その年の世相を表す言葉を決める「新語・流行語大賞」の年間大賞が12月1日発表されました。年間大賞は、高市早苗首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が選ばれました。
自民党新総裁に選出された際に決意表明したものですが、衆院予算委員会に臨むにあたって、首相が秘書官らを集めて午前3時から公邸で勉強会を開催したのはその決意の一端なのでしょうか。表彰式の挨拶で「賛否両論いただいた。日本国の国家経営者としては何としても皆様方に貢献したい、そんな思いがあった。働き過ぎの奨励や長時間労働を美徳とする意図もありませんので、誤解なきよう」と早苗スマイルで話しました。
日本ではかつて新卒で正社員になり、定年まで同じ会社で働くのが一般的でした。しかし、バブル崩壊やリーマンショックを経て、その状況は一変しました。総務省の調査などの統計を見ると、パートやアルバイト、派遣社員などの非正規社員が占める割合は、労働者の4割近くを占めます。労働者間で、正規・非正規で大きな格差が生じています。
このような雇用環境の中で、「短時間正社員」という働き方が今、注目されています。この働き方は、期間の定めがない無期雇用でありながら、働く時間を抑えられる制度です。給与や福利厚生などは正社員に近く、働く時間は事情に合わせて短くできるのが特徴です。医療・介護、スーパー、運送など、導入する業界は少しずつ広がり始めています。企業によっては、短時間正社員が働く意欲の向上につながったという報告もあり、制度が単なる“時短の枠”ではなく、キャリアを前向きにするきっかけにもなることが見えてきました。
12月1日のNHKクローズアップ現代でこの制度を報道していました。この問題の専門家である田中洋子筑波大学名誉教授が紹介したデータでは、主婦を対象にした調査で65.9%が「短時間正社員で働きたい」と回答する一方、制度を導入している事業所は15.9%にとどまっています。ニーズはあるのに広がらない背景には、既存の就業ルールの見直し・人件費アップへの懸念・社員間の不和を心配するなど企業側の不安がありました。
制度を採り入れた企業からは「導入してよかった」という意見が多いと田中名誉教授は話し、企業が一歩踏み切れるかどうかが大きな分岐点になっていることが番組を通して伝わってきました。
また、田中名誉教授はドイツの例も紹介しました。2001年に成立したパート法では、働く人が「短時間正社員を選択する権利」を持ちます。誰でも自分に合った働き方を選べる仕組みであり、今では働く人の約4割が短時間正社員という状況だそうです。さらに、短時間正社員が増えれば増えるほど、一人当たりの生産性は高くなることを紹介されていました。制度が定着すれば、働く人の選択肢が広がるだけでなく、企業側にも新しい人材戦略が生まれる可能性があります。番組では、日本企業の今日の課題を乗り越えたケースとして、制度の導入が経営判断としても有効だと紹介されていました。
少子高齢化で労働人口の減少が大きな課題となっています。「短時間正社員」の定着がこの国の大きな変革をもたらすのではないでしょうか。新語・流行語大賞に選ばれた高市首相には、この制度の普及を働き方改革の一環として抜本的に進めてもらいたいと思います。





