富裕層課税はさらに強化すべきです!!~理想の形は、分離課税でなく総合課税です~

自民党と日本維新の会は2026年度与党税制改正大綱で、年間所得額が1億円を超えると税負担率が下がる「1億円の壁」の是正に向け、2027年から超富裕層への課税を強化する方針を打ち出しました。追加の税負担を課す年間所得の基準を現行の30億円超から6億円超に引き下げ、対象者への適用税率も22.5%から30%に引き上げるという改正です。会社員などの給与所得などにかかる所得税は金額に応じ、住民税も合わせた税率が段階的に55%まで上がります。

一方、株式の配当や売却益などの金融所得は、一律20%の分離課税のため、金融所得の割合が高い超富裕層の所得税の負担率が下がる問題が指摘されています。今回の見直しでは、年間所得の基準を6億円超に引き下げ、200人程度とされる追加課税の対象者を2,000人程度に広げます。政府は、不公平な税負担率の解消を進めるため、2025年にも年間所得30億円超の人を対象に課税を強化していました。

あまりにも高額所得者を優遇しているという現在の課税のあり方を是正するという意図なのでしょうが、「1億円の壁」の是正なら、富裕層課税は1億円からにすべきです。今般の改正は、富裕層に対する忖度なのでしょうか。

そもそも課税のあり方は総合課税と分離課税があります。総合課税では、各種所得を一定の方法で合算したうえで、所定の税率によって税額を計算します。所得税においては5~45%の累進税率、住民税は原則10%の税率が適用されます。一方、分離課税では、所得の性質に応じて税率が設定されており、その税率をかけて個別に税額を計算します。

なぜ分離課税という仕組みがあるのでしょうか。 分離課税は、特定の所得、例えば長期保有の土地の譲渡などを、他の所得と合算せずに独立して課税することで、一時的に大きな所得が発生した場合でも他の所得と合算されることによる高い税率の適用を避けることができます。また、特定の所得に対してあらかじめ税率が定められているため、納税者は税額を予測しやすくなります。さらに、特定の経済活動、例えば株式市場の活性化を促進するための政策的な意図も含まれるとされています。

もとより、社会保障政策などに使われる税金には、高額所得者層から高い税金を徴収して生活の苦しい低額所得者層に公的福祉サービス(公的扶助)を提供するという『所得の再分配機能』があります。徴税と公的サービス(社会保障政策)による『所得の再分配』は、国民の間にある不公平感や経済格差の行き過ぎ(富の偏在)を和らげる効果を持っています。

しかし「1億円の壁」は、この不公平感を和らげるどころか、反対に助長しています。はたして、株式の配当や売却益には分離課税を適用すべきなのでしょうか。むしろ、税の公平の観点からすると、富裕層の課税強化という意味合いだけでなく、誰もが公平に税を負担する観点からも、総合課税に移行すべきではないでしょうか。

元々、株式の配当や譲渡は不労所得です。働いて得られる所得(勤労所得)より、不労所得の方が優遇されているのはおかしいのではないでしょうか。年明けの国会論戦に注目しています。