月別: 2025年12月

富裕層課税はさらに強化すべきです!!~理想の形は、分離課税でなく総合課税です~

自民党と日本維新の会は2026年度与党税制改正大綱で、年間所得額が1億円を超えると税負担率が下がる「1億円の壁」の是正に向け、2027年から超富裕層への課税を強化する方針を打ち出しました。追加の税負担を課す年間所得の基準を現行の30億円超から6億円超に引き下げ、対象者への適用税率も22.5%から30%に引き上げるという改正です。会社員などの給与所得などにかかる所得税は金額に応じ、住民税も合わせた税率が段階的に55%まで上がります。

一方、株式の配当や売却益などの金融所得は、一律20%の分離課税のため、金融所得の割合が高い超富裕層の所得税の負担率が下がる問題が指摘されています。今回の見直しでは、年間所得の基準を6億円超に引き下げ、200人程度とされる追加課税の対象者を2,000人程度に広げます。政府は、不公平な税負担率の解消を進めるため、2025年にも年間所得30億円超の人を対象に課税を強化していました。

あまりにも高額所得者を優遇しているという現在の課税のあり方を是正するという意図なのでしょうが、「1億円の壁」の是正なら、富裕層課税は1億円からにすべきです。今般の改正は、富裕層に対する忖度なのでしょうか。

そもそも課税のあり方は総合課税と分離課税があります。総合課税では、各種所得を一定の方法で合算したうえで、所定の税率によって税額を計算します。所得税においては5~45%の累進税率、住民税は原則10%の税率が適用されます。一方、分離課税では、所得の性質に応じて税率が設定されており、その税率をかけて個別に税額を計算します。

なぜ分離課税という仕組みがあるのでしょうか。 分離課税は、特定の所得、例えば長期保有の土地の譲渡などを、他の所得と合算せずに独立して課税することで、一時的に大きな所得が発生した場合でも他の所得と合算されることによる高い税率の適用を避けることができます。また、特定の所得に対してあらかじめ税率が定められているため、納税者は税額を予測しやすくなります。さらに、特定の経済活動、例えば株式市場の活性化を促進するための政策的な意図も含まれるとされています。

もとより、社会保障政策などに使われる税金には、高額所得者層から高い税金を徴収して生活の苦しい低額所得者層に公的福祉サービス(公的扶助)を提供するという『所得の再分配機能』があります。徴税と公的サービス(社会保障政策)による『所得の再分配』は、国民の間にある不公平感や経済格差の行き過ぎ(富の偏在)を和らげる効果を持っています。

しかし「1億円の壁」は、この不公平感を和らげるどころか、反対に助長しています。はたして、株式の配当や売却益には分離課税を適用すべきなのでしょうか。むしろ、税の公平の観点からすると、富裕層の課税強化という意味合いだけでなく、誰もが公平に税を負担する観点からも、総合課税に移行すべきではないでしょうか。

元々、株式の配当や譲渡は不労所得です。働いて得られる所得(勤労所得)より、不労所得の方が優遇されているのはおかしいのではないでしょうか。年明けの国会論戦に注目しています。

働き方改革を今すぐに!!~短時間正社員という働き方~

その年の世相を表す言葉を決める「新語・流行語大賞」の年間大賞が12月1日発表されました。年間大賞は、高市早苗首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が選ばれました。

自民党新総裁に選出された際に決意表明したものですが、衆院予算委員会に臨むにあたって、首相が秘書官らを集めて午前3時から公邸で勉強会を開催したのはその決意の一端なのでしょうか。表彰式の挨拶で「賛否両論いただいた。日本国の国家経営者としては何としても皆様方に貢献したい、そんな思いがあった。働き過ぎの奨励や長時間労働を美徳とする意図もありませんので、誤解なきよう」と早苗スマイルで話しました。

日本ではかつて新卒で正社員になり、定年まで同じ会社で働くのが一般的でした。しかし、バブル崩壊やリーマンショックを経て、その状況は一変しました。総務省の調査などの統計を見ると、パートやアルバイト、派遣社員などの非正規社員が占める割合は、労働者の4割近くを占めます。労働者間で、正規・非正規で大きな格差が生じています。

このような雇用環境の中で、「短時間正社員」という働き方が今、注目されています。この働き方は、期間の定めがない無期雇用でありながら、働く時間を抑えられる制度です。給与や福利厚生などは正社員に近く、働く時間は事情に合わせて短くできるのが特徴です。医療・介護、スーパー、運送など、導入する業界は少しずつ広がり始めています。企業によっては、短時間正社員が働く意欲の向上につながったという報告もあり、制度が単なる“時短の枠”ではなく、キャリアを前向きにするきっかけにもなることが見えてきました。

12月1日のNHKクローズアップ現代でこの制度を報道していました。この問題の専門家である田中洋子筑波大学名誉教授が紹介したデータでは、主婦を対象にした調査で65.9%が「短時間正社員で働きたい」と回答する一方、制度を導入している事業所は15.9%にとどまっています。ニーズはあるのに広がらない背景には、既存の就業ルールの見直し・人件費アップへの懸念・社員間の不和を心配するなど企業側の不安がありました。

制度を採り入れた企業からは「導入してよかった」という意見が多いと田中名誉教授は話し、企業が一歩踏み切れるかどうかが大きな分岐点になっていることが番組を通して伝わってきました。

また、田中名誉教授はドイツの例も紹介しました。2001年に成立したパート法では、働く人が「短時間正社員を選択する権利」を持ちます。誰でも自分に合った働き方を選べる仕組みであり、今では働く人の約4割が短時間正社員という状況だそうです。さらに、短時間正社員が増えれば増えるほど、一人当たりの生産性は高くなることを紹介されていました。制度が定着すれば、働く人の選択肢が広がるだけでなく、企業側にも新しい人材戦略が生まれる可能性があります。番組では、日本企業の今日の課題を乗り越えたケースとして、制度の導入が経営判断としても有効だと紹介されていました。

少子高齢化で労働人口の減少が大きな課題となっています。「短時間正社員」の定着がこの国の大きな変革をもたらすのではないでしょうか。新語・流行語大賞に選ばれた高市首相には、この制度の普及を働き方改革の一環として抜本的に進めてもらいたいと思います。