中小企業はどんな存在なのでしょうか?~必要なのは淘汰ではなく支援です!~

「日本は、大企業が少なく、中堅企業よりは小規模事業者が多いので、生産性が低迷する構造にある。」「小さい企業は経営者の質が低いため、生産性が低く、高い賃金が払えなかったり、成長もできない企業が少なくない。こういう企業が増えてしまう結果、国全体の生産性が低下する。」「中小企業は、無駄にたくさんの人を雇うので、現在のような労働生産性の向上を求められる時代では、特に小規模事業者は邪魔な存在でしかない。」

こうした発言をしているのは、政府の成長戦略会議のメンバーのデービット・アトキンソン氏です。氏は、米国金融大手ゴールドマン・サックスを経て、小西美術工藝社の社長です。菅総理の肝いりでこのメンバーに入りました。

 氏の発言は日本の中小企業がとりわけ多いとの認識ですが、それは違います。EU28カ国では、中小企業は企業数の99.8%、従業員総数の66.6%、付加価値額の56.4%を占めています。わが国もそれに類似し、企業数の99.7%、従業者総数の68.8%、付加価値額の52.9%を中小企業が占めています。(中小企業家しんぶん20201215日号参照)このように中小企業は、言うまでもなく日本経済の根幹であり、経済や暮らしを支え牽引する存在です。氏は、意図的に数字をすり替えています。

 政府の中小企業憲章の基本理念には、「中小企業は、経済やくらしを支え、牽引する」「創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、くらしに潤いを与える」「意思決定の素早さや行動力、個性豊かな得意分野や多種多様な可能性を持つ」「経営者は、企業家精神に溢れ、自らの才覚で事業を営みながら、家族のみならず従業員を守る責任を果たす」「中小企業は、経営者と従業員が一体感を発揮し、一人ひとりの努力が目に見える形で成果に結びつき易い場である」「中小企業は、社会の主役として地域社会と住民生活に貢献し、伝統技能や文化の継承に重要な役割を果たす」「小規模企業の多くは家族経営形態を採り、地域社会の安定をもたらす」の7つの役割を掲げ、中小企業なくして日本経済は成り立たないことを高らかに宣言しています。

 氏が持ち出している労働生産性は「労働者1人当たりどれだけの付加価値を生み出したかの平均値」です。もうけが大きく価格競争力もある大企業は当然高く、大企業に比べ不利な条件の中で営業を強いられている中小企業は相対的に低くなります。優遇税制など大企業に手厚く、中小企業に冷たい経済政策こそ改めるべきです。

 中小企業家同友会全国協議会では、政府が閣議決定している中小企業憲章について次のような政策要望をしています。①中小企業憲章を国民の総意とするため、国会決議をめざす。②中小企業を軸とした経済政策の戦略立案などを進めるため、首相直属の省庁横断的機能を発揮する会議体を設置する。③中小企業担当大臣を設置する。④中小企業庁の中小企業省への昇格。⑤「中小企業の日」「中小企業魅力発信月間」を盛り上げ周知する、です。

 中小企業や国民は中小企業の淘汰を望んでいません。政府は中小企業と国民の置かれた状況を正面から認識すべきです。今求められていることは、「淘汰」ではなく「支援」です。

なかなか身につかない英語力?!~始めた英作文(English composition)で書く力を身につけたい~

還暦を機に思うことがあって大学受験以来再び始めた英語ですが、相当苦戦を強いられています。

中学校2年生の教材から始めて、現在は「基礎英語3」(中学3年生を対象にしたNHKのラジオ講座)と、同じくNHKのEテレで放映をしていた「大人の基礎英語」(中学生レベルでおとな向けに楽しく実践的な会話が身につくように工夫をされた教材)を中心に勉強をしています。

それに加え、週に1回90分外国人の先生に英会話の手ほどきを受けています。毎日欠かさずに勉強をしていますが、なかなか英語力の向上につながりません。

言語力には聞く(listening)・読む(reading)・話す(speaking)・書く(writing)の4つの総合的なスキルが必要とされています。私の場合、特に欠けているのは「書く力」だと客観的に思いました。聞くことや読むことは使っているテキストで何とかカバーはできます。話すことは、外国人の先生の授業である程度は習得できます。

そこで考えたのが1週間で見たり、聞いたり、身の回りで起きたり、自分自身で感じたことをノートに日記風に日本語で左ページに書いて、右ページに英語にするという作業です。それを、英会話のレッスンの前で読んで先生に添削をしてもらっています。

ある週のdiaryを紹介します。タイトルは「ウォーキングとその効果」です。まず日本語では、次の通りです。

『2年前からウォーキングを続けています。最近、山登りに興味がなくなりました。その代わりに熱心なのはウォーキングです。雨の日以外は家の周りのコースを約40分かけて歩いています。その効果はいろいろあります。体を動かすことによりカロリーを消費できます。精神的なストレスの発散になります。妻とのコミュニケーションにも役立ちます。会話の90%は妻がしています。私はひたすら聞き役です。ところで、ダイエットにはなかなかつながりません。しかし、続けることが一番大事です。努力すれば必ず結果は出ると信じています。3年後を見ておいてください。』

英語にして見ました。この作業にかなりな時間と労力を要しますが、その成果はいつか出ると信じています。

『Walking and it’s effects I’ve been walking for about two years. Nowadays I’m not into climbing mountains. I’m enthusiastic about walking instead of that. We walk the course around our house for about 40minutes except for rainy days. It’s various effects. We can burn calories by moving our body. It’s gives off mental stress. Also, it’s useful for communicating with my wife. 90% of the conversation are by my wife. I’m just a listener. It’s difficult to go on a diet .by the way. But, it’s most important to continue. I believe that If I make an effort, the result will surely come out. Look after 3 years.』

防衛費を減らしてコロナ対策に~「不要不急な予算をすべてコロナ対応に」を国民的世論に~

5月19日岸信夫防衛相は、日本経済新聞のインタビューで「従来と抜本的に異なる速度で防衛力を強化しないといけない」「GDPとの対比で考えることはない。わが国を守るために必要な経費をしっかり手当てする」と強調しました。加藤勝信官房長官も翌日の記者会見で、防衛費について「GDP比1%枠内に抑えるという考えは取っていない」と述べ、過去最大を更新し続けている支出増を推進する立場です。

 防衛費をめぐっては、1976年に三木内閣が「国民総生産(GNP)比1%を超えない」ことを閣議決定しました。90年代以降は、リーマンショックでGDPが大幅に落ち込み1%を超えた2010年を除き1%未満で推移しています。これについては米国政府が「少なすぎる」と繰り返し不満を表明しています。

 自民党政務調査会は、「(防衛力強化の)手を緩めることは許されない」と強調し、NATO(北大西洋条約機構)諸国がGDPの2%以上の軍事費支出を目標としていることに触れ「防衛関係費を抜本的に増額」するように求めています。政府は618日に閣議決定した「経済財政運営と改革の方針2021」(いわゆる骨太の方針)に「必要な防衛力を大幅に強化し他自弁統合防衛力を構築する」と明記しました。

 防衛費といえば、不要不急な支出のオンパレードです。昨年6月に配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に代えて、政府が整備を決めた代替艦「イージス・システム搭載艦」2隻の総コストが、少なくとも9,000億円かかることが判明しました。

24時間365日、日本全体をカバーできる」との触れ込みだった「イージス・アショア」に比べ、導入効果が3分の1になるにもかかわらず、コストは少なくとも2倍になります。この金額は最終的には1兆円を優に超えるとの見方もあります。これは東京五輪、パラリンピックの当初想定経費7,340億円を遙かに上回ります。 

 また、政府が公表した辺野古移設の総費用は、予定海域での軟弱地盤が見つかったために、従来の2.7倍の9,300億円に膨らんでいます。10年前に運用された米軍岩国基地の新滑走路は、埋め立て面積は辺野古の1.3倍ですが、総工事費は2,560億円で3割弱です。警備費だけで2,000億円かかるこの滑走路建設に、識者からの異論も続出しています。

 日本の防衛・外交のあり方は抜本的に見直すべきです。軍事史に詳しい纐纈(こうけつ)厚・山口大学元副学長・明治大学客員研究員は、「『米中対立』のなか、どちらにつくということではなく、覇権主義全体を批判する視点が必要です。」と指摘し、「あらゆる軍事同盟の呪縛、縛りを解き放ち、米国とも中国ともロシアとも対等・平等につきあう、全方位的な外交が必要だ」と訴えられています。

 ローマ教皇は「武器は、もっと重要な優先事項に使うべき」とりわけ「新型コロナウィルスと地球温暖化対策」への切り替えを訴えています。「私たちはみんな、同じ船に乗っている」のだから、すべての人が医療やワクチン接種を受けられるようにと。防衛費のあり方を抜本的に見直して「不要不急な支出を減らして、コロナ対策に」を国民の世論にしましょう。

ギグワーカーと働き方~論議されていない消費税のインボイス化~

最近、新聞等でギグワーカーという聞き慣れないカタカナをよく目にします。ギグワーカーとは、インターネット経由で単発の仕事を引き受ける自営の働き手を言います。ライブハウスなどに居合わせたミュージシャンが一度限りで演奏に参加することを意味する音楽用語「gig(ギグ)」から由来しています。料理宅配サービスの配達員がその典型です。

そのギグワーカーは日本の現行法では自営業になります。したがって、雇用契約(非正規労働者を含む)のある人のように、最低賃金や社会保険(健康保険・厚生年金保険)労働保険(労災保険・雇用保険)などの適用はありません。

急速に増えているこの働き方のルール作りが遅れています。厚生労働省は、こうした働き方をしている人に対して労災保険の特別加入を決めるという方針です。しかし、保険料は自己負担です。

諸外国でも、こうした働き方の人が急増しています。スペインでは3月11日に、アプリを利用した食事宅配の配達員を従業員とみなすことを義務づけると決定しました。これにより、アプリを提供する会社側は配達員の社会保険料の支払いや、有給休暇の保障を義務付けられました。イギリスでも同様の最高裁判決があり、その結果、雇い主である会社は、コスト増により想定外の減益となりました。

会社側の主張は、配達員はアプリを介した注文を受けているだけで「自営業者」だと主張しましたが、最高裁判所は、配達員は会社の指示を順守する必要があり、「自立性は限定的」と判示しました。

「労働者」であるか「自営業者」であるかで大きな違いが出てくるのが消費税です。2013年(令和5年)10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)の実施に向け、本年10月1日からインボイス発行事業者の登録申請が始まろうとしています。

この制度が実施された場合、自由であるべき商取引において、発行される請求書や領収書に消費税の課税事業者としての登録番号のあるなしで、取引先相互間で大きな障害が発生する異常な事態が生じることになります。

つまり、これまでは取引先が小規模な免税事業者かどうかなど関係なしに取引ができましたが、インボイス制度が実施されると、消費税の申告税額を計算する際、免税事業者へ支払った費用に対する仕入税額控除が出来なくなります。いわゆる「2023年問題」です。

言い方を変えれば、現行制度は「労働者」であれば、賃金は消費税の「仕入れ税額控除」の対象外でしたが、ギグワーカーも含めて自営業者であればその対象になる、つまり納税する消費税額が少なくなる制度です。

2023年10月以降は、アプリを提供する会社側は、ギグワーカーに対して、増える消費税分の値下げか、消費税の課税事業者の選択をさせインボイス発行事業者にするかの選択を迫ってくることが想定されます。ギグワーカーにとっては悪魔のような制度変更です。

ある調査によると、ギグワーカーは300万人を超えているそうです。格差を拡大するギグワーカーを「労働者」とする制度変更をこの機会にわが国でもすべきときだと思います。

雨で収穫~梅雨入りで想う『魔法』の言葉~

先月15日に気象台から中国地方で梅雨入りの発表がありました。平年より22日も早い梅雨入りとのことです。

梅雨とは、春の終わりから夏の始まりにかけて、雨とくもりの多い季節や気象のことを言います。日本周辺の上空にある小笠原気団など4つの気団によって起こるため、韓国、台湾、中国南部の海沿いなど、日本と日本に近い一部の東アジアだけにしかない特有の気象です。そのため、欧米やオーストラリアといった他国では、雨季(rainy season)や乾季(dry season)という言葉はあっても、梅雨にぴったり当てはまる言葉はないそうです。

語源をひも解くと「ばいう」は中国由来とされ、「梅の実が熟する時期の雨だから」「長雨で黴(かび)の生えやすい時期から黴雨(ばいう)が転じた」という説がよく知られています。

雨に悩まされジメジメとした湿気の多いこの時期は、洗濯物も外に干せない日々が続き、妻も室内乾燥ではなかなか乾かないとぼやいています。また、梅雨時期に気圧の変化や寒暖差が大きくなることによって、頭痛や倦怠感などの体調不良を感じる方が多くなります。そんな人の症状を「低気圧不調」や「気象病」と言うそうです。

そんな雨の多い時期にふと思い出すのは、渋瀬さんという人の「名」語呂合わせです。既に鬼籍に入られた方ですが、長きにわたり中小企業経営の応援団長でした。その功績は多大でした。中小企業経営者に適時・的確なアドバイスをされるだけでなく、語呂合わせやキャッチ・コピーなどの多くのものを残されました。

そのひとつが『雨で収穫』です。話し相手やお客様の関心はこれでバッチリ!というものです。

あ=相づちを打つ(なぁ~るほど!そうですね)

め=目をみながら(つまり、相手に関心をもって)

で=でしゃばらずに、前傾姿勢で聴くに徹する(知っている話でも話の横取りは厳禁です)

し=知らないことは、早め早めに質問する

ゅ=夢のある話には大いに関心を示す(ヘェー!)

う=うなずく(大きく、小さくと変化をつけて)

か=確認する(別の言葉で○○という事ですね)

く=繰り返す(相手の言った言葉をそのまま)

話し上手は、決して饒舌な人を言っているのではありません。かつて「ガイヤの夜明け」というテレビ東京系列の番組でも取り上げられた、住宅1,000棟を売った「伝説の営業マン」でとして一躍有名になった田中さんは、饒舌の反対を地でいく人でした。私流に言えば「頷き名人」です。「話し上手は聞き上手」とよく言いますが、その通りです。

『雨で収穫』、つまり相手にどれだけ気持ちよく話をしてもらうかが肝要だと言うことの語呂合わせです。梅雨のこの時期、渋瀬さんを偲びながら実践させていただきます。

お役に立つ税金のミニ知識、第5回~法人の設立時の会計と税務の留意点~

全国商工新聞という業者団体の機関誌の「税金相談コーナー」に数年間にわたり執筆したものの中からセレクトし、5回にわたり掲載をします。今回はその最終回です。

最終回は、法人の設立時の会計と税務の留意点です。知っていたら参考になると思います。

(Q)事業規模が少し大きくなってきたので法人設立のアドバイスを受け、その準備をしています。法人設立前の諸費用や実際に開業までにかかった経費はどのように処理したらいいのでしょうか。

(A)法人設立までに要した費用は創立費といいます。具体的には、定款の作成費用など法人の登記のためにかかった費用や設立までに支払った事務所の家賃や社員に支払った給与、名刺・印鑑・封筒などの事務費、視察にかかった旅費交通費や交際費などです。

創立費、開業費はそれぞれ繰延資産として資産に計上します。会計上はその金額は5年以内に均等額以上を費用化することになっていますが、税法上は任意償却といって、納税者の選択によって好きな時期に好きな金額を費用として処理することができます。

したがって設立後、利益が安定して計上できるようになったときに費用化すれば節税効果が計れます。ただ、理由もなく資産に計上したままだと金融機関などから粉飾決算とみなされる可能性があるので注意が必要です。

一方、開業費とは会社設立以後、実際に事業を開業するまでに特別にかかった費用をいいます。具体的には、ホームページの作成費用、チラシ・カタログ・パンフレットなどの広告宣伝費、事務所の机や椅子パソコンなどの事務用品費、エアコンや空気清浄機などの備品費、打合せなどの交際費や交通費、事業に必要な免許取得費などです。

なお、事務所の家賃、社員の給与など設立後に経常的に発生するものは開業費には該当しません。

お役に立つ税金のミニ知識、第4回~法人の決算期の変更~

全国商工新聞という業者団体の機関誌の「税金相談コーナー」に数年間にわたり執筆したものの中からセレクトし、5回にわたり掲載をします。今回はその4回目です。

第4回目は、法人の決算期の変更の留意点です。

(Q)酒の販売を営む法人です。利益が出る体質になってきたので個人事業を法人組織に変更しました。その時に決算期を12月にしました。ところが年末は繁忙期で、棚卸もおぼつかない状況です。決算期を閑散期の5月に変更したいのですが可能なのでしょうか

(A)結論から言えば、法人の決算期の変更はいつでも何回やってもかまいませんし、手続きもそんなに難しくありません。

個人事業の事業年度は、暦年と決まっており、変更することは不可能です。ところが法人の場合の事業年度は、定款の定めによることになっています。定款の変更は登記事項ではないので、自社で保存している定款の変更だけでできます。定款の変更は、株主総会の決議が必要です。したがって、まず5月末までに臨時株主総会を開催し、定款の変更の決議をします。この決議は特別決議が必要となります。その後、速やかに定款の変更手続きをします。

それが終われば、変更した部分の定款の写しを添付した「異動届出書」を税務署、県税事務所、市役所に提出しなければなりません。提出期限の定めは特に決まってはいませんが、変更後の確定申告書の提出期限までにはした方がいいと思います。

この場合、消費税の基準年度の課税売上高の計算は個人事業者と異なります。法人の場合は5月までの5ヶ月ではなく、年換算をします。納税義務者や簡易課税の選択ができるかどうかの判定には要注意です。

お役に立つ税金のミニ知識、第3回~印紙税の基礎知識と節税~

全国商工新聞という業者団体の機関誌の「税金相談コーナー」に数年間にわたり執筆したものの中からセレクトし、5回にわたり掲載をします。今回はその3回目です。

第3回目は、意外な盲点のある印紙税についてです。

(Q)個人で宝石、貴金属の販売をしています。また、配偶者が大工の仕事をしています。印紙税の仕組みと節税方法について知りたいのですが。

(A)印紙税法で定められた課税文書に対して印紙税が課税されます。課税文書を作成すると、定められた金額の収入印紙を貼り付けて消印し、納税する必要があります。消印とは収入印紙の再利用防止が目的であることから、印鑑に限らず、署名でも認められています。

課税文書は20項目に区分されており、請負契約書(2号文書)や受取書(17号文書)などです。課税文書には、覚書や念書も該当する場合もあります。また、領収書とレシートを同時に相手方に渡すときは両方に印紙を貼る必要があります。ただしこの受取書は5万円未満のものは非課税文書になります。

印紙税の基本はどんなものが課税文書になることを把握して、きちっとその都度貼付して、消印をすることです。税務調査等で指摘されれば、その税額の3倍の過怠税の課税がされます。なお、印紙のデザインは、一定の期間で変更されます。

印紙税は、課税文書原本に課されるので、コピーの場合は課税されません。通常、契約書などは売り手・買い手の両方が原本を保管するケースが多いですが、原本をひとつ作成しもう1通はコピーで済ませることで、印紙税を半分にすることができます。

また、電子メールやFAXで文書を作成すれば課税文書には該当しない取り扱いになっています。電磁的に決済をすれば、印紙税は不要となります。

お役に立つ税金のミニ知識、第2回~個人事業者の資産の売却~

全国商工新聞という業者団体の機関誌の「税金相談コーナー」に数年間にわたり執筆したものの中からセレクトし、5回にわたり掲載をします。今回はその2回目です。

第2回目は、とても複雑な個人事業者の「資産の売却」をすっきりまとめてみました。

(Q)個人事業者です。昨年に経理に使っていた中古の軽貨物自動車を売却しました。この収入は確定申告でどうなりますか。

(A)その車を購入したときの金額と経理処理の仕方、所有期間で所得の種類と計算方法が違ってきます。

まず、その購入したときの価格が10万円未満であった場合は、売却収入は事業所得の収入金額になります。その価格が10万円以上20万円未満の場合で、一括減価償却資産としてその取得価格を3年間で経費にしていた場合も同様に事業所得の収入金額となります。

その価格が10万円以上で、固定資産として資産計上をして減価償却していた場合と10万円以上30万円未満で少額減価償却資産(青色申告の特例)として取得時の一時の必要経費にしていた場合には、売却収入は総合課税の譲渡所得の収入金額となりますので注意を要します。

譲渡所得は、収入金額から取得費と譲渡費用の合計額から特別控除(売却利益が50万円以下の場合はその金額、50万円以上のときは50万円)を控除します。取得費とは、購入価格から減価償却費を引いた帳簿価格をいいます。譲渡費用とは、売却に際してかかった諸費用をいいます。取得時から5年を超えて売却した場合には、その金額の半分が譲渡所得の金額になります。

その売却収入は事業所得になる場合も譲渡所得になる場合にも、消費税の課税売上高になります。譲渡所得になる場合にも、売却利益でなく売却収入が課税売上高になりますので間違えないようにしてください。

お役に立つ税金のミニ知識、第1回~有姿除却の意味と税務処理~

全国商工新聞という業者団体の機関誌の「税金相談コーナー」に数年間にわたり執筆したものの中からセレクトし、5回にわたり掲載をします。

第1回目は、意外に知られていない「有姿除却」についてです。

(Q)建設業を法人で営んでいます。設備を最新鋭のものにしましたが、古い同様の設備は使わないままにしています。この場合の税務処理はどうするのでしょうか。

(A)生産効率を上げるために最新設備にされたのですね。こうした場合には古い資産を廃棄等していないときであっても、その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められるものについては、その固定資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した残額をその事実が生じた日の属する事業年度の除却損として損金の額に算入することができます。

これを有姿除却(姿があっても除却したと同じ状態のもの)といいます。有姿除却は、資金の支出を伴わない経費であり節税の観点からも有効です。

しかし後の税務調査で対策が重要となります。ポイントは、その資産が将来使用される可能性がないということを立証できるかにあります。外形上その使用ができるかどうか不明なときは、トラブルがないような書類等を残すことが良いでしょう。具体的には、新規設備を導入した経緯、除却した場合の見積もり書などが有効かと思います。

また、類似のものとしてソフトウエアも同じ考え方をします。つまり物理的な除却、廃棄、消滅等がない場合であっても、今後事業の用に供しないことが明らかな事実があるときは、そのソフトウエアの帳簿価額から処分見込価額控除した残額をその事実が生じた日の属する事業年度の損金の額に算入することができます。

Madam, I’m Adam(奥様、私はアダムです)~おもしろきかな?回文~

回文(かいぶん)とは、始めから(通常通り)読んだ場合と終わりから(通常と逆に)読んだ場合とで文字ないし音節の出現する順番が変わらず、なおかつ、言語としてある程度意味が通る文字列のことで、言葉遊びの一種である。英語では palindrome (パリンドローム)という。『ウィキペディア)より』

私は、NHK基礎英語3で英語の学習をしています。この講座は中学校3年生を対象としていますが、「受験英語」からまるで進歩がなかったので悪戦苦闘をしています。さび付いた脳の活性化には、多少寄与しているかもしれません。

さて、そのテキストの巻末に回文の英語バージョンと日本語バージョンがあります。本編の勉強よりも回文の方に興味がわいてきました。そこで、私が個人的に気に入っているものの英語版をベスト5までランク付けしてみました。

第1位……

Rise to vote ,sir(投票のために立ち上がってください)

選挙に行かず、その政治の悪さを嘆く人はまだしも、政治のことについて無関心な層が多いことは嘆かわしいですね。

第2位……

Too bad ,I hid a boot(残念、ブーツの片方は隠しちゃったぞ)

軍靴(ブーツ)の響きがする昨今ですが、今私たちすることは、軍拡ではなく軍縮です。軍靴は片方隠して、戦争しない国をめざしたいですね。

第3位……

Now, I see, referees I won! (さあわかったぞ、審判のみなさん、私の勝ちです!)

プロ野球を始め、昨今はスポーツの世界でもビデオ判定が多くなりました。意外に判定が覆ることが多いですね。審判も良い緊張感を持って判定をして欲しいものです。

第4位……

Do geese see God?(ガチョウは神を見るか?)

「ガチョウを料理する」という慣用句は、「希望や計画を台無しにする」との語意でヨーロッパでは口にされているそうです。為政者は庶民のささやかな希望を奪うことなかれ。

第5位……

Never odd or even (奇数でもなければ、偶数でもない)

そんな整数はあるのでしょうか?数学が大の苦手で、人からは「よく税理士をやっているね」といわれます。さて、0は奇数か偶数か、答えは偶数だそうです。その理由がすんなりと答えたれたら、税理士なんかはやっていません。

言葉遊びに興じる暇があったら、関係代名詞を理解したりや使えそうな「word」や「phrase」を覚えろという神の声が聞こえてきそうです。しかし、勉強は楽しくやれば良いのではないかと思います。

「強き」を助け「弱き」を挫く税制のあり方を考える~現状を変えなければ格差は助長される~

米国のシンクタンク「政策研究所」の調査は昨年3月から今年2月までの1年間で、米国の富裕層664人が約1300億㌦(約143兆円)、44%の資産を増やしていると発表しました。彼らの資産はこの1年で約3兆㌦から約4.3兆㌦へと増加しています。これは所得下位半分の資産の総合計約2.4兆㌦の1.77倍です。また、バイデン政権がめざしている新型コロナ経済対策予算1.9兆㌦の3分の2の資産を増やしたことになります。

わが国でも同様の現象が起きています。衆議院財政金融委員会で参考人となった群馬大学山田博文名誉教授は、企業の利益剰余金(内部留保)が直近で538兆円に膨らみ、富裕層の金融資産もその資産を5000万円以上有する人だけで総額588兆円に上ると指摘しました。

さらに、過去5年間で株価は2.6倍、富裕層の金融資産は1.8倍に拡大したのに対し、消費税率や社会保険料の引き上げで国民生活は厳しさを増し「異常な歪みと格差が生じている」と強調しました。そして1989年まで存在していなかった消費税が21年の歳入では最多の19%を占める基幹税なる一方で、法人税は8.4%しかないと問題視しました。

このような格差拡大の流れは国際的なものになっています。国際NGO「オックスファム」の報告では、税制の変化が格差拡大になっていると指摘しています。その試算では、2007年からの10年間で法人税収入は9.9%減少し、富裕税(資産税)収入も1.3%減少したのに対して、社会保険料収入は13%、逆進性の強い消費税(付加価値税)収入は9.8%増えたとの報告をしています。これは、大企業と富裕層の「自由」の拡大をめざす「新自由主義政策」の下で、税収が低・中所得層にシフトされた結果です。

その打開策としてオックスファムは①租税回避地を閉鎖し、収益性の高い多国籍企業と裕福な個人に対して公平な課税をする。②際限なく法人税を引き下げる「底辺の競争」を転換し、法人税率を引き上げる。③不平等を減らす政策の資金を確保して、人々と地球を中心に置く経済をつくりあげることを呼びかけています。

この流れに沿う形で変化も少しずつ生まれてきます。英国では法人税が23年から現行の19%から25%へ引き上げられます。この引き上げは約50年ぶりのものです。年間利益が5万ポンド(約750万円)未満の中小企業には現行の税率が維持されるため、25%の法人税率が適用されるのは企業全体の1割程度と見込まれています。また、米国でもバイデン大統領が3連邦法人税率を現行の21%から28%へ引き上げるに加え租税回避地の税逃れの課税強化を発表しました。

一方日本社会では、「社会保障を望むなら消費税率を引き上げるしかない」という風潮がいまだ主流となっています。しかし、「株式の配当・譲渡益の課税強化」や「法人税率の引き上げと累進課税化」など他の道もあるということを国民に知らせ、大きな世論を作り出す必要だと思います。

「強き」を助け「弱き」を挫くような日本の税制のあり方を見直すことを「税の専門家」である税理士が積極的に発信しないといけないことを痛感しています。

消費税の総額表示化のねらいは?~インボイス化と一体で消費税を「付加価値税」にする布石か~

4月1日より消費税の価格表示が総額表示方式に移行しました。4月以降は店頭の表示のほか、チラシやカタログ、パンフレットなどの表示媒体にかかわらず、総額表示が求められます。この移行に伴い、多くの出版や流通業界から反対や戸惑いの声があがっています。

財務省は「総額表示の義務付けは、それまで主流であった『税抜価格表示』ではレジで請求されるまで最終的にいくら支払えばいいのか分りにくく、また、同一の商品・サービスでありながら『税抜表示』のお店と『税込表示』のお店が混在しているため価格の比較がしづらいといったことを踏まえ、事前に、「消費税額を含む価格」を一目で分かるようにするものである。このような価格表示によって、消費者の煩わしさを解消していくことが、国民の消費税に対する理解を深めていただくことにつながると考えて実施」としています。

今回の事態は、2013年に成立した消費税転化対策特別措置法が3月31日に失効するためです。このことにより、消費税法の第63条が機能します。この規定は「事業者は、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない。」という内容です。

ただし、この規定には罰則はありません。つまりこの規定は、法律上は義務とはいえず、事業者に協力を求める「訓示規定」と考えられます。そもそも、価格の表示をどうするかは、事業者の裁量にゆだねられるべきです。それは、営業の自由を保障する憲法第22条の規定により、価格表示も自由であるべきだからです。再販売制度により定価販売が認められている書籍などは、総額表示になじみません。

4月1日からは、例えば100円ショップの価格表示は、「110円」「110円(税込み)」「110円(うち消費税額10円)」になります。ただし、この表示だと100円ショップは、「110円ショップ」に名称を変えないといけなくなるのではないでしょうか。

さらに、この機会に乗じて価格表示で大きな動きをしたのが、ファーストリティリング社の傘下であるユニクロとGUです。3月12日よりすべての商品を総額表示にするとともに、商品の本体価格をそのまま据え置いて、消費税込みにしたのです。つまり約9%の価格の引き下げに踏み切ったのです。商品タグを、例えば「1,990円+消費税」から「1,990円」としました。この引き下げについて、柳井正氏は「できるだけ多くの商品価格をそのままに、消費税込みのお求めやすい価格で販売し、お客様の生活に寄り添っていきたいと思っている」と発言しています。

このような動きをみると、消費税は紛れもなく『価格転嫁ができる力の強い事業者』と『価格転嫁できない力の弱いでない事業者』を生み出します。ファーストリティリング社は間違いなく前者です。価格に転嫁できない中小零細事業者は消費税相当金額を持ち出して負担しなければなりません。

総額表示の欠点は税率が変更される度に表示替えのコストがかかることにあります。さらに政府は、小規模事業者の取引排除を招くインボイス制度を強行しようとしています。1989年にむりやり導入した「消費税」を他国で実施している「付加価値税」に本格的に移行しようと画策しています。その本質とねらいをよく監視し、反対の世論をあげるべきです。

えっ!!JTBが中小企業に~税額の軽減がねらい?~

3月31日で、従業員数約2.7万人を擁する旅行会社最大手のJTBが中小企業になるということが話題になっています。資本金を現在の23.4億円から1億円に減資することになりました。既に、株主総会による決議がされています。その背景とねらいについて考えて見ます。

コロナ禍で旅行需要が激減して、業績が急速に悪化しました。前年5月の旅行取扱高(売上高)は、前年同月比で96%の減少という信じられない程の落ち込みでした。上半期(4~9月)の赤字は781億円になり、利益剰余金(いわゆる内部留保金額)は、9月末までで799億円と半年でほぼ半減しました。21年3月通期では過去最大の1,000億円の経常赤字を予想しています。緊急事態宣言が首都圏で再延長されるなかの外出自粛や東京オリンピック・パラリンピックでの海外の観客者の入国禁止措置で、旅行事業者の収益改善の兆しは一向に見えません。

そうした状況でJTBが考えたのは資本金を1億円にすることで、税制上は中小企業にして税による資金の流失を押さえることでした。確かに資本金が1億円に以下の企業は税制上の優遇策があります。

具体的には、最大の節税効果は法人事業税(都道府県民税)です。資本金が1億円を超えると事業税が外形標準課税といって、給与・支払利子・地代などの付加価値といわれるものに一定の割合で課税がされます。JTBの場合、従業員などが多いため事業税の金額は多額になります。これに比べ資本金が1億円以下の場合には、赤字企業には法人事業税は課税されません。これにより、多額の資金流失を防ぐことができます。

さらに、中小企業に該当すれば法人が赤字になればその欠損金を次期以降の黒字と通算してくれる制度があります。もし、JTBが次期以降に黒字になってもその累計額が今期の赤字の金額に達するまでは今後10年間についての法人税は支払わなくてもいいことになります。資本金が1億円超になれば、控除してくれる金額は中小企業の半分の50%になります。

また、中小企業には、財務基盤が弱いことから年800万円以下の法人税が15%に軽減されるものや交際費の支出額が800万円までが損金になる制度、設備投資にかかる税額の軽減などがあります。

この「偽装中小企業化」はJTBだけではありません。既に吉本興業、スカイマーク、毎日新聞、カッパクリエイトなどが減資をして税制上の中小企業になったり、その決議をしたりしています。どう考えても、JTBをはじめ資本金を1億円にしたこれらの企業は大企業です。こうした中小企業「偽装」と思われても仕方ない減資に規制をかける必要性があります。

日本税理士会連合会では16年に資本金基準に加え「従業員1000人以下」を加えるように答申をしましたが、実現に至っていません。政府は、このような不自然な「中小企業化」を漫然と見過ごすのではなく、早急に法の抜け穴を塞いで欲しいものです。

地銀の再編は、中小企業や住民に幸せをもたらすのか?~政府が後押しをする加速策を考える~

政府は20年11月に施行した特例法で地方銀行を向こう10年間、独占禁止法の適用対象外としました。地域に欠かせないインフラとして寡占に目をつぶっても体力を高めていくことが狙いです。また日銀も20年10月から3年間の時限措置として、経営統合などの条件を満たす金融機関を対象に、日銀に預ける当座預金の残高に年0.1%の金利を上乗せします。さらに地銀の合併に1件30億円を補助する交付金制度の創設も進めています。

この背景には、日銀の19年のレポートがあります。それは、人口減少によって資金需要が細り利ざや縮小に拍車がかかり、10年後、約6割の地銀が最終赤字になるというものです。

菅首相は、官房長官時代の18年の秋に「日本には1,900兆円の個人金融資産といった大きな潜在性がある」「これで赤字になるような地銀はまじめにやっていないんだ」と発言し地方銀行に対しての不満を口にしました。折しも、16年にマイナス金利導入から2年がたって、金融機関の利ざやが縮小して地銀の経営に大きな影響が出ている時でした。

この発言の真意は、「地方にお金を行き渡らせる金融緩和の継続は欠かせない。地銀は自らが知恵を働かせ地方に仕事や雇用を生み出すべきであり、そうした努力をしない銀行まで救うのは難しい」というものです。※日経新聞の特集、地銀大改革を参照

菅首相は昨年秋に自民党総裁選挙に立候補したときに、異次元の金融緩和について聞かれ、「地方の銀行は将来的には数が多すぎる」「地方銀行の再編も一つの選択肢」という発言をして、地銀の再編に意欲を見せていました。

この既定路線により、地銀の再編を急がせて「収益力の強化」ばかりを推し進めていけば、これまで良好な関係を築いてきた中小企業に対しても「貸し渋り」や「貸し剥がし」の心配が出てきます。地銀が寡占状態になると、地元の中小企業に選択の余地はなくなり、仮に貸し剥がしに合えば他に相談する金融機関はなくなってしまいます。

また、既に進んでいる支店の統廃合が一気に進んでしまします。大和総研によると、ここ数年で約1,000店舗の削減計画があるようです。それは、利用者の利便性を損なうものです。日本の銀行の支店が多いかというと既に少なくなっています。

人口10万人あたりの金融機関の店舗数(郵便局を除く)は、スペインが67、フランスが57、イタリア50、ドイツ42、アメリカ36、日本25、イギリス17となっています。ATMやネットバンキングの普及があっても、行き届いた暖かいサービスを受けたい中小企業や地域住民にとって地銀の支店の存在は欠かせません。

菅政権の中小企業政策の基本は「生産性の低い中小企業の再編の促進」です。今後20年に企業数を現状の6割程度に圧縮する計画を立てました。これを裏付けるように、税制でも「中小企業の経営資源の集約化に資する税制」として、中小企業の買収に関わる法人税の軽減措置を導入しました。

地銀の再編を追求すれば必ず切り捨てられる層が出てきます。銀行法第1条では「国民経済の健全な発展に資する」と高らかにうたっています。地銀再編の流れには疑問を抱きます。

コロナ禍で求められるのは消費税減税では?!~世界の潮流で見えてくるものは~

消費税は所得が少ないほど負担が多い逆進性の強い税金です。コロナ禍で増えている年収200万円未満の人は所得の10.5%の負担になり、年収2000万円の裕福な人は1.8%の負担ですみます。収入のまったくない人も、支出する度に容赦なく消費税がかかってきます。

中小零細業者は消費税を価格に転嫁できず、身銭を切りながら消費税を払っています。法人税や所得税は業績が悪ければ税の負担はありません。しかし、消費税は赤字でも支払わなければならない中小零細業者にとって過酷な税金といえます。

この消費税が導入されてから32年間、法人税率と所得税の最高税率は大幅に下げられてきました。大企業と富裕層は減税の恩恵を受け、その一方で中小零細業者と庶民は増税に苦しみ続けています。その結果、大企業と中小零細業者、富裕層と庶民の所得格差は想定外の大きさに拡大しています。

ところで、世界を見渡せば消費税(世界の多くは付加価値税と呼んでいます)の減税に踏み出した国が50カ国になっています。コロナ禍で消費税の減税がトレンドになっています。

その減税方法は二つに区分できます。一つは、飲食店、ホテル、映画館、美術館など売上が激減した業種に限定した引き下げです。例えば、イギリスでは、飲食店や観光業に対して20%の標準税率から5%の軽減税率に引き下げをしました。ベルギーではホテル、カフェなどに適用されていた21%の標準税率とレストランに適用されていた12%の軽減税率をそれぞれ6%に引き下げました。オーストリアもレストラン、バーに適用されていた20%の標準税率を5%に引き下げています。ノルウェーでは旅客運賃、映画館などに適用されていた12%の軽減税率を8%に引き下げています。さらにウクライナ、チェコ、コスタリカ、ウズベキスタンでは文化事業などで引き下げを実施しています。

もう一つは、業種を問わずすべての事業者に対して減税をしているやり方です。例えばドイツでは、19%の標準税率を16%に引き下げ、7%の軽減税率を5%に引き下げました。韓国では年間売上6000万ウォン(540万円)以下の個人事業主の税金を免除しています。中国では簡易課税を選択している小規模事業者に適用される売上高の3%の税率を1%に引き下げをしました。アルバニアでは中小企業の税を免除にしています。

二つの引き下げのうち日本がまねをするならドイツのように業種を限定しない引き下げです。また、韓国や中国、アルバニアのように中小業者に免税や軽減税率にすることは疲弊している経済にカンフル剤を与える効果が期待できます。ただ、この諸外国の減税措置は期間が一年足らずの限定措置です。日本の場合には、当面5%に引き下げ、さらに廃止へと展望することが可能です。

税のゆがみを是正し公平な税制を実現することがその担保です。「不公平な税制をただす会」の試算では、大企業や富裕層に応分な負担を求めることにより年間42兆円もの財源が生まれます。それを実現すれば、消費税の減税、そして廃止が展望でき、社会保障の財源も生み出せます。資本主義の大前提は「富の再分配」です。多くの人が声を上げましょう。

自助、みんな頑張っています!!~思わず本音が出たのか`生活保護`~

1月27日の参議院予算委員会で、菅首相の本音が出てしまいました。朝日新聞の記事(1月28日付)よると立憲民主党の石橋通宏議員の「弱い立場の方にも自助を求めるのか」「収入を失って路頭に迷う方、命を落とされる方が多数に上っている。政府の政策は届いているのか」などと質問。その上で、「政府の政策が届いていないことが明らかになれば、首相の責任で届けてくれるか」と首相の姿勢をただしました。

これに対して、菅首相は「いろいろな見方がある。対応策もある。政府には最終的には生活保護という仕組みも。しっかりセーフティーネットを作って行くことが大事だ。」と答弁しました。

石橋議員は、朝日新聞の取材に「あぜんとした。生活保護に至らないように政策を打つことが本来の『公助』なのに、何もしなくていい、というようなものだ。自助で頑張れ、というのが首相の基本姿勢であることが、残念ながら確認できてしまった。首相の『公助』が生活保護だとするなら、私の姿勢とは相容れない」と語りました。

午後の蓮舫議員は首相の答弁について「生活保護に陥らせないことが、首相の仕事、政治ではないか」と、私もまったく同感です。露骨な「新自由主義」路線を地で行くことの政治姿勢はこれまでの言動でわかっていましたが、フーテンの寅さんの「それを言っちゃおしまいよ」が思わず口に出てしまったのでしょう。

日本には、生活保護が必要な世帯の2割しか利用できていない実態があります。その要因のひとつが、保護申請のときに行われる親族への「扶養照会」です。生活保護の「扶養義務」の範囲は、イギリス、フランス、スウェーデンなどは配偶者と未成年の子、ドイツではそれに加え、成年の子と親です。

ところが日本では、2親等である兄弟姉妹、祖父母・孫、3親等である曾祖父母・曾孫、家庭裁判所が認めた場合には、おじ・おば・甥・姪までという信じられない位の範囲の広さです。

田村厚生労働大臣は、保護を開始した数の2倍の「扶養照会」をして、このうち金銭的援助が可能と回答した割合はわずか1.5%と回答しています。生活保護の申請を親族に知られたくないという人が多く、「扶養照会」が生活保護の利用を妨げている要因のひとつです。

総理にもいろいろな個性があり、それが後生まで語り草になっている人もいます。その勢いから「コンピューター付きブルドーザー」と言われた故田中角栄氏、話の前置きが長く「あー・うー総理」と言われた故大平正芳氏、「言語明瞭・意味不明瞭」と言われた故竹下登氏、口を開けば「失言」と揶揄された前東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗氏、ワンフレーズで国民をわしづかみにした小泉純一郎氏、「偽装・捏造・安倍晋三」と言われ、「募ってはいるが募集していない」という意味不明なことで言い逃れを繰り返した安倍晋三氏、さて菅義偉首相はなんと言われるのでしょうか。

大事なところでの「言い間違い」や「仮定のことはお答えできない」と説明しない、「発信力」に欠けるなどの特徴があります。さまざまなスキャンダルで内閣支持率は低め安定です。今こそ「開かれた政治」をときの宰相には期待しているのは私だけではないでしょう。

税理士新聞で扱った消費税関連の記事は5回~多くの税理士は消費税減税などを求めている~

(株)エヌピー通信社が発行している税理士新聞は「1974年の発行以来、税理士業界のパイオニアとして最も読まれ、信頼される職業会計人の羅針盤」とされています。

 その税理士新聞が毎月一回、二者択一形式で税界の世論を浮き彫りにするアンケートコーナー「振り子時計」を実施しています。2020年の12回中5回が消費税関連の質問でした。消費税について多くの税理士が注目していることがわかります。その質問を時系列的並べ、それぞれの意見の特徴を抜粋しました。

 1月号、Q消費税のさらなる引き上げは不可避だ。Yes43%、No57%とわずかに反対派が多い。賛成のコメントは「世界各国の消費税率を見れば日本は低すぎる。思い切った財源確保を講じるべき」、反対のコメントは「安易に消費税率を引き上げるべきではなく、もっと無駄を省く行政改革を進めるべきである」

 3月号、Qインボイスは必要な制度だ。Yes10%、No90%を圧倒的に反対派が大きい。賛成のコメントは「免税業者の問題はあるが、避けては通れない道」、反対派のコメントは「帳簿方式で十分。消費税の複数税率をやめるのが先」

 5月号、Q今こそ消費税率を引き下げるべきだ。Yes60%、No40%と賛成派がやや多い。賛成のコメントは「消費税はすべて法人税の減税に化けてきた。大企業が当たり前の税率で法人税を納めれば消費税は廃止できる」、反対派のコメントは「軽減税率をやめて必要な財源に充てるべき」

 6月号、Qキャッシュレス・ポイント還元を延長すべきだ。Yes44%、No66%と反対派がやや多い。賛成のコメントは「消費者の購買意欲を喚起する結果にもなっているので、ぜひ延長すべきだ」、反対派のコメントは「年寄りや子どもなどカードを持っていない人が差別される」

 10月号、Q消費税の減税を断行すべきだ。Yes76%、No24%と圧倒的に賛成派が多い。賛成派のコメントは「国民や中小企業の現状を見れば当然」、反対派のコメントは、将来の日本国民に負債を引き継ぐな!」

 以上の結果となりました。特に注目したいのは、圧倒的にインボイス制度について反対が多いことです。

 インボイスを発行することができる「事業者登録制度」が今年の10月より開始されます。懸念されるのは、現行の制度で免税事業者とされる課税売上高が1000万円以下の事業者に「過酷な選択」を促すことです。すなわち、取引先が仕入れ税額控除を行うために「課税事業者」であることを要求されやむなくそれを選択せざるを得ないことです。換言すれば、それに抗えば、即取引の停止を意味するということです。

 現在、フリーランスで働く人が300万人を超えたという統計もあります。その多くは、収入が1000万円以下です。ただでさえ不安定な労働環境にもかかわらず、税の上でも悲劇な集団にならないか危惧をします。

立ち止まってゼロベースで考えるべきでは?~東京オリンピックの開催ありきは改めるべきでは~

「『選手だけがやりたいと言うのはわがまま。皆さんに五輪が見たい、選手が輝く瞬間を見たいと思わせないと』昨年12月、陸上の東京五輪選考会で女子1万㍍の日本新記録を18年ぶりに更新し、日本代表に決まった新谷仁美選手は喜びとともに現状を冷静に口にした。

五輪を史上初の延期に追いやった新型コロナウイルスの猛威はいまだに収束せず、国内の大会機運もしぼんだままだ。緊急事態宣言が再発令された直後に共同通信が行った世論調査では、中止と再延期を求める声が合わせて80.1%に上った。不安を打ち消そうと、政治家や主催者が揺るぎない姿勢を口にするほど、国民との温度差が広がる悪循環。そのはざまでスポーツ選手は身を小さくしている。」と報じています。(1月29日付、日経)

また、日本オリンピック委員会(JOU)理事で元柔道選手の山口香さんは、国民の大半が五輪の再延期・中止を求めていることについて「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出や変異型への懸念もあり『残念だけど、難しい』というのが冷静で、現実的な感覚だろう」と語っています。(1月26日付、朝日)

ところが菅首相は1月7日に緊急事態宣言を発出した際に、ワクチンの普及によって「(五輪に対する)国民の雰囲気も変わってくるのではないか」と述べていましたが、ワクチン頼みが無理なのがわかると「ワクチンも前提にしなくても安心・安全な大会を開催できる」と何も根拠を示さず言い出しました。そして、政府は東京五輪を「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」にすると開催の姿勢を崩していません。

この夏のオリンピック開催にはさまざまな問題点があります。

第一にワクチンの問題です。一部の国ではすでにワクチンの接種が始まっていますが、集団免疫については世界保健機構(WTO)が今年中に達成することが困難だとしています。

第二に「フェアな大会」ができるかどうかの問題です。各国の感染状況による練習環境のなどの違いやワクチンの接種の先進国とそれ以外の国の格差の問題もあります。

第三に医療体制の問題です。熱中症対策だけで1万人の医療従事者が必要とされていますが、これにコロナ対策を加えれば医療体制逼化の中さらなる人員と費用がかかります。

オリンピック憲章はその根本原則の2において「その目標は、スポーツを人間の調和のとれた発達に役立てることにあり、その目的は、人間の尊厳維持に重きを置く、平和な社会推進することにある」とし、また4では「スポーツを行うことは人権の一つである。すべての個人はいかなる種類の差別もなく、オリンピック精神によってスポーツを行う機械を与えられなければならず、それには、友情、連帯、そしてフェアプレーの精神に基づく相互理解が求められる」としています。

新型コロナウイルスは、世界の格差をさらに大きくしています。今は少し立ち止まって、「五輪開催ありき」の前のめりの姿勢から、その是非をオリンピック精神に基づいて根本的に見直すことが必要ではないでしょうか。国際オリンピック委員会(IOC)を含め徹底的な論議をすべきでしょう。

敬愛していた野村監督が逝った日からはや1年~監督の生き様とその名言~

訃報があってからもそうでしたが、年末のテレビ番組でも野村監督の特集をしきりに放映していました。監督からは多くのことを学び生かしています。その足跡と名言を紹介します。

訃報は昨年の2月11日にありました。享年84歳、プロ野球ファンだけでなく多くの人々に影響を与えました。選手を引退してからは解説者を経て、長い間監督をされてその手腕が発揮されたので、私の世代より若い人は監督と言った方がなじみやすいのではないかと思います。しかし、プロ野球選手としても超一流でした。氏の足跡を時代ごとにまとめ、その名言にもふれていきます。

1935年、漁業が盛んな京都府竹野郡網野町(現在の京丹後市)で生まれました。家はとても貧しく、新聞配達などで家計を助けていました。中学校2年生の時に野球部に入りました。兄の大学進学を断念した結果、京都府立峰山高校に進学できました。しかし無名の高校だったので、54年に南海ホークスにテスト生として入団しましたが成績が振るわず、戦力外通告を受けました。ところが、正捕手の事故などにより残留が決まりました。

3年目の56年に一軍に抜擢され正捕手の座に座りましたが、カーブがまったく打てなく空振りを繰り返していました。そこで思いついたのが、投手のクセを徹底的に研究することでした。その結果、打撃力が飛躍的に向上しました。そして57年にはホームラン王に、65年には戦後初の三冠王に輝きました。ただ、「神様、仏様、稲尾様」と形容された稲尾和久投手には手も足も出ませんでした。打開策として、自ら16ミリカメラでそのフォームを撮影し、その細かなクセをついに見つけました。そのことが、その後の氏の人生を変えたと言われています。

同時期に活躍していた長嶋選手や王選手が脚光を浴びる一方で、マスコミで氏の露出が少ないので、考えたのが「長嶋や王がひまわりならば、自分は人目のつかない所でひっそり咲く月見草」という名言でした。以来「月見草」が氏の代名詞となりました。

70年には監督兼任捕手となり、2000本安打も達成しました。その後、ロッテ、西武と移り、80年には前人未踏の3000試合出場を達成し、45歳で引退しました。現役成績は、打率277、657本塁打、1988打点、首位打者1回、ホームラン王9回、打点王7回、まさに歴代最高の捕手でした。おそらく、このような捕手はもう現れないと思います。

現役引退後は9年間テレビ朝日の野球解説者をしました。そのときに使ったのが「野村スコープ」でした。ストライクゾーンを9分割にして、捕手として培ったインサイドワークで、投手が次にどこにどんな球を投げるのを予想し、それがズバリ的中。野球解説に革命を起こしたと言われています。このスコープは現在では広く世界で使われています。

監督としては、1968年~77年(選手兼任監督)南海ホークス、90年~98年ヤクルトスワローズ、99年~2001年阪神タイガース、06年~09年東北楽天ゴールデンイーグルスを率いました。ヤクルト就任時に「1年目に土を耕し、2年目に種をまき、3年目に花を咲かす」という名言通りに3年目にリーグ優勝をし、4年目に日本一に輝きました。「チームが勝つには現場と首脳陣が協力しないとダメ」と言い続けました。

師弟関係にあった古田敦也さん(通算2097安打、10度のベストナイン、2度のMVP、そして選手会長としても活躍)は、その訃報に際して「頭を使えば弱いチームが強いチームになることをたたき込まれた。影響を受けた野村さんの教えを次の世代伝えていくのが役割だったと思っている」と述べています。

阪神タイガース時代は3年連続の最下位、それはオーナーが補強について積極的ではなかったからと言われています。その後、シダックスという社会人チームの監督になり都市対抗野球で弱小チームを準優勝に導きました。

次にプロ野球の監督をしたのが東北楽天ゴールデンイーグルスでした。新球団設立2年目のことでした。3年目にクライマックスシリーズまで進みましたが、3年目に退団しました。「マー君、神の子、不思議な子」と言われ時の人となった田中将大投手を育てました。入団1年目から打たれても、打たれても使い続け、11勝7敗、防御率3.82の成績で新人王に輝きました。田中投手はその訃報に際し、「野村監督には、ピッチングとはなにか。そして野球とは何かを一から教えていただきました。プロ入り1年目に出会い、指導してもらったことが野球人生における最大の幸運のひとつです」と述べています。

氏の名言は数多ありますが、そのいくつかを紹介します。

「失敗」と書いて「せいちょう」と読む。

「どうするか」を考えない人に、「どうなるか」は見えない。

「恥ずかしい」と感じることから進歩は始まる。

「失敗の根拠」さえはっきりしていればいい。それは次につながるから。

組織はリーダーの力量以上に伸びない。

部下を「信じる」というのは、リーダーの重要な資質。

不器用な人間は苦労するけれど、徹してやれば器用な人間よりも不器用な方が、最後は勝つ。

など、野球選手以外、特にビジネスに関わる人に通じるものばかりです。私は、氏の波瀾万丈の人生から大いに学びました。語録を思い出しては、自分自身の成長につなげていきたいと思います。