は、このような不自然な「中小企業化」を漫然と見過ごすのではなく、早急に法の抜け穴を塞いで欲しいものです。